俺の頭の中に敗北した暗黒の王が住み着いているが、俺はただギターを弾きたいだけだ 作:arctichare
第36章 四国遍路道の暗黒エネルギー、そしてソレンセンが檻の中で王冠を露わにしたこと
九州から帰ってきて、私はようやく三日間だけ静かに過ごすことができた。
本当に、三日間だけだった。
一日目は学校へ行き、
二日目はAfterToneで練習をし、
三日目はようやく自動販売機でホットココアを正しく買い、誰にも渡さずに済んだ。
私はこれを、生活が少しずつ普通に戻り始めた兆しだと思っていた。
四日目、特調室から新しい外地協力要請が届いた。
場所は四国。
愛媛と高知の境目近くにある、古い遍路道の一区間。
事件名は長かった。
「旧遍路道影供儀式異常及び夜間行者消失事件」
私はこのタイトルを見た瞬間、最初の反応がこれだった。
なぜ日本には旧道、旧劇場、旧海、旧地下空間ばかりあるのか?
もう少し新しい、きれいな、人を食べない場所に来ないのだろうか?
眼鏡の女性が資料を送ってきた後、電話をかけてきた。
「白川さん、今回は今までとは少し違います」
私はこの言葉に、すでに悪い条件反射ができていた。
「どこが違うんですか?」
「今回の異常は、単なる影像系ではありません」
私は胸が一瞬、冷たくなった。
「では何ですか?」
「影像、信仰残留、山路空間の錯位、そして『暗黒崇拝型邪術団体』の関与の疑いがあります」
私は言葉を失った。
暗黒崇拝型。
この言葉が出た瞬間、ソレンセンが意識の奥でゆっくりと笑った。
いつもの嘲笑とは違った。
もっと低く、もっと冷たく、まるで黒い海の底で何かが目を覚ますような笑い方だった。
「ほう?」
それは言った。
「虫が暗黒を崇めているようだな」
私は全身が冷たくなった。
「興味を持たないで」
「もう持ってしまった」
「禁止」
「まだ何もしていない」
「聞いているだけで、したいように聞こえる」
ソレンセンが低く笑った。
「白川一音、間違った暗黒を崇める虫ほど、本物の暗黒に教えられるのにふさわしい存在はいない」
私はこの言葉が嫌だった。
とても嫌だった。
なぜなら、それがあまりにもソレンセンらしいからだった。
私がルールで細く縛っているソレンセンではなく、
混乱し、傲慢で、残忍で、すべてを下等な存在として見下すソレンセンの笑い方だった。
眼鏡の女性は電話の中で続けた。
「現地の組織はすでに封鎖を試みましたが、夜間に二名の民間退魔者が行方不明になっています。普通の遍路者たちは山路整備という名目で一時的に遠ざけられていますが、封鎖を長く続けることはできません」
私は低く聞いた。
「なぜ私を呼ぶんですか?」
電話の向こうが少しの間、沈黙した。
「現場にあなたの代号が残されていました」
私は目を閉じた。
またか。
「何と書いてあったんですか?」
眼鏡の女性が言った。
「文字ではありません」
「儀式の核心部分に、黒い弦状の残影が現れていました。現地は、誰かがあなたの力を模倣しようとしたと判断しています」
私の指がゆっくりと握りしめられた。
模倣。
いや。
もっと正確に言えば、彼らが想像する「下北沢黒弦」を模倣しようとした。
ソレンセンが笑みを深くした。
「模倣か」
その声は黒い水面がゆっくりと下がるように低かった。
「虫が泥で王冠を描いたようだな」
「実に愉快だ」
私は心の中で即座に言った。
「今回は絶対に私のルールに従いなさい」
「もちろん」
それはあまりにも早く答えた。
私はますます不安になった。
四国へ向かう道は、福岡へ行く時よりも面倒だった。
まず東京から松山まで飛行機で行き、そこから車に乗り換え、最後に山道に入る。
青藍財団の表向きの理由は、
地方音楽文化と巡礼道路の音資料採取観摩。
私はこの理由を見たとき、もう呆れる気力もなかった。
今や私がどこへ行こうと、彼らは必ず音楽関連の表向きの理由をこしらえる。
もし私が海底の退魔現場に行くことになっても、彼らは「水中音響芸術観摩」と言うだろう。
私は群にメッセージを送った。
この二日間、四国に地方の音資料観摩に行くかもしれない。
陽菜がすぐに返信してきた。
四国! 小音、最近出張が多いね!
