加藤さんが新しく恰幅の良い筋肉質な女性を連れてきた。
彼女の胸も豊満である。
ただ千がムチムチなのに対して、護衛となる彼女はムキムキって感じだ。
「紹介しますね。護衛を買って出てくれた森可成(もり よしなり)さんです」
「俺、森可成っちゅうんだよろしくな嬢ちゃん方」
ここで森可成に出会うのか……。
丹羽長秀といい、森可成といい……前世でも織田家ネームド家臣が続々と揃っていくな。
謙信ちゃんは例外だけど、やっぱり信長様に導かれるのだろうか?
「ん? 信長様」
「見事な筋肉じゃ……素晴らしい」
信長様……どうやら筋肉フェチだったらしい。
ムチムチよりムキムキの方が好きなのかな?
「森と言うたな! 余は織田信長だ! よろしく頼むぞ!」
「おう! しっかし男子も一緒に旅をするのか?」
俺に対して気を使っているらしい。
「池が居るとまずいか?」
「男が居るというだけで人攫いが来るかもしれねぇ……ちょっと待ってな」
森さんに俺は連れて行かれ、数分後。
化粧を施されて、一見女子にしか見えないようにしてくれた。
「素材が良かったからか、だいぶ女子にも見えるな」
「ぷぷ、似合っておるぞ池!」
「かわいい! 池ちゃん食べちゃいたい!」
「おお……池田殿お似合いっすよ!」
「わぁ……」
それぞれ上から森さん、信長様、謙信ちゃん、丹羽、千の言葉である。
「それじゃあ、準備も出来たことだし、出発するか! 平手の婆! 行ってくるぞ!」
「行ってらっしゃいませ信長様!」
こうして俺や信長様一行の世間巡りの旅が始まるのであった。
「ふむふむ、道はだいぶ細くて歩きにくいのだな」
「そうだねー、戦がどうしてもあるから敵の行軍速度を落とすためにも道は細く、そして川には橋を架けないのが鉄則だからね」
信長様が謙信ちゃんと話をしている。
「池は道を広げて人の行き来を活発にした方が良いと前に言っておったな。あれの理由を詳しく聞かせてもらっても良いか?」
「お姉さんも聞きたい」
謙信ちゃんも乗ってきた。
俺の考え方としては敵が進みにくい道ということは、味方も進みにくい道であるということなので、自軍を素早く移動させる為にも道の整備はしておいた方が良いということ、道が広がれば行商人の行き来も活発になり、結果商人が商売して上納金をより多く納めてくれるだろう……ということを伝える。
「害より利の方が多い故に街道を整備を推すのだな、池は」
「はい、最終的に決めるのは信長様になりますが」
「うむうむ、一つの案として受け止めておくぞ」
「あと街道を整備するなら道を広げるだけでなく、街路樹も植えませんとね」
「街路樹か?」
「木陰ができることで、雨の日は雨宿りに、暑い日は木陰で涼む事ができます。行き来する人達も快適になるでしょう」
「確かに……今の時期は日差しが照りつけて暑いからな! うむ、将来必ずやるぞ」
「その為には信長様が政策の良し悪しを判断できる知見を得ませんとね」
「うむ……そうだな……となると勉強か?」
「勉強にも色々種類がありますからね。今している旅も勉強といえば勉強ですから」
「そうか! 楽しい勉強は好きだぞ!」
「はい、勉強は楽しんでやりましょう!」
那古野城から歩くこと数時間。
俺達は長島と呼ばれる地域に来ていた。
「随分と賑わっておるな」
「ここらは一向宗の門前町の支配下なのと、川の下流に位置するので、ここも熱田や津島と同じく伊勢湾の海運の重要拠点なのですよ。どちらかといえば美濃から川を下り様々な物資が流れ込んできますよ」
「ふむ、確かにここは銭の動きも活発そうだな」
信長様も新しい町に目をキラキラして居る。
「針〜針は要らんかねー」
俺は声を張り上げて、針を町人達に売っていくと、針は飛ぶように売れていく。
その針を売った銭で、今度は美濃から流れてきた和紙を大量に購入する。
「池は行商人の真似事をなぜしておるのだ?」
「いや、行き先を少々見ていたら売れそうな物が色々あるなと思いまして……路銀は使えば無くなっていきますが、行商しながらであれば金が増えるんじゃないかと」
「確かに増えておるな……流石池だ!」
「アタシもこうやれば路銀が尽きる事がなかったのかな」
謙信ちゃんは路銀がすぐ食べ物で消えてしまうので、仕方がないと思うが……。
今も串焼きを買って食べているし。
「食べた物は全部胸に行くんだよね〜乳ばっかり大きくなって仕方がないよー」
「少しは食うのを控えた方が良いのではないか?」
「うーん、信長ちゃんの言うことでもそれは嫌だな〜」
実に呑気な謙信ちゃんである。
長島は河口部に大小様々な大きさの中州……川から流れてきた土砂が堆積して出来た島があり、そこを船に乗って渡らなければならない。
「おお、揺れる揺れる!」
「わわ、落ちる落ちるっす!」
「丹羽〜そう簡単に転覆しないから安心しろ〜、ねぇ船頭さん」
「いや~結構転覆しますよ」
「「ええ!?」」
森さんと丹羽が船頭と楽しそうに喋っていたが、今のところ旅は順調そのもの。
野盗とかに襲われないのが一番である。
「船旅も良いですね、信長様」
「うむ、この揺れが心地よい」
「千がゲロって無ければ最高だったんですが……」
千は船がダメっぽく、ムチムチ少女からゲロインにジョブチェンジしていた。
そういうの丹羽の方が似合ってそうなだけに意外である。
「はいはい、背中擦ってあげるから」
「か、感謝します謙信さん」
「だからアタシは謙信ちゃん!」
千と謙信ちゃんも後ろの方でお約束してるし……。
大丈夫かな?
大丈夫でした。
船は沈没や転覆することなく長島周辺の川を渡りきり、対岸に到着。
そのまま今日は宿のお世話になることに。
「さぁさぁ張った張った! 半か丁か!」
「半!」
「私は丁!」
宿の一角を借りて、俺が行商人のお姉さん達を交えて半丁博打の賭場を開き、信長様達も参加していた。
信長様には算術の練習として賭けに対しての金勘定をやってもらったり、サイコロを振るのをやらせてみたり。
「池! これ楽しいな! 賭ける側も面白いが、賽の目(サイコロ)を振るのも技術がいるのだな!」
「こういうのも旅の醍醐味ですよ!」
で、意外な強さを見せていた人物が居た。
「かぁ! 負けた!」
「嬢ちゃん強いな!」
「えっへんっす!」
丹羽長秀である。
彼女は幸運の星の下に生まれてきたのか、今日凄く運が良いのか分からないが、とにかく勝ちまくり、商人達から金を巻き上げていた。
「さて、ここいらで夜も更けて来たので閉幕。楽しい一時をありがとうございました。せっかくですし1杯皆様に奢らせてください」
「お! 話がわかるね!」
「女将さん酒頼むわ!」
もちろんヘイト管理も忘れない。
1杯奢っても巻き上げた金に比べれば微々たる物であり、行商人20人近くから胴元として合計約6貫稼ぐことができた。
丹羽は何故か賭ける方で5貫も勝っていたが……。
そんな事をしながら旅はまた進んでいくのであった。