夏になり、信秀様が出陣し、斎藤道三を攻撃する加納口とも井ノ口とも呼ばれる戦いが発生。
この時織田家は二万数千の兵を抽出する一大攻勢であり、尾張の大半を有している織田信秀様はこれだけの兵を従えるだけの権力を有していた事になる。
対する斎藤道三は五千程度の兵しか集めることができず、誰の目からも勝敗は決まったと思われた。
しかし勝敗は斎藤道三の圧勝。
信秀様は供回りが10人以下で這々の体で尾張に逃げ帰る事になり、重臣や織田親族も何名かが討死。
更に斎藤道三は逃げる織田家を追撃し、木曽川に押し込み、数千の兵士が溺死するという完敗であった。
ただ信秀様は無事に尾張に戻ってくることはできたので、まだいくらでも立て直しは可能。
これでもし信秀様が討死でもしていたら、信長様は更に厳しい状況で家督継承することになったため、ひとまず俺は安心した。
「タッキー、一応予備で行なっていたけど、斎藤家の証文集めておいたよね?」
「はい、集めております」
「うん、じゃあ相場より少し安く美濃で売りさばいてきて」
「は!」
タッキー率いるくノ一達を使って、斎藤家の領地である美濃に経済攻撃を仕掛け、捨て値になっていた斎藤家の証文は今回の戦で値段が元値近くまで戻る。
それを売り払ったことで、俺の元に4万貫近くの金が流れ込んでくることになった。
そんな経済攻撃を喰らった美濃は大混乱に陥り、斎藤道三は勝利の余韻に浸る間もなく、信秀様や越前の朝倉家と和議を結び、美濃方面の動乱は一次的に下火となるのであった。
「まいったまいった完敗だ!」
「母上、ご無事で何よりです」
信長様は俺を連れて、信秀様に無事を帰還できたことに対しての確認をしに向かった。
それと信長様は信秀様に自身が懐妊したことも報告をする。
「やるなぁ信長! 流石私の娘だ。うちが戦で死にかけてる中、やることやってたわけだ」
「まぁそうなりますね」
「相手は池田か?」
「はい、池になります」
「そうかそうか! 池田顔を上げよ」
「は!」
俺は顔を上げると信秀様がニヤニヤしながら、
「娘の中は気持ちよかったか?」
ド直球に下ネタをぶちかましてきた。
「ええ、気持ちよかったです」
「そうかそうか、池田。お前さんの政務についての噂は聞いているよ、上手くやっているようだな。熱田商人達からもお前を褒める手紙が届くぞ」
「はは!」
「信長もこんな良い旦那に愛想尽かされるんじゃねぇぞ」
「わかってるわ母上!」
「うむうむ……さてと、ちとまずい事になったな。まさかうちが大敗するとは……」
信秀様は今回の戦に負けたことで権威が傷付き、抑え込んでいた他の織田家や幕府的には上司に当たる家々が信秀様を引きずり降ろそうとする動きが見て取れたらしい。
更には信秀様が占領していた三河方面の統治も揺らいでしまい、今川方が圧力を強めているのだとか。
「信長、お前の兵士貸してくれ」
「別に良いけど、三河方面への出兵?」
「そうだ。三河への動揺を沈静化せねばならないから、動ける兵を集めて、三河に圧力をかける」
「分かった」
信秀様の動きは早かった。
信長様は今鍛えている兵100人と徴兵した400人の兵500人に信秀様が各家臣に号令して、またたく間に数千の軍勢を整えると、動揺広がる西三河に出陣し、動乱を沈静化。
特に戦らしい戦には発展せずに、終わるのであった。
「ちぇ、ちょっとアタイも暴れたかったのにな」
「謙信ちゃん、また暴れる機会は絶対巡ってくるから」
鍛えた兵士達に実戦の場が与えられたと張り切っていた謙信ちゃんであるが、三河遠征は直ぐに終わり、誰一人欠けることなく戻ってきた。
それが一番嬉しい。
「でもでも、お姉さんにちょっと労いがあっても良いと思わない?」
「労いですか?」
「そう! 信長、ちょっと池君借りるね」
「あー、池。相手してやれ」
「ちょ! 信長様!?」
「やったー!」
というわけで、謙信ちゃんに搾り取られるのであった。
明智光秀が行なっていた街道整備の任務も無事に終了し、約束通り明智光秀にもご褒美としてすっぽり交わり、無事に種付け。
俺が何人も種付けしていることは周りにもバレ始め、タッキーと森、明智秀満、そして加藤さんにも捕食されて4人も孕ませることになってしまった。
岩室さんは我慢してくれているが、そのうち労い種付けしないといけないかもしれない……。
労い種付けって何だよ……自分で言っておいてわけわかんねぇ。
まぁ光秀に頼んでいた街道整備は熱田と津島を結ぶ沿岸沿の街道と熱田から那古野まで延びる街道の合計30キロ。
沢山予算を与えたとはいえ、3ヶ月ちょっとで終わらせるのは流石の光秀と言わざる得ない。
「光秀めっちゃ頑張ってくれたな……どんだけご褒美欲しかったんだよ……」
思わずツッコミを入れてしまう。
さてさて、街道が整備されたことで、人の行き来もしやすくなったので、更に内政を加速させていかないと……。
次に俺が着目したのがネジである。
そもそもネジが伝来したのは鉄砲伝来と同じ。
鉄砲の部品としてネジが日本に入ってきたのである。
ネジの用途は様々あるが、今後水力を動力とした半自動の機械を作る時に必ず必要になるし、鉄砲の量産にはネジの量産も必要不可欠なので、早めにネジを生産できる環境を整えていく。
鉄砲の複製で苦労している職人達のうち、ネジの製造を担当している人を集め、雄ネジと雌ネジの作り方について説明をする。
雄ネジは皆が目にするネジ部品のこと、雌ネジはパーツ内部の螺旋……ネジ穴のことである。
雄ネジは言ってしまえばヤスリで削ることで時間をかけて作ることができるが、雌ネジは内部構造なので削るのは無理である。
史実の日本でも雌ネジの製造には失敗して、鋳造で作るという荒業で何とかしていた。
火縄銃の製造に時間がかかる理由はこの鋳造が大変だったからである。
これを解決するにはねじ切りタップという道具を使うことで解決することができる。
タップ……正確にはハンドタップという道具は正確に雌ネジを作るための切削工具であり、これは鋼を加工する技術があれば十分に作り出すことができる。
言ってしまえば両手で切削機を回して、鉄に溝を掘る道具であり、大中小の3つを作ることで比較的簡単に雌ネジを作り出すことができるのである。
雄ネジは足踏みすることで回転する機械に一定間隔で掘削具を当てることで1分間に1本ペースでネジを作り出すことができる。
ただこれで俺は満足しない。
ネジを複数作ることができたら、歯車と水車と組み合わせ、加工する鉄の棒を装置に設置して、水車の運動で掘削具を自動的に横に動かし、鉄の棒を回転させることで、雄ネジを短時間で作り出す装置を作り上げた。
まさか前世の営業で旋盤作りについて学んでいたのが活かされるとは思わなかったが、上記の旋盤を初期の自動旋盤と呼ぶのである。
この回転する部分にタップのパーツを組み込むと、簡単に雌ネジも作れるってことである。
「おお、簡単にネジが作れる!」
「火縄銃で困っていたネジがこんなに簡単に」
職人達も大喜びであり、これなら鉄砲の量産も夢ではないと話していた。
以後、ネジを使っての機械製作も可能になる一手であった。