澪が返信してきた。
うどん。
日和が少し遅れて返信してきた。
また一人?
私はこの一文を見て、胸が少し重くなった。
うん。でも現地でスタッフが迎えてくれる。
日和が返信してきた。
気をつけて。不調になったらすぐに戻ってきて。
この言葉を、彼女は最近増えて言っていた。
彼女は私が何をしに行くのか知らない。
それでも、彼女は私がただ普通にどこかへ行くのではないことを、だんだんと感じ取っているようだった。
私は彼女を心配させたくなかった。
しかし真相を伝えることもできなかった。
結局、私はただ返信した。
気をつける。
この言葉は紙のように軽かった。
しかし私にできるのは、これだけだった。
四国の山道は、東京とは完全に違っていた。
車窓の外は、幾重にも重なる緑の山林だった。
道は狭く、曲がりくねっていて、時折遍路道の方向を示す案内板が見えた。
空気には湿った土と木の葉、遠くの雨の匂いが混じっていた。
私を迎えに来たのは久世真帆という女性だった。
彼女は四国地方退魔連合の執行責任者だった。
三十代で、軽い登山服を着て、腰に符袋と小型懐中電灯を下げていた。
彼女は東京特調室のように都会的ではなく、京都の七条のように冷たく硬いわけでもなかった。
彼女は本当に山を走り回っている人間のように見えた。
「白川さん、道が少し遠回りですが、お疲れ様です」
「い、いえ……」
彼女の運転はとても安定していた。
これで私は少し安心した。
久世真帆は運転しながら、状況を説明してくれた。
「この旧遍路道は、元々ほとんど人が通らなくなっていましたが、近年地方の観光プロジェクトで再整備されました」
「半月前、夜間撮影をしていた人が、山道に暗黒エネルギーが現れるのを撮影しました」
私は体が固くなるのを感じた。
「暗黒エネルギー?」
「はい」
彼女は私に印刷した写真を渡した。
写真は少しぼやけていた。
夜の山道の先に、木の梢の間に漆黒のエネルギーが浮かんでいる。
私はその写真を見て、指が冷たくなった。
ソレンセンが静かになった。
それはめったにこんなに静かにならない。
笑うより静かになる方が、私にとってはよほど恐ろしかった。
私は心の中で聞いた。
「これはあなたに関係あるの?」
「拙劣だ」
その声は低かった。
「まるで虫が王の噂を聞いて、灰で自分の王座をこしらえたようだな」
私は少しだけ安堵した。
ソレンセンの本体が外に漏れているわけではない。
誰かが模倣しているだけだ。
しかし次の瞬間、ソレンセンが続けた。
「ただ、彼らが崇めている方向は、確かに吾に近い」
私はまた緊張した。
「どういう意味?」
「彼らは吾を知らない」
「しかし彼らは、すべての秩序を圧倒できる暗黒を探している」
それは静かに笑った。
「これが、多くの虫が最終的に吾のところへ這い寄ってくる理由だ」
私は聞きたくなかった。
久世真帆は続けた。
「私たちの初期判断では、関与しているのは『無明講』という邪術団体です」
「彼らは元々地方の小さな秘儀団体でしたが、近年中小退魔組織の失敗者や世俗界の霊異愛好家を吸収しています」
「百目影倉事件の後、彼らは『すべてを切断できる黒弦』を崇め始めました」
私は顔色を失った。
「私を崇めている?」
久世真帆が私を一瞬見た。
「もっと正確に言えば、彼らが想像するあなたを崇めています」
これはもっと最悪だった。
想像の中の私。
それはきっと、非常に恐ろしい存在に違いなかった。
久世真帆が言った。
「彼らは、本物の暗黒とは汚染ではなく、すべての秩序を打ち砕く力だと考えています」
ソレンセンが低く笑った。
「その言葉は、完全に間違っているわけではないな」
私は心の中で言った。
「彼らを肯定しないで」
「吾は虫を肯定したわけではない」
「でも嬉しそうに聞こえる」
「吾はただ、彼らの死に方が面白くなりそうだと思っただけだ」
「殺してはいけない」
「またその言葉か」
「約束して」
ソレンセンは答えなかった。ただ笑った。
旧遍路道の入口はすでに封鎖されていた。
表向きの理由は、山体の落石リスク。
数名の地元退魔者が入口で守っていた。
