俺の頭の中に敗北した暗黒の王が住み着いているが、俺はただギターを弾きたいだけだ   作:arctichare

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第41章 志望校リスト、そして私が初めて本気で普通の未来を準備したこと

第41章 志望校リスト、そして私が初めて本気で普通の未来を準備したこと

 

進路希望調査表に「未定」と書いた後、私はそれで少し終わったと思っていた。

 

しかし本当に恐ろしいのは、「未定」と書いた後に、担任が優しくこう言うことだった。

 

「では、まずは大学について調べてみましょうか」

 

私は進路指導室に座り、手に資料の束を抱え、退魔災害と向き合う時よりも緊張していた。

 

机の上には大学の紹介冊子、入試方式の説明、オープンキャンパスの日程、模擬試験の申込用紙、学習計画表、そして「志望校候補」と書かれた空白の表があった。

 

またしても空白の表だった。

 

私は最近、自分の人生が空白の表に追われているように感じていた。

 

担任が私の向かいに座り、穏やかな口調で言った。

 

「白川さんは前に、音楽・心理学・社会学方面に興味があると書いていましたね」

 

私は頷いた。

 

「はい……」

 

「では、まずは学部を決めずに、三つのことをしてみましょう」

 

彼女はペンを取り、紙に書いた。

 

第一、興味がありそうな分野について知る

第二、一度オープンキャンパスに参加する

第三、一度模擬試験を受けて、今の学力の位置を確認する

 

三つのこと。

 

聞こえはとても簡単だった。

 

しかし一つ一つが、山のように感じられた。

 

特に「オープンキャンパス」。

 

それは大学に行くことを意味した。

 

見知らぬキャンパスに入り、見知らぬ先生の説明を聞き、

 

周囲に知らない高校生や保護者がいる。

 

並んで資料をもらうかもしれない。

 

質問をしなければならないかもしれない。

 

アンケートに記入するよう言われるかもしれない。

 

私は想像しただけで、逃げ出したくなった。

 

ソレンセンが意識の奥で低く評価した。

 

「天穹システムと向き合っていた時でさえ、そんなに絶望した顔はしていなかった」

 

私は顔を伏せた。

 

「オープンキャンパスは怖いです」

 

「大学が天城データタワーより怖いのか?」

 

「種類の違う怖さです」

 

「人間は本当に面倒だ」

 

この点については、私は同意した。

 

担任が続けた。

 

「最初は遠くの大学でなくてもいい。東京近郊にも、音楽・心理学・社会学の授業がある大学がいくつかある」

 

私は小さく聞いた。

 

「行ってみて、気に入らなかったらどうなるんですか?」

 

「それも収穫だよ」

 

「それも、ですか?」

 

「もちろん」

 

彼女は笑った。

 

「自分がどこに行きたくないのかを知ることも、大事なことだから」

 

この言葉で、私は少しだけ安心した。

 

すべての行動が成功しなければならないわけではない。

 

すべての判断が危機を解決しなければならないわけではない。

 

大学オープンキャンパスに行って合わなかったとしても、いい。

 

少し遠回りしただけだ。

 

もしかすると大学食堂のパンを買うことになるかもしれない。

 

そう考えれば、少しだけ怖くなくなった。

 

ただ、少しだけだった。

 

放課後、私は大学資料をAfterToneに持って行った。

 

ただ練習前に少し見ておこうと思っただけだった。

 

しかし陽菜が資料冊子を見た瞬間、興奮して近づいてきた。

 

「小音、もう大学準備してるの?」

 

私は体が固くなった。

 

「た、ただ見てみるだけです」

 

日和も近づいてきた。

 

「もう進路指導が始まってるんだね」

 

澪もソファに座ったまま、手に飯団を持ちながら真剣に聞いた。

 

「大学食堂は美味しいのか?」

 

私はまだ行っていないのに、どうしてわかるはずがない。

 

陽菜が資料冊子をめくり始めた。

 

「この学校、音楽文化学科がある!」

 

日和が一目見て言った。

 

「ここにも心理学と社会学の方向があるね」

 

澪が一ページを指さした。

 

「この食堂の写真、良さそう」

 

「澪、視点が固定されすぎ」

 

私は隣に座り、彼女たちが自然に大学について話しているのを見て、奇妙な感覚を覚えた。

 

大学。

 

この言葉は以前、私にとってとても遠いものだった。

 

成績の問題ではなく、

 

自分が数年後の姿を、本気で想像したことがなかったからだった。

 

