俺の頭の中に敗北した暗黒の王が住み着いているが、俺はただギターを弾きたいだけだ   作:arctichare

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第13章 修学旅行の通知、そして京都駅のロッカーに入っていた赤いフィルム

 

 

第十三章 修学旅行の通知、そして京都駅のロッカーに入っていた赤いフィルム

 

聯合公演がまだ来ないうちに、学校がもう一つの打撃をくれた。

 

担任の先生が講台に立ち、笑いながら発表した。

 

「来月の修学旅行、場所が決まりました。三泊四日、京都と奈良です」

 

教室が一気に賑やかになった。

 

誰かが清水寺の話を小声でし、誰かが嵐山に行きたいと言い、誰かが夜のホテルで遊ぶゲームの相談を始めていた。

 

私は隅に座り、表情は平静を保っていた。

 

内心は死んでいた。

 

修学旅行。

 

三泊四日。

 

同じクラスの生徒たちと行動を共にする。

 

新幹線に乗り、同じホテルに泊まり、昼はグループで観光し、夜は集団行動。

 

つまり、私は自分の部屋、AfterTone、余響楽団、そして比較的安全な逃げ場から引きずり出され、同年代の人間と集団行動と社交圧力の巨大な釜の中に放り込まれることになる。

 

私はすでに想像できていた。

 

集合時に位置を間違えること。

 

自由行動でグループについていけないこと。

 

夕食時にどこに座ればいいかわからないこと。

 

ホテルの部屋で他の人が話している中、私は枕を抱えて自分を無生物の家具だと装うこと。

 

これは修学旅行ではない。

 

三泊四日の公開処刑だった。

 

ソレンセンが意識の奥で口を開いた。

 

「また恐怖しているな」

 

私はノートブックの端に意味のない線を引いていた。

 

「今回は合理的な恐怖です」

 

「お前は同行者、宿泊、会話、食事、集合を恐れている」

 

「それを並べないでください」

 

「本当に惨めだな」

 

その声には冷たい嘲りが混じっていた。

 

「お前は臨海地下共同溝で霊脈汚染を抑え、銀座地下で願望汚染を切り裂いた。それなのに、ここでは同年代の人間と一緒に食事をすることを恐れている」

 

私は反論したかった。

 

しかし反論できなかった。

 

なぜなら、一緒に食事をするのは本当に怖かったからだった。

 

特に、いつ話せばいいのか、いつ笑えばいいのか、いつお皿を渡せばいいのかを判断しながら食べるのは。

 

これらの複雑さは、汚染核を封印するのと大差ない。

 

いや、もっと高いかもしれない。

 

担任の先生が続けた。

 

「今回の修学旅行はグループ単位で行動します。具体的なグループ分けは午後に発表します。各グループは事前に自由行動のルートを提出する必要があります」

 

私は手に持っていたペンを止めた。

 

グループ分け。

 

自由行動ルート。

 

これらの言葉は、氷の釘のように私の精神に突き刺さった。

 

普通の高校生なら興奮するだろう。

 

私は自分が「現実」という名の舞台に突き飛ばされ、しかも逃げ道がないことを感じた。

 

放課後、私はAfterToneへ行った。

 

今日は正式な練習ではなく、日和が合同公演の曲順を確認したいと言っていた。

 

楽屋のドアを押したとき、朝倉日和が机の前で計画表を書いていた。

 

桜庭陽菜が隣で宣伝用のラフを見ていて、黒瀬澪がソファに寝転がり、人生の目標を失ったベース魚のような顔をしていた。

 

私が入ると、陽菜がすぐに手を振った。

 

「小音! 君の学校も修学旅行があるの?」

 

私は固まった。

 

「え、どうしてわかるんですか?」

 

「さっき、同じ学校の友達がSNSに投稿してたから!」

 

友達。

 

私はクラスに「友達」と呼べる人はいないはずだった。

 

だから陽菜が見たのは、同じ学校の生徒の投稿だろう。

 

しかし彼女が自然に「友達」という言葉を口にできることは、あまりに眩しすぎた。

 

私は頷いた。

 

「うん……京都と奈良です」

 

日和が笑った。

 

「いいね、京都は修学旅行にぴったりだよ」

 

