「へへへ姉ちゃん達、ここを通りたかったら1人20文置いていくんでござるよ!」
伊勢神宮に行く道中、明らかに忍者っぽい集団に鉢合わせた。
「おお! 忍者! 本物だ!」
「池、私ら一応野盗に金銭せびられているわけなんだけど……」
「いやいや、信長様! だって忍者ですよ忍者! いや、女性だからくノ一かも知れませんが」
「いやぁ照れるでござるな……」
取り囲んでいる忍び達も俺がベタ褒めすると、なんか照れくさそうにしている。
「でもここは関所でも何でもないですよね? そこで銭をせびるのは野盗のやることですよ忍びの皆さん」
「それは拙者達も分かっているでござるが、こうでもしないと食っていけないでござるよ……痛い目見たくなかったら覚悟するでござるよ」
「言っても聞かなそうよ」
信長様も刀を抜いて臨戦態勢を取る。
護衛の謙信ちゃんと森さんも戦う気満々である。
「やるでござるか!」
「おう! 俺らに挑むってことは分かってるな! ただじゃおかねぇぞ!」
そのまま戦闘に移行したが、加藤さんが直々に護衛としてよこした森さんと軍神の謙信ちゃんが弱いわけもなく……俺達の3倍は人数いたくノ一の皆さんはリーダー格以外は簡単に吹き飛ばされて、戦闘不能。
リーダー格のくノ一さんも森さん良い感じに戦ってはいたが、謙信ちゃんが加勢しそうになると、
「ま、参った降参でござるよ!」
流石に降参して、結局2人で片付けられてしまった。
正座をしている倒されたくノ一達に俺は何でこんなところで行商人を襲うような真似をしているか聞くと、
「実は……」
彼女達曰く、出身は甲賀の里出身で、傭兵稼業や情報を各種勢力に売ることで生計を立てていたらしいが、里の長が人身売買を生業にするって言うことで、反対したら纏めて追放処分を受けたらしい。
最初はどこかの勢力に雇ってもらえるだろうと踏んでいたが、新しい長が根回しして、どこにも雇ってもらえずに、行商人を襲うまで落ちぶれてしまったのだとか……。
「だったら余の部下になるか?」
「え? 赤髪のちんちくりんは偉い人なのでござるか?」
くノ一のリーダーが疑問を持ったので俺が彼女達に教える。
「尾張で一番金持ちの勢力織田弾正忠家の跡取り娘だぞこの人」
「織田弾正忠家!? 滅茶苦茶金持ちじゃないでござるか! し、失礼したでござる!」
尾張を事実上支配している勢力の名前は尾張を抜けて伊勢の国に入っても知られているようで、彼女達は平伏する。
「のお池、忍びだのくノ一というのはどれぐらい使えるのだ?」
「情報収集の達人で、敵の動きを調べたり、金の流れを調べたり、敵の兵数や、国の情報を引っこ抜いてこれますよ」
「え? こやつらが?」
「ですよね皆さん」
俺はくノ一達にそう語りかける。
「そ、そうでござる! 拙者ら役立つでござるからどうか尾張出禁は勘弁を願いたいでござる!」
「尾張出禁なんかしないわよ……頭はお主か?」
「は、はいでござる」
「名前は」
「滝川一益と言うでござる」
「これからタッキーね。余の部下になってもらうから! 部下の皆は流石にこの人数連れて行くのもあれだし……那古野城に一筆書くからそこで平手の婆の手伝いしてやってくれない?」
「拙者達を雇ってくれるのでござるか?」
「雇うって言ってるじゃん。不服か?」
「いやいやいや、敵だったのに拙者達を雇うと言ってくれて感謝感激でござる!」
「池彼女らに前金を渡してやって」
「は!」
俺は彼女達に5貫銭を渡す。
「今俺達も旅の最中で路銀として渡せるのはこれくらいだけど、しっかり働いてくれたら織田家はその分金額を支払うから……信長様、せっかくなので護衛として強かった滝川さんは連れて行きません」