以前の未来はとてもぼんやりしていた。

 

今の未来はもっと混乱していた。

 

退魔界、ソレンセン、特調室、下北沢黒弦、これらのものが黒い糸の塊のように、前方に絡みついていた。

 

しかし日和たちが大学について話すとき、その口調はとても普通だった。

 

どの学校が下北沢に近いか。

 

どの学部が面白そうか。

 

オープンキャンパスは予約した方がいいか。

 

食堂の写真はどうか。

 

これらの普通の話題が、「未来」という言葉を、暗闇の中から少しだけ引き戻してくれているように感じた。

 

日和が私に聞いた。

 

「小音は、音楽そのものを学びたいのか、それとも人と関わることを学びたいのか?」

 

私は固まった。

 

「人と関わること?」

 

「心理学や社会学とか」

 

彼女は言った。

 

「前に、人を助けたいとも書いていたよね?」

 

私は顔を伏せた。

 

「はい」

 

陽菜が言った。

 

「小音は、人の話を聞くのが上手そうだよ!」

 

私はすぐに首を振った。

 

「で、できないです。自分から話すのも苦手なのに……」

 

陽菜はとても真剣に言った。

 

「でも小音は、ちゃんと人の話を聞いてくれる」

 

私は何も言えなくなった。

 

澪が頷いた。

 

「一音は、飯を食べる音も真剣だ」

 

これはどういう意味だろう。

 

日和が笑った。

 

「陽菜が言いたいのは、小音はあまり自分から話さないけど、人のことをすごく気にする、ということだよ。それも一つの方向になる」

 

私は資料冊子を見下ろした。

 

音楽。

 

心理。

 

社会。

 

人を助けること。

 

これらの言葉はまだ曖昧だった。

 

しかし前より、少しだけ具体的に感じられた。

 

私は小さく言った。

 

「まずはオープンキャンパスに行ってみたいです」

 

陽菜がすぐに手を挙げた。

 

「私も行きたい!」

 

日和が注意した。

 

「オープンキャンパスは友達と一緒に行けるけど、小音はまず、自分が何を見たいのかを確認した方がいいよ」

 

陽菜がすぐに頷いた。

 

「なら、私は同行要員で!」

 

澪が言った。

 

「私は食堂の評価をする」

 

私は三人が一緒にオープンキャンパスについてくる光景を想像した。

 

陽菜は興奮してあちこち走り回り、

 

澪は食堂に吸い寄せられ、

 

日和は真剣にメモを取るだろう。

 

彼女たちが一緒に来てくれれば、私はそれほど怖くないかもしれない。

 

しかし同時に、彼女たちが退魔界の視線に巻き込まれることを心配していた。

 

私は最近、どこに行くにも、どこかの勢力に注意される可能性があった。

 

大学のオープンキャンパスも、必ずしも安全とは限らなかった。

 

この考えが浮かんだ瞬間、私は胸が沈むのを感じた。

 

普通の大学見学でさえ、まず異常のリスクを考えてしまう。

 

これがとても辛かった。

 

日和は私のためらいに気づいたようだった。

 

彼女は追及せず、ただこう言っただけだった。

 

「一人で行くのもいいし、私たちと一緒に行くのもいい。自分に合った方で」

 

自分に合った方で。

 

この選択権は、今の私にとってはまだとても馴染みのないものだった。

 

私は頷いた。

 

「はい。まずは考えてみます」

 

翌日、特調室も私が大学準備を始めていることを知った。

 

私は学校が進路指導の情報を、保護協定に基づいて彼らに同期しているのではないかと疑った。

 

眼鏡の女性が一つのファイルを送ってきた。

 

タイトルは、

 

高危協力者 進学段階における普通の身分保護に関する提案

 

私はこのタイトルを見て、複雑な気持ちになった。

 

他の人が大学を準備するときは、学部や偏差値やキャンパス環境を見る。

 

私は大学を準備しながら、「普通の身分保護に関する提案」まで見なければならなかった。

 

これは一体、どんな人生なのだろうか。

 

ファイルの中には多くの内容が書かれていた。

 

オープンキャンパスでは、暗面組織に追跡される可能性のある情報を公開登録しないよう努めること。

 

志望校を非必要な人物に早い段階で明かさないこと。

 

模擬試験を受ける場合は、普通のルートを利用し、特調室の介入は必要ないこと。

 

将来大学に入学した場合、特調室は学校側と最低限の保護連絡を結ぶこと。

 

いかなる退魔家系、財団、地方勢力も、推薦・奨学金・研究協力という名目で強引に介入することを禁ずること。

 

