俺の頭の中に敗北した暗黒の王が住み着いているが、俺はただギターを弾きたいだけだ   作:arctichare

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第34章 クラスの席替え表、そして押し込まれた普通の距離

第34章 クラスの席替え表、そして押し込まれた普通の距離

 

翌朝、クラスで席替えがあった。

 

これは本来、ありふれた学校行事にすぎなかった。

 

しかし私にとっては、ほとんど小さな災害に等しかった。

 

なぜなら席替えは、慣れ親しんだ安全区域が消えることを意味したからだ。

 

元々私は窓際の後ろから二番目の席に座っていた。

 

その位置は良かった。

 

左側が窓で、後ろには一列しかおらず、前方は黒板が見え、視線を避けたいときは窓の外を見ることができた。

 

教室を地図に例えるなら、そこは防御力の高い位置だった。

 

しかし担任が講壇に立ち、新しい席替え表を持って言った。

 

「みんながよりよく交流できるように、今回は少し席を調整します」

 

交流。

 

この二文字で私の指が冷たくなった。

 

人間はなぜこれほど「交流」を好むのか?

 

私は顔を伏せ、せめて端の席に座れることを祈った。

 

そして、私は新しい席替え表を見た。

 

私の名前の隣は森原葵だった。

 

これは良かった。

 

森原さんは穏やかで、私を無理に問い詰めるような人ではなかった。

 

しかし私の前の席は天城美咲だった。

 

斜め前は白石蓮だった。

 

九条綾音は私たちのクラスには入らなかったが、隣の教室で数科目を旁听することになっていた。

 

つまり、学校は彼ら全員を私のクラスに入れたわけではなかった。

 

それでも天城美咲は入ってきた。

 

理由は非常に普通だった。

 

短期旁听生はクラスに配置して授業を体験させる必要がある。

 

そして彼女が配置されたクラスが、たまたま私のクラスだった。

 

私は席替え表を見つめ、心臓がゆっくりと沈んでいくのを感じた。

 

たまたま。

 

この言葉は今や信用できなかった。

 

ソレンセンが意識の奥で低く笑った。

 

「彼女が君の前に座ったな」

 

私は顔を伏せた。

 

「ただの席だ」

 

「距離は線だ」

 

「わかっている」

 

「彼らは線を短くしようとしている」

 

私は筆箱の中の飴を強く握りしめた。

 

それは森原さんが昨日くれたものだった。

 

普通の飴。

 

普通すぎて、今では私の精神を安定させる道具になっていた。

 

私は新しい席に座ったとき、すでに天城美咲が前に座っていた。

 

彼女が振り返って私を見た。

 

「おはよう、白川さん」

 

声は大きくなかった。

 

とても普通だった。

 

周りのクラスメイトが変に思うような声ではなかった。

 

私は硬直したように頷いた。

 

「お、おはようございます」

 

彼女はそれ以上話しかけてこなかった。

 

ただ振り返って教科書を整理した。

 

行動だけを見れば、彼女は完全に境界を越えていなかった。

 

質問もしてこない。

 

天穹の話もしない。

 

特調室の話もしない。

 

下北沢黒弦の話もしない。

 

しかし彼女がそこに座っていること自体が、一本の線のように感じられた。

 

私が顔を上げれば、彼女の背中が見える。

 

彼女が少し首を傾げれば、私が見える。

 

これは攻撃ではない。

 

しかし私の教室を変えた。

 

そして、これが私を最も苦しめていた。

 

白石蓮は斜め前に座り、だるそうに机に突っ伏していた。

 

彼女は私の視線に気づいたのか、横を向いて私を見た。

 

それから口の動きだけで言った。

 

「緊張するな」

 

私はむしろより緊張した。

 

森原さんが私の隣に座り、小声で聞いた。

 

「白川さん、今回の席は大丈夫?」

 

私は頷いた。

 

「うん」

 

彼女が笑った。

 

「ならよかった」

 

彼女は本当にそう思っているようだった。

 

彼女にとっては、これはただの普通の席替えだった。

 

しかし私にとっては、教室全体の暗面構造が変わったように感じられた。

 

私は突然、自分がとても卑劣に思えた。

 

なぜなら私は本能的にクラスメイトを「普通の人」「少し知っている人」「送り込まれた人」「越境する可能性のある人」に分け始めていたからだ。

 

