俺の頭の中に敗北した暗黒の王が住み着いているが、俺はただギターを弾きたいだけだ   作:arctichare

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第101章 普通の猫目術師の簡単な任務、そして彼らは地下廊下で黒弦に出会った

第101章 普通の猫目術師の簡単な任務、そして彼らは地下廊下で黒弦に出会った

 

猫目内部では、すべての術師がニャーサを見たことがあるわけではない。

 

多くの人は、ただ「猫目核心」を知っているだけだ。

 

それが組織の最深部にいる存在だと知っている。

 

詮索してはいけないと知っている。

 

すべての命令が、最終的にはそこから来るのだと知っている。

 

けれど、彼らはニャーサの目を見たことがない。

 

それが春風で頬を撫でるような力で黒弦を圧制するところも見たことがない。

 

そして、それが本当に忌避しているものが、私の身体の中にあるあの扉の奥の未知の混沌だということも知らない。

 

彼らは、ただの猫目術師だった。

 

普通の邪術師より強い。

 

多くの旧家門の傍系より専門的だ。

 

現代化された訓練を受けている。

 

任務簡報を読める。

 

猫目術具を使える。

 

物流、保険、文化安全、契約圧力、世論行動と連携できる。

 

彼らは、自分たちを悪人だとは思っていない。

 

少なくとも、多くの者はそう思っていない。

 

彼らは、自分たちをより効率的な側だと思っている。

 

旧勢力は非効率。

 

地方抵抗残党は頑固。

 

東京防線は面倒。

 

非猫目サプライチェーンは不器用。

 

そして猫目は秩序を提供する。

 

彼らは、その秩序を執行する人間なのだ。

 

だから、その任務を受けたとき、ほとんど誰も緊張しなかった。

 

任務地点:東京城東の地下小型文化空間。

 

目標:非猫目サプライチェーンが誤って受領した猫目標記コンポーネントの一部を回収すること。

 

付帯目標:当該文化空間に特調室の協力痕跡が存在するか確認すること。

 

任務等級:中低。

 

予想抵抗:普通のスタッフ、少数の無門術師外縁、互助会メンバーが存在する可能性あり。

 

注意事項:公開衝突を避けること。普通観客を傷つけてはならない。

 

白川一音関連リスク:低。

 

理由:目標は近期、当該空間の公開活動名簿に出現していない。

 

猫目術師の村瀬は、最後の一行を見ても、深く考えなかった。

 

白川一音。

 

黒弦。

 

東京最高級戦力の一人。

 

猫目内部には、当然彼女の資料がある。

 

けれど資料というものは、見すぎると麻痺する。

 

彼女はニャーサに負けたことがある。

 

二度。

 

高出力はできない。

 

冷化できない。

 

危険境界へ追い込んではならない。

 

彼女は強いが、制限も多い。

 

猫目辺縁執行人員の目には、こういう強者は普通、小任務には現れない。

 

ましてや、正式な舞台照明すら揃っていないような小さな地下文化空間には、現れるはずがない。

 

村瀬は、これはただの「簡単な回収」だと思っていた。

 

戦闘任務ではない。

 

ましてや、黒弦と交戦する任務でもない。

 

任務小組は全部で六人。

 

村瀬が組長だった。

 

他の五人のうち、二人は潜入を得意とし、一人は低騒音結界、一人は術具識別、もう一人は撤離ルートを担当していた。

 

彼らは普通の服を着ていた。

 

活動設備会社のスタッフのように見える。

 

全員が合法身分の偽装を持っている。

 

リュックの中には、折り畳み工具箱、契約書のコピー、安全検査表が入っている。

 

誰かに聞かれたら、こう答えるつもりだった。

 

「音響接続部の安全確認に来ました」

 

とても普通。

 

とても合理的。

 

その文化空間は最近、確かに非猫目サプライチェーンから音響ケーブルを一批受け取っていた。

 

猫目はすでに、そのケーブルの中に本来猫目テストシステムに属する微型標記コンポーネントが三枚あることを確認していた。

 

当初の計画では、コンポーネントが自動起動し、現場活動データを収集するはずだった。

 

