俺の頭の中に敗北した暗黒の王が住み着いているが、俺はただギターを弾きたいだけだ 作:arctichare
第109章 猫目は保護者を噛み始め、そして東京は「他人を守る人」を守ることを学んだ
雪道事例のあと、東京抵抗力量は、猫目の次の一手は引き続き互助会メンバーの心を攻撃することだと思っていた。
その判断は間違っていなかった。
だが、完全ではなかった。
猫目は確かに、互助会メンバーへの攻撃を続けた。
親族の消息。
古い写真。
地方の音。
債務再編。
医療面会。
帰郷の招待。
それらは、まだすべて続いていた。
しかし猫目は、もう一つ別のことも始めた。
それは、守られる人だけを見ているのをやめた。
守る人を見始めたのだ。
小野寺。
北見遥香。
遠坂綾乃。
菅原涼。
真壁仁。
榊真理。
佐野美紀。
古書店の主人。
花屋の車の運転手。
安全屋の大家。
非猫目サプライチェーンの小さな倉庫の主人。
互助会メンバーに熱いお茶を出し、裏口を開け、上着を替えさせ、表を直し、請求書を調べ、ルートを守り、人が泣くのに付き添う人たちが、一人また一人、猫目に見つかり始めた。
猫目はついに確認したのだ。
互助会メンバーだけを捕まえても、足りない。
互助会を守る人間にも、恐怖を感じさせなければならない。
猫目の投入規模は、明らかに増えた。
一度により多くの術師を派遣する、という単純な話ではない。
人、金、物資、組織能力を投入し始めたのだ。
東京辺縁行動組は拡張された。
新たに二つの「保護者分析班」が追加された。
一つは、人の行動規律を担当する。
もう一つは、人の圧力源を担当する。
小野寺のルート習慣。
北見遥香の心理支援時間。
遠坂綾乃の会議頻度。
佐野美紀が処理した購買表。
榊真理の青い橋のシフト。
古書店の主人の賃貸契約期限。
花屋の車の運転手のローン。
倉庫の主人の消防証照。
それらはすべて、一項目ずつ猫目の資料表へ書き込まれた。
猫目はさらに資金投入も増やした。
大規模な買収ではない。
小額で、精准で、合法で、拒みにくい圧力だった。
ある非猫目物流会社へ、突然高額の協力提案が届く。
ある倉庫の主人は、互助会関連プロジェクトとの協力を続ければ、将来の保険等級に影響する可能性があると告げられる。
ある運転手の子どもが通う学校には、保護者が「危険な民間活動」に参加しているという匿名の苦情が届く。
ある小劇場は、消防通道の幅が足りないと通報される。
ある古書店には、大家から賃料値上げの通知が来る。
あるボランティアの会社は突然、「高リスク外部組織活動への参加禁止」に関する補充協議への署名を求めてくる。
こうしたことは、一つ一つを見れば戦争ではない。
それどころか、違法ですらないものも多い。
だが、それらが重なると、猫目の新たな進攻になる。
猫目は保護者の手を噛み始めたのだ。
一口で噛み千切るのではない。
少しずつ噛む。
痛ませる。
ためらわせる。
そして、自分にこう問いかけさせる。
私は、まだ手伝い続けるべきなのか?