最後の項目にはこう書かれていた。

 

本人の進路選択を尊重し、特調室・退魔組織・財団安全体系関連の学部に誘導しないこと。

 

私は最後の項目を、長い時間見つめていた。

 

それから、ゆっくりと息を吐いた。

 

少なくとも、彼らはこの一文を書いていた。

 

ソレンセンが口を開いた。

 

「書いたからといって、実行できるとは限らない」

 

「わかっている」

 

「君はこれからも必要とされる」

 

「わかっている」

 

「では、このファイルに何の意味がある?」

 

私はその一行を見つめていた。

 

「これを使って、拒否できるということです」

 

ソレンセンが笑った。

 

「君はますます人間のファイルの使い方を覚えてきたな」

 

「なぜなら、人間の世界では、すべてを黒弦で切断できるわけではないから」

 

「時にはできる」

 

「いつも切断することばかり考えているな」

 

それは反論しなかった。

 

おそらく、後で私が黒弦の方が便利だと認める機会が来ると思っているのだろう。

 

私は読み続けた。

 

ファイルの最後に、もう一つ提案が書かれていた。

 

音楽、心理、社会、教育、文化研究など、複数の方向性を持つ総合大学を優先的に検討すること。以後調整しやすくするため。

 

これは担任が言っていたこととほぼ同じだった。

 

私はこの項目をノートに書き写した。

 

特調室が言ったからではなく、

 

私自身も、そうした方が安全だと感じたからだった。

 

異常という意味での安全ではなく、

 

人生という意味での安全だった。

 

もし私が今、自分が何を学びたいのかまだわからないなら、

 

選択の余地を残せる場所を選ぶべきだ。

 

週末、私は初めてオープンキャンパスに行った。

 

場所は東京にある中規模の私立大学だった。

 

下北沢からそれほど遠くなく、

 

音楽文化、心理学、社会学、メディア研究などの方向があった。

 

私は本来、一人で行くつもりだった。

 

しかし出かける前に、日和からメッセージが来た。

 

一緒にいる必要がある? いなくても大丈夫だよ。

 

私はその一文を、長い時間見つめていた。

 

結局、返信した。

 

一緒に来てくれますか?

 

日和はすぐに返信してきた。

 

もちろん。

 

陽菜が知ると、ぜひ行きたいと言った。

 

澪は大学食堂があると聞いて、一緒に来た。

 

こうして、オープンキャンパスは余響楽隊の半ば合宿のようなものになった。

 

私は安心したと同時に、緊張もした。

 

安心したのは、彼女たちがいるからだった。

 

緊張したのも、彼女たちがいるからだった。

 

もし何かあったら、私はとても怖いだろう。

 

しかし「何かあったら怖いから」と、彼女たちを自分の未来から永遠に遠ざけるのも、どこかで負けているような気がした。

 

だから私は行くことにした。

 

ただの大学見学だ。

 

普通に電車に乗り、

 

普通に校門を入り、

 

普通に資料を受け取り、

 

普通に説明会を聞く。

 

まるで普通の高校生のように。

 

大学の入り口には大勢の人がいた。

 

高校生。

 

保護者。

 

学生ボランティア。

 

先生。

 

みんなが資料袋を持っていた。

 

キャンパスには木があり、長椅子があり、掲示板があり、サークルの新入生募集ポスターが貼られていた。

 

符紙はなく、

 

天穹システムの表示もなく、

 

少なくとも表面上はなかった。

 

私は周囲を注意深く見た。

 

ソレンセンが怠そうに言った。

 

「目立った虫はいない」

 

私は少し安堵した。

 

「みんなを虫って呼ばないでくれる?」

 

「できない」

 

まあ、いいか。

 

日和がキャンパスマップを持っていた。

 

「音楽文化の説明会は二号館、心理学の体験授業は三号館、社会学系の説明は午後だね」

 

陽菜が興奮して言った。

 

「本当に大学生みたい!」

 

澪が地図を見ながら言った。

 

「食堂はここだ」

 

私は低く笑った。

 

彼女たちがいてくれれば、キャンパスはそれほど怖くなかった。

 

私たちはまず音楽文化学科の説明会に行った。

 

教室は広かった。

 

前の先生が授業内容を説明していた。

 

音楽史、音の文化、メディア、演出企画、録音制作、地域音楽活動。

 

私はとても真剣に聞いていた。

 

自分が必ずこれを学ぶつもりだったからではない。

 

