俺の頭の中に敗北した暗黒の王が住み着いているが、俺はただギターを弾きたいだけだ   作:arctichare

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第121章 東京が同意した

第121章 東京が同意した

 

最終的な決定は、午前四時に下された。

 

議論が終わったからではない。

全員がすでに理解していたからだ。

 

これ以上引き延ばせば、東京はますます受動的になるだけだと。

 

会議室の明かりは一晩中点いていた。

テーブルの上の水の入ったコップは、誰も手をつけなかった。

地図、名簿、路線図、猫目の宣伝スクリーンショット、互助会の申請用紙、撤離予案が、すべて積み重なっていた。

 

まるで二つの未来が互いに押しつけ合っているようだった。

 

一つの未来は、

東京の中に縮こまり続け、ますます孤島のようになること。

 

もう一つの未来は、

喵佐が自ら用意した舞台に、踏み込むこと。

 

どちらも危険だった。

ただ、危険の形が違うだけだった。

 

最後に口を開いたのは、久我山だった。

 

「東京は、外の世界を見る勇気すらない都市になってはならない。」

 

彼がその言葉を言うとき、声はすでに掠れていた。

 

「もし私たちが地方を見る勇気すら持てないなら、

東京の住民は遅かれ早かれ、猫目の宣伝だけで日本を理解するようになる。」

 

「そうなれば、私たちはもっと早く負ける。」

 

会議室は静かだった。

 

遠坂綾乃は目を閉じ、

長い時間が経ってから、ようやく低く言った。

 

「……私は依然として、これが罠だと考えている。」

 

「しかし、同意する。」

 

この一言が出た瞬間、多くの者が沈黙した。

 

なぜなら、みんなが知っていたからだ。

 

東京は正式に、

行くことを決めた。

 

決定を公表する前に、特調室はまず私に聞いた。

 

形式的な確認ではなく、本気で聞いた。

 

久我山が私を見た。

 

「白川。」

 

「最終的な決定権は君にある。」

 

「もし君が拒否するなら、東京は君を強制しない。」

 

私はそこに座ったまま、長い時間沈黙した。

 

なぜなら、私は知っていたからだ。

 

もし私が「行かない」と言えば、

東京はおそらくそれに合わせて拒否するだろう。

 

黒弦がいなければ、この「旅行」には意味がない。

 

私は多くのことを思い浮かべた。

 

北海道から来た老人が、古い写真を整理していたこと。

仙台の女性が「故郷に帰って見られるか」と聞いたこと。

A大学で増え続ける海外申請。

屋上の菜箱。

停電の時間割。

空港。

撤離路線。

 

そして——

東京がますます、自分自身の傷口ばかりを見つめる都市のようになっていくこと。

 

私は忽然と、あることに気づいた。

 

もしかすると喵佐の言葉には、一部本当のことが混じっているのかもしれない。

 

東京は今、確かにあまりにも長い間、日本全体を見ていない。

 

「……私は行く。」

 

私がそう口にしたとき、会議室の誰一人として安堵の息を漏らさなかった。

 

むしろ、ますます沈んだ。

 

なぜなら、その瞬間から、すべてが「議論」ではなく「実行」になったからだ。

 

遠坂綾乃がすぐに聞いた。

 

「理由は。」

 

私はテーブルの上の地図を見た。

 

「東京は、外が今どうなっているのかを知る必要がある。」

 

「そして——」

 

私は少し間を置いた。

 

「互助会の人たちも、自分の目で確認する必要がある。」

 

会議室の誰も反論しなかった。

 

なぜなら、これはもう単なる情報収集任務ではなく、

「世界がまだどうなっているのかを確認する」行動になりつつあったからだ。

 

決定が公表されると、東京は爆発した。

 

ニュースの見出しがほぼ同時に現れた。

 

《黒弦が地方支配区へ視察へ》

《東京、猫目の旅行招待を受諾》

《最多百名が随行》

《互助会メンバーも同行可能》

 

東京全体の空気が、変わった。

 

最初の反応は怒りだった。

 

「気が狂ったのか!?」

「これは降伏だ!」

「猫目が東京を弄んでいる!」

「なぜ本当に行くんだ!?」

 