澪が体を起こした。

 

「京都には美味しいものがある」

 

陽菜が興奮して言った。

 

「抹茶! 八ツ橋! 湯豆腐!」

 

日和が私を見た。

 

「小音は楽しみじゃないの?」

 

私は顔を伏せた。

 

「わ、私は集団行動がちょっと……心配で……」

 

日和はまるで完全に理解したように頷いた。

 

「そうだよね。三泊四日は小音にとってプレッシャー大きいよね」

 

理解してもらえたことが、急に泣きたくなった。

 

澪が真面目な顔で言った。

 

「お菓子を十分に持って行け」

 

陽菜が補足した。

 

「モバイルバッテリーも!」

 

日和が言った。

 

「ルート表を事前に準備しておけば、少し安心できると思う」

 

彼女たちは本気で、私に普通の修学旅行のアドバイスをしてくれていた。

 

普通すぎて、心のどこかが少し温かくなった。

 

しかしすぐに、スマホが震えた。

 

特調室からの暗号化メッセージだった。

 

---

 

修学旅行で京都・奈良へ行くことを把握した。

 

関西エリアは京都旧結界管理委員会が管轄しており、東京特調室は直接的な常駐支援を展開できない。

 

安全のため、耳クリップを着用すること。異常がなければ行動不要。

 

---

 

私は画面を見つめ、心がゆっくりと沈んでいくのを感じた。

 

異常がなければ。

 

この前提は、まるで呪いのようだった。

 

ソレンセンが低く笑った。

 

「ようやく東京を離れるか」

 

私は心臓が一瞬、止まるのを感じた。

 

「嬉しいんですか?」

 

「当然だ」

 

その声は低く、愉悦に満ちていた。

 

「東京にはお前を狙う目が多すぎる。東京を離れることは、旧い規則が弱まり、新しい規則がまだお前を縛っていないことを意味する」

 

「私はただ修学旅行に行くだけです」

 

「お前は暗面が学校の行程を尊重するとでも思っているのか?」

 

私は答えなかった。

 

なぜなら、絶対に尊重しないからだった。

 

日和が私の表情に気づいた。

 

「小音?」

 

私はすぐにスマホを胸に押し当てた。

 

「な、何でもないです! ただ学校から準備するものを通知されただけです」

 

これはまた、半分本当で半分嘘の言葉だった。

 

私は今、ますますこの手の言葉が上手くなっていた。

 

これは良くないことだった。

 

陽菜が近づいてきた。

 

「旅行の持ち物リスト、一緒に作ってあげようか?」

 

私は一瞬、固まった。

 

「いいんですか?」

 

「もちろん!」

 

彼女は紙を取り、書き始めた。

 

着替え。

 

パジャマ。

 

洗面用具。

 

スマホ充電器。

 

常備薬。

 

傘。

 

予備のピック。

 

日和が補足した。

 

「耳栓もあった方がいい。集団宿泊はうるさいかもしれない」

 

澪が言った。

 

「お菓子」

 

日和が「少量のお菓子」と書いた。

 

澪が眉を寄せた。

 

「なぜ少量?」

 

「修学旅行なんだから、引越しじゃないでしょ」

 

私は彼女たちが本気で話し合っている様子を見て、特調室のメッセージで湧き上がっていた寒さが少しだけ引いた気がした。

 

もしこれがただの普通の修学旅行だったら、どんなに良かっただろう。

 

本当に。

 

もし三日間、私がただ緊張し、迷子になり、社交に失敗し、ホテルの隅でこっそりお菓子を食べるだけなら、それこそが幸福だったかもしれない。

 

しかしその夜、特調室からもう一つの資料が送られてきた。

 

タイトルは、

 

関西地区における最近の映像媒体異常事件簡報

 

私は開いた。

 

最初の行を見て、指が冷たくなった。

 

京都駅および周辺エリアで、過去十日間に三件の「空白映像」事件が発生した。

 

空白映像。

 

白鏡監督。

 

私はその数文字を凝視し、胃が少しずつ縮むのを感じた。

 

資料には簡潔に書かれていた。

 

一件目:観光客が京都駅の階段を撮影したところ、再生時に画面が真っ白になり、その後カメラの所有者が短時間記憶を失った。

 

