俺の頭の中に敗北した暗黒の王が住み着いているが、俺はただギターを弾きたいだけだ   作:arctichare

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第16章 奈良旧映像資料館の地下、そして真壁玄周の終局

 

第十六章 奈良旧映像資料館の地下、そして真壁玄周の終局

 

夜の十時半、修学旅行の点呼が終わった。

 

先生は明日東京へ戻ることを確認し、部屋に戻って休むよう注意した。

 

私は部屋に戻り、森原葵が心配そうに私を見ているのを無視して、ベッドに横たわった。

 

彼女は昼間の出来事をすべて見ていた。

 

黒いスーツの人々、私の異常な反応、そして私が「先に行って」と彼女に言ったこと。

 

しかし彼女は、何も聞かなかった。

 

ただ、静かに言っただけだった。

 

「白川さん、もし本当に何かあったら、先生に言った方がいい」

 

私は顔を伏せ、頷いた。

 

「はい」

 

嘘だった。

 

先生に言えるはずがなかった。

 

先生に言えるようなことなら、最初から私はこんなことをしていなかった。

 

十一時半、私は再び部屋を抜け出した。

 

今回は、森原葵は目を覚まさなかった。

 

彼女は昨夜よりずっと疲れていた。

 

あるいは、彼女はもう私に尋ねる勇気がなくなっていたのかもしれない。

 

エレベーターの前で、七条が待っていた。

 

彼女は今日よりさらに冷たい表情をしていた。

 

「君は本当に行くつもりだな」

 

私は頷いた。

 

「はい」

 

「京都管理委員会は旧映像資料館を包囲した。外部の映像傀儡はすべて除去済みだ」

 

「真壁玄周は?」

 

「地下にいる」

 

七条が私を見た。

 

「彼は君を待っている」

 

「わかっています」

 

「しかし彼が準備したのは、昨夜の比ではない」

 

彼女の声が低くなった。

 

「百目影倉の核心が完全に起動している。奈良周辺の霊脈がすでに影響を受け始めている」

 

私は指先が冷たくなるのを感じた。

 

「普通の人間は気づいていますか?」

 

「まだ大規模な認知汚染は発生していない。しかし、夜の街を撮影した観光客の動画に、すでに異常な残像が現れ始めている」

 

つまり、時間があまり残っていないということだ。

 

七条が続けた。

 

「京都方は外部から強行突破する。君は単独で入るな」

 

「もし入らなければ?」

 

彼女は答えなかった。

 

答えを知っていたからだった。

 

もし入らなければ、真壁玄周は本当に百目影倉を起動させるかもしれない。

 

七条は最後に、低く言った。

 

「白川一音、生きて戻ってこい」

 

この言葉は、彼女が今まで私に言った中で、最も感情のこもったものだった。

 

私は顔を伏せ、頷いた。

 

「はい」

 

旧映像資料館の入口は、すでに完全に封鎖されていた。

 

京都管理委員会の符紙と結界が外壁を覆い、普通の人間が近づけないようにしていた。

 

七条が私に小型の符鍵を渡した。

 

「これで地下の隠し通路に入れる。内部の結界は解除されていないから、君が自分で切断する必要がある」

 

私はそれを受け取った。

 

「ありがとうございます」

 

「感謝するな」

 

彼女の声は冷たかった。

 

「これは協力ではない。これは、君が自ら危険に飛び込むことを、京都方が阻止できなかったという事実だ」

 

私は頷いた。

 

「わかっています」

 

私は符鍵を使って、資料館の裏手の壁に開いた小さな通路に入った。

 

通路は狭く、湿っていて、埃と古いフィルムの匂いがした。

 

私は一人で歩いた。

 

七条と京都方の人員は外部に留まり、強行突破の準備をしていた。

 

彼らは外部の防御を突破するのに時間がかかるだろう。

 

真壁玄周はそれを知っていた。

 

だからこそ、彼は私を単独で入らせるように仕向けた。

 

