俺の頭の中に敗北した暗黒の王が住み着いているが、俺はただギターを弾きたいだけだ 作:arctichare
第103章 第二の護送線、そして猫目は東京の不器用さを学び始めた
雨線護送事件のあと、東京の一般抵抗力量は楽になったわけではなかった。
むしろ、正反対だった。
全員が知っていた。
猫目は、次は同じ間違いを犯さない。
古書店の機関は一度使った。
排水通道のルートも一度露出した。
短距離跳頻信号も、猫目に見られた。
白川一音の後段支援が有効であることも、猫目に確認された。
だから次に互助会メンバーを護送するとき、東京は前回の方法をそのまま使うことはできなかった。
小野寺は会議で言った。
「前回成功したからって、前回と同じようにやれば負けます」
彼の前には、相変わらず紙の地図があった。
横には温かいおにぎりが置かれている。
今回は誰も笑わなかった。
「温かいおにぎり」は、すでに後勤改善事項に正式に書き込まれていたからだ。
遠坂綾乃は隣に座り、資料をめくっていた。
北見遥香もいた。
三浦蒼介は紙資料の整理を担当していた。
菅原涼、真壁仁、それから何人かの無門術師が反対側に座っている。
私は後列に座っていた。
今回の任務でも、私は第一線の護送人員ではない。
後備支援だった。
それは少し不安だった。
けれど私もわかっていた。
東京は、私が最前面に立っていないときでも、人を守れるようにならなければならない。
今回守る互助会メンバーは、中部地方から来た老人だった。
名前は松尾誠一。
かつて、地方独立倉庫協会の顧問だった人だ。
猫目が地方倉庫体系を接管したとき、彼は非常に重要な紙の帳簿を一冊残していた。
帳簿には、猫目が「小額倉庫補助」「安全等級」「保険绑定」「災害予備協議」を通じて、独立倉庫から自主的な受注能力を一歩ずつ奪っていった過程が記録されていた。
その帳簿は古い。
紙は黄ばんでいる。
字も綺麗ではない。
けれど、それは一つのことを証明できる。
猫目は突然、倉庫を接管したわけではない。
先に倉庫へ、自分たちは助けを得たのだと思わせた。
その後、すべての倉庫が、より良い注文を受けるために猫目の評価を通さなければならないようにしたのだ。
松尾老人は東京へ逃げてから、ずっと一つの臨時地点に隠れていた。
だが猫目は、旧倉庫顧問名簿を調べ始めていた。
特調室は、彼の位置が露出した可能性があると判断した。
撤離しなければならない。
小野寺は今回、三本のルートを描かなかった。
五本描いた。
しかも、どのルートも不完全だった。
全体のルートを把握している人は一人もいない。
運転手は、自分が担当する区間だけを知っている。
無門術師は、自分が守る地点だけを知っている。
互助会メンバーは、次の接応地点だけを知っている。
私でさえ、三つの可能支援区を知っているだけだった。
小野寺は言った。
「猫目はパズルが好きです」
「だから、こちらは完成したパズルを渡しません」
遠坂綾乃はうなずいた。
「前回より良いです」
北見遥香が尋ねた。
「でも、途中で誰かが間違えたら?」
小野寺は少し沈黙した。
「もっと面倒になります」
彼は、自信満々のふりをしなかった。
「ただし、全員が全ルートを知っていたら、猫目が一人を捕まえた時点で、線全体が露出します」
菅原涼が言った。
「つまり今回は、最速が重点ではない」
真壁仁が続けた。
「最も隠密というわけでもない」
小野寺はうなずいた。
「断ち切ることです」
その言葉に、胸の中が少し動いた。
断ち切る。
以前、私たちはよく猫目の線を切断すると言っていた。
けれど今回は、東京抵抗力量が自ら自分たちの線を不連続にしている。
不連続なら、効率は低い。
でも、一掴みで捕まれにくい。
それは、東京が猫目から学んだ反向の方法だった。
猫目は滑らかさで地方を支配した。
東京は断裂で人を守る。