最初に明確に攻撃されたのは、榊真理だった。
青い橋の小劇場は、互助会と非猫目文化空間の重要な節点であり続けている。
猫目はこれまで何度も接入を試みた。
失敗したあと、それはすぐに店を壊したわけではない。
術師を直接送り込んで襲撃したわけでもない。
金と規則で彼女を圧迫し始めた。
まず大家から電話が来て、地下空間の賃貸契約が満了後に更新されない可能性があると言われた。
理由はごく普通だった。
「建物の老朽化に伴い、用途を再評価する必要がある」
次に、消防顧問からメールが届き、青い橋のバックヤード通路の幅を再確認する必要があると言われた。
さらに、近隣住民委員会に匿名の苦情が届いた。
青い橋の夜間活動が治安へ影響している、というものだった。
最後に、猫目関連でありながら表面上はそう見えない文化基金会が、榊真理へ連絡してきた。
低利の改修資金を提供する用意がある、という話だった。
条件はとても穏やかだった。
直接の接管は求めない。
ただし、今後三年間、青い橋はその基金会による安全評価と活動データ整理サービスを受け入れる必要がある。
これが猫目だった。
まず相手を面倒へ追い込む。
そのあと、面倒を解決するための金を差し出す。
榊真理はそのメールを印刷し、青い橋のバックヤードのホワイトボードへ貼った。
彼女は言った。
「もう刃物すら持ってこないんですね」
小野寺は読み終えて、低く悪態をついた。
遠坂綾乃は冷静だった。
「これは青い橋へ出されたお金ではありません」
「東京の他の文化空間へ見せるためのお金です」
「青い橋が受け入れれば、他の場所も、そこまで踏ん張る必要はないと思うようになります」
榊真理は言った。
「なら、拒否します」
佐野美紀は眉をひそめた。
「拒否はできます。でも消防、賃貸契約、住民苦情は処理しなければいけません」
榊真理は苦笑した。
「つまり、拒否したあとも働かないといけないんですね」
「そうです」
佐野は一束の表を差し出した。
「まず、青い橋の現行消防書類、賃貸契約、活動シフト、騒音記録、安全検査記録を整理してください」
榊真理はその分厚い表を見て、三秒沈黙した。
「猫目、本当に最低」
佐野はうなずいた。
「でも、表は埋めてください」
東京側もまた、保護者を守るための投入を増やし始めた。
保護者を守る。
言い方は少し回りくどい。
だが、非常に重要だった。
以前、東京は物資を互助会メンバーへ優先的に投入していた。
安全屋。
護送線。
医療。
家書通道。
資料整理点。
今は、その人たちを守っている人間へも資源を投入しなければならない。
青い橋には法律支援が必要だ。
古書店には賃貸契約リスク基金が必要だ。
運転手には仕事損失補助が必要だ。
倉庫の主人には消防検査顧問が必要だ。
ボランティアには勤務先への説明書が必要だ。
心理支援者には休息制度が必要だ。
小野寺には副手が必要だ。
佐野美紀には残業代が必要だ。
今回、「飯」という字を笑う人はもういなかった。
予算表には新しい欄が追加された。
保護者維持費。
小野寺はその一行を見つめ、長いあいだ沈黙した。
「前は、自分たちも保護される必要があるとは思っていませんでした」
北見遥香は言った。
「他人を守り続けていると、自分も人間だということを忘れます」
遠坂綾乃が補足した。
「猫目は忘れません」
「それは、あなたたちを人間として攻撃します」
その言葉は冷たかった。
だが正確だった。
猫目は保護者を、ただの障害物として見ているわけではない。
家族がいて、仕事があり、賃貸契約があり、債務があり、恐怖があり、疲労もある人間として扱っている。
だから東京も認めなければならない。
保護者は道具ではない。
二番目に攻撃されたのは、小野寺だった。
猫目は彼を直接捕まえなかった。
小野寺を捕まえれば、東京防線が即座に警戒を強めるとわかっているからだ。
だから猫目は、彼の「持続可能性」を攻撃した。
まず、彼がもともと持っていた臨時の仕事が取り消された。
理由はプロジェクト予算の調整。
