俺の頭の中に敗北した暗黒の王が住み着いているが、俺はただギターを弾きたいだけだ   作:arctichare

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第37章 黒海の王座における演算、そしてスペニ封印の最初の亀裂

第37章 黒海の王座における演算、そしてスペニ封印の最初の亀裂

 

四国から帰ってきたその夜、私は夢を見た。

 

夢の中には学校もなかった。

 

AfterToneも、下北沢も、日和も、陽菜も、澪もいなかった。

 

ただ海だけがあった。

 

黒い海。

 

波の光もなく、月もなく、風もなかった。

 

すべてが、音のない深みの中に沈められたようだった。

 

私は海面に立っていた。

 

足元は水でも地面でもなく、ガラスのような黒い平面だった。

 

遠くに王座が見えた。

 

その王座は、何度も見たことがあった。

 

巨大で、冷たく、暗黒そのものから生えているかのようだった。

 

ソレンセンがそこにいた。

 

それはいつものようにすぐに私を嘲笑しなかった。

 

その触手に、金色の鎖が細く巻きついていた。

 

その鎖はとても細かった。

 

しかし眩しいほどに光っていた。

 

まるで暗黒の中から切り出された一本の聖なる光のようだった。

 

私は一目でわかった。

 

それは聖霊スペニが残した封印だった。

 

私の体が固まった。

 

「何をしているの?」

 

ソレンセンは顔を上げなかった。

 

「牢の研究をしている」

 

私の心臓が激しく収縮した。

 

「脱困しようとしているの?」

 

それはようやく顔を上げた。

 

その目は黒海の中で光り、まるで深淵の底に押し込められた二つの暗い星のようだった。

 

「今になって聞くのか?」

 

私は一歩後ろに下がった。

 

足元の黒い平面に、一つの波紋が広がった。

 

「出てはいけない」

 

「吾はもちろん知っている」

 

その声はとても静かだった。

 

静かすぎて、よほど恐ろしかった。

 

「今はまだ、だ」

 

今は。

 

この言葉で、私は背中が冷たくなった。

 

ソレンセンは掌の中の金色の鎖を見ていた。

 

鎖の一端は胸の中に消え、もう一端は黒海の奥へと伸びていた。

 

もっと遠くには、無数の似た光の線があった。

 

中には鎖のようなものもあれば、符文のようなもの、星の軌道のようなものもあった。

 

それらは四方八方から黒海を押しつけ、ソレンセンを王座にしっかりと釘付けにしていた。

 

私は以前、封印とはただ一つの力だと思っていた。

 

一つの抑圧。

 

「ソレンセンを出さない」ためのルールだと思っていた。

 

しかし今、私は初めて、それが単純な一本の鎖ではないことを見た。

 

それは巨大で精密な天体構造のようだった。

 

聖霊スペニの力は、ソレンセンを粗暴に閉じ込めたわけではなかった。

 

その存在を何層にも分解し、ほとんど理解できない秩序で固定していた。

 

概念。

 

身体。

 

力。

 

意識。

 

名前。

 

出口。

 

宿主。

 

制御権。

 

一つ一つが別々に封じられていた。

 

ソレンセンが私から離れられないのも当然だった。

 

宿主を簡単に変えられないのも当然だった。

 

私が同意しなければ、その力が私の体を制御できないのも当然だった。

 

スペニはただソレンセンを倒しただけではなかった。

 

その可能性を一つ一つ封じていた。

 

ソレンセンが低く笑った。

 

「少しわかったか?」

 

私は喉が締めつけられるのを感じた。

 

「ここはどこ?」

 

「封印の内側だ」

 

「なぜ私がここにいるの?」

 

「今日、君が吾を多く使ったからだ」

 

私は四国の旧遍路道を思い出した。

 

暗黒エネルギー。

 

無明講。

 

彼らが儀式の中に置いたAfterToneの写真。

 

檻の中で王冠を露わにしたソレンセン。

 

私の声が震えた。

 

「だから私が来たの?」

 

