金策その1 特産品を作ろう! たわし 歯ブラシ 歯磨き粉
「というわけで俺達5人は金策班でーす」
メンバーは俺、千、毛利隆景、岩成友通、明智秀満の5人。
「どういう金策を行なっていくのですか?」
「まずは千の力を借りようかな」
「私ですか?」
「うん、熱田神宮の一角にシュロの木が幾つか植わっていたよね」
「シュロ……ああ、独特な葉っぱの箒とかに加工されるあの木ですか?」
「うん、あの木の繊維を使って道具を作っていこうと思う」
まず金を稼ぐんだったら洗濯板の様な簡単な発明品を特産品を作ること。
できれば真似しにくい素材だとベスト。
色々諸国を巡って、現代日本にはあるけど、戦国の世では無かったり、あれば便利そうな道具を幾つか考え出していた。
その1つがたわしである。
たわしは明治時代に靴磨きのブラシをもっと色々使えるようにできるのではと考えた人が居て作られた物で、釜の汚れを洗ったり、武具の整備、床や壁の掃除にも使えるし、素材となるシュロの木……ヤシの木に似た木は各地の寺社が掃除用具を作る用に結構植えられていたので、出来るんじゃないかと思い考案したのである。
必要となる針金も針職人が作っているので入手しやすい。
「というのを特産品として売れるんじゃないかと思ってね。洗濯板の販売で熱田神宮は庶民にも優しいって認識されているから、熱田神宮のシュロの木を使えば神仏の加護が付くって売り出せば」
「んー! 確かに売れそうですね! 早速母上を説得してみます!」
「頼んだよ。でだ、千以外は実物を作ってみようか。シュロの木は浜辺近くにも植わっているし」
というわけで針金を購入し、シュロの木の皮の繊維を切り取って、束ねてたわしを作ってみる。
「こうですか?」
「そうそう、そんな感じ」
手先が器用なメンバーが集まったし、材料さえ揃えられれば子供でも作ることができる。
「これ本当に売れるんですか?」
「売り方次第になるね。とりあえず出来上がったのを加藤さんっていうお抱えの商人が居るから見せに行くよ」
「「「はーい」」」
「了解です」
というわけで移動し、加藤さんにたわしを売りに行く。
「こうやって汚れた釜をたわしで擦って洗うと……この通り」
「おお、汚れが目に見えて落ちていますね!」
「床や壁の汚れや農具の土汚れも水を付けたたわしで擦れば結構落ちるのだけど……尾張の特産品として売れないかな?」
「欲しがる人は居そうですね……洗濯板の様に直ぐに真似出来ないのも良い……このたわしという商品はどれぐらい使えるのですか?」
「毎日使い続ければ数ヶ月で変える必要があるし、針金とシュロの繊維で簡単に作れるから1個10文くらいで売るのが適正価格かな?」
「なるほど……どれぐらい作れますか?」
「いや、今から作れる人物を増やすからそうだなぁ……1日250個くらいは用意できるようにはしようかな。流民や孤児でも作れるから人集めて仕込む必要はあるけど」
「ふむふむ……材料はシュロの木の繊維と針金か。よし、お姉さんが用意しよう。他に作れそうな物、売れそうな物ってあるかな?」
「歯ブラシなんてどうでしょう。馬の毛をよく洗ってから束ねて木の柄の部分に埋め込む物でして」
「ほうほう」
俺は加藤さんにたわしだけでなく歯ブラシと歯磨き粉を提案した。
この頃の歯磨きと言えば爪楊枝の様な棒の穂先を繊維状に崩して、それを歯に当てて軽く磨く程度で、甘い物を食べないので虫歯の人は少なかったが、なってしまうと一気に広がってしまうのと、口臭が結構問題で、接吻ことキスを控える文化であった。
ここらへんはヨーロッパの方が進んでいたし、歯磨き粉は江戸時代から、歯ブラシは明治になってから広がった物である。
歯ブラシの毛の部分は高級品は今でも馬の毛を使っていたりするので、量を作るのは難しいが、領内で飼われていたり、荷駄馬として使われている馬の毛を使えば、ある程度の量は確保できるだろうと目論みである。
歯磨き粉は歯を白く見せる効果もあり、高貴な身分の人はお歯黒と言って歯を黒く塗るが、口の歯並びを隠したり、虫歯対策の一環として活用されていたので、歯がそのまま綺麗であればそのままでいたいという人物も一定数存在する。
特に商人や武士は商売や戦でいちいち化粧をしている暇は無いので、手軽に口の中をすっきりさせられる歯磨き粉は絶対売れると太鼓判を押された。
「それの作り方も簡単なのか?」
「ええ、小壺に重曹と塩、油を混ぜれば出来上がりますし……薬草として育てられているハッカを混ぜればより口の中がすっきりしますよ」
「ふむふむ、それも簡単に作れるのか?」
「材料さえ揃えられれば」
「よし、それにも投資するから、じゃんじゃん作って欲しい。人員はどうします?」
「それはこっちで集めるよ。孤児や流民は多いので集めようと思えば集まりますし」
「そうね。じゃぁこれはその子達への投資代金」
加藤さんから文証が発行された。
「100貫までだったら熱田で引き出せるから、それを使って生産環境を整えて頂戴」
「悪いですよ」
「いや、投資するに値する商品を教えてくれた御礼よ。でも出来た商品は優先的に卸してくれない? 津島の連中に負けるわけにはいかないから」
「了解です」
こうして加藤さんから融資していただいた俺達は尾張の各地を巡り、孤児や流民を雇っていく。
勿論男子はほぼ居らず、女児ばっかり……。
でもこの世界の女性は病気で弱りまくった男子に比べて、逆に強くなっているので、前世の男並みにパワーはある。
それでいて女性の繊細さも兼ね備えている……あれ? 最強か?
そんな彼女達に食事、着る物、そして住む場所を与えた俺は懐かれるどころか崇拝されるに至ってしまう。
「池田様良い……」
「最高……」
男性アイドルの追っかけをしている女性ってこんな感じなんだろうなって思いつつも、雇った女子達は加藤さんが仕入れてく素材を使って黙々とたわし、歯ブラシ、歯磨き粉を作り出していく。
それが洗濯板を普及させた熱田神宮のブランド効果もあり、今度は汚れだけでなく、虫歯も防ぐと売り込めば……まぁ飛ぶように売れる。
堺に居る千宗易さんにもサンプルを手紙と一緒に送ったら、堺の商人達にも広がり、またたく間にヒット商品として高値かつ大量に買われていった。
「加藤さん、どれぐらい儲けられそう?」
「そうですね……たわしの製造費用が1個2文で20文で売れて、歯ブラシが1個5文で50文で売れて、歯磨き粉が小壺1個10文が75文で売れて……こんなもんですね」
利益が1日10貫ほど、1ヶ月で300貫くらいにはなるらしい。
「織田家には毎月120貫ほど納入できるかと」
「大丈夫? 加藤さんの取り分ちゃんとある?」
「ええ、大丈夫です。堺の方に売り込むので高値で輸出できていますので、沢山儲けさせてもらっていますよ」
「それなら良かった」
こうして始まった特産品作り。
まずは小物からであるが、従業員に孤児や流民100人ほど確保し、綺麗に作った分だけ高く買い取る内職方式にし、定住させることで食うに困って犯罪を犯す人物が少し減るのであった。
なおこれからこの様な少女達がどんどん特産品が増える度に増えていく事になるのであった。