これは私が望んでいたことではなかった。

 

学校がこんな場所になるべきではなかった。

 

一時間目は現代文だった。

 

先生はとても真剣に授業をしていた。

 

天城美咲もとても真剣に聞いていた。

 

彼女のノートはとても整っていた。

 

字はきれいで、重要な部分は明確にマークされていて、まるで本当に学校生活に適応している生徒のようだった。

 

これが私をより不安にさせた。

 

もし彼女が疑わしい態度を取っていれば、私はむしろ拒否しやすかった。

 

しかし彼女が自然であればあるほど、普通の同級生らしくあればあるほど、私は境界がどこにあるのかわからなくなった。

 

休み時間後、何人かの女子が天城美咲の周りに集まった。

 

「天城さん、前の学校はどこだったの?」

 

「私たちのクラスにどれくらいいるの?」

 

「髪、きれいだね」

 

天城美咲はとても自然に答えていた。

 

「前は東京の別の学校にいました。今回は二週間だけ旁听する予定です」

 

「ありがとう。実は朝ほとんど整えてないんだけど」

 

彼女はすぐに会話に溶け込んでいった。

 

陽光が窓から差し込んできた。

 

女子たちが笑いながら話している。

 

この光景はとても普通だった。

 

普通すぎて、むしろ私が彼女を複雑に考えすぎているのではないかと思えてくるほどだった。

 

しかしソレンセンは即座に言った。

 

「彼女は環境を構築している」

 

私は顔を伏せた。

 

「ただ友達を作っているだけかもしれない」

 

「友達を作ることも環境構築だ」

 

私は反論できなかった。

 

白石蓮が前から立ち上がり、私の机のところまで来た。

 

彼女の手には一枚の紙があった。

 

「白川さん、これあげる」

 

私は固まった。

 

「何ですか?」

 

「東北側からの説明書」

 

私はますます固まった。

 

彼女は周りを見回し、声を低くした。

 

「暗面の資料じゃない。普通の説明書だよ」

 

私は受け取った。

 

そこには普通の地方文化交流活動の紹介が書かれていた。

 

仙台旧劇場・雨宮座の学生バンド交流会の公開資料だった。

 

最後のページに一枚の集合写真が貼られていた。

 

舞台の上で、何人かの学生バンドメンバーがとても楽しそうに笑っていた。

 

白石蓮が言った。

 

「あの日の活動は無事に終わったよ」

 

私は写真を見た。

 

あの緊張して歌詞を忘れたボーカルも中にいた。

 

ギタリストはとても明るく笑っていた。

 

舞台の照明は古かったが、温かみがあった。

 

私の胸の奥のどこかが少し緩むのを感じた。

 

「ありがとうございます」

 

白石蓮が肩をすくめた。

 

「早坂さんから預かったんだ。君が結果を知っておいた方がいいって」

 

彼女は少し間を置いて、付け加えた。

 

「青嵐会の方は処分されたよ。少なくとも短期的には、もうそんなことはしないだろう」

 

「彼らの人は?」

 

「生きてる。一人は長い反省文を書いたし、一人は行動隊を辞めたし、もう一人は普通の防災研修部門に異動して半年冷静になる申請をした」

 

これはとても現実的な処罰のように聞こえた。

 

私が黒い弦で傷つけるより、ずっと良かった。

 

私は頷いた。

 

「それはよかった」

 

白石蓮が私を見て、突然言った。

 

「君は本当に、他人が死ななかっただけで安心するんだね」

 

私は指が固くなるのを感じた。

 

「それは普通のことじゃないんですか?」

 

彼女は少し考えてから言った。

 

「君にとっては、普通のことなんだろうね」

 

言い終わって、彼女は自分の席に戻った。

 

私はその集合写真を見つめ、複雑な気持ちだった。

 

仙台の事件は、少なくとも普通の結果を迎えていた。

 

これで私は今日、少しだけ息がしやすくなった。

 

昼休み、天城美咲は私のところに来なかった。

 

これは少し意外だった。

 

彼女はクラスで数人の女子と一緒に食堂へ行った。

 

本当に普通の旁听生のように見えた。

 

森原さんが私の隣で弁当を食べながら、小声で言った。

 

「天城さん、人気あるね」

 

私は頷いた。

 

「うん」

 

「白川さん、彼女と知り合いなの?」

 

私の箸が止まった。

 