通路の奥で、私は地下三階の隠し扉を見つけた。

 

扉の向こうから、極めて静かな音が聞こえてきた。

 

まるで無数の古い映写機が同時に回っているような音だった。

 

私は拨片を握りしめた。

 

「条件」

 

ソレンセンの声がすぐに返ってきた。

 

「今夜は、制限を少なくしてもいいか?」

 

「だめです」

 

「お前は本当に頑固だな」

 

「第一、体を乗っ取ることは禁止です」

 

「できる」

 

「第二、殺さないでください。真壁玄周も含めて」

 

「彼はお前を殺そうとしている」

 

「だめです」

 

「できる」

 

「第三、普通の人間の視線の残片を吞まないでください」

 

「できる」

 

「第四、百目影倉の核心を直接破壊せず、京都方が回収できる形に留めてください」

 

ソレンセンが冷たく笑った。

 

「また掃除道具か?」

 

「約束してください」

 

「できる」

 

金色の鎖が震えた。

 

契約成立。

 

私は扉を開けた。

 

地下は、昨夜よりずっと広かった。

 

無数の棚が暗闇の奥まで続いていた。

 

棚には無数のフィルムケース、カメラ、ビデオテープ、鏡、写真、投影機材が置かれていた。

 

しかし今回は、それらがすべて赤い糸で繋がれていて、赤い糸は中央の巨大な円形空間へと集まっていた。

 

円形空間の中心に、真壁玄周が座っていた。

 

彼の周囲に、数百体の映像傀儡が立っていた。

 

傀儡は昨夜のものよりずっと精巧で、顔も表情もはっきりしていた。

 

まるで本物の人間のようだった。

 

彼の後ろに、巨大な銀色の球体があった。

 

球体は無数のレンズとフィルムでできていて、それぞれのレンズの中に、異なる普通の人間の映像が流れていた。

 

観光客。

 

学生。

 

修学旅行生。

 

カメラマン。

 

地元の人。

 

老人。

 

子供。

 

彼らは笑ったり、写真を撮ったり、鹿に餌をあげたり、夜の街を歩いたりしていた。

 

それらの映像は、すべて奈良で今日撮影されたものだった。

 

真壁玄周が私を見て、穏やかに笑った。

 

「来てくれたか」

 

私は顔を伏せた。

 

「来ないわけにはいきませんでした」

 

「それは正しい判断だ」

 

彼が立ち上がった。

 

「白川一音さん、君は本当に貴重だ」

 

私はこの言い方が嫌だった。

 

本当に嫌だった。

 

「私は商品ではありません」

 

「もちろん」

 

真壁玄周が周囲の映像傀儡を指差した。

 

「見てみろ。これらはすべて、君のために準備したものだ」

 

私はそれらの傀儡を見た。

 

彼らは本当に精巧だった。

 

まるで本物の人間のように息をし、瞬きをし、動いていた。

 

しかし私は知っていた。

 

これらは本物の人間ではない。

 

ただ、鏡楽座が長年集めてきた不法媒体と怨念で作られた、極めて高価な人形に過ぎない。

 

「これらの傀儡の総製作費は、約十七億日元だ」

 

私はまた、理解できない金額を聞いた。

 

十七億。

 

真壁玄周が続けた。

 

「そしてこの百目影倉の核心は、三十七年にわたって蓄積された不法媒体でできている。総投入額は、保守的に見積もっても二百億日元を超える」

 

私はこの数字を聞いて、頭の中が真っ白になった。

 

二百億。

 

昨夜の資料館の地下で、私が破壊したのはその一部に過ぎなかった。

 

今夜、彼は本気で核心を動かした。

 

真壁玄周が私を見た。

 

「白川一音さん、君の力は本当に貴重だ」

 

「だから私は、君に一つの選択肢を与えよう」

 

私は拨片を握りしめた。

 

「選択肢?」

 

「そうだ」

 

彼が笑った。

 