護送開始前、松尾老人は安全屋に座り、その帳簿を抱えていた。
彼は普通の退職老人に見えた。
分厚い眼鏡をかけている。
背中が少し曲がっている。
話し方もゆっくりだ。
「私のこの帳簿は、本当にまだ役に立つのでしょうか」
小野寺は言った。
「役に立ちます」
「でも、私はただの年寄りです」
遠坂綾乃は彼を見た。
「猫目が一番怖がるものは、ときどき、あなたのような年寄りが書き残した古い帳簿です」
松尾老人は少し笑った。
「褒め言葉のように聞こえますな」
北見遥香が言った。
「褒め言葉です」
老人はうつむき、帳簿の表紙を撫でた。
「では、行きましょう」
その声は軽かった。
けれど、迷いはなかった。
私は遠くの後備地点で、遅延通報を通じて護送開始を知った。
眼鏡の女性が私の隣に立っていた。
彼女は地図を見て言った。
「今回の小野寺さんたちのルートは、かなり細かく砕かれています」
「砕いているのは、食べられないためです」
「彼の言い方を覚えましたね」
「あの言葉は正しいです」
彼女はうなずいた。
「第一線にいないのは、つらいですか?」
私はすぐには答えなかった。
「つらいです」
「でも、耐えられる」
「うん」
「それは良いことです」
私は地図上のいくつかの空白地点を見た。
「彼らが持たなければ、私が行きます」
「はい」
「でも、遅すぎてはいけません」
「判断します」
彼女が全力を尽くすことはわかっている。
でも、判断はいつだって間違う可能性があることも知っている。
それこそが、護送任務で最も苦しいところだった。
早く介入すれば、猫目のより高い戦力を引き寄せるかもしれない。
遅く介入すれば、人はもう捕まっているかもしれない。
完璧な答えはない。
第一段の護送は、とても普通だった。
松尾老人は、清掃会社の小型貨物車に乗せられた。
車内にはモップ、清掃バケツ、折り畳み梯子、そして本物の清掃用品が積まれている。
帳簿は彼の身にはなかった。
三つに分けられていた。
一部は松尾老人が持つ。
一部は、別の互助会メンバーがまったく違うルートで運ぶ。
三つ目は青い橋の地下室に封存され、まだ動かさない。
そうすれば、たとえ一人が捕まっても、帳簿全体が猫目の手に落ちることはない。
この方法は不器用だった。
後の整理がとても面倒になるからだ。
でも、安全だった。
猫目の最初の監視点は、小さな橋の近くに設けられていた。
術式ではない。
普通の宅配配達員だった。
彼は、自分が猫目を手伝っていると知らないのかもしれない。
あるいは、ただ「車牌を観察する」という単発の仕事を受けただけかもしれない。
一般抵抗力量は彼を驚かせなかった。
彼らは清掃車を予定より早く駐車場へ入れた。
松尾老人は修理作業員の上着に着替え、駐車場の反対側から出た。
宅配配達員が見たのは、清掃車が空車で出ていくところだけだった。
彼は不思議に思うかもしれない。
だが、もう遅かった。
第一段、成功。
猫目は追いつかなかった。
第二段から、圧力が出始めた。
松尾老人は、古い写真館へ入った。
写真館の主人は、互助会メンバーの親戚だ。
店内には、今もフィルムカメラが飾りとして置かれている。
壁には古い写真がたくさん貼られていた。
この店の役割は、写真を撮ることではない。
身分の外見を変えることだった。
変装ではない。
ただ「退職老人」を「写真を届ける普通の店員」に変えるだけだ。
上着を替える。
帽子を替える。
手には写真を入れた紙袋を持つ。
歩き方も菅原涼が指摘していた。
「帳簿を抱えるように紙袋を抱えないでください」
老人は二度練習した。
それでも少し緊張していた。
主人が言った。
「中に孫の写真が入っていると思えばいい」
老人は一瞬固まった。
それから笑った。
今度は、ずっと自然に抱えた。
だが、猫目も学んでいた。
彼らは車だけを見ていなかった。
顔だけを追っているわけでもなかった。