彼らは私を見下ろした瞬間、表情が複雑になった。
畏怖と緊張と好奇、そして少し近づきがたいという感情。
私はこのような視線に、少しずつ慣れ始めていた。
しかし慣れることと、心地よいことは別だった。
久世真帆が私を臨時テントの中に連れて行った。
テントの中には地図、写真、録音機器、いくつかの符紙が置かれていた。
一人の老僧が隅に座っていた。
彼は近くの寺院から来た人で、法名は明厳。
私を見ると、両手を合わせて挨拶をした。
「白川施主」
私は慌てて頭を下げた。
「ご、ご挨拶が遅れました」
彼は言った。
「この地の暗黒は、普通の怨念ではありません」
私は頷いた。
「はい」
「彼らはあなたの名を借りて、あなた自身を召喚しているわけではありません」
私は固まった。
老僧は私を見た。
「彼らは、自分たちの中の悪を召喚しているのです」
この言葉で、私は背中がわずかに冷たくなった。
ソレンセンは珍しく嘲笑しなかった。
久世真帆が地図を広げた。
「行方不明になった二名の退魔者の最後の信号は、ここです」
彼女は山路の中間にある旧休憩所を指した。
「無明講は儀式をそこに設けている可能性が高い」
「普通の人は?」
「すでに遠ざけています」
「完全に誰もいない?」
「昼間は」
彼女は少し間を置いた。
「しかし今夜、儀式が完成すれば、暗黒エネルギーが近くの公路にまで現れる可能性があります。その場合、普通の人が影響を受けることになります」
また影像拡散。
しかし今回は、カメラやフィルムではなく、「暗黒エネルギー」という象徴的なものだった。
私は低く聞いた。
「私は一人で入るんですか?」
久世真帆が言った。
「私たちも同行できます」
ソレンセンが忽然と言った。
「彼らを外に残せ」
私は胸が一瞬、冷たくなった。
「なぜ?」
「この虫たちは暗黒を崇めている。彼らは同行者を生贄の材料にしか見ていない」
「普通の退魔者が中に入れば、君が助けなければならない人数が増えるだけだ」
私は認めたくなかった。
しかしこの手の悪意を判断するとき、それはたいてい正しかった。
私は久世真帆に言った。
「私が先に入ります」
彼女はすぐに眉を寄せた。
「いけません」
「中では同行者を利用される可能性があります」
久世真帆は沈黙した。
明厳老僧が静かに言った。
「行かせなさい」
久世真帆が彼を見た。
老僧は続けた。
「今この道を、多くの人が歩けば、影も多くなる」
彼は再び私を見た。
「しかし白川施主、どうか覚えておいてください。彼らが暗黒を賛美しても、それに応じてはならない」
私は顔を伏せた。
「できるだけ……そうします」
ソレンセンが軽く笑った。
「彼が言っているのは君か、それとも吾か?」
私は心の中で答えた。
「両方です」
私は旧遍路道に足を踏み入れたとき、まだ空は完全に暗くはなっていなかった。
山林の中はとても静かだった。
石段は滑りやすかった。
道端には古い地蔵像があり、首に色褪せた赤い布がかけられていた。
私は鞄を背負い、手に普通のピックを握っていた。
今回はギターは持ってこなかった。
ピックと耳クリップ、符紙、懐中電灯、そしてソレンセンだけだった。
十分ほど歩いた後、空の色が急に暗くなった。
太陽が沈んだわけではない。
周囲の光が何かにゆっくりと吸い取られていくようだった。
木の影がとても長くなった。
地面の落ち葉が、黒い鱗のように道に張り付いているように見えた。
耳クリップの中に久世真帆の声が入ってきた。
「白川さん、外部の光量が異常です。まだ大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
これは半分本当で、半分嘘だった。
身体は大丈夫だった。
精神はあまり大丈夫ではなかった。
ソレンセンが言った。
「前だ」
私は顔を上げた。
山路の先に、一人の人間が立っていた。
白い遍路衣を着て、頭に斗笠をかぶり、手に金剛杖を持っていた。
まるで普通の遍路者のように見えた。
しかしその人の影は足元になかった。
木の上に掛かっていた。
