俺の頭の中に敗北した暗黒の王が住み着いているが、俺はただギターを弾きたいだけだ 作:arctichare
第113章 井戸、ポンプ場、そして線の上で守る人々
包囲時代三年目、猫目が東京と京都の水電を切り始めたあと、東京中央統合庁は内部投票を経て、日本の普通人へ退魔界、術師、猫目勢力のことを完全に公開することを決めた。
2048年以降、つまり平和時代の最後の一年から包囲時代一年目が始まったあと、退魔界と日本の普通人との距離は、猫目勢力が引き起こした全国規模の異常大爆発、地方人員の大量の東京・京都への逃亡、猫目勢力による二都市への襲撃などによって、ますます近くなっていた。
包囲時代三年目には、術師の存在はほとんど半公開状態になっていた。
けれど、本当に断水断電という段階まで来た以上、完全公開しなければならなかった。
猫目が爪を水管と電線へ押しつけたあと、東京と京都はついに一つの幻想を捨てた。
それは、
都市境界さえ守れば、都市はこれまでどおり動き続ける。
という幻想だった。
不可能だ。
都市は孤島ではない。
たとえ都市の防線がまだ残っていても、水は流れ込まなければならない。
電気は送られてこなければならない。
燃料は運び込まれなければならない。
修理部品も補充されなければならない。
猫目は東京を打ち破る必要がない。
東京の水を、少しずつ来にくくする。
京都の電気を、少しずつ高くする。
修理人員が一度城外へ出るたび、危険を冒すようにする。
一台一台の浄水薬剤輸送車を、護送任務へ変える。
一度一度の水圧低下を、居民の恐慌へ変える。
それだけで、二つの都市はゆっくり頭を下げざるを得なくなる。
だから、東京と京都は二つのことを始めた。
一つ目、自分たちの水源を広げること。
二つ目、水電供給線へ武力を配置すること。
これは美しい防御ではない。
熱血の反撃でもない。
都市が生き残るために、井戸を掘り直し、線を守り直し、現代生活の背後にある脆さを学び直し始めたということだった。
東京の地下水開発計画は、とても急いで起動された。
急すぎて、多くの官僚は最初、荒唐無稽だと感じた。
「今から地下水を掘るのか?」
「東京ほどの規模で、地下水だけでどれくらい持つ?」
「地質リスクは?」
「汚染リスクは?」
「過剰汲み上げはどうする?」
「旧市街の地盤沈下は?」
問題は多かった。
そして、その一つ一つが正しかった。
だが基礎インフラ官員は、一言だけ答えた。
「地下水で東京全体を養おうとしているわけではありません」
「猫目に一本の水線で我々を絞め殺されないようにするためです」
その言葉で、会議室は静かになった。
地下水は、すべての答えではない。
だが緩衝にはなれる。
予備にはなれる。
猫目が外部供水を切ったとき、少なくとも病院、避難点、一部居民区、応急処理点を動かし続けるための底線にはなれる。
東京は旧資料を掘り返し始めた。
廃棄井戸。
旧工業用井戸。
学校の旧水井。
神社仏閣の地下水点。
大型建築の予備蓄水システム。
戦後期の防災井戸資料。
地下水監測記録。
都市更新で忘れられていた小型井戸点までが、地図上へ改めて標記された。
工程人員。
地質人員。
水質人員。
特調室。
無門術師。
社区ボランティア。
皆が、この古い地図の中へ入っていった。
その地図は、現代水網図ほど美しくなかった。
乱れている。
古い。
欠けている場所も多い。
だがそれは東京に、巨大な水道システムの外側にも、都市の地下には忘れられていた水が残っていることを再び見せた。
京都の動きは、さらに速かった。
京都はもともと、東京よりも地下水、井戸、寺社の水脈と付き合うことに慣れている。
ただ、現代都市システムが確立されてから、多くのものは文化記憶になり、生存システムではなくなっていた。
今、それらは再び取り出された。
京都方面は内層をいくつかの水区に分けた。
寺社井水区。
旧町家地下水区。
学校防災井区。
山脚小型水源区。