第二段の出口には、猫目術師が「習慣識別」術式を敷いていた。
この術式は外見を見ない。
人の動作の習慣を見る。
たとえば物を抱える方式。
たとえば曲がる前の一瞬の停止。
たとえば緊張したとき、指で紙の端をこするかどうか。
これは逃亡者にとって危険だった。
服を替えるのは簡単でも、習慣を変えるのは難しいからだ。
菅原涼が気づいたとき、松尾老人はすでに扉のそばまで来ていた。
彼女は低く言った。
「止まって」
老人は足を止めた。
「どうしました?」
「扉の外に習慣識別があります」
彼の顔色が白くなる。
「では、どうすれば?」
写真館の主人が突然、本物の写真を一束取り出した。
「これを持て」
松尾老人は固まった。
主人は言った。
「本物の写真のほうが、偽物の紙袋より動作が自然になる」
彼は古い家族写真を何枚か紙袋へ入れた。
そのうち一枚は、主人が若いころ、妻と一緒に写った写真だった。
「ゆっくり歩け」
主人は言った。
「本当に写真を届けに行くようにな」
老人はうなずいた。
菅原涼は一枚の旧符で識別術式を干渉した。
強引に破壊するのではない。
ただ、それに「見えにくく」させる。
松尾老人は紙袋を抱えて外へ出た。
習慣識別術式が、かすかに震えた。
ロックはされなかった。
第二段、成功。
だが菅原涼の額には汗が浮いていた。
彼女はわかっていた。
猫目はもう、こちらの不器用なルートに合わせて新しい装備を作り始めている。
第三段で問題が起きた。
松尾老人は本来、普通のタクシーに乗るはずだった。
運転手は抵抗ネットワークの人間だ。
だがタクシーが遅れた。
運転手が遅刻したのではない。
道中で突然、交通規制が入ったのだ。
理由は、前方の細い道で「ガス点検」が行われているというものだった。
これは猫目が作った可能性が高い。
必ずしも違法ではない。
術式とも限らない。
ただ予定の車を五分遅らせるだけで、護送のリズムは乱れる。
松尾老人は写真館のそばの街角に立っていた。
五分は短い。
だが護送にとっては長すぎる。
遠くにいた小野寺が連絡を受け、すぐに予備方案を起動した。
予備方案は、花を運ぶワゴン車だった。
問題は、花屋の車の運転手が核心メンバーではないことだ。
外縁の協力者にすぎない。
信頼はできるが、全体リスクは知らない。
小野寺は使用を決めた。
タクシーを待ち続けるほうが、もっと危険だからだ。
松尾老人が車に乗ると、車内は花でいっぱいだった。
匂いが強い。
彼は思わず何度か咳き込んだ。
運転手が言った。
「すみません。今日は結婚式場へ届けたばかりで」
老人は首を振った。
「大丈夫です」
車が出て三分も経たないうちに、後方に二台のバイクが現れた。
猫目術師だった。
今回は普通人に偽装していない。
装備がはっきりしている。
短い防護ジャケット。
袖口の圧制器。
腰には折り畳み符匣。
彼らはすぐには攻撃しなかった。
ただ追っている。
標的を確認しているかのようだった。
花屋の車の運転手は緊張し始めた。
小野寺が短距離トランシーバーで言った。
「加速するな」
運転手の声は乾いていた。
「かなり近いです」
「普通に走れ」
「止められたら?」
小野寺は一瞬止まった。
「方案三」
方案三は単純だった。
あらかじめ決めてある狭い市場入口へ突っ込む。
そこは車では深く入り込めない。
だが、バイクも追いにくい。
運転手は歯を食いしばった。
「了解」
一分後、猫目のバイクが距離を詰め始めた。
そのうち一人が手を上げ、車の後ろに追跡符を貼ろうとした。
その瞬間、道端の小さな八百屋のシャッターが突然半分降りた。
攻撃ではない。
ただ視界を一瞬遮っただけだ。
花屋の車はその隙に、市場入口へ曲がり込んだ。
二台のバイクは減速を余儀なくされた。
市場の中では、普通抵抗力量がすでに人を配置していた。
術師ではない。
商人たちだった。