まるで吊るされた黒い布のように。
私は足を止めた。
その人が顔を上げた。
斗笠の下に顔はなかった。
ただ漆黒の闇だけがあった。
「黒弦」
彼が口を開いた。
声は多くの人が一緒に低く囁いているように聞こえた。
「ようやく来た」
私はピックを握りしめた。
「行方不明になった人はどこですか?」
「本当の暗黒を待っている」
「彼らを放しなさい」
「彼らは儀式を目撃した。これは福報だ」
私は彼の論理を理解したくなかった。
ソレンセンが冷たく言った。
「この虫はすでに自分の脳を空っぽにしたようだな」
白衣の人が私に向かって礼をした。
動作はとても敬虔だった。
「私たちは知っている。あなたは秩序に縛られている」
私は胸の奥が一瞬、冷たくなった。
「あなたたちは知らない」
「あなたはすべてを切断できる力を持ちながら、いつも普通の人、規則、同伴者、学校といった弱々しいものに足を引っ張られている」
彼の声はどんどん興奮していった。
「私たちは、あなたがそれらの束縛から解放されるのを手伝いたい」
その瞬間、私の指が痛いほど冷たくなった。
「何ですって?」
「あなたを本当の暗黒にさせる」
白衣の人が両手を広げた。
木の上の影が幕のように広がった。
その中に映像が現れた。
AfterTone。
学校の廊下。
森原さんがくれた飴。
日和のドラム。
陽菜のマイク。
澪のベース。
そして私がホットココアを買う自動販売機。
すべての映像が黒い炎の縁で囲まれていた。
「これらの錨があなたを苦しめている」
白衣の人が言った。
「私たちは、あなたに代わってこれらを焼き払うことができる」
その瞬間、私の体が一瞬、固まった。
ソレンセンの気配が非常に冷たくなった。
嘲笑からではなく、
自分の「檻の構造」に属すると考えているものを、
下等な虫が触れようとしたことに対する怒りからだった。
それは自分自身が私の錨を嘲笑したり、断ち切れるのを待ったりすることはあっても、
低等な虫が代わりに触れることを許さない。
「白川一音」
ソレンセンが初めて私を名指しで呼んだ。
「吾にやらせろ」
私は低く言った。
「いや」
「彼らはあなたの巣に触れた」
「わかっている」
「吾の檻に触れた」
「わかっている」
「彼らの影を泥の中に押し込んでやろう」
「殺してはいけない」
「吾は殺すとは言っていない」
今回はその声に、本物の悪意が混じっていた。
「吾は彼らに、何が暗黒を跪拝することなのかを教えてやりたいだけだ」
私は深呼吸をした。
条件。
今度はいつもより明確にしなければならなかった。
なぜならソレンセンが本気で怒っていたからだった。
「条件」
黒海が波打った。
ソレンセンは笑わなかった。
「言え」
「第一、私の体を乗っ取ることは禁止です」
「できる」
「第二、殺してはいけない」
「できる」
「第三、行方不明になった退魔者を傷つけない」
「できる」
「第四、普通の人に関わる記憶や影像を汚染しない」
「できる」
「第五、封印の外に拡大しない」
黒海が一瞬、静かになった。
これは私がめったに直接言わない言葉だった。
ソレンセンが低く言った。
「あなたはこれらの虫が、吾を脱困させられるとでも思っているのか?」
「できない。でも私は言わなければならない」
「良い」
その声は黒い王座の上からナイフが落ちるように低かった。
「続けろ」
「第六、暗黒の力を使うことは許可するが、儀式の範囲内に限定する」
「できる」
「第七、彼らに術式能力を失わせ、四国地方連合に引き渡す」
「できる」
私は少し間を置いた。
そして最後の言葉を言った。
「第八、私の錨を焼かないで」
ソレンセンが沈黙した。
長い間。
それから笑った。
その笑い声は低く、残忍で、傲慢だった。
しかし奇妙なことに、反論はしなかった。
「誰が彼らにあなたの錨に触れることを許した?」
金色の鎖が震えた。
契約が成立した。
私はピックを掲げた。
音を鳴らすために金属のバックルを叩くことはしなかった。
ギターの弦を弾くこともなかった。
ただ親指でピックの縁を軽く擦った。
ほとんど聞こえないような細い音がした。