臨時浄水点。
それぞれの区に武力保護を付ける。
水そのものが反抗するからではない。
猫目が来るからだ。
七条は京都会議で言った。
「今日から、井戸は文化景観ではありません」
「戦略施設です」
その言葉は重かった。
老委員たちは反対しなかった。
猫目に周辺水源を奪われれば、京都は東京より早く窒息を感じることになると、彼らはよく知っていたからだ。
こうして京都は、旧井戸に鍵をかけ始めた。
水質検査点へ守衛を置き始めた。
山脚取水ルートへ巡回を安排した。
浄水薬剤倉庫へ結界をかけた。
臨時水車へ護送をつけた。
古い井戸のそばに、符を持つ術師と、現代通信設備・現代武器を備えた防衛人員が立つようになった。
その光景は奇妙だった。
そして、とても京都らしかった。
東京側では、第一批の地下水応急点が三種類の場所に設置された。
病院の近く。
大型避難施設の近く。
そして非猫目サプライチェーンが届く社区節点。
青い橋には井戸はない。
だが青い橋は、地下水説明点と居民節水説明点に指定された。
榊真理は新しく貼られた公告を見て、苦笑した。
「うちは小劇場から水務宣伝所になったのね」
佐野美紀は説明単を直していた。
「文句を言わないでください。少なくとも青い橋がまだ生きている証拠です」
小野寺が付け加えた。
「それに、まだ猫目の水にはつながってない」
榊真理は倉庫に積み上がった折り畳み水桶と手回し浄水器を指差した。
「これ、誰が運ぶの?」
私は黙って手を上げた。
「私が」
そうしてその日、私はまた半日、水桶を運んだ。
黒弦は出なかった。
ただ手が痛くなっただけだった。
陽菜は後でそれを知ると、グループに送ってきた。
小音の最近の任務:退魔、護送、スピーカー運び、水桶運び。
澪は送ってきた。
水桶飯。
日和は尋ねた。
手首、痛くなってない?
私はスマホを見て、少し笑った。
少しだけ。でも大丈夫。
本当は大丈夫ではなかった。
でも、この「少し痛い」は、ニャーサと向き合うときの無力感よりずっとましだった。
なぜなら、それは少なくとも、私が具体的なことを一つしている証拠だからだ。
水桶が所定位置へ運ばれれば、居民は取水点を一つ多く持てる。
とても小さい。
けれど、とても確かなことだった。
水源開発は、すぐに第一批の問題にぶつかった。
第一に、水質。
多くの旧井戸は直接飲めない。
重金属が基準を超えているものがある。
細菌リスクが高いものがある。
水質の安定性が不明なものもある。
工程人員は言った。
「急いでいるからといって、居民に安全でない水を飲ませるわけにはいきません」
こうして、浄水設備が新しい戦場になった。
猫目はすぐに、東京が小型浄水器、消毒薬剤、検査紙、貯水袋、手回しポンプを購入していることを発見した。
彼らは即座にサプライチェーンへの干渉を始めた。
検査紙の一批が輸送中に留め置かれた。
理由は「用途申告不明」。
一批の手回しポンプサプライヤーが突然値上げを求めた。
一批の消毒薬剤輸送車が迂回を余儀なくされた。
小野寺は購買表を見て、顔色を鉄のようにした。
「あいつら、検査紙まで叩くのか」
佐野美紀は言った。
「検査紙がなければ、井戸水は安心して使えません」
「猫目は、私たちが正規手順を踏まなければならないことを知っているんです」
遠坂綾乃がうなずいた。
「それらは正規を攻撃している」
この言葉は正確だった。
東京は猫目のように、後果を顧みず動くことはできない。
地下水を適当に居民へ配るわけにはいかない。
検査しなければならない。
説明しなければならない。
濾過しなければならない。
登記しなければならない。
それらはすべてコストだ。
猫目が攻撃しているのは、そのコストだった。
第二に、地質リスク。
東京の工程人員は非常に強く主張した。
地下水は乱暴に汲み上げてはならない。
短期的に猫目へ対抗するために、長期の地盤や沈下問題を作ってはならない。
一部の強硬派は苛立った。