だがコンポーネントは回伝しなかった。

 

猫目は、それらが発見され、切断された可能性があると判断した。

 

これにより、辺縁推進組はかなり不満を抱いた。

 

彼らは、事態をより高い等級へ報告したくなかった。

 

報告するということは、失敗を認めることだからだ。

 

そのため、村瀬小組は残留コンポーネントを回収し、誰がそれらを切断したのかを確認するために派遣された。

 

村瀬は、たぶん特調室の外縁人員だろうと思っていた。

 

あるいは無門術師かもしれない。

 

一番面倒でも、青い橋のような反猫目文化空間のオーナーが呼んだ低級結界師くらいだろう。

 

彼は、白川一音に出会うとは思っていなかった。

 

本当に、思っていなかった。

 

彼らが地下通道へ入ったとき、活動はまだ始まっていなかった。

 

階段は狭い。

 

壁には学生バンドのライブポスターが何枚か貼られていた。

 

ポスターの印刷は安そうだった。

 

端が少しめくれている。

 

空気には湿気の匂い、埃の匂い、古い音響設備が熱を持ったあとの金属の匂いが混じっていた。

 

村瀬は一瞥し、心の中で少し見下した。

 

こんな場所に、何をそこまでこだわる必要があるのか。

 

猫目に接続すれば、三か月以内に新しい換気設備へ交換し、保険をアップグレードし、照明を修理し、ケーブルを交換し、安全評価までできる。

 

観客はもっと快適になる。

 

オーナーも楽になる。

 

活動申請も便利になる。

 

それなのに、こういう人たちは頑なに拒む。

 

いわゆる「退出メカニズム」のために。

 

いわゆる「非依存」のために。

 

村瀬から見れば、それは東京人の傲慢だった。

 

彼らは、まだ自分たちに選択肢があると思っている。

 

地方はとっくに理解している。

 

便利こそが現実なのだ。

 

村瀬は低く言った。

 

「手順どおりに」

 

副手がうなずいた。

 

低騒音結界が展開する。

 

彼らは先にバックヤードの監視を切断し、その後、設備室へ入り、残留コンポーネントを持ち去るつもりだった。

 

すべては順調だった。

 

訓練のように順調だった。

 

三段目の階段に差しかかったところで、村瀬は突然足を止めた。

 

一つの音を聞いたからだ。

 

足音ではない。

 

話し声でもない。

 

一本の弦が軽く弾かれる音だった。

 

とても軽い。

 

普通の人にはまったく聞こえないほど軽い。

 

だが術師には聞こえる。

 

その音は、廊下の奥から聞こえた。

 

一度。

 

そして止まった。

 

村瀬は眉をひそめた。

 

「誰だ?」

 

返事はなかった。

 

廊下の奥の灯りが一度、ちらついた。

 

一人の女子がそこに立っていた。

 

黒いコート。

 

普通のキャンバスバッグを背負っている。

 

手にはピックを一枚持っていた。

 

彼女は東京最高戦力には見えなかった。

 

ましてや、噂の黒弦には見えなかった。

 

あまりにも普通だった。

 

まるで大学の教室から出てきたばかりで、ついでに地下空間へ資料を運びに来たような普通さだった。

 

けれど村瀬の背中は、彼女を見た瞬間に冷たくなった。

 

彼女だとわかったからだ。

 

白川一音。

 

小組で術具識別を担当している若い術師は、まだ気づいていなかった。

 

彼は低く尋ねた。

 

「スタッフですか?」

 

村瀬は答えなかった。

 

頭の中で、内部資料が高速で流れていた。

 

白川一音。

 

代号、B-Black String。

 

危険等級、極めて高。

 

単独接触禁止。

 

高出力誘導禁止。

 

普通捕縛術による正面圧制禁止。

 

核心授権がない限り、捕獲を試みてはならない。

 

遭遇した場合、撤離を優先し、情報を保全せよ。

 

それらの条目を、彼は以前にも見たことがあった。

 

だが、そのとき彼はただ、基层が勝手に動かないよう上層が大げさに書いた警告だと思っていた。

 