果物屋の主人が、空箱を一箱、道の真ん中へ蹴り出す。
魚屋のおじさんが水道ホースを開き、地面を滑りやすくする。
小さな食堂の女将が、出前箱を横の扉に積む。
そうした行動は混乱のように見える。
だが、すべて計画されたものだった。
猫目のバイクは専門的だった。
一台目は箱を避ける。
二台目は減速し、水面を回避する。
だが、速度は乱された。
真壁仁が市場の裏口から現れ、旧符を一台目のバイクの前輪にある術式駆動点へ貼った。
バイクは爆発しない。
ただ補助安定を失った。
猫目術師は飛び降りざるを得なかった。
二人目の術師は、すぐにバイクを捨てて人を追った。
市場の人々は、あらかじめ一方へ疎開していた。
一人の普通抵抗人員が煙餅を点火する。
術式煙ではない。
普通の煙だ。
猫目の面罩は毒霧を濾過できる。
けれど、普通の煙と市場の雑物の山を透視できるわけではない。
これが東京の不器用さだった。
高度ではない。
でも、面倒だ。
松尾老人は、花屋の車の運転手に連れられて市場の裏口へ入った。
第三段は、辛うじて成功した。
だが猫目術師は、標的のおおよその方向を確認していた。
護送線は危険段階へ入り始めていた。
今回、猫目が派遣してきたのは普通の辺縁小組ではない。
指揮があった。
指揮者の名は桐島。
ニャーサのそばにいる人間ではない。
だが猫目東京辺縁行動組の中では、経験豊富な人物だった。
雨線護送事件と青い橋階段口の失敗のあと、桐島は東京の護送模式を再総括するよう命じられていた。
彼の結論は明確だった。
東京抵抗力量の弱点は、装備不足、速度の遅さ、人員の混在、そしてルートが複雑になった後に混乱しやすいこと。
だが、強みもはっきりしている。
第一に、ルートが断裂しているため、一人を捕まえても全体の線を掴めるとは限らない。
第二に、普通人の参加が多いため、猫目は高強度術式を気軽には使えない。使えば東京世論と特調室の介入を招く。
第三に、白川一音が後段で介入する可能性があるため、任務中の全戦力を最後の一撃に集中させてはならない。
第四に、東京は低技術手段をよく使うため、猫目の高効率追跡設備の多くは、紙、人手、雑然とした環境に対してかえって効果が落ちる。
第五に、互助会メンバーの感情物品は、白川一音または特調室によってすでに処理されている可能性があり、情緒追跡を簡単には使えない。
そのため、桐島は新しい捕獲思路を立てた。
一度で人を捕まえることを追求しない。
まずルートを変形させる。
次に普通抵抗力量を消耗させる。
そのうえで、本当の資料携帯者をロックする。
最後に、白川一音が介入する前に切り離す。
彼は計画をあまり詳細には書かなかった。
猫目はもう、東京が流程を傍受する可能性を学んでいたからだ。
だから命令も、いくつかの部分に切り分けられていた。
猫目も断裂を学んでいる。
それこそが、最も面倒だった。
敵は学ぶ。
第四段で、松尾老人は旧映画館へ送られた。
そこはすでに閉業している。
だが地下の映写室はまだ使える。
帳簿の第一部はここで資料整理員に渡され、その後、別ルートで運ばれる予定だった。
だが桐島はそれを判断していた。
完全なルートを通じてではない。
東京抵抗力量の習慣を通じてだ。
彼らは古い文化空間を好んで使う。
古書店。
旧劇場。
旧映画館。
古い倉庫。
そういう場所には裏口があり、紙の記録があり、協力してくれる主人がいるからだ。
だから猫目は車を追わなかった。
彼らは、旧映画館の周囲にある三つの可能出口を先に封じていた。
松尾老人が地下映写室へ入ったとき、小野寺はようやく異常に気づいた。
「出口が静かすぎる」
遠坂綾乃は紙媒体の中継で知らせを受けると、すぐに判断した。
「彼らは追っているのではありません。待っているのです」
菅原涼が尋ねた。
「白川さんを介入させますか?」
小野寺は歯を食いしばった。