「今にも断水しそうなのに、まだそんなことを気にするのか?」
一人の老工程師が机を叩いた。
「今気にしなければ、三年後に割れた道路の上で何を飲むつもりですか?」
会議室は静まり返った。
これが、専門人員の重要性だった。
猫目への抵抗は、何もかも顧みないことになってはいけない。
そうでなければ、それは別の災害になる。
最終的に、東京は決定した。
持続可能な小型分散地下水点だけを開発する。
大規模代替は追求しない。
すべての汲み上げ量を記録する。
水質と地質の監測を同時に行う。
いかなる勢力も「抗猫目」を名目に、私的に深井戸を掘ることを許さない。
この規定が出ると、すぐに官僚主義だと文句を言う者が出た。
佐野美紀は説明単に書いた。
すべての井戸が命を救うわけではありません。誤った井戸は、新たな危険を作る可能性があります。
この言葉は多くの社区説明点へ貼られた。
小野寺はそれを読んで言った。
「お前、こういう文章を書くのがどんどん上手くなってるな」
佐野はため息をついた。
「上手くなりたくなかったです」
第三に、守衛問題。
水源点が増えると、守る人が足りなくなる。
東京と京都は、同じ問題に直面していた。
猫目は、大型水処理場を破壊する必要はないかもしれない。
十数か所の小型地下水点を破壊するだけで、居民の信頼は下がる。
だから、すべての水点に最低限の保護が必要になる。
だが東京には、それほど多くの術師と通常防衛力量はない。
京都にも、それほど多くはない。
こうして、武力配置は階層化され始めた。
最高等級は、大型水処理場、変電所、浄水薬剤倉庫、关键送水ポンプ場。
特調室、御影家など旧家族から派遣された術師、無門術師、都市防衛力量が共同で守る。
第二等級は、臨時地下水応急点、社区浄水点、燃料小倉庫、予備発電節点。
普通防衛人員、訓練を受けた志願者、低階術師、非猫目サプライチェーン人員が交代で守る。
第三等級は、説明点、空桶保管点、居民登記点。
原則として術師武力は派遣しないが、武装観察員と通報机制を置く。
小野寺は、その一部の輪番表を担当した。
彼は表を見て、以前よりさらに顔色を悪くした。
「護送人員だけでも足りないのに、今度は井戸まで守るのか」
佐野美紀は言った。
「だから活動を減らすんです」
榊真理は言った。
「青い橋はしばらく、必要な会議と居民説明だけを残します」
「演出は?」
「一部中止」
彼女は平静に言った。
だが私は、それがつらいことだと知っていた。
青い橋は小劇場だ。
水務站ではない。
けれど今は、水が優先される。
これは猫目の勝利ではない。
だが猫目の脅威が、確かに東京に文化生活の代価を払わせている。
この帳簿は、忘れてはならない。
水電供給線への武力配置は、地下水よりさらに緊張していた。
なぜなら供給線は長いからだ。
水管、電纜、変電施設、修理道路、燃料倉庫、移動発電車のルート。
すべてが猫目に攻撃される可能性がある。
東京と京都は、一メートルごとに守ることなどできない。
だから、節点を守り始めた。
東京方面は水電線を四つに分けた。
核心節点。
脆弱節点。
囮節点。
放棄可能節点。
この四つの言葉は、とても残酷だった。
「放棄可能節点」が出たとき、会議室の多くの人の顔色が変わった。
基礎インフラ官員は説明した。
「重要ではない、という意味ではありません」
「資源が足りないとき、それを守るためにより優先順位の高い節点を犠牲にしてはならない、という意味です」
それは護送任務における優先順位と同じだった。
ただ、対象がポンプ場と変電箱に変わっただけだ。
一つの都市もまた、選ぶことを学ばなければならない。
京都方面はもっと直接的だった。
七条は言った。
「すべての線を守ろうとすれば、すべての線を守れなくなる」
そこで京都は、いくつかの水電供給線を「鉄線」とした。
最後まで守らなければならない線という意味だ。
それ以外のいくつかを「軟線」とした。
攻撃された場合、一時的に放棄し、予備供給へ移ることができる線だ。