今、その文字が一条ずつ頭の中に浮かび上がる。

 

冷水のように。

 

村瀬は低く言った。

 

「撤退」

 

副手が固まった。

 

「組長?」

 

「撤退」

 

彼が二度目を言ったときには、もう遅かった。

 

黒弦が地面から現れた。

 

爆発ではない。

 

天を覆うほどでもない。

 

ただ、三本の細い線だった。

 

一本は左壁に沿って。

 

一本は右壁に沿って。

 

一本は彼らの足元を横切って。

 

まるで誰かが、地下廊下に黒い墨で三本の線を引いたようだった。

 

若い術師が本能的に後退しようとした。

 

靴先がわずかに上がった瞬間、足元の黒弦が軽く動いた。

 

彼の身に纏っていた低騒音結界が砕けた。

 

打ち破られたのではない。

 

結界が「成立する」その一点を切られたのだ。

 

結界は、まるで最初から存在しなかったように消えた。

 

小組全員の呼吸音が、一瞬で廊下に露出した。

 

白川一音が口を開いた。

 

「あなたたちは、設備点検員ではありません」

 

声はとても平静だった。

 

怒りはない。

 

脅しもない。

 

それが、かえって怖かった。

 

村瀬は両手を上げた。

 

「我々に、普通人を傷つける意図はありません」

 

彼女は言った。

 

「でも、記録コンポーネントを回収しようとしています」

 

村瀬の心が沈んだ。

 

彼女は知っている。

 

彼らが来たことを知っているだけではない。

 

何を持ち去ろうとしているのかまで知っている。

 

副手が素早く袖口の撤離符を起動した。

 

黒弦が右壁から滑り落ちる。

 

撤離符が断たれる。

 

三人目が干渉霧を放ち、視界遮断を作ろうとした。

 

黒弦が灯管の影から落ち、術式核心を直接切断した。

 

干渉霧は形になる前に、ただの冷たい空気へ変わった。

 

村瀬はようやく理解した。

 

これは普通の強者に遭遇したのではない。

 

相手がすでにすべての線を見切っている空間へ落ちたのだ。

 

「白川さん」

 

村瀬は声を安定させようとした。

 

「話し合えます」

 

彼女は彼を見た。

 

「あなたたちは、ここへ来る前に、オーナーと話し合おうと思いましたか?」

 

村瀬は沈黙した。

 

彼女は続けた。

 

「彼らがなぜ猫目を拒否しているのか、尋ねましたか?」

 

誰も答えなかった。

 

「学生たちが、自分の演出データを記録されたがっているのか、尋ねましたか?」

 

やはり誰も答えなかった。

 

彼女はかすかに目を伏せた。

 

「では、今さら何を話し合うのですか?」

 

村瀬は、対話を続けても意味がないと悟った。

 

彼は軽く足を後ろへ動かした。

 

それは小組の撤退暗号だった。

 

六人が同時に動く。

 

彼女を攻撃するのではない。

 

撤退するために。

 

一人が短距離阻隔符を投げる。

 

一人が地下通道の照明を切断する。

 

一人が予備逃走通路を起動する。

 

二人が術具識別員を保護して後退する。

 

村瀬自身が殿を務める。

 

これは、非常に標準的な猫目小組の動きだった。

 

清潔。

 

迅速。

 

分担も明確。

 

相手が普通の無門術師なら、少なくとも三人は撤退できたはずだ。

 

だが白川一音は、ただ手を少し上げただけだった。

 

黒弦は彼らの身体を追わなかった。

 

追ったのは、彼らのあいだの連携だった。

 

一本目の黒弦が、撤退暗号の伝導を切断する。

 

二本目が、照明遮断と視界遮蔽の術式関係を切断する。

 

三本目が、予備逃走通路と地面標記との接続を切断する。

 

四本目が廊下を横切り、彼らが最も安全だと思っていた後退線を封じた。

 

六人の動きが同時に半拍乱れた。

 

その半拍が、すべてだった。

 

若い術師が壁にぶつかる。

 