「君が今夜ここで降伏し、鏡楽座と長期的な協力関係を結ぶなら、私はこの百目影倉を解体し、すべての不法媒体を京都管理委員会に引き渡す」

 

「そして君は、普通の生活に戻れる」

 

私は一瞬、固まった。

 

普通の生活。

 

この言葉は、まるで甘い毒のように私の心に染み込んでいった。

 

「しかし、もし君が抵抗するなら」

 

真壁玄周が指を鳴らした。

 

数百体の映像傀儡が同時に動いた。

 

彼らはすべて私の方を向いた。

 

「私はこの百目影倉を起動し、奈良のすべての観光客と学生の映像を、君の戦いの背景に変える」

 

私は全身が冷たくなった。

 

「そんなことをしても、あなたに何の得があるんですか?」

 

「芸術だ」

 

彼が穏やかに言った。

 

「私はただ、最高の舞台を見たいだけだ」

 

「そして君は、今夜、私に最高の舞台を与えてくれる」

 

私は歯を食いしばった。

 

「私は降伏しません」

 

「なぜだ?」

 

「なぜなら、あなたが言っている『普通の生活』は、すでに私のものではないからです」

 

真壁玄周が一瞬、静かになった。

 

それから笑った。

 

「なるほど」

 

「君はすでに、自分が普通の人間ではないことを理解している」

 

「違う」

 

私は顔を上げ、彼を見た。

 

「私はまだ、普通の人間でありたいと思っています」

 

「しかし、あなたがそれを許さないなら、私はあなたを止める」

 

真壁玄周の笑みが深くなった。

 

「では、始めよう」

 

数百体の映像傀儡が同時に私に突進してきた。

 

彼らはただの傀儡ではなかった。

 

それぞれが異なる術式を帯びていて、赤い糸で繋がれ、百目影倉の核心からエネルギーを供給されていた。

 

これは昨夜の比ではなかった。

 

これは本気の攻撃だった。

 

ソレンセンが低く笑った。

 

「ようやくそれらしくなってきた」

 

私は拨片を掲げた。

 

黒い弦が足元から広がった。

 

最初の弦。

 

映像傀儡の第一波がすべて断ち切れた。

 

彼らは崩れ落ち、赤い糸が切断された。

 

二番目の弦。

 

第二波の傀儡が同時に動作を停止した。

 

三番目の弦。

 

第四番目の弦。

 

第五番目の弦。

 

黒い弦が倉庫全体に広がり、赤い糸のネットワークを一本一本切断していった。

 

真壁玄周の顔色が変わった。

 

「ありえない……」

 

「これほどの速度で、百目影倉の術式を解体できるはずがない」

 

私は答えなかった。

 

なぜなら、説明できなかったからだった。

 

ソレンセンが意識の奥で静かに言った。

 

「彼らは吾の目を理解できない」

 

「彼らはお前の規則も理解できない」

 

「だからこそ、吾は楽しめる」

 

黒い弦が真壁玄周の周囲の傀儡をすべて切り裂いた。

 

所要時間は三十秒もかからなかった。

 

真壁玄周が後ずさった。

 

「君は……」

 

彼の声が震えていた。

 

「一体何者だ?」

 

私は顔を伏せ、拨片を握りしめた。

 

「白川一音です」

 

「私は余響楽団のギタリストです」

 

「私は普通の人間でありたいと思っています」

 

「しかし、あなたが私の普通を奪おうとするなら、私はあなたを止める」

 

真壁玄周が忽然と笑った。

 

笑みは歪んでいた。

 

「では、最後の幕を見せてやろう」

 

彼が黒い玉の指輪を掲げた。

 

百目影倉の核心が激しく震え始めた。

 

無数のレンズが同時に光を放ち、巨大な銀色の球体が回転し始めた。

 

「これは自爆陣だ」

 

真壁玄周が言った。

 

「もし起動すれば、すべての視線の残片が強制的に燃やされ、奈良全体に認知汚染が拡散する」

 

私は全身が冷たくなった。

 

「やめてください!」

 