次に、彼がよく使っていた安い食堂が、営業検査のため一時休業を強いられた。
さらに、車両プールの運転手二名が同時に休息を求めてきた。家に匿名の注意喚起が届いたからだ。
最後に、小野寺のもとへ、一通の差出人不明の手紙が届いた。
中には写真が一枚だけ入っていた。
彼が地方の会社がまだ潰れる前、同僚たちと一緒に活動設備倉庫の前に立っている写真だった。
裏面には一文が書かれていた。
あなたも昔は、活動を順調に進める人でした。今のあなたは、より多くの人を危険へ引きずり込んでいるだけです。
小野寺はその写真を机の上に置き、長いあいだ見ていた。
何も言わなかった。
私はちょうどその日、青い橋へ任務説明に行っていて、彼の表情を見た。
それは恐怖ではなかった。
古傷を突かれた顔だった。
彼は確かに、以前はただの活動設備レンタル会社の管理者だった。
舞台を組ませる。
設備を時間どおり届ける。
活動を無事に終わらせる。
彼は生まれつき、抵抗組織の調整人になりたかったわけではない。
猫目のその一文は、とても毒だった。
それは彼に告げている。
今あなたがしているのは保護ではない。
運転手、店主、ボランティア、互助会メンバーたちを、危険へ引きずり込んでいるのだ。
小野寺は写真を裏返し、低く言った。
「少し本当みたいに聞こえるな」
誰もすぐには反論しなかった。
最悪の言葉というものは、たいてい少しだけ本当だからだ。
遠坂綾乃は彼の向かいに座り、言った。
「あなたは確かに、多くの人を危険へ入れています」
小野寺は顔を上げた。
彼女は続けた。
「でも猫目は、もう半分を省略しています」
「もし誰も組織しなければ、彼らは一人ずつ、単独で危険と向き合うことになります」
北見遥香は言った。
「あなたは危険を作っているのではありません」
「危険がすでに存在する中で、みんなが一人で歩かなくて済むようにしているんです」
小野寺は目を閉じた。
長い時間が経ってから、言った。
「その言葉、書いてください」
佐野美紀はすぐにペンを取った。
こうして、互助会保護手冊には一文が追加された。
調整者は危険を作る人ではない。人が一人で危険に向き合わなくて済むようにする人である。
この一文は、後に青い橋のバックヤードへ貼られた。
小野寺は見るたびに、目を逸らす。
だが、剥がさなかった。
三番目に攻撃されたのは、佐野美紀だった。
彼女はもともと、普通のイベント制作会社の職員だった。
表、サプライチェーン、活動予算、非猫目流程に強かったため、少しずつ東京抵抗ネットワークへ巻き込まれていった。
猫目はすぐに彼女に気づいた。
術師を派遣したわけではない。
脅迫状を送ったわけでもない。
仕事で彼女を攻撃した。
彼女の会社に、突然、大型活動プロジェクトの依頼が入った。
報酬は良い。
プロジェクトの内容も綺麗だ。
ただ、協力先リストの中に、猫目関連会社が一社含まれていた。
非常に巧妙に隠されていた。
佐野がこのプロジェクトを受ければ、非猫目サプライチェーン支援に使える時間を減らさなければならない。
拒否すれば、会社はかなりの収入を失う。
彼女の上司は迷った。
「佐野、どう思う?」
佐野は協力先リストを見て、一目で問題に気づいた。
彼女は今、猫目の影にあまりにも慣れてしまっている。
それらは必ずしも猫目という名前ではない。
地域文化安全研究会かもしれない。
青年活動未来基金かもしれない。
都市協同リスク顧問かもしれない。
どの名前も、とても耳触りがいい。
だが、株式、保険、データサービス、活動安全評価を追っていくと、最後には猫目へ戻る。
佐野は資料を青い橋へ持ってきた。
「私の仕事を狙い始めました」
小野寺が尋ねた。
「拒否できるのか?」
「私個人としては拒否できます」
佐野は言った。
「でも、会社がそうするとは限りません」
遠坂綾乃は資料を見終えて、言った。
「これはあなたへの吸収です。単なる攻撃ではありません」
「彼らはあなたを、正常な職場の論理へ戻そうとしています」