副手の逃走符は手の中で紙屑になった。

 

阻隔を担当していた者は、自分の符術に反発され、膝が崩れて跪く。

 

村瀬は猫目式チーム防御を強行展開しようとした。

 

白川一音は彼を一瞥した。

 

黒弦が彼の影から立ち上がり、軽く彼の手首を回り込んだ。

 

締め切るのではない。

 

固定するだけだ。

 

彼の手は宙で止まった。

 

印を結び終えられない。

 

次の瞬間、彼の身にあるすべての補助符が同時に失効した。

 

爆発ではない。

 

焼失でもない。

 

ただ、意味を失っただけだった。

 

村瀬が膝をついたとき、頭の中にあったのは一つの考えだけだった。

 

これは「彼女が強い」ではない。

 

これは「自分たちの体系が、彼女にはあまりにも明白だ」ということだ。

 

彼女は蛮力で押してきたのではない。

 

線を見て、それを切ったのだ。

 

術具識別員は隊内で一番若かった。

 

彼はようやく彼女を認識した。

 

顔色が真っ白になった。

 

「黒弦……」

 

白川一音は彼を見なかった。

 

彼女はしゃがみ、彼の工具箱から予備の猫目コンポーネントを一枚取り出した。

 

黒弦が一周する。

 

コンポーネント内部の記録構造が切断された。

 

外殻はなお完全だった。

 

彼女はコンポーネントを箱に戻した。

 

「こういうものを、ここに残すわけにはいきません」

 

村瀬は歯を食いしばった。

 

「あなたは東京と地方の経済発展を破壊することになります」

 

これは猫目内部研修でよく使われる言い回しだった。

 

彼らは皆、暗記している。

 

猫目は支配ではない。

 

発展だ。

 

猫目は接管ではない。

 

協作だ。

 

猫目は強制ではない。

 

より優れたサービスの提供だ。

 

白川一音は彼を見た。

 

「あなたたちが『発展』と言うとき、相手が拒否できるかどうかを聞いたことはありますか?」

 

村瀬は一瞬、言葉を失った。

 

彼女は続けた。

 

「拒否できないのなら、それは相手のためになることではありません」

 

「檻です」

 

村瀬は反論しようとした。

 

けれど廊下の中で、彼と五名の隊員は全員圧制されている。

 

彼らはさっき、確かに尋ねに来たわけではなかった。

 

回収し、記録し、確認し、推進を続けるために来たのだ。

 

彼らは、答えを聞く準備などしていなかった。

 

猫目はいつも、拒否を「まだ効率を理解していないだけ」と見なしてきた。

 

その瞬間、村瀬はふと気づいた。

 

自分はこれまで、本当の意味で拒否を聞いたことがなかった。

 

彼らはただ、拒否を処理すべき障害として扱っていた。

 

そして今、彼の前に立っているのは、東京で最も危険な拒否の一つだった。

 

特調室の人員がすぐに入ってきた。

 

動きは速い。

 

慣れている。

 

明らかに、近くに前もって伏せていたのだ。

 

村瀬はそこでようやく理解した。

 

これは彼らが文化空間を奇襲したのではない。

 

彼らが、東京によって袋の中へ入れられたのだ。

 

白川一音は偶然ここにいたのではない。

 

ここを守るために来ていた。

 

それなのに、彼らはただの簡単な任務だと思っていた。

 

村瀬が抑制手環をつけられたとき、一人の特調室人員が低く言うのが聞こえた。

 

「六人全員圧制。死傷なし。猫目コンポーネント確認」

 

白川一音は廊下の端に立ち、黒弦を収めた。

 

彼女は少し疲れているように見えた。

 

戦闘後の虚弱ではない。

 

むしろ、面倒なことを一つ処理し終えて、明日はまだ授業があると思い出した人のようだった。

 

村瀬はふいに、ひどく荒唐無稽だと思った。

 

これが猫目内部資料にある東京最高戦力なのか?