「遅い」

 

彼が笑った。

 

「これはすでに起動した」

 

核心の表面に、無数の赤い点が現れ始めた。

 

自爆点だった。

 

千を超える自爆点が、同時に光り始めた。

 

ソレンセンが低く言った。

 

「今、引き裂かなければならない」

 

私は歯を食いしばった。

 

「だめです」

 

「時間がない」

 

「あります」

 

「お前にはない」

 

「あなたにはある」

 

私は目を閉じた。

 

「自爆点をすべて計算して」

 

ソレンセンの声に、危険な愉悦が混じった。

 

「いいだろう」

 

その瞬間、私の目の前の世界が変わった。

 

すべての赤い線、黒い線、汚染線、自爆線が、意識の中で展開された。

 

千二百七十八の自爆点。

 

それぞれが異なる層にあり、それぞれが異なる残片と繋がっていた。

 

普通の人間にはできない。

 

私にもできない。

 

しかしソレンセンには見える。

 

私には弦を弾ける。

 

「始めて」

 

黒い線が分裂した。

 

千二百七十八本の極めて細い黒い弦になった。

 

それぞれが一つの自爆点に対応していた。

 

真壁玄周の瞳孔が収縮した。

 

「ありえない……」

 

「こんな速度で、自爆陣を計算できるはずがない」

 

黒い弦が同時に拨断された。

 

爆発も、轟音もなかった。

 

ただ、ほとんど聞こえないほどの音がした。

 

まるで誰かが闇の中で髪の束を切ったかのような音だった。

 

百目影倉の自爆陣が停止した。

 

核心の表面の赤い光がすべて消えた。

 

それから、倉庫全体の術式構造が静かに崩れ始めた。

 

真壁玄周がその場に立ち、完全に茫然とした表情を浮かべた。

 

「あなたは……」

 

彼の声が枯れていた。

 

「一体何者だ?」

 

私は顔を伏せ、指が痛くて拨片を握りしめ続けるのも辛かった。

 

「白川一音です」

 

私は繰り返した。

 

「私はあなたの芸術ではありません」

 

「商品でもありません」

 

「役者でもありません」

 

「あなたの作品の主人公でもありません」

 

私は顔を上げ、彼を見た。

 

「私は余響楽団のギタリストです」

 

「私は普通の人間でありたいと思っています」

 

「しかし、あなたが私の普通を奪おうとするなら、私はあなたを止める」

 

真壁玄周が忽然と振り返り、逃げようとした。

 

しかし彼の後ろの暗い扉はすでに閉まっていた。

 

七条と京都管理委員会の人員が、外部から強行突破して中に入ってきていた。

 

真壁玄周は逃げられなかった。

 

七条が彼を拘束した。

 

「真壁玄周、不法映像媒体の収集、百目影倉の運用、大規模認知汚染の謀議などの容疑で、京都旧結界管理委員会が拘束する」

 

真壁玄周は彼女を見なかった。

 

彼はただ、私を見ていた。

 

その視線には、もうコレクターが作品を見る目はなかった。

 

ただ、純粋な恐怖だけがあった。

 

ソレンセンが意識の奥で静かに言った。

 

「見てみろ」

 

「これこそが境界だ」

 

私は顔を伏せ、答えなかった。

 

なぜなら、認めたくなかったからだった。

 

しかし私は確かに知っていた。

 

今夜から、鏡楽座は「下北沢黒弦」を恐れるだろう。

 

京都の退魔界も恐れるだろう。

 

東京特調室も再評価するだろう。

 

御影家も知るだろう。

 

私はまた、自分をより目立つ位置に押し上げてしまった。

 

普通を守るために、私は恐怖で壁を築いた。

 

そしてその壁こそが、ソレンセンが最も好むものだった。

 

百目影倉は爆発しなかった。

 

七条と京都方の後続部隊が現場を掌握した。

 

集められた視線の残片は、京都管理委員会と関連神社が時間をかけて浄化し、返還し、または安置するだろう。

 