「大きな案件を受ける。綺麗な経歴を作る。面倒なことから距離を取る」
佐野は苦笑した。
「悪いことには聞こえませんね」
誰も笑わなかった。
実際、それは悪いことではないからだ。
佐野は本来、ただの普通人だった。
普通の職場生活を送る権利がある。
互助会の購買表を深夜まで直す義務などない。
この件で最も難しいのは、まさにそこだった。
猫目が彼女に与えたのは恐怖ではない。
正常だった。
「もし退出したいなら、退出していいです」
私は言った。
佐野は私を見た。
私は続けた。
「あなたが手伝ってくれたからといって、ずっと手伝い続けるのが当然だとは思ってはいけません」
彼女は長いあいだ沈黙した。
そして言った。
「退出はしません」
「でも、条件が必要です」
小野寺はすぐに言った。
「言ってください」
「第一、無償の残業はできません」
「第二、正式な時間安排が必要です。深夜にいきなり表の山を投げてこないでください」
「第三、非猫目サプライチェーン側に、表を作れる二人目を育ててください」
「第四、私の会社が猫目関連案件を断ったことで損失を受けた場合、ただ『ありがとう』で済ませないでください」
小野寺はうなずいた。
「書きます」
佐野は彼を見た。
「書くだけではなく、お金を出してください」
「出します」
こうして、保護者維持費にはさらに一項目が追加された。
専門協力人員補助および代替人材育成。
猫目は正常な職場で佐野を引き戻そうとした。
東京の答えは、道徳的に彼女を縛って残らせることではなかった。
彼女の労働を正式に価値づけることだった。
これもまた、学習だった。
猫目も当然、観察していた。
桐島は、佐野が退出せず、東京が彼女に補助と代替人材育成制度を作ったことを知り、長く沈黙した。
部下が尋ねた。
「これは失敗ですか?」
桐島は言った。
「部分的失敗だ」
「彼女は吸収されなかった」
「だが我々は、彼らにコストを増やさせた」
「コストも成果だ」
彼は報告に書いた。
普通の専門協力者に対する吸収策略は、東京抵抗ネットワークに報酬制度の正規化を迫り、財政圧力を増加させることができる。
ただし、補助制度の構築に成功した場合、保護者の安定性を高める可能性がある。
次の段階では、資金源も同時に攻撃すべきである。
猫目はすぐに、東京保護者維持費の資金流を調べ始めた。
その一部は世俗財団残余から来ている。
一部は天城の監督付き資金から来ている。
一部は小額民間寄付から来ている。
一部は文化空間互助基金から来ている。
そこで猫目は、より大きなお金で圧力をかけ始めた。
非猫目文化空間へ寄付する可能性のある小企業数社に、協力融資を提供する。
ある財団残余へ、税務リスクの情報を流す。
文化空間互助基金の会計ボランティアの一人へ、匿名の苦情を送る。
猫目の投入する金は、ますます増えていった。
短期的な損失を気にしていない。
東京の金のほうが少ないと知っているからだ。
東京が一人を守るたび、一人の保護者を維持するたび、より多くの金がかかるようにすれば、長期的には必ず選択を迫れる。
東京側も意識した。
猫目に引きずられるままコストを増やし続ければ、やがて拖死される。
そこで、遠坂綾乃は新しい原則を出した。
すべての圧力を金で解決してはいけない。
あるものは公開規則で解決する。
あるものは輪番で解決する。
あるものは低技術代替で解決する。
あるものは互助で解決する。
そして、あるものは、できないと認めなければならない。
これは残酷に聞こえる。
だが、現実はそうだった。
たとえば古書店の賃料値上げ。
無限に補助金を出すことはできない。
最終的に、互助会と近くの数か所の非猫目文化空間は、書店の奥倉庫の使用頻度を増やし、書店が少し合法的な収入を得られるようにした。
同時に、大家との賃貸契約再交渉も手伝った。
直接お金を渡すのではない。
その書店が、有用な場所であり続けるようにしたのだ。
たとえば運転手の家族の不安。
補助だけでは足りない。