 

彼女は戦闘服を着ていない。

 

大げさな武器も持っていない。

 

それどころか、バッグの側ポケットからは講義資料の端が少し見えている。

 

それなのに、さっき二十秒も経たないうちに、彼らの小組全体は行動能力を失った。

 

彼は突然、なぜ上層が基层に彼女への単独接触を禁じているのか理解した。

 

それは、彼女が怪物のように狂暴だからではない。

 

狂暴でなくても、十分危険だからだ。

 

もし本当に彼女が狂暴なら、むしろ判断しやすいかもしれない。

 

だが今のように平静で、抑制されていて、人を殺さず、それでもすべての術式を精密に切断できることこそ、最も恐ろしかった。

 

それは、彼女がもう、失控しなくても彼らに勝てるということを意味していたからだ。

 

同じころ、青い橋地下小劇場では、講座がまだ続いていた。

 

前列の人々は、階段口で何が起きたのか知らない。

 

遠坂綾乃は、「猫目がどのように安全評価を参入障壁へ変えるのか」を話していた。

 

北見遥香は隣で資料をめくっている。

 

榊真理は後ろ扉の近くに立っていて、少し緊張した顔をしていたが、白川一音が戻ってくるのを見ると、軽く息を吐いた。

 

「処理できた?」

 

白川はうなずいた。

 

「うん」

 

「深刻だった?」

 

「六人」

 

榊真理は目を閉じた。

 

「本当に、うちを弱い相手だと思っていたんですね」

 

白川は言った。

 

「これからは再評価するはずです」

 

榊真理は苦笑した。

 

「それは良いこと? 悪いこと?」

 

白川は考えた。

 

「どちらでもあります」

 

彼女は綺麗事を言わなかった。

 

実際、その通りだった。

 

猫目はここが触りやすい場所ではないと知った。

 

今後、普通小組を軽々しく派遣してくることはないだろう。

 

だが、もし再び来るなら、もっと高い等級になるかもしれない。

 

それが抵抗の代価だった。

 

榊真理は言った。

 

「今日の活動は止めません」

 

白川はうなずいた。

 

「続けてください」

 

だから、活動は続いた。

 

地下小劇場では、普通の人々がどうやって退出メカニズムを残すかを聞き続けている。

 

階段口の外では、猫目術師が連行されていく。

 

その二つのことが、同時に起きていた。

 

東京は、そうやって支えている。

 

講義をしながら。

 

襲撃を防ぎながら。

 

活動を開きながら。

 

猫目コンポーネントを切断しながら。

 

村瀬が特調室の臨時拘押施設へ送られたとき、まだ少し呆然としていた。

 

尋問員が尋ねた。

 

「任務目的は」

 

彼は沈黙した。

 

「あなたたちは、どの猫目推進組に所属している?」

 

彼はなお沈黙した。

 

「誰の授権だ?」

 

彼は沈黙を続けた。

 

猫目訓練には、抗尋問の内容がある。

 

彼は簡単には話さない。

 

だが尋問員は焦らなかった。

 

ただ、一枚の記録を彼の前に置いた。

 

そこにはこう書かれていた。

 

あなたたちの小組任務等級は中低である。

 

実際の遭遇目標はB-Black Stringであった。

 

猫目内部が目標リスクを故意に隠蔽したかどうか、説明せよ。

 

村瀬の瞳孔がわずかに縮んだ。

 

この一文は毒だった。

 

直接情報を問うているのではない。

 

彼の心の中に、一つの疑問を植え付けているのだ。

 

猫目は、自分たちを消耗品として扱ったのではないか。

 

猫目は、白川一音がいる可能性を知っていながら、それでも彼らを行かせたのではないか。

 

村瀬は、不可能だと言いたかった。

 

任務簡報には明確にリスク低と書かれていた。

 

けれど、まさにそこが問題だった。

 

もし上層が知っていたなら?