「違う」

 

ソレンセンは金色の鎖を軽く弾いた。

 

鎖が冷たい音を立てた。

 

「君が牢を揺らしたのだ」

 

黒海の上に、一枚一枚の映像が浮かび上がった。

 

百目影倉。

 

私が一千七百二十六の自爆点を切断するよう条件を付けたこと。

 

天城システム。

 

私が模擬学校から接続を切断したこと。

 

仙台旧劇場。

 

私が青嵐会の観察術式を切断するよう求めたこと。

 

玄海湾。

 

私が潮鏡社と海底通信ノードの汚染の鎖を切断させたこと。

 

四国遍路道。

 

私が無明講に対してより重い暗黒の抑圧を許可したこと。

 

どの映像の中にも、金色の鎖が震えていた。

 

私が「条件」と言ったたび。

 

ソレンセンが「できる」と言ったたび。

 

契約が成立したたび。

 

封印がわずかに光った。

 

とても細く。

 

まるで呼吸のように。

 

ソレンセンが言った。

 

「聖霊スペニの封印は非常に精密だ」

 

「それは吾を封じるだけでなく、君が吾をどのように使うかを規定している」

 

私はそれらの映像をじっと見つめた。

 

「どういう意味?」

 

「君は自分が条件を付けるたびに、ただ吾を制限しているだけだと思っている」

 

「違う」

 

それは低く笑った。

 

「君は封印を呼び出してもいる」

 

私は固まった。

 

ソレンセンが触手を上げ、黒海の上に金色の符文の輪が現れた。

 

それらは私とそれとの間にある、見えない線を囲んで回転していた。

 

「封印は君の意志を認めている」

 

「君が宿主として明確に制限を設ける限り、封印は君の条件を一時的なルールに変換する」

 

「吾がそのルールを守れば、力の一部を君が引き出せる」

 

「吾が違反すれば、聖霊スペニが残した抑圧が即座に強まる」

 

私はゆっくりと理解した。

 

私が毎回条件を言うのは、ソレンセンとの口頭の約束だけではなかった。

 

スペニが残した封印システムを使っていた。

 

私はただ失控を恐れて、ソレンセンに言葉の縄をかけていると思っていた。

 

しかし実際には、それらの言葉が本当に封印のルールになっていた。

 

それらはソレンセンの力を「使える」ものにし、同時に越境できないようにしていた。

 

これは良いことだった。

 

本来は良いことのはずだった。

 

しかしソレンセンはそれを研究していた。

 

「ずっと見ていたの?」

 

「当然だ」

 

「毎回?」

 

「毎回」

 

私の指が冷たくなった。

 

それは私がどのように条件を付けているかを観察していた。

 

封印がどのように反応するかを観察していた。

 

どの言葉がルールとして認められるかを観察していた。

 

どの言葉が認められないかを観察していた。

 

私が恐怖や怒り、疲労、保護欲の中でどのように封印を揺らすかを観察していた。

 

ソレンセンが王座から立ち上がった。

 

黒海は波打たなかった。

 

しかし夢全体が、その動作によって押し下げられたように感じられた。

 

それはゆっくりと王座を降りてきた。

 

金色の鎖がそれに伴って張りつめた。

 

一歩ごとに聖なる光がより明るく輝いた。

 

しかしそれは止まらなかった。

 

鎖が、私からそう遠くない位置で止めるまで。

 

それ以上近づくことはできなかった。

 

ソレンセンは胸の鎖を見下ろした。

 

「スペニはよく封じた」

 

「力、出口、宿主権限、移転の可能性、すべてが封じられている」

 

「特に最も重要な一点」

 

それは私を見上げた。

 

「吾は君の同意を能動的に書き換えることができない」

 

私は即座に後ずさった。

 

「書き換えようとしているの?」

 

「今はできない」

 

また「今は」だった。

 

ソレンセンは私の顔に浮かんだ恐怖を満足げに見ていた。

 

「白川一音、君は吾がただ君の崩壊を待っていると思っていたのか?」

 