運転手の家族へ保護流程を説明し、運転手が秘密組織に無償で利用されているわけではないと伝える必要がある。
たとえば青い橋の消防問題。
弁護士で防ぐだけではいけない。
榊真理は本当に一度、消防通道の整理を行い、裏口に積まれていた古い設備を運び出した。
彼女は運びながら罵った。
「猫目の通報、正確すぎて腹が立つ」
佐野は言った。
「なら、それが正しく指摘したところを直しましょう」
この言葉は、とても東京らしかった。
猫目が指摘するリスクは、必ずしも嘘ではない。
本当なら、直す。
直したあと、猫目は掴める弱点を一つ失う。
双方の次の直接対抗は、一名の保護者をめぐって起きた。
互助会メンバーではない。
花屋の車の運転手、坂井という男だった。
彼は松尾誠一の護送にも参加していたし、藤沢直人の偽線転移にも参加していた。
猫目は彼を、車両プールの安定節点だと判断した。
そこで、「外す」準備をした。
外すというのは、殺すとは限らない。
猫目の方案は、彼を退出させることだった。
まず、彼のローンが再審査された。
次に、彼の車が安全検査を求められた。
その後、彼の妻へ匿名資料が送られた。
そこには、彼が「高リスク違法転移行動」に参加していたと書かれていた。
彼の妻はひどく怯えた。
彼女はすべてを知らない。
ただ、夫がいくつかの「あまり詳しく話せない」人助けをしていることだけは知っていた。
その夜、坂井は青い橋の会議に来なかった。
彼は小野寺へメッセージを送った。
しばらく続けられないかもしれません。家がもたない。
小野寺はそのメッセージを見て、長いあいだ何も言わなかった。
以前なら、彼はこう説得したかもしれない。
「もう一回だけ手伝ってください」
今は、そうしなかった。
彼は返した。
わかりました。まず家を守ってください。こちらで説明を安排します。無理はさせません。
これが、東京が学んだことだった。
保護者を消耗品として扱ってはいけない。
しかし、坂井が退出すれば、車両プールは熟練運転手を一人失う。
猫目は成功したことになる。
そこで、東京は保護者支援流程を起動した。
彼を戻るよう説得するのではない。
まず、彼の家庭関係を守りに行く。
遠坂綾乃、北見遥香、そして特調室の外縁人員一名が、一緒に坂井夫妻に会いに行った。
私は行かなかった。
私が現れると、話が重くなりすぎるからだ。
坂井の妻は客間に座り、あの匿名資料を手に持っていた。
「これは本当なんですか?」
遠坂綾乃は嘘をつかなかった。
「一部は本当です」
坂井の顔色は白かった。
北見遥香は言った。
「彼は確かに、東京へ逃げてきた人たちの護送を手伝ったことがあります」
「でも、違法売買ではありません」
「あなたの家へ危険を持ち込むためでもありません」
坂井の妻は尋ねた。
「なら、どうしてこんなものが送られてきたんですか?」
遠坂綾乃は言った。
「あなたを怖がらせるためです」
「そして、彼を退出させるためです」
「もしお二人が退出を決めるなら、私たちは受け入れます」
坂井ははっと顔を上げた。
遠坂は続けた。
「ですが、その決定はお二人自身がするべきです」
「匿名の手紙に代わりに決めさせるべきではありません」
この言葉は重要だった。
猫目は、坂井の妻にこう思わせたかった。
夫は自分に隠し事をして、家を危険へ引きずり込んだ。
一方、東京は選択を彼らへ返した。
その会話は長く続いた。
最後に、坂井の妻は彼が継続することにすぐ同意したわけではなかった。
ただ、こう言った。
「彼が出車した後の安全確認を知りたいです」
小野寺は後にそれを聞き、すぐに承諾した。
こうして、車両プールには新たな規則が加わった。
保護者家族安全確認机制。
任務終了後、細部を漏らさずに、家族へ本人が安全か、休息が必要か、次の任務が本人の自発的意思かを確認する。
これは作業量を増やす。
だが、猫目が家族の恐怖を使って保護者を攻撃する余地を減らせる。
坂井は退出しなかった。
ただ、任務頻度を減らした。
東京は受け入れた。