ただ、これを聞いていると、初めてこう思えた。

 

音楽とは、ただステージで演奏するだけではない。

 

研究することもできる。

 

記録することもできる。

 

活動を組織することもできる。

 

小さなLiveHouse、地方の音楽空間、学生楽隊、地域文化を繋ぐこともできる。

 

これらのことは、AfterToneにとても近く感じられた。

 

また、私が最近経験した「地方の音楽空間が異常の脅威に晒される」ことにも、近く感じられた。

 

ただ、ここには退魔はなかった。

 

ここでは普通の言葉で語られていた。

 

音。

 

場所。

 

人々。

 

文化。

 

私は忽然と思った。

 

もし将来、本当にこれを学べるなら、

 

私はなぜ自分があんなに舞台を守りたいと思っていたのかを、もっとよく理解できるかもしれない。

 

ただそこが錨だからではなく、

 

そこに元々価値があるからだ。

 

説明会が終わった後、陽菜が興奮して言った。

 

「小音、これすごく合いそう!」

 

私は顔が少し熱くなった。

 

「ま、まだわからないです」

 

日和が頷いた。

 

「他のものも少し聞いてみるといいよ」

 

澪が言った。

 

「食堂も聞いた方がいい」

 

「食堂は説明会じゃないよ」

 

しかし私たちは結局、食堂に行った。

 

なぜなら澪が非常に強く主張したからだった。

 

大学食堂は学校の食堂よりずっと広かった。

 

人も多かった。

 

私はとても緊張した。

 

しかしみんなが普通に食事をしていて、誰も私に注意を向けていなかった。

 

澪はカレーを買い、

 

陽菜はうどんを買い、

 

日和は定食を買い、

 

私は長い間迷った末に、一番普通のオムライスを買った。

 

トレイを受け取ったとき、私は忽然と少し感動した。

 

普通の大学食堂。

 

普通のオムライス。

 

普通の席。

 

「もしかするとここで食事をするかもしれない」という、普通の想像。

 

これは多くの人にとっては何でもないことかもしれない。

 

しかし私にとっては、とても贅沢な未来のように感じられた。

 

私は顔を伏せて、一口食べた。

 

味はとても普通だった。

 

しかし私は、とても美味しく感じた。

 

澪が真剣に評価した。

 

「志望校の加点項目として十分だ」

 

日和が笑った。

 

「一番大事な基準ではないかもしれないけど、生活の質には確かに影響するね」

 

陽菜が言った。

 

「小音がここに来ることになったら、私たちも遊びに来ていい?」

 

私の指が止まった。

 

将来。

 

もし私がここに来ることになったら。

 

もし彼女たちが遊びに来てくれたら。

 

もしその時、私がまだ普通にここで座っていられたら。

 

この想像で、私は胸の奥が締めつけられた。

 

「うん」

 

私はとても小さな声で言った。

 

「いいよ」

 

午後、私たちは心理学の体験授業を受けた。

 

先生が話したテーマは「ストレスと自己調整」だった。

 

このタイトルが出た瞬間、私は固まった。

 

ストレス。

 

自己調整。

 

まるで私を対象にしているかのようだった。

 

もちろん、そんなはずはない。

 

これはただのオープンキャンパスの普通の体験授業だった。

 

先生はみんなに簡単なアンケートをさせ、自分がストレスに直面したときの反応タイプを見るよう言った。

 

私は選択肢を見て、どんどん沈黙していった。

 

ストレスに直面したとき、私は:

 

回避する。

 

考えすぎる。

 

安全な対象を探す。

 

自分を責める。

 

責任を強引に果たそうとする。

 

私はすべての項目が、自分を書き表しているように感じた。

 

最終的な結果はこうだった。

 

高感受性、高い責任感、回避傾向、安定した支援システムを必要とする。

 

私はこの数行を見つめ、アンケートが何らかの低レベルの読心術ではないかと疑った。

 

ソレンセンが冷たく言った。

 

「人間はようやく、紙切れで君の明白な問題を発見したようだな」

 

私は顔を伏せた。

 

「黙って」

 

体験授業の先生が言った。

 

「ストレス反応は欠点ではありません。ただ、自分をどのように守る必要があるかを教えてくれるものです」

 

私はこの言葉を聞いたとき、指がゆっくりと緩むのを感じた。

 

欠点ではない。

 

ただ、自分をどのように守る必要があるかを教えてくれるもの。

 

この言葉を退魔界に置き換えたら、どうなるだろう。

 

私は失控を恐れている。それはただの弱さではないのかもしれない。

 