「か、から……から?」

 

これはひどい答えだった。

 

森原さんが瞬きをした。

 

私は慌てて補足した。

 

「前に校内で一度会ったことがあります」

 

これは本当だった。

 

しかし真実のほんの一部だった。

 

森原さんはそれ以上追及せず、ただこう言った。

 

「彼女、 人と付き合うのが上手そうだね」

 

私は頷いた。

 

この点は認めざるを得なかった。

 

森原さんは再び私を見て、言った。

 

「でも、もし彼女と話したくないなら、話さなくていいよ」

 

私は固まった。

 

「え?」

 

彼女が笑った。

 

「ただ、白川さん、ちょっと緊張してるみたいだったから」

 

私は顔を伏せた。

 

森原さんが静かに言った。

 

「白川さん、君は誰かが近づいてくるだけで緊張しがちだよね」

 

この言葉はあまりにも的確だった。

 

的確すぎて、私はどう答えればいいかわからなかった。

 

彼女は続けた。

 

「でも、みんなに必死で応えなくてもいいよ」

 

「もし嫌なら、嫌だと言えばいい」

 

私は箸を握りしめ、胸の奥が熱くなった。

 

またしても、普通の人が出す普通のアドバイスだった。

 

しかし今の私にとっては、特調室のリスク戦略よりも役に立った。

 

なぜなら私は最近、さまざまな形で近づかれ続けていたからだった。

 

財団、家系、システム、継承人、旁听生、地方勢力。

 

彼らは皆、理由を持って来ていた。

 

礼儀を持って来ていた。

 

目的を持って来ていた。

 

私はいつも真剣に対応しなければならないと思っていた。

 

拒否すればどんな影響が出るかを考えなければならなかった。

 

事態が失控しないようにしなければならなかった。

 

しかし森原さんは言った。

 

嫌なら、嫌だと言えばいい。

 

本当にシンプルだった。

 

シンプルすぎて、私が忘れかけていた。

 

私は小さく言った。

 

「ありがとうございます」

 

森原さんが笑った。

 

「どういたしまして」

 

それから彼女は弁当に入っていた小さなトマトを私に挟んでくれた。

 

「これあげる。私あまり好きじゃないから」

 

今回は飴ではなかった。

 

小さなトマトだった。

 

私は受け取った。

 

これも一種の錨になるのだろうか?

 

ソレンセンが意識の奥で冷たく言った。

 

「なる」

 

私は顔を伏せて小さなトマトを食べた。

 

「それでもいい」

 

午後、さらに面倒なことが起きた。

 

藤堂遥が来た。

 

彼女は転校生でも旁听生でもなかった。

 

藤堂グループの「青年音楽活動支援プロジェクト」の代表として、校長と音楽の先生に付き添われて学校の音楽教室を訪れた。

 

これは本来、私とは関係のないことのはずだった。

 

少なくとも理論上は。

 

しかし私たちのクラスは午後に音楽の授業があった。

 

だから私は音楽教室で彼女と会うことになった。

 

藤堂遥は十八歳くらいだった。

 

とてもきちんとした他校の制服を着ていて、長い髪をしていて、気品があった。

 

彼女は天城美咲のように自然に親しげに接してくるわけではなく、九条綾音のように端正なわけでもなかった。

 

むしろ、小さい頃から礼儀作法の教育を受けていて、誰をも心地よくさせる方法を知っているような人に見えた。

 

音楽の先生が紹介した。

 

「こちらは藤堂遥さんです。今日は私たちの学校の音楽活動を見学に来られました」

 

クラスの中で誰かが小声で言った。

 

「きれい……」

 

「令嬢みたい」

 

藤堂遥は微笑みながら皆に挨拶をした。

 

それから、彼女の視線が一瞬、私の上で止まった。

 

ほんの一瞬だった。

 

しかし私は見た。

 

またしても「あの知っている」という視線だった。

 

彼女は私が誰なのかを知っていた。

 

あるいは、下北沢黒弦を知っていた。

 

音楽の授業が始まると、先生は私たちにグループに分かれて簡単な合奏練習をするよう言った。

 

私は普段ならできるだけ後ろに縮こまっていた。

 

しかしその日、音楽の先生が突然言った。

 

「白川さん、このグループのギター部分を見てあげてくれないか?」

 

私は体が固まった。

 