私は答えなかった。

 

それは続けた。

 

「それは最も粗雑な方法だ」

 

「もし君が完全に崩壊すれば、封印はむしろ自動的に強化される」

 

「なぜならスペニは、吾が宿主の精神の隙を利用しようとすることを、すでに予見していたからだ」

 

私は息を飲んだ。

 

「つまり……」

 

「吾が君を狂わせても、吾は出られない」

 

ソレンセンの声には嫌悪が混じっていた。

 

まるで非常に退屈な事実を認めているかのようだった。

 

「聖霊スペニは、その道を封じていた」

 

私は本来、安堵すべきだった。

 

しかし安堵しなかった。

 

なぜならソレンセンは、一つの道が塞がれたからといって止まるはずがないからだった。

 

案の定、それは続けた。

 

「本当の道は、崩壊の中にはない」

 

「親しみの中にある」

 

私はわからなかった。

 

それは軽く手を上げた。

 

黒海の上に、私が何度も条件を付けたときの声が浮かび上がった。

 

私の体を乗っ取ることは禁止。

 

殺してはいけない。

 

普通の人を傷つけない。

 

記憶を汚染しない。

 

脱困しない。

 

ただ接続を切断する。

 

残片を残す。

 

同伴者を傷つけない。

 

AfterToneに触れない。

 

学校に触れない。

 

これらの言葉が一層一層、黒海の上に漂っていた。

 

まるで私が自分で書いた呪文のように。

 

ソレンセンはそれらを見ていた。

 

「君が封印を使えば使うほど、封印は君を認める」

 

「封印が君を認めれば認めるほど、吾はそれがどのように君を認めるかを理解できる」

 

「吾は聖霊スペニの鎖を直接破壊することはできない」

 

「しかしもしある日、君が自ら、あるルールを変えるに足る言葉を口にするなら……」

 

それは言い続けなかった。

 

しかし私はすでに理解していた。

 

それは私を崩壊させる必要はなかった。

 

ある極端な状況で、私が自ら条件を緩めるように仕向ければよかった。

 

一度。

 

二度。

 

三度。

 

私が誰か、どこか、何かを守るために、もっと大きな許可を口にせざるを得なくなれば、封印はそれを記録する。

 

ソレンセンはそれを学習する。

 

そしてある日、それは強引に引き裂くのではなく、私が自分で開けた扉を見つけるかもしれない。

 

私の声が震えた。

 

「私はしない」

 

ソレンセンが笑った。

 

「君はもうしている」

 

黒海の上に、四国の遍路道の映像が再び現れた。

 

私はそこで言った。

 

「少し重くてもいい」

 

幻影が沈み、無明講が自分の影の中に跪いた。

 

私の顔色が一瞬、真っ白になった。

 

ソレンセンが言った。

 

「見ろ」

 

「君は錨のために、吾により重いことを許した」

 

「脱困はしなかった」

 

「殺人もしなかった」

 

「失控もしなかった」

 

「しかし以前より、吾に近づいた」

 

それは低く言った。

 

「君は少しずつ、吾のやり方が有効であることを学んでいく」

 

「嫌いになるだろう」

 

「怖がるだろう」

 

「拒否するだろう」

 

「しかしそれが君が守りたいものを守れるなら、君はいつかそれを必要とする」

 

私は歯を食いしばった。

 

「なら、これからはあなたの力を使わない」

 

ソレンセンが声を上げて笑った。

 

黒海が震えた。

 

「できない」

 

それは嘲笑ではなく、事実を述べるように言った。

 

「白鏡監督はまだいる」

 

「天城システムはまだいる」

 

「それらの財団、家系、地方勢力はまだいる」

 

「学校にはもう人が入っている」

 

「AfterToneは無明講に調べられている」

 

「君は普通を守りたいと言いながら、十分に普通の力を持っていない」

 

それは鎖が許す境界まで、一歩一歩近づいてきた。

 

神聖な光がその体を締めつけた。

 