「あと三十秒待つ」
その言葉は難しかった。
なぜなら三十秒で、人の生死が決まるかもしれないからだ。
けれど、私が早すぎる段階で現れれば、猫目も私に対する後手を起動する。
彼らはもう、東京と初めて交戦する相手ではない。
小野寺は判断しなければならなかった。
一般抵抗力量がまだ支えられるのはいつまでか。
そして、いつ私を呼ばなければならないかを。
旧映画館の中で、桐島がついに姿を見せた。
彼は防護服を着ていなかった。
普通の灰色のコートを着ていた。
背後には四名の猫目術師。
装備は統一されているが、すぐには起動していない。
桐島は松尾老人を見て、穏やかな口調で言った。
「松尾さん、猫目はあなたを傷つけません」
老人は紙袋を抱え、手が震えていた。
桐島は続けた。
「あなたはもう年です。東京の人たちがあなたを証拠として使うのは、あなたに対して公平ではありません」
小野寺は老人の前に立った。
「その言葉をお前たちが言うのは、本当に気持ち悪いな」
桐島は彼を見た。
「小野寺さん、あなたのサプライチェーン名簿も我々は見ました」
小野寺の顔色がわずかに変わった。
「あなたたちは努力している」
桐島は言った。
「ですが、効率が低すぎる。運転手が足りない。倉庫が足りない。保険が足りない。おにぎりの予算まで会議で議論している」
彼はわずかに笑った。
「本当に、それで東京を支えられると思っていますか?」
その言葉は耳に痛かった。
なぜなら事実を突いていたからだ。
東京抵抗力量は確かに遅い。
確かに金がない。
確かに、おにぎり代まで計算しなければならない。
桐島は続けた。
「松尾さんと帳簿を引き渡してください。そうすれば、彼が猫目管理区へ戻ったあと、医療と生活保障を受けられることを保証します」
老人の呼吸が乱れた。
これは単純な脅迫ではない。
誘惑でもあった。
猫目はいつもそうだ。
刃だけを持ってくるわけではない。
薬も持ってくる。
小野寺は拳を握りしめた。
「彼は荷物じゃない」
桐島は言った。
「では、なぜあなたたちは彼にこんな危険を冒させているのですか?」
その言葉で、空気が沈んだ。
その瞬間、猫目の四名の術師が同時に圧制陣を展開した。
彼らが捕らえたのは老人ではない。
小野寺でもない。
地下映写室にある「ためらい」だった。
圧制陣は、人の動揺を増幅させる。
護送人員の判断を一、二秒だけ遅らせる。
一、二秒あれば、猫目には十分だった。
菅原涼は即座に符を出して抵抗した。
真壁仁が側扉から飛び込む。
普通抵抗人員は手回しの警鈴を起動した。
電子警報ではない。
古い機械の鈴だ。
耳に刺さるような鈴音が、圧制陣のリズムを断ち切った。
だが猫目は今回は準備していた。
一名の術師が装備で音震を吸収する。
もう一人が松尾老人へ飛びかかった。
その瞬間、小野寺が緊急信号を押した。
黒弦が必要。
私は第二後備地点で信号を受け取った。
今回は、眼鏡の女性は私が口を開く前に言った。
「行ってください」
私はすぐに出発した。
旧映画館は私から遠くない。
だが猫目は道中に二層の阻隔を置いていた。
第一層は誤導結界。
階段が左にあると思わせる。
切断する。
第二層は黒弦感知に対する逆向きノイズ。
かなり高級なものだった。
私を止めるわけではない。
ただ、多数の偽の線を作る。
焦って切れば、無関係な構造を切ってしまう可能性がある。
私は一瞬止まった。
目を閉じる。
聞く。
偽の線は多すぎる。
けれど本当の危険線には、人の呼吸がある。
恐怖がある。
猫目圧制陣と機械鈴が互いに干渉するリズムがある。
私はその線を見つけた。
切り開く。
地下映写室へ飛び込んだとき、猫目術師の手は松尾老人まで半メートルのところにあった。
黒弦が映写室の座席の間を滑っていく。
まず圧制陣を切る。
次に捕獲術式を切る。
さらに四名の術師の同期回路を切る。
