買い付けも終わり、早々と石山を出発した俺と信長様一行は、京を目指して旅を続けていた。
で、京に向かう道中女山賊に2回もエンカウント。
タッキーの時みたいに訳あって山賊をやっているのかと思ったら、普通に痛い目どころか殺して全てを奪い取る思想だったのでやむなく成敗。
護衛の謙信ちゃん、森さん、タッキー無双で殆ど片付き、俺も信長様を守って山賊の攻撃を凌いでいたが、岩成さんの手助けもあり、何とか退かせることに成功したのであった。
「京へと続く道でこれほど賊が蔓延っておるとは……」
「京も……もしかしたら賊が根城にしている可能性も……」
「流石にそれはないだろう。だって朝廷のある京だぞ。幕府もあるだろ?」
「信長様……幕府は……」
タッキーと堺の商人達に教えてもらったが、畿内は現在進行系で騒乱の真っ只中にあるようで、堺も俺達が来る前に攻撃を受けていたりしていた様であった。
現在管領の細川晴元派と反晴元派で畿内全体を巻き込んだ騒乱が発生しており、幕府は機能不全に陥ってしまっているのだとか。
京にも戦火が及び、2年か3年前には戦火による大火災が発生し京半分が火の海になったとも聞いているので……綺羅びやか京というのは幻想かもしれないと信長様に伝えておく。
信長様は朝廷や幕府のお膝元が本当にそんなことになっているとは思っておらず、やや楽観視していたが、実際に目にすると愕然としていた。
京に到着した俺達が見たものはまるで地獄のような光景であった。
京でも南に位置する下京から京に入ったが、どこの家も朽ち果てかけており、そこを賊が根城にしている有様。
貴族達が物乞いをし、死を待つだけの子供がカラスに突かれていたり、何らかの理由で亡くなった者が野犬に食い荒らされ放置されている有様。
「これが……京なのか? 朝廷と幕府のお膝元の京が……この有様なのか!?」
信長様は若干受け入れられないらしい。
信長様だけでなく、京出身の岩成さんと情報を調べて覚悟していたタッキー以外のメンバーは現実が受け入れられなさそうである。
「幕府の威光も地に落ちていた……というわけね」
謙信ちゃんも口をモゴモゴさせて、色々言いかけた後にその言葉を振り絞っていた。
そんな光景を観ながらも、どうすることもできないので、急いで下京を抜け上京へと移動すると、そこには比較的マシな市街地が存在していた。
市場も一応機能しているようで、野菜を売りに行くとまたたく間に買われていき、その金を直ぐに茶葉の購入代金に充てた。
そしてこの状態の京の中で宿を取れば襲われる可能性が高いので、京から少し外れた場所で宿を取ることにしたのである。
するとその宿の中で張った張ったと声が聞こえてきた。
「さぁ張った張った! 半か丁か! 選んでください!」
黒髪で前髪ぱっつん、デコが広めの真面目そうな女性が賭場を開いていた。
ただその乳は貧相である。
まな板であり、絶壁であった。
「お姉さん、お嬢さん達もいかがですか?」
「どれ、じゃぁちょっと腕試ししようかね」
「おい、池……」
「俺の手持ちでやるんで安心してください」
「お、お嬢さんやりますか?」
「一勝負やらしてもらいましょうか」
他の商人達も巻き込んで勝負を始める。
最初のうちは普通に勝った負けたを繰り返していたが、途中から確率を計算し終わり、こいつイカサマしてるってことを突き止めた。
(賭けが成立する前……半か丁か皆が言っている間に床下から針でサイコロの目を操作しているな……よくもまあ思いつくことで……)
「タッキー」
「ん? 何でござるか?」
「床下に人が潜んでいるから捕まえてきて」
「んん!? 了解でござる!」
そう伝えて数回勝負を行い、床下からドスドスという音が聞こえてきたのを見計らって、
「ねぇお姉さん、俺と大勝負してみませんか?」
「「「おお!?」」」