二件目:ある学校の修学旅行生が夜の街を撮影した動画に白い人影が写っていたが、同行者全員が現場でその人影を見ていなかった。

 

三件目:駅のロッカーの中に赤いフィルムが発見された。フィルムは現像できなかったが、持続的に微弱な映像汚染を放出していた。

 

赤いフィルム。

 

私はさらに下を読んだ。

 

最後の段落にこう書かれていた。

 

京都旧結界管理委員会は、事件がまだ公開介入レベルに達していないと判断している。東京特調室は、この異常が「白鏡監督」と関連している可能性があると見ている。あなたが普通の生徒として現地に入るため、原則として積極的な接触は推奨しない。

 

原則として推奨しない。

 

また「原則として」か。

 

私は今、この言葉を見ると頭が痛くなった。

 

ソレンセンが闇の中で口を開いた。

 

「ついてきたな」

 

私は低く言った。

 

「偶然かもしれない」

 

「お前は信じていない」

 

「……」

 

はい。

 

信じていなかった。

 

白鏡監督はすでにAfterToneに空白フィルムを送ってきた。

 

今、京都で赤いフィルムが出現した。

 

そして私はちょうど京都へ修学旅行に行く。

 

これは偶然のようには見えなかった。

 

むしろ、招待状のように見えた。

 

あるいは、次の撮影通知のように。

 

修学旅行当日の朝、東京駅で集合した。

 

私はバッグを背負い、小さめのギターバッグを抱えていた。

 

学校は本来、楽器の持ち込みを推奨していなかったが、私は夜に静かに指の練習をする必要があると申請し、最終的に折りたたみ式の旅行用ギター一本だけが許可された。

 

実はこれを持っていくのは、練習のためだけではなかった。

 

ギターが側にないと、私はもっと不安になるからだった。

 

耳クリップは左耳に付けていて、見た目は普通のワイヤレスイヤホンアクセサリーだった。

 

特調室は、これで軽微な汚染を検知でき、緊急時には東京分室と連絡が取れると言っていた。

 

しかし東京を出れば、支援は遅くなる。

 

特に、京都旧結界管理委員会が東京特調室の直接介入を快く思っていない可能性があった。

 

簡単に言えば。

 

もし何か起これば、私はかなり長い時間、自分でしのぐことになるだろう。

 

ソレンセンはこのことについて、こう評価した。

 

「ようやくそれらしい」

 

私は心の中で言った。

 

「私は少しもそれらしくないと思います」

 

「一人で危険に向き合うことで、本当の選択が迫られる」

 

「私はただ普通に修学旅行をしたいだけです」

 

「もう普通の人間ではない」

 

私は顔を伏せ、それ以上返事をしなかった。

 

クラスメイトたちはとても興奮していた。

 

誰かが写真を撮り、誰かが弁当を買い、誰かが座席の相談をしていた。

 

私はできるだけ列の端に自分を縮めようとした。

 

担任の先生が点呼を終えた後、グループ分けを発表した。

 

私は第三グループに分けられた。

 

グループには四人いて、私以外に女子二人と男子一人がいた。

 

彼らは悪い人間ではなかった。

 

むしろ穏やかだった。

 

しかしこれが私の緊張を和らげることはなかった。

 

そのうちの一人の女子は森原葵といい、話すのが上手く、クラスメイトの多くと仲が良さそうだった。

 

彼女が笑顔で私に言った。

 

「白川さん、この三日間よろしくお願いします」

 

私はすぐに頭を下げた。

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

声が大きすぎた。

 

動作が硬すぎた。

 

森原さんが一瞬、固まった後、笑った。

 

「大丈夫、そんなに緊張しなくていいよ」

 

ありがとうございます。

 

しかしこの言葉は、たいてい私をさらに緊張させる。

 

新幹線の中で、私は窓側の席に座った。

 

これは私が自ら選んだ席だった。

 

窓側なら、片側だけ人間と向き合えばよかった。

 

真ん中に挟まれるより安全だった。

 

森原さんが隣に座り、私に聞いた。

 

「白川さん、京都は好き?」

 

私の脳が高速回転を始めた。

 

好き?

 

嫌い?

 

どう答えればいいのか?