クラス全員が私の方を見た。

 

先生はすぐに補足した。

 

「ただの普通の練習指導だ。君は普段からバンドの経験があるから」

 

普通。

 

彼は「普通」と言った。

 

しかし今、藤堂遥がすぐそばで音楽の授業を観察していた。

 

天城美咲も教室の後ろにいた。

 

白石蓮は窓辺に寄りかかっていた。

 

これは到底、普通の練習指導ではなかった。

 

少なくとも私にとっては。

 

私は「できません」と言いかけたとき、森原さんが隣でそっと私の袖に触れた。

 

とても小さな声で言った。

 

「嫌なら拒否していいよ」

 

この言葉は命綱のように感じられた。

 

私は顔を上げ、先生を見た。

 

「先生……今日は少し体調が悪いので、いいですか?」

 

教室が一瞬、静かになった。

 

私は心臓が飛び出しそうだった。

 

先生を拒否する。

 

全クラスの前で先生を拒否する。

 

私にとってはほとんど社交的な核爆発だった。

 

しかし先生はただ頷いただけだった。

 

「いいよ。じゃあ今日は休んで」

 

非難も、追及も、雰囲気を気まずくすることもなかった。

 

私は席に戻り、指がまだ震えていた。

 

森原さんが小声で言った。

 

「よくやった」

 

私は泣きそうになった。

 

ただ普通の依頼を一度拒否しただけだった。

 

しかし私にとっては、非常に危険な線から一歩下がれたように感じられた。

 

藤堂遥はこの光景を見て、視線がわずかに変わった。

 

失望というより、確認したというような目だった。

 

彼女はおそらくわかったのだろう。

 

私は礼儀的な場面で押し上げられることはない、と。

 

少なくとも今回は。

 

放課後、藤堂遥が廊下で私を待っていた。

 

もちろん、一人ではなかった。

 

隣に音楽の先生と学校関係者がいた。

 

彼女は境界を越えてこなかった。

 

これが逆に、拒否しづらくした。

 

「白川さん」

 

私は足を止めた。

 

「こ、こんにちは」

 

藤堂遥が軽く頭を下げた。

 

「今日はご迷惑をおかけしました」

 

「いえ……」

 

「音楽の先生が急に指導を頼んだ件は、私が手配したものではありません」

 

私は顔を上げて彼女を見た。

 

彼女の表情はとても真剣だった。

 

「そのことを知っておいてほしいと思ったんです」

 

私は信じるべきかどうかわからなかった。

 

しかし彼女がわざわざ説明してくれたことは、少なくともこの件が敏感であることを彼女が理解していることを示していた。

 

彼女は続けた。

 

「藤堂グループは確かに、若いバンドと支援関係を築きたいと思っています」

 

「しかし私個人としては、君に負担をかけることでそれを実現したくはありません」

 

またこのような言葉だった。

 

目的を持っている。

 

しかし悪意はない。

 

私は今、この灰色地帯がますます嫌いになっていた。

 

私は低く聞いた。

 

「私を先生にしたいんですか?」

 

藤堂遥が少し驚いた。

 

それから静かに首を振った。

 

「いいえ」

 

「私はわかっています。君は望んでいない」

 

「では、何をしたいんですか?」

 

彼女は私を見た。

 

「一つの問題を確認したい」

 

私は指を強く握りしめた。

 

「何ですか?」

 

「もし someday、私たちのような世俗界の継承者が本当に資源を引き継ぐことになったとき、君を邪魔することなく、より安全な音楽と演出環境を構築できるかどうか」

 

彼女は少し間を置いた。

 

「言い換えれば、私たちは君に近づかなくても、君が引いた境界を学ぶことができるかどうか」

 

これは「弟子を取る」とは違っていた。

 

天城システムの「裁き」とも違っていた。

 

彼女が言っているのは、君に近づかず、境界を学ぶということだった。

 

私はどう答えればいいかわからなかった。

 

藤堂遥は私の戸惑いを見抜いたようだった。

 

彼女は静かに言った。

 

「今、答えなくてもいい」

 

「ただ、君に伝えたいことがある」

 

「君の学校に来るすべての人が、君の生活に割り込もうとしているわけではないということ」

 

「中には、ただ次の百目影倉を作らない方法を知りたいと思っている者もいる」

 

この言葉に、私は沈黙した。

 

もし本当なら、それはとても重要だった。

 