ルールが必要であることを教えてくれているのかもしれない。

 

私は他人が近づくのを恐れている。それはただの逃避ではないのかもしれない。

 

境界が必要であることを教えてくれているのかもしれない。

 

私はAfterToneに依存している。それはただの弱点ではないのかもしれない。

 

安定した支援システムが必要であることを教えてくれているのかもしれない。

 

これはとても普通に聞こえた。

 

しかし私は少し泣きたくなった。

 

なぜなら、普通の心理学の先生が普通の言葉で、

 

私が最近黒弦や封印や錨を使って説明していたことを、語ってくれたからだった。

 

退魔界を通さなくても、自分を少し理解できるのかもしれない。

 

体験授業が終わった後、日和が私に聞いた。

 

「この方向はどう?」

 

私は顔を伏せた。

 

「少し……怖いです」

 

「怖い?」

 

「あまりに当たっているから」

 

日和が笑った。

 

「なら、興味があるということかもしれないね」

 

陽菜が言った。

 

「小音が心理学を学んだら、後で人を慰めるのが上手くなるかも!」

 

私はすぐに首を振った。

 

「絶対に無理です」

 

澪が頷いた。

 

「飯を慰めることはできる」

 

みんなが笑った。

 

私も笑った。

 

今回は、いつもより少し自然に笑えた。

 

オープンキャンパスが終わったとき、夕陽がキャンパスをオレンジ色に染めていた。

 

私たちは校門の前に立っていた。

 

陽菜はもっと多くの学校を見たいと言った。

 

澪は食堂を比較したいと言った。

 

日和は今日の感想を私に聞いた。

 

私は長い間考えてから答えた。

 

「とても疲れました」

 

これは本当のことだった。

 

「でも……嫌いではなかったです」

 

これも本当のことだった。

 

日和が笑った。

 

「なら、それはとても良い第一歩だね」

 

私は頷いた。

 

「はい」

 

東京駅に戻る道中、私は特調室からメッセージを受け取った。

 

オープンキャンパス期間中、異常接触は検知されませんでした。

 

私は読み終えて、ゆっくりと息を吐いた。

 

異常接触なし。

 

勢力の試探なし。

 

継承者の接近なし。

 

システムの記録なし。

 

ただの普通のオープンキャンパス。

 

これはほとんど奇跡のようだった。

 

ソレンセンが口を開いた。

 

「君はとても嬉しそうだ」

 

「はい」

 

「ただ一つの学校を回っただけだ」

 

「そうです」

 

「本当に些細なことだ」

 

「はい」

 

私は前に歩いている日和、陽菜、澪を見ていた。

 

「でも、とても大事なことです」

 

ソレンセンはそれ以上嘲笑しなかった。

 

家に帰った後、私はノートを開き、大学準備計画を立て始めた。

 

今回は担任に強制されたわけでも、特調室に指示されたわけでもなかった。

 

私自身がやりたかったからだった。

 

最初のページにこう書いた。

 

大学準備計画

 

その下に書いた。

 

一、オープンキャンパスに参加する

すでに一校完了。今後二〜三校行きたい。

 

二、興味のある方向を確認する

音楽文化

心理学

社会学

教育やメディアも含めて検討

 

三、学習準備

毎日少なくとも英語と国語を復習

数学は基礎を維持

社会科目は必要な範囲を調べる

 

四、模擬試験

来月、一度申し込む

結果を恐れず、自分の位置を確認するためだけに

 

五、普通の生活を守る

この項目は大学準備らしくないように見える。

 

しかし私にとっては、大学準備の一部だった。

 

学校に通い続けること。

 

練習を続けること。

 

友達と話すことを続けること。

 

退魔任務のために、すべての普通の予定を放棄しないこと。

 

もし東京を離れる必要があるなら、事前に学校とAfterToneに伝えること。

 

すべての責任を一人で飲み込まないこと。

 

これらの行を書き終えたとき、私は自分が何かの戦闘計画を立てているように感じた。

 

しかしこれは確かに、私の大学準備でもあった。

 

普通の学生が大学を準備するときは、復習、オープンキャンパス、模擬試験、面談をする。

 

私もこれらをしなければならない。

 

しかし私は同時に、退魔界と普通の未来の間で、自分をどのように保つかも準備しなければならない。

 

これは不公平だった。

 

しかし今は、そうするしかなかった。

 

ソレンセンが忽然と言った。

 

「君は本当に大学に行きたいのだな」

 

私はペンを止めた。

 