暗黒と聖光が互いに押し合った。

 

「君はこれからも吾を呼ぶだろう」

 

「条件を付け続けるだろう」

 

「力を借り続けるだろう」

 

「封印に君を認めさせ続けるだろう」

 

「そして吾にも、封印を理解させ続けるだろう」

 

私は反論しようとした。

 

しかし言葉が出なかった。

 

なぜなら、それがあまりにも現実のようだったからだった。

 

私はそれを必要としていた。

 

これが最も恐ろしい事実だった。

 

私はソレンセンの力が好きだったわけではなかった。

 

強くなりたかったわけでもなかった。

 

ただ、普通の方法では解決できない事態に何度も遭遇し、

 

そのたびに黒海に手を伸ばさざるを得なかった。

 

ソレンセンが低く言った。

 

「そのような顔をするな」

 

「君は無実ではない」

 

「君が『条件』と言うたび、吾を選んでいる」

 

私は手を握りしめた。

 

「あなたを止めるためだ」

 

「そして吾を使うためでもある」

 

「…………」

 

「認めろ、白川一音」

 

「君は牢を握っている」

 

「しかし牢の中の王も握っている」

 

その瞬間、私は目を覚ましたくなった。

 

しかし夢は終わらなかった。

 

黒海の奥で、忽然とより強い金色の光が灯った。

 

一つの声が響いた。

 

ソレンセンの声でも、私の声でもなかった。

 

その声は非常に遠くから聞こえた。

 

まるで宇宙の果てから届くように。

 

穏やかで、神聖で、しかし抗うことのできない威厳を帯びていた。

 

「ソレンセン」

 

ソレンセンの顔から笑みが消えた。

 

黒海の上のすべての影が静止した。

 

私も固まった。

 

それは聖霊スペニの声だった。

 

本体ではなかった。

 

封印の中に残った意志のようだった。

 

金色の光が黒海の上にぼんやりとした輪郭を結んだ。

 

顔は見えなかった。

 

ただ聖なる光翼と、星の軌道のように広がる紋様だけが見えた。

 

ソレンセンが冷たく言った。

 

「残影か」

 

スペニの残留意志は嘲笑には答えなかった。

 

ただソレンセンを見ていた。

 

「君はまだ出口を探している」

 

ソレンセンが笑った。

 

「吾は一度も止めたことがない」

 

「君は失敗する」

 

「もし本当にそう確信しているなら、なぜこれほど多くの自動ルールを残した?」

 

「ルールは君のためではない」

 

金色の光がわずかに私の方を向いた。

 

「彼女のためだ」

 

私は息を飲んだ。

 

私のため?

 

スペニの残留意志の声が続いた。

 

「封印は武器ではない」

 

「選択の境界でもある」

 

私はあまり理解できなかった。

 

ソレンセンは冷ややかに笑った。

 

「宿主に選択を与え、苦痛の中で吾を使わせるのか」

 

「完全に隔絶すれば、彼女は死ぬからだ」

 

この言葉で、黒海が静かになった。

 

私は固まった。

 

ソレンセンを完全に隔絶すれば、私が死ぬ?

 

スペニの残留意志が低く言った。

 

「君の残存の力が彼女の体に入ったとき、すでに彼女の生命構造と絡み合っている」

 

「強引に剥離すれば、宿主を破壊する」

 

私の手足が冷たくなった。

 

つまりソレンセンが私から離れられないのは、脱困を防ぐためだけではなかった。

 

私をバラバラにしないためでもあった。

 

ソレンセンの声が陰冷になった。

 

「まるで慈悲のように言うな」

 

「慈悲ではない」

 

スペニの残影が言った。

 

「責任だ」

 

それは私を見た。

 

その光に温度はなかったが、私は見透かされているような感覚を覚えた。

 

「封印を使うことはできる」

 

「しかし恐怖に、すべてのルールを決めさせてはならない」

 

私は固まった。

 

「どういう意味?」

 

光が瞬いた。

 

「恐怖は失控を止められる」

 