これはとても長い作業になる。

 

しかし少なくとも、それらは燃やされて汚染になることはなかった。

 

真壁玄周は連行された。

 

鏡楽座の関西における最も重要な資産の一つが破壊された。

 

私は旧映像資料館の入口の階段に座り、指が痛くて拨片を握りしめ続けるのも辛かった。

 

七条が近づいてきて、温かいお茶の入った缶を私に手渡した。

 

私はそれを受け取った。

 

「ありがとう……」

 

彼女は横に立って、すぐに何かを言うことはしなかった。

 

長い時間が経ってから、彼女が言った。

 

「今夜、お前は鏡楽座の最も重要な資産の一つを破壊した」

 

私はお茶の缶を見つめていた。

 

「報復されるんですか?」

 

「普通ならされるだろう」

 

私の手が一瞬、震えた。

 

七条は続けた。

 

「しかし彼らは短期的に動けない」

 

「なぜです?」

 

「なぜなら、お前が使った時間が数分だったからだ」

 

彼女が資料館の地下入口を見た。

 

「彼らにとって、それは失敗ではない」

 

「理解できないほどの差だ」

 

私は沈黙した。

 

理解できないほどの差。

 

この言葉はとても強いように聞こえた。

 

しかし私は全く強者の実感を持っていなかった。

 

私はただ疲れていた。

 

怖かった。

 

寝たかった。

 

そして東京に帰りたかった。

 

七条が言った。

 

「京都管理委員会は今夜の消息を封鎖するが、完全に封じ込めることはできない。関西の退魔界はすぐに知るだろう。下北沢黒弦が単独で百目影倉を抑えたことを」

 

私は低く言った。

 

「その名前は広めないでください」

 

七条が私を見た。

 

「できない」

 

私はますます縮こまりたくなった。

 

彼女は続けた。

 

「しかし、白川一音という名前は引き続き秘匿される」

 

私は少しだけ安堵した。

 

「ありがとうございます」

 

七条が去る前に、忽然と足を止めた。

 

「白川一音」

 

私は顔を上げた。

 

「お前が今夜やったことは、敵を踏み潰しただけではない」

 

「お前は集められた視線の残片を守った」

 

彼女が私を見た。

 

「これは百目影倉を破壊するより、ずっと難しいことだった」

 

そう言って、彼女は振り返り、去っていった。

 

私は階段に座り、温かいお茶の缶を握りしめたまま、長い時間動かなかった。

 

ソレンセンが口を開いた。

 

「彼女はお前を褒めていた」

 

「うん」

 

「嬉しいか?」

 

「わからない」

 

「偽善者。お前は嬉しい」

 

私は顔を伏せた。

 

「少しだけ、かもしれません」

 

ソレンセンが静かに笑った。

 

「なら、覚えておけ」

 

「完全に破壊しなくても、勝てる場合もある」

 

私は一瞬、固まった。

 

これは彼が言いそうな言葉ではなかった。

 

「あなたは私の規則を認めているんですか?」

 

「違う」

 

その声がすぐに冷たくなった。

 

「吾はただ、お前の規則がゲームをより面白くすることを確認しただけだ」

 

やっぱりそうか。

 

しかし、構わなかった。

 

少なくとも今夜、私は彼を外に出さなかった。

 

彼らを殺さなかった。

 

普通の観光客を巻き込まなかった。

 

百目影倉を自爆させなかった。

 

私は勝った。

 

ソレンセンが望むような勝ち方ではなかった。

 

私の勝ち方だった。

 

ただ、代償として、私は関西の退魔界の目には、さらに恐ろしい存在として映るようになった。

 

しかし少なくとも今は、窓の向こうはまだ夜明け前だった。

 

普通の人間はまだ眠っていた。

 

ソレンセンはまだ黒海の王座に鎖で繋がれていた。

 

そして私の掌の中には、まだ黒い弦で磨り減って亀裂の入った拨片が握られていた。

 

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