 

私は以前、京都にはあまり行ったことがなかった。

 

しかし「わからない」と言うと、話題が硬く終わってしまうかもしれない。

 

「好き」と言うと、どこが好きかとさらに聞かれるかもしれない。

 

私は結局、小声で言った。

 

「私は……静かな場所が好きです」

 

森原さんが頷いた。

 

「なら京都は向いていると思うよ」

 

もし普通の京都なら、そうかもしれない。

 

もし白鏡監督も、赤いフィルムも、旧結界管理委員会もなければ、もっと向いているだろう。

 

車窓の景色が後ろへ飛んでいく。

 

東京が遠ざかっていく。

 

私は突然、主場を離れるような感覚を覚えた。

 

東京が私にとって主場だとは思っていなかった。

 

しかし少なくとも、そこにはAfterToneがあった。

 

日和たちがいた。

 

特調室の東京分室があった。

 

白妙神社と神代鈴音がいた。

 

京都には何もなかった。

 

ただ一つの簡報と、存在するかもしれない赤いフィルム、そして私の体の中にいるソレンセンだけだった。

 

この組み合わせは、笑いたくなるほど最悪だった。

 

午後、修学旅行の列が京都駅に到着した。

 

京都駅はとても大きかった。

 

本当に大きかった。

 

ガラスと鉄骨、階段と照明、人々の流れ。

 

古都というイメージとは全く違う、現代的な駅だった。

 

クラスメイトたちは興奮して写真を撮っていた。

 

先生が集合するよう注意した。

 

私は列の端に立ち、耳クリップが突然、軽く震えた。

 

通信ではない。

 

汚染警報だった。

 

とても軽く。

 

まるで誤作動のようだった。

 

私は体を硬くした。

 

ソレンセンが低く言った。

 

「左前方」

 

私はゆっくりとそちらを見た。

 

駅のホールのある場所に、投げ銭式のロッカーが一列並んでいた。

 

そのうちの一つのロッカーの隙間から、赤いものが少し覗えていた。

 

不自然なほど赤かった。

 

まるで血のようでもあり、フィルムケースのようでもあった。

 

私はすぐに視線を逸らした。

 

あまり長く見つめてはいけない。

 

先生に気づかれてはいけない。

 

クラスメイトに気づかれてはいけない。

 

森原さんが聞いた。

 

「白川さん、どうしたの?」

 

私は首を振った。

 

「な、何でもないです」

 

耳クリップから、非常に軽い電流音が聞こえた。

 

その後、東京特調室の調査員の声がした。

 

「あなた付近で微弱な映像汚染を検知しました。状況は?」

 

私は低く言った。

 

「京都駅のロッカーです。おそらく赤いフィルムです」

 

「触らないでください。京都側に連絡します」

 

「どれくらいかかりますか?」

 

「京都旧結界管理委員会の対応は不透明です。まずは普通の生徒の身分を保ってください」

 

普通の生徒の身分を保つ。

 

言うのは簡単だった。

 

しかし問題は、あのものがすぐ近くにあるということだった。

 

周囲には普通の人間がいた。

 

観光客。

 

学生。

 

会社員。

 

もし今、あれが起動したらどうなるのか?

 

もし誰かがロッカーを開けたらどうなるのか?

 

もしクラスメイトが写真を撮りに行ったらどうなるのか?

 

ソレンセンが静かに言った。

 

「お前は見なかったふりをするつもりか?」

 

私はバッグの肩紐を握りしめた。

 

「支援を待っています」

 

「支援は来ると思うか?」

 

「……」

 

「答えはわかっているだろう」

 

私は歯を食いしばった。

 

そのとき、担任の先生が言った。

 

「みんな先にバスの集合場所へ。荷物はホテルにまとめて運ぶ。自由行動は明日からだ」

 

列が動き始めた。

 

私は数歩ついて行った後、足を止めた。

 

ロッカーの近くに、小さな男の子が母親の手を引いて、あの列のロッカーを指差していた。

 

彼は赤いフィルムケースを見たようだった。

 

いけない。

 

私は待てなかった。

 

私は手を挙げた。

 

「先生……」

 

声が小さすぎた。

 

先生は聞こえなかった。

 

森原さんが聞いた。

 

「白川さん?」

 

