「信長様、忍びめっちゃ雇いましたね」
「うむ、タッキーを見ていたことと、池が旅先でいかに情報収集を重要視していたか間近で見ていたからな。出費はデカいが賄えない範囲ではなかろう?」
「ええ、彼女らは使える人材なので大切にしていきましょう……それにしてもお腹大きくなってきましたね」
「うむ、それに伴って胸も少々大きくなってきたな。毎晩池に揉まれているからかもな」
そんなやり取りを俺と信長様はする。
季節も夏が過ぎて秋へと移り変わり、信長様だけでなく平手さんや謙信ちゃんもお腹が大きくなり始めていた。
「赤ん坊が産まれるのは楽しみだな……でも池、1人で終わらせるつもりは無いからな。そうだな……最低でも余と10人は子供作るぞ」
「頼みますから無理は絶対にしないでくださいよ。できれば妊婦の時に乗馬したり、武芸の鍛錬も危ないので」
「そうは言うが池の世界ではそうかも知れんが、この世では妊娠してようが戦に出るのが女だぞ」
現に謙信を見てみろと信長様は言う。
お腹が大きくなっても100人組手とか言って木刀振り回しているではないか……と。
あれは別格だろう。
軍神様だし……。
「秋になって収穫期になった訳だけど、余の領地がどれぐらい収穫されているか正確に分からないのは辛いな」
「平手さんも泣いてましたからね。前任者が信長様が幼いのを良いことに、ナーナーで済ませていたので……今忍び衆を使って領地の検地を行なっていますので少々お待ちを」
「うむ、流石池だ。余が言う前に行動してくれるとはな!」
「は!」
その数日後にタッキーから信長様の領地だけでなく、尾張全域の収穫量の状態が書かれた報告書が届いた。
「忍者舐めておったわ……余の領地だけだと思ったが、尾張領内全域の石高を調べ抜くとは……」
「忍者凄いですね……」
「なんで他所はこんな忍びを冷遇しているか分からんな」
「ですね……」
実際報告書を参考に、信長様の領地の収穫状況を確認する。
信長様は那古野城周辺の今5つの村と那古野城下町を統治している。
・人口 1万2000人(うち男950人)
・石高(米の収穫量)2万石
・年貢 1万石(5000貫分)
・上納金 1万貫
・特産品利益 5000貫
「うむ、こうして見ると……特産品の売り上げが目に見えて高いな」
「石けんが主力ですけど、他にも鉄製の農具だったり、武器だったりの売却分がありますので、まぁこれくらいでしょう」
これに貨幣鋳造分の8万貫(金、銀利益含む)が収益として計上されるので、信長様が自由に扱える金は10万貫ということになる。
ちなみに人件費などは既に支払ってこれだけ残るので、純粋に使える金が10万貫である。
「他の領地はというと……」
信秀様の収益は15万貫。
織田信光(信秀様の弟)5万貫
織田一族A 2万貫
織田一族B 1万貫
織田一族C 2万貫
織田一族D 5000貫
・
・
・
清須織田家 4万貫
岩倉織田家 6万貫
知多半島国人A 3万貫
知多半島国人B 2万貫
知多半島国人C 4万貫
水野一族 8万貫
「一応貫で兵数が逆算できるのだよな?」
「はい、普通のところは10貫で足軽1人と計算できるので、信秀様は1万5000人を単独で招集することができると見れば良いかと」
「ふむ……で、尾張全体を貫に直すと約100万貫の国力か」
「そうなりますね。ただ所領が細かく分裂しているので、小国が乱立している……と見ることもできますが」
「うむ……母上は姉妹に各城を与えることで血縁による支配で尾張を統治しているが、これ余に当主交代したら叔母達が余に従ってくれるとも限らんからな……」
「全部潰すのには骨が折れますよ」
「うむ、そうなるな……」
「あと信長様の妹様方をどうするつもりなのかにもよりますが」
「うむ……」
信長様には妹が4人妹が居る。
真面目な次女の信行様。
信長様が溺愛している三女の秀孝様。
信長様をより破天荒にした四女の信市様。
おっとりしている五女の秀犬様。
信行様以外はまだ信秀様の下で武将となるべく勉強中であるが、信長様は妹達を大層可愛がっている。
「妹達がどうした?」
「信秀様の政策を踏襲するのであれば、妹様達にも将来城持ちになられるのかと思ったのですが」
「ふむ、一門故に重宝することにはならな。妹達には城を持たせて能力を測る」
「考えがあるのであればよいのですが、直轄領が減ると宗家の力が落ちるのでそこは注意を」
「うむ、気をつける」
しっかし、ここまで詳細な情報が分かると動き方が変わってくる。
「池、他に忍びに調べてもらいたいこととかあるのか?」
「そうですね……各地の米相場が分かるとやりやすいです。得に今年は畿内が不作で米相場が釣り上がっていると聞くので、割高でも東海道の米を買い漁って畿内で売りさばけば、莫大な金になるかと」
「それはどこの勢力もやっているのではないか?」
「いえ、多くの勢力は畿内まで運ぶ海運を持っていませんが、熱田商人達は多数の船を持っていますし、今川や北条辺りから米を引っこ抜ければ……」
「やる価値はあるってわけか……よし、そうと決まればやろう」
「んー、そう言えば美濃はコチラが仕掛けた策により相場が混乱していたハズ……今川より美濃から引っこ抜く方が良いかもしれませんね、とりあえず周辺勢力には米の買い占めを仕掛けますのでよろしくお願いします」
「うむ、やれるだけやれ!」
「は!」
というわけで某ゲームで行う米転がしとは方法は別になりますが、米転がしをやっていこうと思います。
まず信長様から軍資金を5万貫頂きましたので、これを使って美濃、三河、遠江、伊勢といった周辺の米を忍び達を使って買い漁ります。
収穫直後で値下がりしているのもポイント。
で、千宗易さんに手紙を出して、手伝ってもらい、損失は補填するからと米の空売りを開始。
空売りとは手元に無い米を担保に他所に売りつけ、相場が安くなった時点で買い戻すことで利益を発生させる手法である。
堺などの商業が発展していて、信用取引ができる場合にしか使えない手法である。
千宗易さんに手法を手紙で教えて、大量の米が尾張から送られてくる……という情報を商人達が掴めば相場は下がる。
そこに空売りを仕掛けると、相場に米がまだ届いてない状態で売買が発生するためより相場は高騰するということである。
そして現物の米はより高騰した相場で売ることになるので莫大な富が発生する……というわけである。
損を被るのは不作なのに戦争を続けている畿内の大名達であり、彼らは高騰した米を兵糧として高値で買わなければならないので多大な損をする。
そして得られた利益で畿内の商品を尾張に持ってきて販売すれば更に利益となり、それを操作した信長様の手元には莫大な富が、尾張周辺は米の買い占めにより兵糧が足りなくて戦が起こせずに平和、畿内の大名は大損で力を落とすという信長様大勝利希望の未来へレディーゴー状態となる。
結果は1カ月後に判明。
元手5万貫が空売りで倍、高騰した相場販売で更に倍、畿内の商品を買って尾張で売ることで更に倍、そして畿内から大量に流れ込んできた鐚銭を改鋳することで更に4倍の利益となる。
終了時点での利益は160万貫にものぼり、俺も信長様も笑いが止まらない状態になり、金を管理している平手さんはあまりの金額に胃痛で寝込むのだった。