飯屋に移動して、みすぼらしい少女2人から話を聞くと、どうやら彼女達は大内義隆の行った月山富田城の戦いで母と姉を失い、家も下剋上によって当主一族であった2人は何とか逃げ延び、大内義隆様を頼りにしたのだが、彼女はろくに対応もせずに、追い払われてしまったのだとか。
「ちなみに名前を聞いても?」
「俺は毛利元春でこっちが」
「僕は毛利隆景……です」
毛利両川じゃねぇか!
え? 毛利滅んでるの……。
中国地方の歴史ぐちゃぐちゃじゃねぇか!
「母は毛利元就、姉は毛利隆元と言います」
はい、確定……毛利家滅亡しているじゃねぇか!
「姉上……僕達これからどうすれば……」
「嘆くな隆景、まだきっとお家再興の機は巡ってくる」
「何だお主ら行く当てが無いならうちに来るか?」
こういう時に手を差し伸べるのが信長様らしい。
「とりあえずみすぼらしい姿では格好もつかんであろう。宿にて湯あみするぞ」
そう言うと信長様は2人の手を取って宿へと連れ去ってしまった。
「まったく……信長様らしい。皆も手伝ってあげて、俺は勘定をしてから合流するから」
「了解っす」
「了解でござる」
「おう!」
そんな感じで宿へと向かうのであった。
毛利姉妹を綺麗に洗い、俺が山口に着いてから購入していた着物を着せてやると……
「「「おお!」」」
元春は深緑色の髪をしており、つり目で勝ち気って感じがし、隆景は黄緑色の髪をポニーテールに結び、正統派美少女って感じだった。
2人ともまだ成長途上なので胸はそこまで大きくないが、成長したらデカくなりそうな素養は確実に見て取れた。
「いいじゃん! いいじゃん! 滅茶苦茶可愛いじゃん!」
「んー! 美少女だ……」
信長様と千の2人も大興奮していた。
というか、信長様の性格幼なじみだから理解しているが、信長様は美が付けば男女関係なく愛するタイプである。
本質的にバイ。
だから結構寝てる時に寝言で仲間の名前を呟きながら、よだれ垂らしてキャッキャウフフの夢を見ているんだろうなってことが良くある。
そのうち美少女コレクションみたいなことしないと良いけど……。
史実信長様は美少年コレクションをしていたって歴史書に載るくらい励んでいたらしいが。
そんな信長様でも2人はストライクゾーンど真ん中をぶち抜いたらしい。
「愛くるしすぎる! 元春! 隆景! お主ら余の家臣になれ! お主らのお家再興手伝ってやる!」
「ちょ、ちょっと待て、綺麗にしてもらった事には礼を言うが、いきなり言われても困惑だぞ! 何より俺と隆景はお前の事を知らないし」
「ふむ……余は織田信長! 尾張弾正忠家の嫡女である!」
「尾張? めっちゃ遠くじゃないか! なんでこんなところに来てるんだよ」
「知見を広めるためよ。それに貴女達みたいな新しい縁を紡ぐこともできるからね」
ギャーギャー言い合っていたが、なんだかんだ信長様と元春は気が合うみたいで仲良くなっていった。
一方で隆景は俺の方に近づき、
「姉さんは逃げ出してから笑顔を見せることが無かったので、こうして笑顔が見れただけでも感謝しています。僕と元春姉さんもなるべく役立つように頑張りますので……どうか見捨てないでください」
「うん、大丈夫だ見捨てたりしないから安心してくれ。ただそうなると毛利は安芸の国出身だったよね?」
「はい」
「安芸は通らない方が良いか?」
「そうですね……安芸は大内と尼子の争いが再燃しているので危ないかと。できれば船で四国の方に渡った方が確実かと」
「また船旅か……安全には代えられないか。信長様、ちょっと」
「うむ、何だ池」
「隆景よりここから東に徒歩で行くのは危険と教えられたので、山口で買い物をしたら四国の方に向かいますよ」