私は顔色を失いながら、必死に普通の理由を考えた。

 

普通の理由。

 

普通の理由。

 

普通の理由。

 

「わ、わたし、さっきの場所に物を忘れてきたみたいです!」

 

この言葉を口にした瞬間、私は内疚でその場に跪きそうになった。

 

先生が聞いて、眉を寄せた。

 

「大事な物か?」

 

私は頷いた。

 

「耳、耳ホンのケースです」

 

森原さんが言った。

 

「私も一緒に行こうか?」

 

「い、いりません! すぐ戻ります!」

 

先生が時計を見た。

 

「早くして。三分以内に戻ってくること」

 

三分。

 

わかった。

 

私はロッカーの方向へ歩き始めた。

 

一歩一歩が、薄氷を踏むようだった。

 

普通の人間が私の横を通り過ぎた。

 

誰も、あのロッカーの中に汚染があるかもしれないことを知らなかった。

 

小さな男の子が、もうロッカーの前に近づいていた。

 

私は急いで足を速め、彼とロッカーの間に割って入った。

 

「そ、その……」

 

母親が私を見た。

 

「どうしたの?」

 

私の脳が真っ白になった。

 

どうすればいい?

 

どうやって彼らを遠ざければいい?

 

ソレンセンが冷たく言った。

 

「彼らを恐怖させろ」

 

だめです。

 

「なら、嘘をつけ」

 

私は低く言った。

 

「ここ……水が漏れているみたいで、服が汚れるかもしれません」

 

母親が下を見た。

 

もちろん、地面に水などなかった。

 

しかしその瞬間、私の靴先から一滴の黒紫色の影が滑り出た。

 

それは異常にはならなかった。

 

ただ、地面の光が少し湿っているように見えるようにしただけだった。

 

ソレンセンが低く笑った。

 

「借りたのか」

 

私は心臓が一瞬、締めつけられるのを感じた。

 

しかし今は、そんなことを考えている暇はなかった。

 

母親が眉を寄せ、小さな男の子を引いて後ずさった。

 

「教えてくれてありがとう」

 

彼らは去っていった。

 

私は大きく安堵した。

 

しかし次の瞬間、ロッカーの扉が自分から少し開いた。

 

中には一つの赤いフィルムケースが置かれていた。

 

フィルムケースには白いラベルが貼られていて、そこにはこう書かれていた。

 

第二幕:古都独行

 

私の背中が一瞬で冷たくなった。

 

第二幕。

 

つまり、AfterToneが第一幕だったのか?

 

白鏡監督は本当に、一つの「作品」を撮影していた。

 

そして今、彼は舞台を東京から京都へ移した。

 

耳クリップの中で、調査員の声が急になった。

 

「白川さん、そこから離れてください。京都側が連絡を取っています」

 

しかしフィルムケースが回転し始めた。

 

カチリ。

 

カチリ。

 

カチリ。

 

駅ホールのガラス壁に、白い影が現れた。

 

彼は人混みの後ろに立っていた。

 

手に古い映画用のカメラを持っていた。

 

レンズが私の方を向いていた。

 

普通の人間は反応しなかった。

 

まだ、反応していなかった。

 

しかし彼が続けば、誰かが気づくかもしれない。

 

私は低く言った。

 

「条件」

 

ソレンセンの声がすぐに返ってきた。

 

「ようやくか」

 

「第一、体を乗っ取ることは禁止です」

 

「できる」

 

「第二、普通の人間を傷つけないでください」

 

「できる」

 

「第三、クラスメイトや先生、周囲の人に異常を知られてはならない」

 

「できる」

 

「第四、このフィルムケースと駅のガラスに繋がった投影だけを封じ、相手の本体を追跡しないでください」

 

ソレンセンが明らかに不満そうに冷たく笑った。

 

「また追わないのか?」

 

「ここは京都駅です」

 

「だから?」

 

「普通の人間が多すぎます」

 

「だからこそ、早くすべきだ」

 

「私の規則通りに」

 

黒海が荒れた。

 

金色の鎖が軽く震えた。

 

契約成立。

 

私は拨片をポケットから取り出した。

 

しかし今回は、ギターを使うことはできなかった。

 

だから私は、ただ指で軽く拨片を弾いた。

 