「大勝負幾ら賭けるの?」
「そうですねぇ20貫なんていかがでしょうか。こっちが勝てば倍に、そっちが勝てば全額総取りに」
「……乗った!」
まだイカサマが使えると思っているのか勝負に乗ってきた。
さて、負ければ掛け金を増やして何回か勝負をするけど、さてさて……。
「ば、バカな……」
「毎度〜」
結果彼女はまさかの3連敗。
掛け金を倍にしていって挑んだので、140貫の大負けである。
胸がまな板の彼女は真っ白に燃え尽きてしまい、泡吹いて気絶。
それで賭場はお開きになり、俺はまな板を謙信ちゃんに言って俺達の部屋に運んでもらった。
部屋に行くと、タッキーがまな板の彼女に似た女性……彼女の方は胸がでかかったが、恐らく血縁者だろう。
「おーい、起きろー」
ペチペチを顔を叩くと、ハッとしてまな板が目を覚ました。
「お、お客さん、どうか許してください。そんなに巻き上げられたら私ら生きていけないんで!」
いきなり土下座をし始めたが、横で仲間のデカ乳が捕まっているのを見て、更に顔色が変わる。
顔面がコロコロ変わって面白い。
「まず名前を聞こうか……貧乳の方から」
「明智光秀です……」
「巨乳は?」
「明智秀満(ひでみつ)です……」
「明智って……斎藤道三の家臣の一族じゃなかったっけか? 何でこんなところに?」
「あの……私らその道三に粛清されかけて……」
「え?」
彼女達の話を聞くと、明智一族は史実だと斎藤道三に付いて国主である土岐(とき)氏から美濃国を奪ったのだが、この世界では土岐氏側に最後まで付いていたらしく、斎藤道三に明智一族は粛清されそうになり、一族は離散したのだとか……。
「一応最後まで土岐氏に付き従っていたので、幕臣に成れるかもという淡い期待を持って京に行ったのですが……幕府は混乱の最中にあり、雇ってもらえず、路銀に困り……宿で賭場を開いて路銀稼ぎをしていた次第でして……」
「で、イカサマにも手を出したと」
「「はい……」」
ちなみに光秀と秀満の関係は従姉妹らしい。
「信長様、彼女達若いですし、仕えると思うのですが、どうです?」
「信長……尾張の織田家にそんな方が居たような……」
信長様は上機嫌になり、
「なんだ! 余の事を知っておるのか! うむ、うむ、堂々とイカサマをする度胸なかなかよ。お主ら余の部下になるなら賭けた金を無くしてやってもよいぞ」
「選択肢がないですね……分かりました。荷物持ちでも何でもやらせていただきます」
「うむ! 池、こういう感じで仲間が増えることもあるのだな」
「ええ、仲間の作り方は千差万別ですからね。そして拾ってきた人材を生かすも殺すも信長様の器量次第なのでね」
「うむ、そうか……よしよし、余も頑張らなければ!」
明智光秀と明智秀満という史実ネームドを運よく捕まえることに成功した俺は、ここから怒涛に金策を開始。
京から堺→石山→京→堺を繰り返し、道中出会った賊は護衛の謙信ちゃんと森さん、タッキーに武芸も得意だった明智の2人によって、賊から武器や有り金を巻き上げて貯金箱化、見どころありそうな奴は仲間に加え、そして堺で銭に換金してからもう一回京に行って、今度は名物あさり。
京で作られる見事な染布だったり、物乞いをしている貴族から茶器を売ってもらったり、貴族で教養のある方に詩や掛け軸を書いてもらい、それを大量に仕入れ、堺を経由して船で山口までワープすることになるのであった。
ちなみに明智光秀と明智秀満の2人が稼いでいた100貫の蓄えも交易に使わせてもらい、元手が倍になったので更に稼ぐことができて、山口行きの船に乗る前に貴族達から巻き上げた名物を鑑定してもらうのであった。
ちなみに粗悪品を高値で売りつけてこようとする者もいたが、なんとなく物品の良し悪しを俺は感じ取れるので、そういう奴は謙信ちゃんに絞めてもらうのであった。