桐島は即座に後退した。
彼は普通の猫目術師のように固まらなかった。
私が来ることを、最初から予想していたのだ。
彼は手を上げ、予備装置を起動した。
私への攻撃ではない。
大量の微型記録紙片を放つものだった。
一枚一枚に、軽い術式が乗っている。
それらは雪のように広がった。
目的は人を傷つけることではない。
私が出手したときの黒弦の経路を記録することだ。
桐島は、私の戦闘方式を持ち帰って分析しようとしていた。
もちろん、成功させるわけにはいかない。
黒弦が方向を変える。
人を切るのではない。
記録紙片と猫目回伝核心との接続を切る。
紙片はまだ宙を舞っていた。
だが、すでにただの紙屑になっていた。
桐島が初めて眉をひそめた。
「それも切るのか」
私は言った。
「あなたたちは学ぶのが速すぎます」
彼は言った。
「お互いに」
その語気には嘲笑はなかった。
本当にそう思っているようだった。
彼は東京が学んでいることを知っている。
私も、猫目が学んでいることを知っている。
戦いはもう、どちらが強いかだけの問題ではない。
双方が次を修正し続けているのだ。
四名の猫目術師は圧制された。
だが桐島は、戦闘を続けなかった。
彼は映写室の出口へ下がった。
「今日はここまでです」
真壁仁が追おうとした。
私は止めた。
「追わないでください」
桐島は少し笑った。
「正解です」
そう言って、彼は事前に用意していた合法撤離通道を通って離れた。
術式逃走ではない。
普通の出口だ。
外には、きちんと登録された本物の修理車があった。
猫目も今、より普通で、より切断しにくい方法を使い始めている。
彼は去った。
人は捕まらなかった。
帳簿も奪えなかった。
だが彼は観察を持ち帰った。
それが、とても不快だった。
任務は最終的に成功した。
松尾老人は安全に撤離した。
帳簿の第一部は届けられた。
第二部も別ルートで到着した。
第三部はなお青い橋に残っている。
猫目の捕獲は失敗した。
東京の一般抵抗力量の損失は軽微。
けれど、誰も気楽には感じていなかった。
桐島は力ずくで奪いに来たのではない。
学びに来たのだ。
戦後復盤で、小野寺の顔色はかなり悪かった。
「彼らはもう、こちらの断裂ルートに対応し始めています」
菅原涼が言った。
「習慣識別、ためらいの圧制、分段命令。全部、新しいものです」
真壁仁が補足した。
「それに黒弦の経路を記録する紙片も」
眼鏡の女性が私を見た。
「あなたはどう見ますか?」
私は言った。
「次から彼らは、私の介入を怖がるだけではなくなります」
「私の介入を利用してきます」
会議室が静かになった。
この言葉は重要だった。
過去、猫目辺縁小組は私の出現を怖がっていた。
今、桐島のような人間は、私の出現さえ計画の一部に組み込む。
私に出手させる。
経路を記録する。
私が何を切り、何を切らないのかを見る。
私の制限を分析する。
それが、猫目が総括した新しい経験だった。
彼らはもう、単純に黒弦を避けるだけではない。
黒弦を研究しようとしている。
猫目内部の復盤も、すぐに完成した。
桐島は報告にいくつかの結論を書いた。
第一、東京護送ネットワークは、連続ルートから断裂ルートへ移行しており、従来の追車および単点監視の効果は低下している。
第二、普通抵抗人員は戦力こそ弱いが、地元環境に詳しく、低技術手段を使って阻滞を作れる。
第三、旧文化空間、書店、映画館、倉庫はなお東京抵抗ネットワークの重要節点であり、より詳細な場所画像を作成する必要がある。
第四、互助会メンバーの情緒物品は慎重に扱う必要がある。白川一音は情緒追跡インターフェースを切断する能力をすでに持っている可能性がある。
第五、白川一音の後備支援の応答速度は高いが、軽々しく出力を拡大せず、核心目標から離脱する指揮者を能動的に追撃することもない。