暗黒は線のように散らなかった。
今回は違った。
地面の影が私の足元に集まってきた。
樹影、石影、古い地蔵像の影、白衣の人の影、すべてが何らかの見えない重力によって押し下げられた。
山路の先に、暗黒エネルギーがゆっくりと姿を現した。
空ではなく、私の背後の影の中だった。
ソレンセンの力は脱困しなかった。
私の体から離れなかった。
それはただ、私の影を通して、ルールが許す範囲で、少しだけ「王冠」の輪郭を露わにした。
白衣の人が固まった。
それから狂喜した。
「本物の暗黒……」
彼は跪いた。
私が命じたわけでも、術式で強制されたわけでもない。
彼自身が跪いた。
しかし次の瞬間、その狂喜は恐怖に変わった。
なぜなら彼は、ソレンセンが自分の崇拝に応じていないことに気づいたからだった。
それは彼を見下ろしていた。
まるで泥の中で王座を描く虫を見下ろすように。
ソレンセンの声は現実には届かなかった。
しかし無明講の全員がそれを聞いた。
なぜなら暗黒が直接彼らの影の中に押し込まれたからだった。
「誰が、吾の名を借りることを許した?」
白衣の人が震え始めた。
「わ、わたしたちはただ暗黒を追求しているだけです……」
「あなたたちが追求しているのは、自分の悪意を正当化できる泥だ」
山路の両側に、さらに多くの白衣の影が現れた。
十人。
二十人。
三十人。
彼らは元々影供儀式の中に隠れ、私が核心に入った後に一斉に発動するつもりだった。
しかし今、彼らの影はすべて地面に釘付けにされていた。
黒弦が乱舞することもなく、
爆発も起こらず、
ただソレンセンらしい圧迫だけがあった。
極端に傲慢で、上からすべてを粉々に碾き潰すような気配。
白衣の人々が悲鳴を上げ始めた。
身体が傷ついたわけではなかった。
彼らが「暗黒」を崇めるために使っていた術式が、本物の暗黒によって逆に見つめられたからだった。
その術式の中に隠されていた私欲、怨恨、嫉妒、崇拝、責任逃れが、すべてソレンセンに照らし出された。
彼らは強大なものを崇めていたわけではなかった。
自分たちが結果を負いたくない悪を崇めていただけだった。
ソレンセンが冷たく笑った。
「跪きたいのなら、自分たちの術式が主人を理解するまで跪いていろ」
私は胸が一瞬、締めつけられるのを感じた。
「やりすぎないで」
「彼らは死なない」
「精神は?」
「壊れない。ただ、覚えるだけだ」
「永久的な損傷を残さないで」
暗黒の力がわずかに収縮した。
ソレンセンは不満そうだったが、従った。
これが私がルールを設けなければならない理由だった。
ルールがなければ、本当に彼らを永遠に暗黒の中に跪かせてしまうだろう。
私は歩き続けた。
白衣の人々は動けなかった。
彼らは山路の両側に跪き、まるで自分の影に釘付けにされた偽信徒の列のようだった。
私は彼らの横を通り過ぎた。
彼らが私を見る目が、完全に変わっていた。
以前は狂熱だった。
今は恐怖だった。
とても純粋な恐怖だった。
私は好きではなかった。
しかし今回は、すぐにそれを否定しなかった。
なぜなら、恐怖を与えなければ、彼らは私の普通の生活を「焼ける錨」として扱い続けるだろうからだった。
退魔者を誘拐し、普通の公路に影響を与え、儀式を拡大し続けるだろうからだった。
ある人々には、境界がどこにあるのかを知らせる必要があった。
言葉が足りなければ、影に覚えさせればよかった。
ソレンセンが低く言った。
「あなたは少しずつわかってきたな」
私は答えなかった。
旧休憩所が前方に現れた。
そこは元々遍路者が休むための小屋だった。
今は儀式場に改造されていた。
地面に巨大な黒い円が描かれていた。
円の中にはたくさんのものが置かれていた。
写真。
折れた数珠。
携帯電話。
学生証のコピー。
LiveHouseのチケット。
さらにはどこからか持ってきたAfterToneの外観写真まであった。
私はその写真を見た瞬間、呼吸が止まるのを感じた。
彼らは本当に調べていた。
日和たちまではわかっていないかもしれない。
しかしAfterToneまでは調べていた。