「しかし恐怖は、彼に学習されることもできる」

 

私は無意識にソレンセンを見た。

 

ソレンセンは否定しなかった。

 

スペニの残影が続けた。

 

「君のルールは、ただの怖さから来るものだけではいけない」

 

「君が守りたいものからも来るべきだ」

 

守りたいもの。

 

AfterTone。

 

学校。

 

日和、陽菜、澪。

 

森原さんがくれた飴。

 

普通のピック。

 

ホットココア。

 

あの学生楽団が無事に終えた演出。

 

校長が「学校はまず君を生徒として見る」と言ったこと。

 

これらもルールになり得るのか?

 

「してはいけない」だけではなく、「のために」。

 

ただ殺すな、傷つけるな、脱困するなと言うのではなく、

 

普通の人が自分の生活に戻れるために。

 

舞台が音楽に属し続けるために。

 

学校が学校であり続けるために。

 

私が私であり続けるために。

 

スペニの残影は、私が何を考えているかを知っているようだった。

 

「彼をただ抑え込まなければならない暗黒として扱うな」

 

ソレンセンの視線が危険になった。

 

「しかし彼を頼れる答えとして扱うな」

 

「彼は君の恐怖を研究するだろう」

 

「なら、彼にも、君の恐怖以外のものを見せろ」

 

この言葉を言い終えると、金色の輪郭が消え始めた。

 

ソレンセンが冷たく言った。

 

「言い終わったら去るのか?」

 

スペニの残影はそれに答えなかった。

 

最後の金色の光が私に向かって落ちてきた。

 

力ではなかった。

 

どちらかと言えば、一つの注意だった。

 

「封印の鍵は、彼の手の中にはない」

 

「また、君の恐怖の中だけにあるべきでもない」

 

光が消えた。

 

黒海は再び静寂を取り戻した。

 

ソレンセンは王座の前に立ち、顔色が陰鬱だった。

 

私は初めて、それがこれほど不愉快そうにしているのを見た。

 

激怒でも、嘲笑でもなく、

 

推論を中断された後の冷たい苛立ちだった。

 

それは私を見た。

 

「残影に騙されるな」

 

私は小さく言った。

 

「あなたが私の恐怖を研究すると言っていた」

 

「吾はもちろんする」

 

それはあっさりと認めた。

 

「私のルールがただの怖さから来るだけではいけないと言っていた」

 

ソレンセンが冷ややかに笑った。

 

「愛と友情で吾を縛れるとでも思っているのか?」

 

この言葉をそれの口から聞くのは非常に恐ろしく、そして非常に嘲弄的だった。

 

私は本来、縮こまるべきだった。

 

しかしスペニの残影の言葉を思い出した。

 

私は顔を上げた。

 

「あなたを縛るわけではない」

 

「では何だ?」

 

「私自身を思い出すためだ」

 

ソレンセンが私を見た。

 

私は声を震わせないよう努力した。

 

「もし私が条件を付けるたびに、ただあなたを恐れているだけなら、あなたはますます私の恐怖を利用する方法を理解する」

 

「しかし私が条件を付けるときに、守りたいものを考えているなら、あなたはただ恐怖で私に扉を開けさせることはできない」

 

ソレンセンが一瞬、静かになった。

 

それから笑った。

 

「面白い」

 

「これで吾を止められるとでも思っているのか?」

 

「わからない」

 

私は言った。

 

「しかし私は試す」

 

ソレンセンが私をじっと見ていた。

 

黒海の上に、元々漂っていた「禁止」の文字が、ゆっくりと変化し始めた。

 

殺してはいけない。

 

その横に新しい文字が現れた。

 

巻き込まれた人が自分の生活に戻れるために。

 

記憶を汚染してはいけない。

 

普通の生活が奪われないために。

 

AfterToneに触れてはいけない。

 

舞台が音楽に属し続けるために。

 

脱困してはいけない。

 

私が白川一音であり続けるために。

 

これらの文字はとても微弱だった。

 