音は出なかった。

 

しかしソレンセンの力が、極めて細い黒い線に圧縮され、私の影から伸びていった。

 

それは地面に貼りつき、ロッカーの中に滑り込んだ。

 

赤いフィルムケースが激しく震えた。

 

駅のガラスの中の白い影が、カメラを持ち上げた。

 

私は白鏡監督の声が聞こえるのを感じた。

 

「ここはいい光だな」

 

私は歯を食いしばった。

 

「撮らないで」

 

「これはロケ撮影だ」

 

「私は同意していません」

 

「主人公はよくそう言う」

 

黒い線が収縮した。

 

赤いフィルムケースの表面に亀裂が入った。

 

私はすぐに付け加えた。

 

「爆発させないで! 封じて!」

 

ソレンセンが不満そうに鼻を鳴らした。

 

「お前は毎回、チャンスを無駄にしている」

 

「封じて!」

 

黒い線はフィルムケースを捏ね潰さず、一周ずつ小さな黒い繭に巻いていった。

 

駅のガラスの中の白い影が、徐々に消えていった。

 

最後の瞬間、彼はカメラを私の顔に向けた。

 

「今夜、ホテルで会おう」

 

私は全身が固まった。

 

次の瞬間、フィルムケースが回転を止めた。

 

汚染反応が低下した。

 

ロッカーが普通に戻った。

 

私は黒い繭をロッカーから取り出し、ハンカチで包んで、バッグの一番底に押し込んだ。

 

耳クリップから調査員の声が聞こえた。

 

「汚染が低下しました。何をしたんですか?」

 

「一時的に封じました」

 

「目標に接触したのか?」

 

「状況が緊急だったんです」

 

電話の向こうが二秒ほど静かになった。

 

「了解しました。以後、単独行動は避けてください。京都側が……」

 

通信が突然、途切れた。

 

信号が悪いわけではなかった。

 

切断されたのだ。

 

耳クリップの中には、ざらざらとした音だけが残った。

 

それから、見知らぬ女性の声がした。

 

「東京の協力者、京都で勝手に力を使わないでください」

 

私は固まった。

 

「誰ですか?」

 

「京都旧結界管理委員会、監察員、七条です」

 

声はとても冷たかった。

 

「これより、あなたが京都で行うすべての異常行動は、本委員会の監督を受けることになります」

 

私は京都駅の人混みの中に立ち、手足が冷たくなっていくのを感じた。

 

良かった。

 

新しい組織。

 

新しい規則。

 

新しい面倒事。

 

ソレンセンが闇の中で愉快そうに笑った。

 

「面白い」

 

「東京の外は、やはり賑やかだな」

 

私は少しも面白くなかった。

 

なぜなら、遠くで先生が私の名前を呼んでいたからだった。

 

「白川さん! まだ終わらないの?」

 

私は慌てて振り返った。

 

「は、はい!」

 

私は顔を伏せて列に戻った。

 

森原さんが私を見た。

 

「見つかった? 耳ホンのケース」

 

私は一瞬、固まった。

 

耳ホンのケース。

 

そう。

 

さっき私が嘘をついたやつだ。

 

「み、見つかりました」

 

森原さんが笑った。

 

「よかった。さっき白川さん、顔色がすごく悪かったから、心配したよ」

 

「大丈夫です……」

 

私はバッグの肩紐を強く握りしめた。

 

バッグの中では、赤いフィルムが黒い線で封じられていた。

 

耳クリップの中では、京都監察員の声はすでに消えていた。

 

特調室の東京分室とも連絡が取れなくなっていた。

 

白鏡監督は今夜、ホテルで会うと言った。

 

そして私のクラスメイトたちは、夕食に何を食べようかと話し合っていた。

 

これが、私の修学旅行初日だった。

 

開始から一時間も経たないうちに、私は駅のロッカーの中の汚染フィルムを処理し、京都旧結界管理委員会と揉め、白鏡監督に夜間の撮影を予告されていた。

 

私は窓の向こうを見た。

 

京都の空がゆっくりと暗くなり始めていた。

 

普通の生徒の修学旅行は、これから夜に入っていく。

 

そして私は知っていた。

 

本当に面倒な部分は、これから始まるのだと。

 

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