この命名が東京に伝わると、小野寺は言った。
「電車の路線みたいに聞こえるな」
遠坂綾乃は言った。
「居民にはそう聞かせないほうがいいでしょう」
最終的に、東京は「鉄線」「軟線」という呼び方を使わなかった。
代わりに、こう呼んだ。
一級保障線。
二級保障線。
臨時代替線。
官僚的に聞こえる。
けれど、そこまで刺さる言葉ではない。
武力配置は、ただ人を立たせることではない。
それは一つのシステムだった。
巡回。
センサー。
術式警戒。
物理障壁。
予備修理隊。
快速補修部品車。
偽修理隊。
偽燃料車。
囮浄水薬剤輸送。
黒弦後備支援。
猫目は輸送を攻撃することに非常に長けている。
だから東京も、輸送を不確定にし始めた。
一台の車が本物の貨物とは限らない。
一つの修理隊が本当の節点へ行くとは限らない。
重点保護されている管線が、最も重要な管線とは限らない。
この方法は、互助会護送の経験から来たものだ。
人は線を分けられる。
資料も線を分けられる。
今度は水電も線を分けなければならない。
小野寺が初めて基礎インフラ部門に、自分の「偽線で真線を守る」方案を借用されているのを見たとき、その表情は複雑だった。
「俺は昔、ただ活動設備を送っていただけなんですけど」
久我山は言った。
「今は都市に水を送る手助けをしています」
小野寺は低く悪態をついた。
「この昇進、荒唐無稽すぎるだろ」
それでも彼は表を受け取った。
猫目がどうやってルートを追うかについて、彼以上にわかっている人間はいなかったからだ。
私は、一条の浄水薬剤輸送線と一つの臨時地下水点のあいだで待機するよう安排された。
固定任務ではない。
快速支援だ。
薬剤線が襲撃されれば、薬剤線へ行く。
地下水点が猫目術師に汚染されれば、水点へ行く。
両方が同時に起きた場合、新規則に従って判断する。
「両方が同時に起きた場合」と聞いたとき、心がまた沈んだ。
猫目は必ずそうする。
それは私に選ばせるのが好きすぎる。
案の定、三日目の夜、両方が同時に起きた。
東京東側の一台の浄水薬剤車が、猫目術式干渉を受けた。
同時に、西側で新たに起動した社区地下水点に、水質異常波動が現れた。
自然な波動ではない。
誰かが井口付近へ術式汚染源を投放したのだ。
眼鏡の女性の声が入る。
「白川さん、判断中です」
私は臨時待機点に立ち、指でピックを握りしめた。
彼女はすぐに言った。
「薬剤車には第二護送隊があります。七分は持つ見込みです」
「地下水点周辺には居民が並んでいます。汚染拡散リスクが高いです」
「水点を優先」
「了解」
私は即座に出発した。
今回は、迷わなかった。
なぜなら、規則がすでに判断を出していたからだ。
私一人が選択を背負っているのではない。
システムが選択したのだ。
それが、規則の意味だった。
水点は、小学校の旧運動場のそばにあった。
井口周囲にはすでに警戒線が張られている。
数名の居民がまだ遠くに並んでいて、何が起きたのかを知らない。
一人の志願者が繰り返し説明していた。
「水質再検査中です。少々お待ちください」
猫目が置いた汚染源は強くなかった。
だが、とても陰湿だった。
それは必ずしも水をすぐ有毒にするわけではない。
検査データを不安定にする。
新しい水点が不安定だと居民に知られれば、それだけで信頼が失われる。
私は黒弦で、汚染源と水脈検査点とのあいだの術式接続を切断した。
さらに井口周囲の三か所の観察符を切った。
大きな動きはない。
戦闘もない。
だが、猫目が見ていることはわかった。
それは、東京が水質への信頼を守るのか、それとも薬剤輸送を守るのかを知りたがっている。
私たちは水点を選んだ。
薬剤車のほうでは、第二護送隊が持ちこたえた。
十一分遅れた。
だが、到着した。
今回は、システムが成功した。
しかし成功したあとでも、居民たちは不安になり始めた。
ある人が尋ねた。
「水に問題があるんですか?」