第六、白川一音は人員と資料の保護を優先し、次に術式記録を処理する。撤退人員を追殺することは極めて少ない。
第七、次回の捕獲は「目標を捕まえる」ことだけを唯一の目的にすべきではない。「護送ネットワーク構造を逼出する」「黒弦の反応模式を記録する」「非猫目サプライチェーン資源を消耗させる」ことも段階的目標とすべきである。
第八、東京抵抗力量の後勤は脆弱であり、運転手、倉庫、保険、温食補給など低層節点へ継続的に圧力をかけられる。
第九、直接的な高強度衝突は特調室と黒弦の介入を誘発するため、軟性切割、合法手続き、世論リスク、サプライチェーン疲労戦を増やすべきである。
第十、白川一音はなお高リスク変数であり、普通小組による単独接触は推奨しない。接触が不可避である場合、撤離と情報回収を事前に設定すべきであり、単純圧制を目的にしてはならない。
桐島は報告を代理人へ提出した。
代理人は読み終えると、長いあいだ沈黙した。
「次は互助会核心メンバーを捕まえられると思うか?」
桐島は言った。
「確率は上げられます」
「保証ではない?」
「東京は、もう最初の東京ではありません」
桐島の答えは慎重だった。
「彼らは弱い。ですが、弱いまま面倒になる方法を覚え始めています」
代理人はその一文を見て、ふいに非常に正確だと感じた。
弱いまま面倒。
それが今の東京一般抵抗力量の状態だった。
彼らは正面から猫目を打ち負かすことはできない。
けれど、猫目の一つ一つの行動を高く、遅く、不確定にすることはできる。
それは猫目にとっても、一種の面倒だった。
ニャーサは桐島の報告を読み終えると、長いあいだ笑った。
嘲笑ではない。
本当に面白がっているようだった。
「弱いまま面倒」
それは繰り返した。
「良い書き方だね」
代理人が尋ねた。
「小野寺、真壁仁、菅原涼などの節点への重点打撃へ調整しますか?」
ニャーサは首を振った。
「急がない」
「彼らはまた新しい小さな節点を生やす」
「では、どう処理しますか?」
「疲労だよ」
ニャーサは言った。
「いつも一人か二人の重要人物を捕まえることばかり考えなくていい」
「今の東京は、多くの小人物で支えられている」
「なら、その小人物全員を疲れさせればいい」
代理人はうつむいて記録した。
ニャーサは続けた。
「運転手は保険を心配する」
「倉庫は火災検査を心配する」
「書店は賃貸契約を心配する」
「文化空間は観客の安全を心配する」
「互助会メンバーは家族を心配する」
「白川一音は全員を心配する」
それは軽く笑った。
「次の段階では、人を捕まえることだけを考えるな」
「彼らが人を守るコストを、どんどん高くしろ」
「保護が負担になったとき、保護者同士は互いに責め始める」
代理人の胸の中が冷えた。
これこそがニャーサの恐ろしさだった。
それは、何度か捕獲に失敗したからといって、ただ術師を増派することだけを考えるわけではない。
失敗の中から、システムの圧力点を見る。
そして抵抗者たち自身を、疲労で摩耗させる。
「では、白川一音は?」
代理人が尋ねた。
ニャーサは、報告の中にある私に関する部分を見た。
「観察を続ける」
「彼女は今、出手がとても安定している」
「これは東京に有利だ」
「だがそれは、彼女がますます現実の責任を背負っているということでもある」
「責任が多いほど、線も多い」
「線が多いほど、猫が爪で弾ける場所も多い」
戦後、私は松尾老人を見舞いに行った。
彼はすでに資料整理点の近くにある臨時部屋へ安全に入っていた。
帳簿は数部にコピーされている。
原本は非猫目倉庫に封存された。
老人は、とてもゆっくりした字で補足説明を書いていた。
私が到着したとき、彼はお茶を飲んでいた。
「白川さん」
彼は立ち上がって頭を下げようとした。
私は慌てて言った。
「大丈夫です」
彼は少し笑った。
「また、あなたに助けられたと聞きました」