「そうだな。タッキー一緒に行くぞ」
「は、はいでござる! あ、君主には顔を隠すのは失礼でござるな……」
ゴソゴソと顔を隠していた布を脱ぐと、水色の髪でつり目でキリッとした真面目で学園モノだと学級委員長をしてそうな負けヒロインのオーラ全開の女子高生くらいの女性だった。
くノ一の装束で隠れてはいるが、それを貫通するほど彼女の胸も豊満である。
「行くぞタッキー! まずは伊勢神宮に行くぞ」
「は、はは!」
こうして前世では織田四天王の1人と言われた進むも退くも滝川の滝川一益を仲間に加えるのだった。
今世ではガッチガチに忍びであるが……。
信長様メスガキ、丹羽僕っ娘、森さん俺っ娘、タッキーくノ一、謙信ちゃん腹ペコ軍神、千ムチムチ、俺男……。
うん、だいぶ個性豊かな集団になってきたな……。
ちなみに俺が男って知ってタッキーは驚いていたが……
「確かに男が出歩くくらいだったら女装はするでござるか……」
と、納得していた。
そんな訳で道中針売りをしながら歩くこと5日……伊勢神宮に到着したのであった。
「おお、ここが伊勢神宮」
「熱田神宮と負けないくらい社が立派だな」
「んー、熱田神宮の宮司見習いとしてはここに来た価値はありましたね」
俺、信長様、千がそれぞれ呟く。
戦国の世でも立派な社がそこにあり、人々が生き来して栄えていた。
「なあなあ、池君! 伊勢神宮周辺には名物があるんでしょ?」
「そうでした。伊勢神宮を参拝した後に向かいましょうか」
謙信ちゃんが言う様に伊勢神宮周辺は良好な漁場が近くにあり、新鮮な海産物を食べることができる。
特に有名なのが伊勢海老である。
この時代は具足海老とも呼ばれ、甲羅が甲冑具足に見えた事から由来である。
武士の間でも縁起物として扱われ、高値で取引されていた。
そして食べるのが目的なので、水揚げされる際に触手が折れてしまったり、脚が傷ついてしまった伊勢海老を安く買い取って、宿の台所を借りて、俺が皆の分の料理を作っていった。
「女将さん、この味噌の上辺の汁使っていい?」
「あぁ構わねぇよ」
「ありがとうございます」
というわけで、現代知識がある俺が色々作っていくわけだが、醤油はこの時代無いので、味噌の表面に溜まる汁……たまり味噌をいただき、それを醤油の代わりとして活用し、ご飯と伊勢海老の刺身、蒸し焼きにした伊勢海老にたまり味噌を垂らして焼いた焼海老、伊勢海老の甲良で出汁を取り、周囲の野菜を煮込んだ海老味噌汁。
「嬢ちゃん料理の腕前良いね! どこかの食事処で働いてるのかい?」
「いや、まぁ大名のところで働いてますが」
「やっぱり。大名の料理人ってわけか、通りで手際がよいわけだ!」
女将さんには勘違いされてしまったが、台所を使わせてもらった礼を言い、皆に料理を届ける。
「お待たせしました。具足海老尽くしでございます!」
「「「おお!?」」」
それから皆伊勢海老料理を満喫し、腹いっぱいになるまで食べるのであった。
「こんな贅沢していいので御座ろうか……」
「悪いな護衛の俺までこんな贅沢な料理を用意してもらって」
「なんのなんの、仲間なんですから護衛の皆を労うのは当然ですよ」
俺がニコっと笑うとタッキーと森さんは顔を赤らめてしまった。
ありゃ、ダメだったか?
「男の子にあんな事を言われたら……ダメだダメだ。俺は護衛なんだから!」
「んん、男の子の笑顔は万病に効くでござる。ありがたやありがたや……」
なんかタッキーは拝み始めてしまったが、謙信ちゃんが、
「池君お代わりちょうだい!」
と言う言葉で我に返り、お代わりを用意しに行くのであった。