しかし第二の反応がすぐに現れた。

 

「本当に故郷に帰れるのか?」

「北海道は今、一体どうなっているんだ?」

「もし彼女が戻って来られたなら、私たちも真相を知ることができるかもしれない。」

 

第三の反応が最も危険だった。

 

「少なくとも猫目は、ただ破壊するだけではないらしい。」

 

東京の宣伝部門がこれらの世論を見たとき、

顔色が完全に青ざめた。

 

なぜなら、喵佐が本当に欲しかったものが、

ゆっくりと現れ始めていたからだ。

 

人々が再び定義し始めていた。

 

「どちらが秩序に近いのか。」

 

互助会は完全に混乱した。

 

応募者数が一夜にして八百名を超えた。

 

北海道。

仙台。

大阪。

東北。

九州。

 

誰もが帰って見たいと言った。

 

たとえ一目だけでも。

たとえ一日だけでも。

 

最終的に、名簿は再び厳しく選別されることになった。

 

東京は極めて冷徹なルールを定めた。

 

長期間故郷に戻れなかった者を優先。

直系親族がまだ生存している可能性のある者を優先。

地方の重要情報価値を持つ者を優先。

記録任務を担える者を優先。

 

多くの者が落とされた。

 

その場で泣き出す者もいた。

 

なぜなら、これが数年ぶりに故郷に近づける、

唯一の機会になるかもしれないからだった。

 

ある北海道出身の男が、小さな声で言った。

 

「たとえ遠くから港を一目見るだけでもいい……」

 

スタッフはただ、頭を下げて謝るしかなかった。

 

定員がすでに埋まっていたからだ。

 

最終的な名簿はこう決まった。

 

護衛要員三十二名。

記録・観察要員十五名。

互助会メンバー二十七名。

学生・青年代表八名。

医療・後方支援十名。

残りの枠は機動用に残す。

 

合計九十二名。

 

東京はわざと百名を使い切らなかった。

 

猫目に人数のペースを完全に握られたくなかったからだ。

 

A大学内部は完全に騒然となった。

 

八名の学生代表の中に、A大学出身が二人含まれていたからだ。

 

そのうちの一人が、梨央だった。

 

戦闘能力 때문ではない。

 

彼女の撮影記録能力が評価されたからだった。

 

東京側は、普通の若者にも実際に見せ、

本当の記録を持って帰ってきてほしいと考えていた。

 

梨央が通知を受け取ったとき、手が震えていた。

 

彼女の第一反応は、

 

「もしかして間違えたのでは……?」

 

先生が首を振った。

 

「間違っていない。」

 

「君は黒弦とともに地方へ行く。」

 

彼女は完全に呆然とした。

 

なぜなら、彼女が今まで撮影していたのは、

屋上の菜箱や停電後の東京、水桶や港区だけだったからだ。

 

結果として今、彼女は黒弦とともに、

「観察団」の一員として猫目支配区に入ることになった。

 

京都側も人員を派遣した。

 

千夏は選ばれなかった。

 

彼女はただの一般学生だったからだ。

 

しかし彼女の祖母が関わっていたコミュニティ菜箱記録が、

随行資料の中に組み込まれた。

 

千夏は初めて本気で実感した。

 

東京と京都が、今、本気で猫目と「接触」しようとしていることを。

 

戦闘ではなく、

観察だ。

 

そして猫目の反応は、驚くほど速かった。

 

名簿が確定してから二十四時間も経たないうちに、

北海道の一部接待区域が再び開放された。

地方列車の時刻表が更新された。

接待旅館の空室が完了した。

地方のコンビニですら、補充を始めた。

 

東京の情報部門が見たとき、

全員の背筋が凍った。

 

これは、喵佐が最初から東京が同意することを予測していたことを意味していた。

 

本当に背筋を凍らせたのは、

猫目が送ってきた「旅行注意事項」だった。

 

そこには、細かく書かれていた。

 

食事の基準。

宿泊の基準。

禁止事項。

夜間の活動区域。

撮影許可区域。

医療ポイントの位置。

地方の接待責任者。

 

そして最後に一文。

 