彼らは私の錨を儀式の中に置いていた。
ソレンセンの声が極めて冷たくなった。
「今でも軽くするつもりか?」
私は地面のAfterToneの写真をじっと見つめた。
指が震えていた。
「殺してはいけない」
「またその言葉か」
「でも、重くしてもいい」
黒海が静かになった。
それから、ソレンセンが笑った。
「ようやく」
私は儀式場の中に入った。
中央に黒い法衣を着た男が立っていた。
彼が無明講の首領だろう。
彼は私の背後の影を見た瞬間、その場に崩れ落ちた。
「あなたは彼らに騙されている」
彼は言った。
「それらの普通の人々は、あなたの足を引っ張るだけだ」
「退魔界はあなたを畏怖している」
「財団はあなたを利用している」
「学校はあなたを監視している」
「楽団はあなたの弱点になる」
「私たちだけが、あなたの本当の姿を理解している」
私は低く言った。
「あなたたちは理解していない」
「私たちは、あなたの影になることを望んでいる」
「私は必要としていない」
「あなたはそれらの錨から解放される必要がある!」
彼は地面のAfterToneの写真を指さした。
「私たちはすでに、あなたに代わってそれらを切断する準備ができている!」
その瞬間、ソレンセンの幻影が低く沈んだ。
休憩所全体の影が、地面に向かって崩れ落ちた。
男の顔色が真っ白になった。
彼は儀式を発動しようとした。
地面の写真と携帯電話が同時に黒い光を放った。
これが彼らの本当の目的だった。
彼らは私を攻撃しようとしたわけではなかった。
これらの私に関わる錨を通じて、「象徴的な切断」を作り出そうとした。
私の心に動揺を生じさせる。
たとえ日和たちを本当に傷つけることができなくても、私が恐怖に打ちのめされれば、その恐怖を儀式の燃料にできる。
ソレンセンが意識の奥で冷たく言った。
「汚い」
私は初めて、それが人間の悪意をこのように評価するのを聞いた。
「条件を追加する」
「言え」
「すべての錨の象徴と現実の対象とのつながりを切断する」
「できる」
「そして、その悪意を施術者自身に返す」
ソレンセンが少しの間、止まった。
「本気か?」
私は歯を食いしばった。
「永久的な精神損傷を与えない範囲で」
「しかし、彼らがあなたに与えようとしていた恐怖を、感じさせることは?」
「できる」
暗黒の中で、ソレンセンの笑い声が極めて愉快になった。
「白川一音」
「君はどんどん面白くなってきたな」
黒弦がようやく現れた。
しかし今回は、いつものように細いものではなかった。
それは幻影の縁から垂れ下がる、王冠の下の鎖のように見えた。
第一の黒弦が、AfterToneの写真を釘付けにした。
写真は砕けなかった。
ただ現実とのつながりが完全に断たれた。
第二の黒弦が、携帯電話を釘付けにした。
中に入っていた私や学校、楽団、下北沢に関する資料は、すべて空白になった。
第三の黒弦が、儀式と無明講のメンバーとの集団的なつながりを切断した。
第四の黒弦が、彼らが準備していた「恐怖の献祭」を反転させた。
暗黒は外に溢れ出さなかった。
彼ら自身の術式に沿って、彼らの心の中に戻っていった。
彼らは見た。
もし自分の錨が焼かれたらどうなるかを。
自分が最も守りたいものを、他人に材料として扱われたらどうなるかを。
自分が「本当の暗黒のため」と言っていたとき、利用されていた人々がどれほど恐怖していたかを。
一瞬のうちに、休憩所の中にいた無明講のメンバーが全員、揃って跪き倒れた。
誰かは泣き、
誰かは吐き、
誰かは自分の影を必死に掴み、地面から引き剥がそうとした。
首領は儀式の端に崩れ落ち、声が壊れていた。
「違う……違う……」
私は彼の前に立った。
手にピックを握っていた。
体が震えていた。
これは怖さだけではなかった。
少なくとも全部ではなかった。
私は自分が今やったことが、いつもより重いことをわかっていた。
殺してはいない。
永久的な損傷も与えていない。
しかし私は確かに、彼らに自分が私に与えようとしていた恐怖を味わわせた。
これはやりすぎだったのか?