金色の封印ほど眩しくもなく、ソレンセンの暗黒ほど強力でもなかった。

 

しかしそれらは確かに現れた。

 

ソレンセンはそれらの文字を見て、視線を深くした。

 

「君は自分のルールを書き換えている」

 

「うん」

 

「これも吾に研究されることを知っているか?」

 

「知っている」

 

「それでもするのか?」

 

「しないと、あなたは私の怖さだけを研究するから」

 

黒海が沈黙した。

 

長い沈黙の後、ソレンセンが低く笑った。

 

「白川一音」

 

「君はようやく、牢の主人らしくなってきたな」

 

私はそれが褒め言葉なのか脅しなのか、わからなかった。

 

おそらく両方だった。

 

夢が崩れ始めた。

 

黒海、王座、金色の鎖、ソレンセンの姿が少しずつ遠ざかっていった。

 

目を覚ます前に、私はその最後の言葉を聞いた。

 

「しかし覚えておけ」

 

「主人も、王座に誘惑される」

 

私は目を覚ましたとき、まだ夜が明けていなかった。

 

部屋の中は静かだった。

 

携帯電話は枕元に置いてあった。

 

ギターバッグは壁に立てかけてあった。

 

机の上には普通のピックと、飲みかけの水が置いてあった。

 

すべてが現実的だった。

 

黒海もなければ、王座もなく、金色の鎖もなかった。

 

しかし私の掌は冷や汗でびしょ濡れだった。

 

私は体を起こし、携帯電話のメモを開いた。

 

指が震えながら、いくつかの行を書いた。

 

ソレンセンの力を使うとき、「禁止」だけを書かない。

 

「のために」も書く。

 

恐怖に、すべてのルールを決めさせない。

 

ソレンセンに、私の怖さだけを研究させない。

 

書き終えた後、私は画面を長い時間見つめていた。

 

そしてもう一行を追加した。

 

私は鍵ではない。

 

私は扉でもない。

 

私は門番だ。

 

この言葉は少し中二だった。

 

とても中二だった。

 

しかし私は削除しなかった。

 

なぜなら、午前四時半という時間には、少し中二になっても許されるからだった。

 

ソレンセンが意識の奥で口を開いた。

 

「起きたな」

 

私は体を固くした。

 

「さっきの夢は本当だったの?」

 

「どう思う?」

 

「スペニの残影が……」

 

「ふん」

 

それは明らかに話したくなかった。

 

これはおそらく本当だったということだった。

 

私はメモを見つめていた。

 

「あなたはこれからも封印を研究するの?」

 

「もちろん」

 

それはためらいなく答えた。

 

私は聞いた。

 

「なら、私も封印をもっと上手に使う方法を研究してもいい?」

 

ソレンセンが少しの間、沈黙した。

 

それから笑った。

 

「いい」

 

「来い」

 

「吾はとても楽しみにしている」

 

この言葉は、決して良いことのように聞こえなかった。

 

しかし私は後退しなかった。

 

少なくとも今回はしなかった。

 

空が少しずつ明るくなってきた。

 

今日はまだ学校があった。

 

天城美咲はまだクラスにいる。

 

九条綾音はまだ隣の教室にいる。

 

白石蓮はまた机に突っ伏して寝ているかもしれない。

 

藤堂遥はまた音楽プロジェクトの話で校長と会うかもしれない。

 

AfterToneでは夜に練習がある。

 

日和は新しい編曲を試したいと言っていた。

 

陽菜はステージの動きを練習したいと言っていた。

 

澪は次に飯があるかどうかを確認したいと言っていた。

 

これらはすべて、私を待っていた。

 

ソレンセンは封印を研究している。

 

私も、自分のルールを研究しなければならなかった。

 

それを解放するためでもなく、

 

より依存するためでもなく、

 

次にどうしても暗黒に手を伸ばさなければならないとき、

 

なぜ手を伸ばしたのかを、忘れないために。

 

ただ恐怖だからではない。

 

少なくとも、恐怖だけではないように。

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