猫目の攻撃は、完全には失敗していない。
確かに、坂井の稼働頻度は下がった。
だが同時に、東京に保護者家族机制を構築させた。
またしても、双方に得るものがあった。
桐島は報告を見て、新しい結論を書いた。
保護者家庭への攻撃は有効であり、出勤頻度を下げられる。
ただし圧力痕跡が明確すぎる場合、東京は家族コミュニケーション机制を構築し、逆に長期安定性を高める可能性がある。
次段階では攻撃痕跡を薄め、家庭圧力が自然発生したように見せるべきである。
猫目は学び続ける。
東京も学び続ける。
保護者支援流程は拡張された。
長期的に護送へ参加する人は全員、「耐えられる任務頻度」を記入しなければならない。
誰でも書ける。
月一回。
月二回。
昼間のみ。
夜間は不可。
猫目精鋭術師が出る可能性のある任務は受けない。
物資だけ。
文書だけ。
二日前までの事前通知が必要。
任務後は必ず休息する。
こうした制限は、最初、小野寺の頭を非常に痛めた。
もともと人手は少ない。
制限が多ければ多いほど、シフトは組みにくくなる。
だが佐野美紀は言った。
「制限を書いてもらうほうが、人が突然崩れるよりましです」
誰も反論しなかった。
森下理沙事件のあと、皆はもう知っていたからだ。
突然崩れることは、事前の制限より危険だ。
こうして、東京の保護システムはさらに遅くなった。
しかし、より安定した。
私自身の任務も、それによって変化した。
以前は、猫目が互助会メンバーを攻撃したら、私が支援へ行く。
今では、猫目が保護者を攻撃した場合も、私が行くことがある。
ただし、その方法は必ずしも戦闘ではない。
たとえば青い橋の消防整改の日、私は半日かけて古い設備を運んだ。
黒弦は使わなかった。
ただ荷物を運んだだけだ。
陽菜は後でそれを知り、尋ねた。
「小音の外部任務って、今は引っ越しになったの?」
私は言った。
「だいたいそんな感じ」
澪が言った。
「引っ越し飯」
日和は私を見て、尋ねた。
「そういうほうが、かえっていいの?」
私は少し考えた。
「少し、いい」
設備を運んでいるあいだ、私は最後の希望ではなかった。
黒弦でもなかった。
扉の前に立つ人間でもなかった。
ただ、青い橋の裏口を片づける人だった。
それはとても普通のことだった。
そして、とても必要なことだった。
猫目が消防通道を攻撃点にした。
なら、私たちは本当に通道を片づける。
これは戦闘における勝利ではない。
だが、次に猫目が消防通道を通報しようとしても、その理由が一つ減る。
あるとき、私は榊真理と一緒に古いスピーカーを運んでいた。
スピーカーは重い。
私は危うく手を滑らせた。
彼女は言った。
「白川さん、黒弦はあんなにすごいのに、荷物運びには向いてないんですか?」
私はスピーカーを見た。
「黒弦で運ぶと、変じゃありませんか?」
「それもそうですね」
彼女は息をついた。
「じゃあ、人力で」
私たちは二人でスピーカーを倉庫の隅へ運んだ。
彼女は汗を拭き、言った。
「猫目もまさか、青い橋を攻撃した結果、私たちが本当にバックヤードを整理するとは思わなかったでしょうね」
私は言った。
「思いつきますよ」
「それでもやるんですか?」
「あなたを疲れさせることも目的だからです」
榊真理は少し沈黙した。
「確かに疲れます」
「後悔していますか?」
彼女は空いた消防通道を見た。
「少し」
それから、彼女は笑った。
「でも、通道はだいぶ見やすくなりました」
その言葉に、私も笑った。
抵抗とは、時々そういうものだった。
後悔しながら、それでも続ける。
とても疲れながら、それでも通道が確かに見やすくなったことに気づく。
猫目は投入を増やしたあと、短期的には確かに多くの効果を得た。
保護者の出勤頻度は下がった。
東京の予算圧力は上がった。
青い橋の活動は減った。
小野寺のシフトは組みにくくなった。
佐野美紀の作業時間は圧迫された。
北見遥香はより多くの人に付き添われる必要があり、もう一人で心理支援をすべて背負うことはできなくなった。