志願者は説明した。
「再検査済みで、安全です」
別の人が尋ねた。
「じゃあ、どうしてさっき止まったんですか?」
「異常を発見し、処理後に安全確認をしました」
「異常って何ですか?」
志願者は言葉に詰まった。
猫目術式汚染とは言えない。
言えば恐慌を招く。
言わなければ、隠しているように見える。
そのとき、佐野美紀が以前作った説明文が役に立った。
志願者は紙を取り出し、読んだ。
「臨時地下水点では複数回の検査制度を実施します。検査異常を発見した場合、給水を一時停止し、再検査を優先します。一時停止は失敗ではなく、保護流程の一部です」
この言葉は重要だった。
一時停止は失敗ではない。
保護流程だ。
居民たちはなお不満そうだった。
だが、失控はしなかった。
それこそが、東京が学んでいることだった。
水を直すだけではいけない。
なぜ止めたのかも説明しなければならない。
そうでなければ猫目は、一度停止させるだけで、居民に思わせられる。
東京の井戸は信用できない、と。
京都側の第一場の供給線防衛戦は、東京よりも戦闘に近かった。
猫目術師が、一か所の山脚小型水源点を奪取しようとした。
そこは京都内層の一つの臨時浄水システムにつながっている。
最大水源ではない。
だが象徴的な意味は強かった。
もし猫目がそこを奪えば、京都居民ははっきりと圧力を感じることになる。
七条は大量の人員を追撃へ出さなかった。
彼女はその水源点へ三層の防護を配置した。
外層は現代防衛人員と政府の低級術師。
中層は無門術師。
内層は京都旧式結界専門の術師。
猫目術師が夜に接近したとき、外層が発見した。
彼らは低騒音術式で巡回をすり抜けようとした。
中層術師が切断した。
猫目は次に、水源上流へ汚染符を投放した。
内層結界がそれを止めた。
双方は短く交戦した。
京都は追わなかった。
水源だけを守った。
猫目が撤退するとき、七条は命じた。
「線を離れて追うな」
誰かが尋ねた。
「このまま逃がすのですか?」
七条は言った。
「私たちの任務は水です。戦果ではありません」
この言葉は後に東京へ伝わり、久我山によって水電供給線防衛原則へ書き込まれた。
守線任務において、目標は供給の維持であり、戦闘の拡大ではない。
この原則は多くの人を救った。
猫目は追撃誘導が得意だからだ。
守衛が線を離れれば、線が空く。
東京と京都の水電防線は、少しずつ形になっていった。
完璧ではない。
まったく完璧ではない。
だが最初よりはずっとよくなった。
地下水点は分級起動され始めた。
居民への貯水説明も少しずつ普及した。
浄水薬剤輸送には偽線がついた。
予備発電燃料は分散保管された。
关键変電所には術式防護が入った。
旧井戸は再標識された。
一部の学校では短時間停電演練が始まった。
病院は給電優先級を調整した。
文化空間は活動を減らし、説明点、物資点、短時間停留点へ変わった。
互助会メンバーも、社区水点の秩序維持へ参加し始めた。
藤沢直人は、旧倉庫を改造した水桶保管点へ安排された。
彼は並んだ水桶を見て、低く言った。
「昔は倉庫を管理していました」
小野寺は言った。
「今も同じです」
「今回は水桶を置くんですね」
「水桶も管理が必要だ」
藤沢直人は少し笑った。
「鍵は?」
小野寺は新しい鍵を渡した。
「この倉庫はあなたが管理してください」
藤沢直人はその新しい鍵を見て、長いあいだ何も言わなかった。
最後に、彼は玄海旧倉庫を開けられないあの鍵と、新しい鍵を一緒に下げた。
二本の鍵がぶつかり合い、小さな音を立てる。
彼は低く言った。
「今度は少なくとも、誰が予備鍵を持っているのか、先にきちんと記録します」
それこそが、失敗者が提供できる経験だった。
すべての鍵が開かなくなるまで待つな。
猫目は、東京と京都が地下水開発と水電線への武力配置を加速させたのを見ても、慌てなかった。
ニャーサはむしろ満足していた。
「彼らは、包囲された都市らしくなり始めたね」