「私一人ではありません」
「わかっています」
彼は言った。
「小野寺さんたちも、本当に必死でした」
彼はうつむき、茶碗を見た。
「私は、抵抗というものはとても強い人に頼るのだと思っていました」
「今になってようやくわかりました。花屋の車の運転手、写真館の主人、市場の店主、それから少し多めにお茶を淹れてくれる人にも頼るのですね」
私は座った。
「怖くありませんか?」
彼は考えた。
「怖いです」
「それでも、どうして書き続けるのですか?」
彼は帳簿を撫でた。
「覚えているからです」
「何を?」
「猫目が来る前、私たちの倉庫は古かったですが、鍵は自分たちの手にありました」
彼の声は軽かった。
「今、多くの場所は、自分たちの鍵がどこにあるのかすらわからなくなっています」
その言葉に、私は長いあいだ沈黙した。
鍵。
猫目が地方を支配するということは、人々に少しずつ自分の鍵を忘れさせることなのだ。
今の東京がしているのは、いくつかの鍵を取り戻すこと。
古書店の鍵。
青い橋の鍵。
非猫目倉庫の鍵。
互助会安全屋の鍵。
そして私の手にある、猫に奪われてはならないあの扉の鍵。
帰り道、小野寺もちょうどそこにいた。
彼は新しいルート改善表を持っていた。
以前よりもさらに疲れて見えた。
私は尋ねた。
「休みましたか?」
彼は言った。
「四時間寝ました」
「少なすぎます」
「わかっています」
「温かいおにぎりは食べましたか?」
彼は私を一目見た。
「食べました」
「嘘をつかないでください」
彼はため息をついた。
「半分食べました」
私は言った。
「次は北見さんに言います」
彼は即座に言った。
「一個食べました」
私は笑った。
彼も少しだけ笑った。
笑い終えると、彼は低く言った。
「次はもっと難しくなります」
「うん」
「猫目は、もうこちらへの対処方法を知りました」
「私たちも、彼らが総括することを知っています」
彼は言った。
「だから、こちらも総括しなければいけません」
「疲れ切ってしまいますよ」
小野寺は夜の街を見た。
「猫目は、俺たちを疲れ切らせたいんです」
「では、どうするんですか?」
彼は少し考えた。
「交代制です」
私は固まった。
彼は真面目に言った。
「それと予算」
「それと新人研修」
「それと温かいご飯」
「それと、毎回同じ数人に頼らないこと」
私はうなずいた。
「口号を叫ぶより、ずっと役に立ちますね」
「ええ」
彼はルート表を丸めた。
「猫目に抵抗するには、まず自分を使い捨てにしないことです」
この言葉を、私は後で備忘録にも書いた。
その夜、私は任務記録を書いた。
松尾誠一護送任務。
東京一般抵抗力量、断裂ルートを成功裏に実行。
猫目の組織装備小隊による多点圧迫。
旧写真館、花屋の車、市場、旧映画館が護送に参加。
猫目の総括能力が明確に向上。
猫目は撤離し、観察を持ち帰った。
人員安全。帳簿安全。
その後、私はさらに書いた。
私たちの新しい教訓:勇気だけに頼らないこと。交代制、予算、温かいご飯、新人研修が必要。
書き終えて、その一行を見つめた。
東京は、どうすれば保護する者を消耗し尽くさせずに済むかを総括している。
私たちも、猫目も学んでいる。
ただ、方向がまったく違う。
ソレンセンが黒海の中で言った。
「猫は学ぶのが速い」
「私たちも学ばなきゃ」
「お前たちは遅い」
「遅くても、学ばないと」
それは嘲笑しなかった。
ただ言った。
「なら、止まるな」
私はノートを閉じた。
窓の外では、東京の灯りがまだ点いている。
猫目は次、もっと賢くなる。
東京も次、もっと辛抱強くならなければならない。
最終勝利など、どこにもない。
あるのは一度一度の護送。
一度一度の移動。
一度一度、人を猫目の手から、次にまだ扉を閉められる場所へ送り届けることだけだ。
今夜、松尾老人と帳簿は到着した。
それで十分だった。