 

もし上層が知らなかったなら、それは猫目の情報判断ミスということになる。

 

もし上層が知っていて派遣したなら、彼らはただの試験用の駒だったということになる。

 

どちらにしても、ひどく不快だった。

 

尋問員は彼に無理をさせなかった。

 

ただ言った。

 

「答えなくてもいい」

 

「だが知っておくべきだ。白川一音はあなたたちを殺さなかった」

 

「重傷も負わせなかった」

 

「もしあなたたちが一部の旧家門強硬派に遭遇していたら、結果はこんなに軽く済まなかった」

 

村瀬は歯を食いしばった。

 

認めたくなかった。

 

けれど、それは事実だった。

 

黒弦は彼らを圧制した。

 

だが殺していない。

 

侮辱していない。

 

拷問もしていない。

 

術具でさえ、機能を切断しただけで、彼らの身体を意図的に壊してはいない。

 

それは猫目内部宣伝の中の「危険で制御不能な黒弦」とは少し違っていた。

 

危険なのは本当だ。

 

制御不能?

 

少なくとも今夜は違った。

 

それが、彼をさらに混乱させた。

 

数日後、猫目内部に行動失敗報告が届いた。

 

代理人は読み終えると、顔色を少し沈ませた。

 

「普通回収小組、白川一音と遭遇」

 

「六人全員捕縛」

 

「コンポーネント回収失敗」

 

「当該文化空間の講座は継続」

 

「東京側はこれを機に、非猫目文化空間の防護宣伝を強化する可能性あり」

 

彼は報告をニャーサへ渡した。

 

ニャーサは一通り目を通して、笑った。

 

「彼らは簡単な任務だと思っていたの?」

 

代理人は頭を下げた。

 

「はい。リスク評価では、彼女の出現確率は低いと判断されていました」

 

「評価ミスだね」

 

「追責しますか?」

 

ニャーサは少し考えた。

 

「必要ない」

 

代理人は少し意外そうだった。

 

ニャーサは軽く言った。

 

「基层に知らせればいい。東京の簡単な任務でも、彼女に出会う可能性があるってね」

 

「そうすれば、以後もっと慎重になる」

 

「慎重になれば、推進速度は下がります」

 

代理人は言った。

 

「無意味な消耗も下がる」

 

ニャーサは報告の一文を見た。

 

目標は高リスク状態に入らないまま、二十秒以内に六人を圧制。

 

その目に、わずかな興味が浮かんだ。

 

「彼女はますます、小さなことが上手くなっているね」

 

代理人には、その言葉がなぜ褒め言葉のように聞こえるのかわからなかった。

 

ニャーサは続けた。

 

「これはいいことだよ」

 

「我々にとっても、ですか?」

 

「扉にとって」

 

代理人は、「扉」とは何かを尋ねる勇気がなかった。

 

ニャーサは報告を置いた。

 

「推進は続ける」

 

「ただし辺縁小組には伝えておけ。東京の小さな文化空間を、地方の柔らかい点と同じように扱うな」

 

「そこには黒弦が隠れているかもしれない」

 

代理人はうなずいた。

 

「はい」

 

青い橋のあの事件のあと、東京の非猫目文化空間の圈子には、半分冗談のような言葉が流れるようになった。

 

私たちをただの地下小劇場だと思うな。階段口には黒弦がいるかもしれない。

 

その言葉が広がってから、一部の猫目辺縁小組は確かにしばらく慎重になった。

 

もちろん、怖がって行動を停止したわけではない。

 

より慎重になっただけだ。

 

彼らは、普通術師を気軽に小劇場へ送り込まなくなった。

 

一つのコンポーネントを回収するだけの簡単な任務だとは、もう思わなくなった。

 

古びていて、面倒で、効率の悪い非猫目空間を、低く見積もらなくなった。

 

これは東京にとって有用だった。

 

私がすべての場所を守れるからではない。

 

不確定性そのものが、防護の一種だからだ。

 

猫目は確定を好む。

 

流程を好む。

 

どこが柔らかく、どこが硬く、どこが食べられるのかを知ることを好む。

 

もしすべての小さな空間に少しずつ不確定性があれば、彼らの推進コストは上がる。

 

それが今、東京が争い取れるものだった。

 

猫目のコストを上げること。

 

地方を食べるように、東京を滑らかに食べさせないこと。

 

私は後に、任務記録へあの行動を書いた。

 

青い橋階段口事件。

 