「ふむ……四国は危険ではないのか?」
信長様が隆景に質問を投げかける。
「それぞれの勢力が拮抗していて、安芸や尼子領を進むよりは比較的安全でございます。それに四国には四国遍路という修行僧の歩く道のりが整備されていますので、路銀があるのであれば、宿泊できる寺もあるので山陰、山陽街道より楽かと」
「よく調べているな隆景は」
「はい、大内があてにできなかった為、九州か、四国かそれとも畿内に向かうか考えていたので……その道順の1つとして調べてました」
「なるほどのぉ」
ちなみに元春と隆景の年齢は、元春が俺と信長様、そして千の4つ上で、隆景が1つ上である。
普通に話していて2人とも頭がキレる様に感じる。
元の世界では毛利両川と恐れられる人物だな。
山口の町では着物を仕入れ、船で瀬戸内海を渡り、四国の伊予国に到着することができた。
現在は愛媛県として蜜柑が有名なのであるが、まだこの頃は自生している蜜柑がポツポツあるくらいで、ちゃんと育てているわけでは無い。
まだ特産品として活用している紀伊の方が大量に生えているくらいである。
現代だと真珠や今治タオル、陶磁器製の器なんかも有名だが、この時代はまだ技術が確立しておらず、特にこれって感じの品は無い。
強いて言うなら塩かな?
海を挟んで隣に山口の町があるので、人々もこちらを寄らずに、博多経由で船で畿内に行ってしまうので、人通りも閑散としている。
「寺は立派なのが多いのだけど……」
寺院は結構立派なのが多い。
実際伊予国に来てから寺に泊めてもらったが、立派な寺が多かったし、出される料理も結構美味しかった。
精進料理が基本なので、肉とかは出てこないが、味噌田楽や油揚げに野菜を詰め込んだ料理など、大豆系の食材を中心とした料理でもてなしてくれた。
精進料理に苦手意識がある謙信ちゃんも、
「何だ、寺と言う割には良い物が来るじゃないか」
と、ご満悦。
寺がこの時代は宿の代わりというのも時代を感じるな。
「博多や山口の町を見てからだと、伊予は閑散としておるな」
「まぁ四国は殆どが山で占められているのと、人の流れが少ないので、それだけ商売の規模も少ないので……まぁ争うような物も土地も少ないので、戦国の世でも比較的平穏なのですがね……」
「ふむ、そんなものか」
「そんなものです」
実際伊予から讃岐国……現在のうどん県こと香川県に移動しても、人通りは閑散としていたが、流石うどん県……うどんっぽい料理が普通に売られていた。
「ツルツルとしていて味わい深い……鰹節の出汁と良く合うな」
信長様だけでなく、謙信ちゃんや森さん、丹羽に明智の2人もうどんを気に入ったらしい。
もちもちしていて、コシがあり、汁に合わせて食べるというのが新鮮で美味しい美味しいと椀子蕎麦の如くお代わりして、最終的に……
「ゲプ……もう食べられません」
食い意地を張った明智光秀は腹をパンパンに膨らませ、食べ過ぎて腹が痛いとかぬかしていた。
「情けないわね光秀!」
「なんで私以上に食べていた謙信ちゃんは腹痛くならないんですか……」
「鍛え方が違うのよ!」
流石大食いの謙信ちゃん。
うどん10杯食べていたが、余裕そうである。
というか謙信ちゃん、うどんだけでは足りずに、塩おにぎりも一緒に数個食べてなかったか?
「池、うどんの作り方はわかるのか?」
「ええ、分かりますし、タレと付属品を更に工夫すればより美味しくできますので、尾張で作りましょうか」
「うむ! 期待しておるぞ!」
こうして俺達は伊予と讃岐を横断して、船で堺の町に移動するのであった。
ストック溜まったので、明日から当分2話更新にします。
6時頃と18時頃の2回更新です。
よろしくお願いします!