私はわからなかった。
ソレンセンが低く言った。
「やりすぎではない」
「あなたはもちろんそう言う」
「彼らは生きている」
「術式は壊れた」
「彼らは二度と暗黒を崇めようとは思わないだろう」
「うん」
「これが結果だ」
私は沈黙した。
もしかすると暗面世界では、これが本当に必要な結果なのかもしれない。
しかし私は、それを消化するのに時間がかかりそうだった。
私は休憩所の奥へ歩いていった。
二人の行方不明になった退魔者が木の柱に縛り付けられていた。
状態は悪かったが、生きていた。
私は束縛を切断し、久世真帆に連絡した。
「行方不明者を見つけました。生きています。無明講のメンバーは行動能力を失っています。儀式核心は解除しました」
通信の向こうが二秒ほど沈黙した。
それから久世真帆の声が聞こえた。
「あなたは大丈夫ですか?」
私は地面に落ちていた、すでに普通の写真に戻っていたAfterToneの外観写真を見ていた。
「大丈夫です」
これは嘘だった。
しかし今は説明している場合ではなかった。
地方連合の人々が到着したとき、彼らが見た光景は非常に静かだった。
無明講のメンバーが地面に跪いていた。
血もなければ、重傷もなかった。
死者もいなかった。
しかし全員が、最も深い悪夢から引きずり出されたかのようだった。
首領が久世真帆に拘束されたときも、まだ呟き続けていた。
「暗黒ではなかった……あれは私たちが崇められるものではなかった……」
久世真帆が私を一瞬見た。
私は顔を伏せた。
「彼らは死にません」
彼女は言った。
「わかっています」
明厳老僧も到着していた。
彼は休憩所の中の黒い儀式の残痕を見て、両手を合わせた。
「彼らは本当の境界を見た」
私は小さく聞いた。
「私はやりすぎましたか?」
老僧はすぐに答えなかった。
彼は無明講のメンバーたちを見ていた。
「ただ説得しただけでは、彼らは止まらなかっただろう」
「ただ倒しただけでは、彼らは崇め続けただろう」
「彼らに自分自身の悪の形を見せることは、必ずしも悪いことではない」
私は顔を伏せた。
「でも、まるで罰のようでした」
「そうだ」
彼はとても冷静に言った。
「ある行為には、罰が必要な場合もある」
私は何も言えなかった。
ソレンセンは暗がりの中で、珍しく口を挟まなかった。
おそらく満足していたのだろう。
あるいは、偽の信徒を跪かせた感覚を、まだ味わっていたのかもしれない。
私は知りたくなかった。
臨時テントに戻った後、久世真帆が清掃報告書を私に確認させた。
無明講の核心メンバーは拘束された。
行方不明の退魔者は無事に救出された。
旧遍路道の影供儀式は解除された。
私に関わる写真、資料、象徴物はすべて除去された。
普通の公路は影響を受けなかった。
近くの観光客に認知汚染はなかった。
結果は良かった。
ほとんど文句のつけようがないほど良かった。
しかし私の気持ちは、少しも楽ではなかった。
なぜなら今回は、私がソレンセンの力を借りて何かを切断しただけではなかったからだった。
今回はソレンセンの「特徴」が、はっきりと露わになった。
脱困でもなく、
私を制御したわけでもなく、
大規模な破壊をしたわけでもなく、
王のような圧迫だった。
混沌の暗黒が、偽りの暗黒を見下すこと。
敵を自分の悪意の前に跪かせること。
崇拝者に、
本物の暗黒は彼らを受け入れず、ただ彼らの愚かさを裁くだけであることを理解させること。
これは非常に効果的だった。
そして非常に危険でもあった。
なぜなら私は、ある瞬間、自分がソレンセンがなぜこの方法が便利だと感じるのかを理解してしまったからだった。
相手を十分に恐怖させれば、彼らは二度と私の錨に触れようとはしなくなる。
この道はあまりにも順調だった。
順調すぎて、恐ろしかった。
ソレンセンが低く言った。
「怖いか?」
私はテントの隅に座り、自分の手を見つめていた。
「うん」
「吾が怖い?」
「それも」
「自分自身が怖い?」
「うん」
「良い」
「良くない」
「これは良い」
その声は低かった。
「自分が相手を跪かせることができると知りながら、それでもそのことを怖がっているということは、君がまだ縄を握っているということだ」
私は沈黙した。
これは慰めなのだろうか?