代理人は言った。
「彼らは自給能力を高めました」
「そしてコストも高めた」
ニャーサは地図を見た。
「一口の井戸ごとに、検査が必要になる」
「一つの検査点ごとに、守衛が必要になる」
「一条の供給線ごとに、巡回が必要になる」
「一回の居民説明ごとに、人が説明しなければならない」
「いいね」
代理人は頭を下げた。
「さらに多くの地下水点を破壊しますか?」
「いいや」
ニャーサは言った。
「まず作らせろ」
代理人は一瞬固まった。
「作らせてから叩くのですか?」
「あるいは叩かない」
ニャーサは軽く笑った。
「敵が君を防ぐために防線を拡張し続けること、それ自体が勝利になることもある」
「ただし、圧力は保て」
「たまに一点を汚染する」
「たまに一台の薬剤車を妨害する」
「たまに電圧を揺らす」
「崩壊させるな」
「忙しくさせろ」
代理人は理解した。
猫目は、ただ断水断電したいわけではない。
東京と京都が断水断電されないために、長期にわたって巨大な資源を支払い続けるようにしたいのだ。
その夜、私は新しく起動した地下水点のそばに立っていた。
居民たちはもう散っていた。
井口には鍵がかかっている。
そばには検査箱、折り畳み机、登記簿、そして夜番の志願者が二人いた。
一人は互助会メンバー。
もう一人は普通の社区老人だった。
二人は小さな灯りの下で、熱いお茶を飲んでいた。
老人が尋ねた。
「白川さん、この水はこれから本当に使えるんですか?」
私は井口を見た。
「使えます」
「ずっと使えますか?」
私は少し止まった。
「ずっととは、保証できません」
老人はうなずいた。
「なら、使える日は使えるだけでいい」
とても普通の言葉だった。
なのに、胸が痛くなった。
使える日は使えるだけ。
今の東京は、まさにそうだった。
水が一日流れるなら、一日守る。
電気が一夜灯るなら、一夜守る。
井戸が水を出すなら、検査する。
線が電気を送るなら、巡回する。
猫目は都市に、渇き死ぬ恐怖を抱かせようとしている。
東京と京都は、井戸を掘り、線を守り、水を蓄え、説明し、交代で立つようになった。
不器用だ。
疲れる。
けれど都市は、まだ頭を下げていない。
私は安全住居へ戻ると、新しい備忘録を書いた。
東京、京都は水源拡大を開始。
主要方式:旧井戸、地下水点、学校防災井、寺社井、水質検査、小型浄化の開発。
原則:地下水は全面代替ではなく、猫目に一本の線で絞め殺されないためのもの。
同時に、水電供給線へ武力配置。
節点を守り、一メートルごとには守らない。
優先級:水処理場、浄水薬剤、ポンプ場、変電所、病院、避難点、居民給水。
新原則:守線任務の目標は供給維持であり、戦闘拡大ではない。
猫目策略:全面切断とは限らず、継続的に圧力、汚染、干渉、遅延をかけ、東京と京都のコストを上げる。
こちらの策略:水源分散、分層防護、居民説明、低技術冗余、失敗者経験の転化。
書き終えてから、私はもう一文を加えた。
都市が、自分の井戸を生やし始めた。
その言葉で、少しだけ安心した。
猫目が水管を押さえている。
なら、私たちは地下に水を探す。
猫目が電線を見張っている。
なら、私たちは変電所を守り、燃料を分け、予備電力を分散する。
猫目が保護を重くする。
なら、私たちは重さを分け合うことを学ぶ。
ソレンセンが黒海で言った。
「お前たちは、穴の中へ追い詰められた小動物のようだな」
「穴を掘れるのも悪くない」
「ふん」
「地下には水がある」
それは、もう何も言わなかった。
窓の外で、東京の灯りはまだついている。
安全だからではない。
誰かが線を守っているからだ。
誰かが井戸を掘っているからだ。
誰かが水を検査しているからだ。
誰かが小型貨物車で浄水薬剤を運んでいるからだ。
誰かが青い橋で居民説明単を直しているからだ。
誰かが京都の山脚で一つの小さな水源を守っているからだ。
水はまだ流れている。
電気はまだ灯っている。
今夜、都市はまだ渇き死んでいない。