「猫目支配区内において、随行する互助会メンバーに対して積極的な妨害を行わないこと。」

 

東京は、この一文を長い時間、沈黙して見つめていた。

 

これはつまり、

喵佐が、

地方の術師たちに、互助会に対する敵意を一時的に抑えるよう命じていることを意味していた。

 

旅行を完遂させるためだけに。

 

ソレンセンはこの状況に、

ますます苛立っていた。

 

「行くな。」

 

ここ数日で、彼が最も繰り返した言葉だった。

 

「以前は『この弱小世界の勝手なことだ』と言っていたくせに。」

 

「今は違う。」

 

黒海が激しく翻弄された。

 

「あの化け物が、何かを準備している。」

 

「知っているのか?」

 

「知らない。」

 

ソレンセンが初めて「知らない」と認めた。

 

「しかし、あまりにも静かすぎる。」

 

「それは君を釣ろうとしているようには見えない。」

 

「むしろ——」

 

彼は言葉を止めた。

 

私は低く聞いた。

 

「むしろ何だ?」

 

黒海が長い時間、沈黙した。

 

それから、低く言った。

 

「まるで、本気で客人を招待しているようだ。」

 

この一言が、逆に私をさらに寒くさせた。

 

なぜなら、ソレンセンまでが、

何かおかしいと感じ始めていたからだ。

 

東京内部は、狂ったように準備を始めた。

 

予備の撤離ポイント。

緊急術式信号。

仮死予案。

港区での接応。

海外連絡。

 

さらには、

もし私が猫目支配区で一定時間以上連絡を絶ったら、

東京がどのような状態に入るべきかまで、

細かく決め始めた。

 

全員がすでに暗黙の了解をしていた。

 

この旅行は、いつでも惨事になり得る。

 

しかしその一方で、

東京の住民が初めて本気で「外からの消息」を期待し始めた。

 

北海道の冬が今どうなっているのかを知りたいと言う者。

地方の学校がまだ残っているのかを知りたいと言う者。

猫目支配区にも、菜箱や限電、貯水をしている人がいるのかを知りたいと言う者。

 

東京は今、

本当の「外側」を、

強く必要としていた。

 

たとえその外側が猫目に属していても。

 

出発前日。

 

藍橋小劇場が珍しく再び明かりをともした。

 

公演のためではない。

 

見送りのためだった。

 

多くの互助会メンバーが来た。

 

緊張している者もいれば、

興奮している者もいた。

 

中には、すでに服を整理し始めている者もいた。

 

なぜなら、彼らは何年も故郷に帰っていないからだった。

 

誰かが小さな声で聞いた。

 

「北海道のあたりは、今でも雪が降っているのかな?」

 

別の者が言った。

 

「仙台の海辺は、もう修復されているだろうか。」

 

誰も答えられなかった。

 

なぜなら、誰も知らなかったからだ。

 

榊真理が入口に立って、

増え続ける人々を見ていた。

 

彼女は忽然と、低く言った。

 

「これはもう、旅行団のようには見えない。」

 

佐野美紀がそれらの人々を見た。

 

「まるで、里帰り団だ。」

 

小野寺が低く補った。

 

「人質団のようでもある。」

 

空気が一瞬、静かになった。

 

なぜなら、その言葉もまた本当だったからだ。

 

私は藍橋の裏口に立って、

東京の夜景を見ていた。

 

遠くの灯りはまだ暗い。

港区の海風は冷たい。

屋上の菜箱の小さな明かりが灯っている。

 

撤離計画の書類は、すでに本のように厚くなっていた。

 

一方で、

猫目はすでに私たちのために、

列車と旅館と道と接待要員を用意していた。

 

まるで本当に客を待っているかのように。

 

携帯が忽然と震えた。

 

新しいメッセージ。

 

番号は表示されていない。

 

ただ一文だけだった。

 

東京の外へ、ようこそ。

 

私はその一行を見つめ、

長い時間、動けなかった。

 

なぜなら、私は忽然と気づいたからだ。

 

行くことを決めたその瞬間から、

東京と喵佐の間の戦争は、

すでに新しい段階に入っていた。

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