車両プールの稼働率は下がった。
安全点の維持コストは上がった。
猫目は大量の人を捕まえたわけではない。
だが、保護システムを重くした。
遅くした。
高くした。
それこそが目的だった。
しかし、東京にも得るものがなかったわけではない。
保護者家族机制ができた。
保護者維持費が明確になった。
代替人材育成が始まった。
待機支援組が拡張された。
青い橋の消防リスクは下がった。
書店の賃貸契約は一時的に安定した。
佐野美紀の労働は正式に価値づけられた。
坂井は完全には退出しなかった。
北見遥香は、猫目から送られてくる写真を一人で見ることがなくなった。
小野寺には、ようやく二人の副手ができた。
一人は車両担当。
一人は食事と休息担当。
「食事と休息」が正式に担当者として設置されたとき、皆は少し沈黙した。
その後、とても真剣に拍手した。
それは東京がついに認めたということだからだ。
人を守る人間は、食べて眠らなければならない。
ニャーサは最新の報告を見ると、軽く笑った。
「彼らは、より組織らしくなってきたね」
代理人は頭を下げた。
「我々には不利です」
「彼らにも不利だよ」
「なぜですか?」
「組織が完整になるほど、コストは上がる」
ニャーサは東京の地図を見た。
「彼らは今、保護者を守り始めた」
「次は、保護者の家族を守らなければならなくなる」
「さらにその次は、お金を出す者を守る」
「さらにその次は、代替人員を守る」
「一層守るごとに、資源が必要になる」
「彼らはどんどん、小さな国家のようになっていく」
代理人は言った。
「ですが、それは彼らの韧性を強めます」
「そう」
ニャーサは否定しなかった。
「だから面白い」
それは軽く尻尾を揺らした。
「投入を続けろ」
「金、人、装備、法律、世論、保険、家庭圧力」
「一度に押し潰すな」
「彼らに新しい防線を何度も生やさせろ」
「そして、その一つ一つの防線に代価を払わせろ」
代理人は理解した。
ニャーサは、ただ何人かを捕まえたいわけではない。
保護の中で、東京をどんどん重くしたいのだ。
重くなりすぎて、最後には自分たちはまだ歩けるのかと疑うようになるまで。
その夜、私は備忘録に書いた。
猫目新段階:保護者への攻撃。
目標は互助会メンバーを捕まえることだけではなく、保護者を退出させ、疲労させ、家族に誤解させ、仕事へ吸収し、賃貸契約と消防で足止めすること。
東京新段階:保護者を守る。
保護者維持費、家族安全確認、専門協力補助、代替人材育成、任務頻度制限、食事と休息の担当者を新設。
猫目は、より多くの人、金、装備、法律、世論資源を投入している。
東京は、より多くの時間、金、規則、付き添い、低技術補修を投入している。
双方とも学んでいる。
猫目は保護を重くする。
東京は保護者が押し潰されないようにする。
書き終えたあと、私はしばらく止まった。
そして、さらに書いた。
保護とは、負担を無限に増やすことではない。
本当の保護には、保護者が「今日は無理です」と言えることも含まれなければならない。
ソレンセンが黒海の中で言った。
「お前たちは、ますます面倒になっているな」
「うん」
「猫はお前たちを重くする」
「だから、私たちは重さを分けることを学ばなきゃいけない」
「分けても疲れる」
「だからご飯が必要」
それは少し沈黙した。
「お前は今、何でも飯につなげるな」
私は小さく笑った。
「本当だから」
窓の外で、東京はまだ明るかった。
青い橋の消防通道は片づいた。
坂井は今夜、出車せずに家で妻と食事をしている。
佐野美紀は初めて正式な補助金を受け取った。もっとも、金額はまだ少ないと言っていた。
小野寺の副手は、初めて低リスクルートを一人で完成させた。
北見遥香は、雪道の写真を档案化してから、一人でもう一度見ることはなかった。
どれも大勝利ではない。
けれど、保護者はまだいる。
保護者がまだいる限り、互助会メンバーに残される道は、猫目の通道だけにはならない。
今夜は、それで十分だった。