(やっべ、経済戦争仕掛けたせいで、斎藤側から和議になったことで信長様と帰蝶との婚約イベントなくなった……まぁ良いか。今更別の人が旦那になるってなったら信長様キレそうだし。俺も安心だし)
史実では、斎藤道三と織田信秀の加納口の戦い以後に織田家側から斎藤道三に和議を執り行い、講和という流れであったが、俺が経済戦争仕掛けたせいで、美濃が想像以上にダメージを受けて、斎藤道三側から和議を申し込む形となっていた。
織田家側も三河方面が騒がしくなったのでこれに応じる形で和議が成立。
結果信長様と帰蝶の婚姻イベントがカットされたということになる。
(婚姻同盟を結べてないから、尾張統一の際に斎藤道三への援軍要請ができなくなる……けど、十二分に戦力を有していれば関係ないか)
俺はそう割り切ることに。
となれば、とにかく富国強兵。
国を富ませて兵力を出せるようにしなくては!
月1回の評定が行われ、信長様が家臣達の働きぶりを褒めていく。
「えー、今更だが、十二分に成果を出した奴は池と交わることを許可する。何人か抜け駆けをした奴がいるが、ソヤツらは功罰帳消しとすることに決めた。ほぼ全員が子宝に恵まれているっぽいからよいであろう」
信長様の言葉に、抜け駆けして俺を捕食した連中はそっぽ向いていた。
「一応池は余の旦那だぞ……それはゆめゆめ忘れるなよ」
「「「はは!」」」
「でだ、現状だとまだ兵数が足りん、謙信、森、兵数を増やすことは可能か?」
代表して謙信ちゃんが答える。
「うーんとね、指揮官が相変わらず不足しているけど、300人まで増やすことは可能かな? 徴兵と訓練は引き続きアタシ達に任せてもらえるで良い?」
「うむ、頼む。でだ、主力の兵を金銭で賄う事になる以上、今までよりも金策に励む必要がある。楽市楽座令を行なったが、まだ足りんからな」
一応硬貨の鋳造は家臣達にも極秘でやっているので、知っているのは、信長様、俺、加藤さんに城の財務を担当している平手さんの他には本当に一部のみ。
初期メンの千や謙信ちゃんにも知らせてない情報である。
ということで、鋳造による収益は表に出せないので、色々金策をする必要があるのである。
「とはいえ金策と言っても……」
毛利隆景が言うようにいきなり金策と言われても困ってしまうので、俺が前に出る。
「兵の徴兵、鍛錬や楽市楽座の管理を任されている人以外は、今度俺の指揮下で動いてほしい。まだまだ国を富ませる方法は幾らでもあるからね」
「恐ろしいのは池田殿でござるな」
タッキーにそう言われたが気にしない。
というわけで、信長様から人員を借りて、俺達は内政に励むのであった。
「まずは……利便性の向上かな?」
「利便性の向上……具体的には?」
千が俺に質問するので答える。
「紙の量産と紙の代わりになる物の製作かな?」
戦国時代は紙が貴重で、あまり量産されておらず、美濃産の紙束数百枚持ち歩くだけで一財産であった。
なので、紙を量産するだけでも結構な金額になるのである。
また紙が貴重ということは、紙の代用品の価値も高く、戦国時代転生物ではお馴染みの黒板とチョークが生きてくるってわけである。
黒板の作り方は、まず使用する大きさに合わせた木の板を用意する。
それに石粉とススを漆で練った塗料を塗り、乾いたら砥石で表面を磨き、最後に柿渋(防腐剤)を塗れば黒板の完成である。
チョークは浜辺で拾える貝殻を綺麗に洗って粉砕し、すり鉢で粉状にした物に小麦粉と水を加えて混ぜ、それを型に流し込んだ後に乾燥させればチョークとなる。
両方とも戦国時代にある物で比較的簡単に作り出せるのがポイントである。
実際に俺が作ってみると、光秀が真っ先に反応し、
「これは便利ですね。布で拭けば文字が消えてまた使えるのも良い」
「ただ長期間文字を残しておくのには向かないから、その日のうちに完結する報告とかに使うと良いし、作業現場とかの指示報告に使うのも良いかな?」
商人の気持ちが実家の関係で分かる千も、
「んー、これは商人に売れるでしょうね。政務でも使えますが、商人は値札とかに使えたら便利って思うでしょう」
現に今は楽市楽座で新しい商人が増えている為、何を売っている店なのか看板を設置したい人も多いだろうから、黒板は売れるだろうと彼女は言う。
「材料さえ揃えられれば私達でも作れるってことは、質にこだわらなければ、職人じゃなくても作れるってことだよね?」
「そう、紙を作るよりも製造難易度が低いのも黒板作りの利点だな」
書き心地まで配慮し始めたら、キリがないのでそこら辺は割り切るが、これならば流民でも作業内容を教えれば、黒板とチョークを作れるのは大きい。
「実際材料を集めてくる人や柿を潰して柿渋を作り出す人、実際に作る人って分担すれば学がなくても作れるから……そうだね、毛利姉妹と千に対応してもらおうかな」
「俺達で良いのか?」
「千が居るから熱田衆への売り込みは出来るし、人材集めも楽市巡れば集まるでしょ。腕っ節が必要なら元春が頑張れば良いし……期待してるよ」
「おう!」
「分かりました」
「んー、了解」
というわけで彼女達3人と一応大人も必要だろうと俺の家臣の岩成さんにも補助で付いてもらって、4人で頑張って黒板の工房作りと売り込みを行うのであった。
紙の代金が馬鹿にならないと嘆いていた平手さんは紙の消費を抑えられると知って、
「助かった……紙代金に悩んでいたのよ〜」
と大喜び。
信長様からも4人は褒められるのであった。
さて、本題の紙についてである。
紙の作り方は、短時間にやるなら水酸化ナトリウムに漬けて数時間煮込めば材料の繊維がバラバラになり、紙を作り出すことが可能になる。
ただ水酸化ナトリウムは危険物質であり、戦国時代に作り出すのも容易ではない。
なので時間をかけて同様の効果を発揮するしかない。
重曹もしくは木灰を混ぜた水溶液に材料を漬け込んで数ヶ月すると、同様に繊維をほどけさせることができる。
で、材料のパルプは一般的に木材から作ることになるが、実は稲藁でも紙を作ることは可能である。
ちなみにこれが象が居る場所であれば象の糞から紙を作り出す……というのも可能である。
実際にタイでは象の糞で紙を作り出したりするのだとか……。
まぁ要は繊維質を取り出せれば紙は作れるのである。
日ノ本でも中華から紙が伝来した時に木材を使っていたから、木材で紙を作ることが一般化しているが、稲藁で作れるとなれば材料費を節約することができる。
ただ、藁紙は茶色の成分が強く残るので、文字を読み書きする時に少々不便な為、追加で添加物を入れる必要がある。
これに使うのがチョークを作る際に出る貝殻の粉、勾玉の原料として使われるろう石(カオリン)を混ぜるとつるんとした肌触りの白っぽい紙に仕上がる。
またトロロアオイという植物の根の粘液を使うと和紙特有の長持ちしやすくなる特徴が出てくる。
これら材料を混ぜ込むことで、藁紙でも質の高い紙を作り出すことは可能である。
これらを明智の2人や佐久間さんに頼んで職人を集めてもらい、作るのを協力してもらった結果、半年後の冬頃より、尾張でも安くて質の高い紙が出回ることになるのであった。
これが堺に居る千宗易さんにも協力してもらって、畿内にも広め、結構な額が入ってくる尾張の特産品となるのであった。