しかしもしただの綺麗事なら、それも危険だった。

 

私は結局、小さな声で言った。

 

「なら、学校を入口にしないでください」

 

藤堂遥が頭を下げた。

 

「覚えておきます」

 

彼女は去っていった。

 

私は廊下に立ち、心がたくさんの線に絡め取られているように感じた。

 

天城美咲は自分が普通を装いたくないと言った。

 

九条綾音はなぜ私が人を傷つけないのかを知りたいと言った。

 

御影秋人は拒否しても人が不安になると言った。

 

白石蓮は東北側にもう人を送らないように伝えると言った。

 

藤堂遥は境界を学びたいが、近づきたくないと言った。

 

彼らは皆、単なる敵ではなかった。

 

これが一番難しかった。

 

なぜなら、すべての近づいてくる人が敵なら、私はただ切断すればよかったからだった。

 

しかし彼らは礼儀正しかった。

 

謝ることもあった。

 

退くこともあった。

 

反省することもあった。

 

それでも近づき続けた。

 

ソレンセンが暗がりの中で言った。

 

「人間の網は術式の網より面倒だ」

 

私は顔を伏せた。

 

「うん」

 

「これは君が切断できない」

 

「わかっている」

 

「だから君は疲れる」

 

「もうかなり疲れています」

 

ソレンセンが低く笑った。

 

嘲笑ではなく、ただある事実を確認するような笑い方だった。

 

夜、私はAfterToneへ行ったとき、いつもより二十分ほど遅かった。

 

日和はあまり多くを聞かなかった。

 

ただこう言っただけだった。

 

「今日、なんかもっと疲れてるみたい」

 

私はソファに座り、今日起きたことを心の中に押し込めたまま、長い時間座っていた。

 

日和は私の様子を見て、言った。

 

「小音?」

 

私は顔を上げた。

 

彼女は「何があったの?」とは聞かなかった。

 

ただこう言った。

 

「今日は練習しなくてもいいよ」

 

陽菜がすぐに言った。

 

「じゃあお話ししよう!」

 

澪が手を挙げた。

 

「ご飯食べよう」

 

日和がため息をついた。

 

「あなたたち二人とも」

 

私は顔を伏せ、小さな声で言った。

 

「練習してもいいです」

 

なぜなら練習しなければ、私はずっと学校のあの人たちのことを考えてしまうからだった。

 

公告板のこと。

 

天城美咲のコーヒー牛乳のこと。

 

九条綾音の礼儀正しさのこと。

 

御影秋人の謝罪のこと。

 

白石蓮が「もうかなり疲れているのか」と聞いたこと。

 

私はもう考え続けたくなかった。

 

音でかき消したかった。

 

だから私はギターを取った。

 

日和が私を見て、頷いた。

 

「なら、ゆっくりやろう」

 

最初の音が鳴ったとき、私はようやく少しだけ、自分の場所に戻れたような気がした。

 

しかし私は知っていた。

 

学校の方の問題はまだ終わっていない。

 

大勢力はすでに人を門のところまで送り込んできていた。

 

中には止められた者もいた。

 

中にはすでに入ってきた者もいた。

 

中には境界を越えないと言う者もいた。

 

中にはまだ試している者もいた。

 

中には本気で助けたいと思っている者さえいるのかもしれなかった。

 

これが一番面倒だった。

 

なぜなら、近づいてくるすべての人が敵ではないからだった。

 

そして、すべての善意に目的がないわけでもないからだった。

 

私は学校に通いながら、これらを分別しなければならなかった。

 

リハーサルしながら、AfterToneを守らなければならなかった。

 

先生になることを拒否しながら、送り込まれてきた人々と向き合わなければならなかった。

 

ソレンセンが暗がりの中で低く言った。

 

「君の学校は戦場になったな」

 

私は弦を弾いた。

 

「違う」

 

「まだ認めないのか?」

 

「戦場じゃない」

 

私は日和と陽菜と澪を見た。

 

「少なくとも、私はそれを戦場にさせない」

 

ソレンセンが低く笑った。

 

「なら、守れ」

 

「この教室と、この舞台と、これらの普通の人々を、どこまで守れるか見てみよう」

 

私は答えなかった。

 

ただ演奏を続けた。

 

なぜなら今できることは、この小さな旋律を最後まで弾くことだけだったから。

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