違うようだった。
しかし完全に悪意があるわけでもなかった。
久世真帆が私に温かいお茶を注いでくれた。
「今日はお疲れ様でした」
私は受け取った。
「ありがとうございます」
彼女は私を見て、忽然と言った。
「報告書には、無明講があなたの普通の関係を儀式の錨として利用しようとしたと明確に書きます。これはあなたが積極的に衝突を拡大したわけではありません」
私は顔を上げた。
彼女は続けた。
「四国地方連合も、他の地方組織に対して通達を出します。あなたの普通の関係を標的にした模倣儀式は、すべて重大な越境とみなす」
これはとても重要だった。
協力金よりも。
謝礼よりも。
「ありがとうございます」
今回は私の声が、さっきよりずっと真摯だった。
東京へ帰る道中、私はすぐに眠らなかった。
飛行機の窓の外は夜の雲だった。
携帯電話の中には、日和からのメッセージが来ていた。
無事に済んだ?
私はその言葉を見て、地面に落ちていたAfterToneの写真を思い出した。
無明講のメンバーが自分の影の中で震えていた姿を思い出した。
結局、私は返信した。
解決した。少し疲れた。
日和はすぐに返信してきた。
帰ったら先に休んで。練習は後回しにしていいから。
陽菜がすぐに絵文字付きで返信してきた。
小音お疲れ!
澪が返信してきた。
四国にうどんあった?
私は思わず笑ってしまった。
私は完全に特産品を忘れていた。
あるいは、無明講を処理した後で、買う気力などなかったのかもしれない。
私は返信した。
ごめん、忘れてた。
澪はすぐに返信してきた。
次でいい。
陽菜が泣き笑いの絵文字を送ってきた。
日和が返信してきた。
人が無事に帰ってくればそれでいい。
私は「人が無事に帰ってくればそれでいい」という言葉を、長い時間見つめていた。
この言葉はとても普通だった。
しかしソレンセンの幻影の下から、私を少しだけ引き戻してくれるように感じた。
ソレンセンが意識の奥で口を開いた。
「今日、君は大虫の巣を撃ち倒した」
「うん」
「王冠は出さなかった」
「うん」
「ただ黒弦だけだった」
「うん」
「どうだった?」
私は窓の外の夜を見ていた。
「疲れた」
「他には?」
私は少し考えてから答えた。
「でも今回は、後悔していない」
黒海が一瞬、静かになった。
ソレンセンが低く笑った。
「良い」
「なら、覚えておけ」
「時には、最も重い圧迫に、破壊は必要ない」
私は答えなかった。
なぜなら、それが正しいからだった。
天城グループは爆破されなかった。
天穹システムは破壊されなかった。
都市も停止しなかった。
しかし彼らは完全に撃ち倒された。
停止を余儀なくされた。
審査を受け入れざるを得なくなった。
そして認めざるを得なくなった。
普通の人はサンプルではない。
都市は実験場ではない。
システムは人間より先にすべてを決めることはできない。
そして下北沢黒弦は、彼らが記録し、訓練し、管理できる道具ではない。
私は冷めたホットココアの缶を開け、一口飲んだ。
味は少し変だった。
しかし飲めた。
舞台の上では、陽菜が歌詞を間違えて自分で笑っていた。
日和が仕方なくドラムを止めた。
澪が「休憩時間に飯を食べられる」と提案していた。
私は低く笑った。
とても小さく。
しかし本当の笑いだった。
今日は終わった。
少なくとも今日、天城グループの網は切り開かれた。
そして私はここに戻ってきた。