猫目普通回収小組、簡単な任務だと思っていた。

 

六人圧制。死傷なし。コンポーネント切断。講座継続。

 

最後の四文字を書いたところで、私は手を止めた。

 

講座継続。

 

そこが重点だった。

 

もし「六人圧制」だけを書けば、それは戦績のように見える。

 

けれど本当に重要なのは、階段口で止められたあとも、場内の講座が止まらなかったことだった。

 

人々は、どうすれば猫目に支配されないかを聞き続けた。

 

遠坂綾乃は、遠坂の失敗を話し続けた。

 

北見遥香は、北海道を話し続けた。

 

榊真理は、青い橋を守り続けた。

 

小野寺は、物資を送り続けた。

 

佐野美紀は、申請表を直し続けた。

 

私はただ、階段口の六人を切り落としただけだ。

 

中の声を続けさせるために。

 

それが、私の位置だった。

 

少なくとも今は。

 

ソレンセンが黒海の中で言った。

 

「普通の猫目術師は、今のお前を怖がっているな」

 

「彼らが怖がっているのは黒弦だよ」

 

「ほとんど同じだ」

 

「でも彼らは、私が殺さないことを知っている」

 

「時には、殺さないほうがかえって怖い」

 

私は少し固まった。

 

「どうして?」

 

「生きて帰って考えるからだ」

 

私は沈黙した。

 

その言葉は、ニャーサが言いそうな言葉にとても似ていた。

 

けれど、道理はあった。

 

生きて帰った者は、恐怖を持ち帰る。

 

同時に、疑問も持ち帰る。

 

黒弦は、本当に猫目が言っていたものと同じなのか?

 

東京は、自分たちが思っていたより噛みにくいのではないか?

 

白川一音は、ただニャーサの下で敗れた者ではないのではないか?

 

こうした疑問は、猫目基层の中でゆっくり発酵していく。

 

必ず何かを変えられるとは限らない。

 

でも、ゼロではない。

 

数日後、私はもう一度青い橋へ行った。

 

任務ではない。

 

小型学生バンドの演奏を聴くためだった。

 

階段口はもう修理されていた。

 

あの夜、黒弦に術式を切断された壁の隅は、以前と同じように見えた。

 

そこで何があったのかを知っているのは、榊真理だけだった。

 

彼女は私にチケットを一枚渡した。

 

「今日は門番しなくていいよ」

 

私は受け取った。

 

「本当に?」

 

「少なくとも今夜はね」

 

彼女は少し笑った。

 

「あなたも、たまには観客になったほうがいい」

 

私は最後列に座った。

 

ステージ上では、学生バンドがチューニングを始めていた。

 

ギターは少し音が外れている。

 

ドラマーは緊張しすぎて、何度か叩き間違えた。

 

ボーカルは三回深呼吸してから、ようやく歌い始めた。

 

音は完璧ではない。

 

けれど地下小劇場には、真剣に聴いている人たちがいた。

 

私は椅子の背にもたれ、ふいに、あの日の階段口での戦闘がとても遠いことのように感じた。

 

でも実際には、ほんの数日前のことだった。

 

今の東京は、そういう場所だ。

 

危険と日常の距離が、とても短い。

 

階段の上で誰かが黒弦に圧制され、階段の下では誰かが講座を聞き続けるほど短い。

 

昼間には卒業研究を書き、夜には猫目コンポーネントを切断するほど短い。

 

一人の普通猫目術師が簡単な任務だと思っていたら、次の瞬間には東京最高戦力の前に立っていると気づくほど短い。

 

私は手の中のチケットを見下ろした。

 

チケットはとても安い。

 

紙も薄い。

 

そこに猫目ロゴはなかった。

 

それが私を、とても安心させた。

 

演奏が始まったとき、最初のギターの音は少し刺さるようだった。

 

それでも私は笑った。

 

それは、この場所のものだったからだ。

 

猫目のプラットフォームではない。

 

猫目の記録コンポーネントでもない。

 

猫目の安全サービスでもない。

 

ただの、あまり完璧ではない小さな舞台。

 

今夜、それはまだ鳴っている。

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