「はい」

 

「新しい錨に逃げ込むためではないのか?」

 

私は少し考えてから答えた。

 

「少しは、そうかもしれません」

 

「認めたのか?」

 

「はい」

 

私はノートを見つめていた。

 

「でも、それだけではないです」

 

「では何だ?」

 

「私は、普通の世界に、私を説明してくれる方法がもっとあるのかを知りたい」

 

ソレンセンが静かになった。

 

私は続けた。

 

「退魔だけが、私を説明できるわけではない」

 

「もしかすると音楽が、一部を説明してくれるかもしれない」

 

「心理学が、一部を説明してくれるかもしれない」

 

「社会学も、一部を説明してくれるかもしれない」

 

「私は学びたい」

 

この言葉を言い終えた後、部屋は静かだった。

 

私自身も、少し驚いていた。

 

私は「学びたい」と言った。

 

「しなければならない」ではなく、

 

「誰かに必要とされているから」でもなく、

 

「何かを防ぐため」でもなく、

 

私は学びたいと言った。

 

ソレンセンが低く笑った。

 

「良い」

 

「君はようやく、まともな欲望を持ったな」

 

この言葉をその口から聞くのは非常に奇妙だった。

 

しかし私は反論しなかった。

 

なぜなら、それが確かに欲望だったからだった。

 

邪悪な欲望でもなく、

 

巨大な野心でもなく、

 

ただ学びたい。

 

知りたい。

 

完全に黒弦によって決められない未来を準備したい。

 

翌日、私は進路希望調査表を担任に提出した。

 

そこにはこう書かれていた。

 

進学希望:未定、進学を希望する方向

 

希望学部:音楽文化、心理学、社会学方面

 

現在準備中:オープンキャンパス参加、模擬試験申込、学習計画の作成

 

担任は読み終えて、笑った。

 

「良い。前回よりずっと具体的になったね」

 

私は顔を伏せた。

 

「昨日、オープンキャンパスに行ってきました」

 

「どうだった?」

 

「とても疲れましたが、嫌いではなかったです」

 

担任が頷いた。

 

「それはとても良い感覚だよ」

 

彼女は模擬試験の申込用紙を一枚取り出した。

 

「来月の模試に、まず申し込んでみる?」

 

私はその紙を見て、やはり緊張した。

 

試験はとても怖かった。

 

しかし、向き合えないわけではなかった。

 

私はゆっくりと頷いた。

 

「やってみたいです」

 

先生が申込用紙を私に渡した。

 

「よし、では一歩一歩やっていこう」

 

一歩一歩。

 

一気に人生を決めるわけではない。

 

すぐに誰かの期待通りの人間になるわけではない。

 

ただ一歩一歩、準備する。

 

私は申込用紙を受け取り、心の中では少し怖かった。

 

しかし少しだけ、期待もあった。

 

この感覚はとても馴染みのないものだった。

 

しかし悪くはなかった。

 

その夜、AfterToneの練習が終わった後、私はみんなに言った。

 

「模擬試験を申し込みました」

 

陽菜がすぐに拍手した。

 

「小音、すごい! 本気だね!」

 

澪が聞いた。

 

「試験に飯はあるの?」

 

日和が笑いながら言った。

 

「終わったら一緒に食べよう」

 

澪が頷いた。

 

「なら試験にも意味がある」

 

私は低く笑った。

 

日和が私を見て言った。

 

「大学準備は忙しくなるよ。練習も調整できるようにする」

 

私はすぐに言った。

 

「練習は続けたいです」

 

声は、私が思っていたよりはっきりしていた。

 

日和が少し驚いたように見えたが、それから笑った。

 

「わかった。じゃあ一緒に調整して、小音があまり無理をしないようにしよう」

 

陽菜が言った。

 

「小音が大学受験するなら、私たちも頑張らないと!」

 

澪が手を挙げた。

 

「私は試験後の飯を担当する」

 

「澪、ベースも練習して」

 

「飯を食べてから練習する」

 

楽屋に笑い声が響いた。

 

私は隅に座り、手に普通のピックを握っていた。

 

忽然と、未来がそれほど暗くはないように感じた。

 

もちろん、ソレンセンはまだいる。

 

退魔界もまだいる。

 

天城グループは打ち倒されたとはいえ、永遠に静かであるはずがない。

 

学校にいる那些旁听生や継承者たちも、まだ全員が去ったわけではない。

 

未来には、きっとまだトラブルがたくさんあるだろう。

 

しかし私は今、一枚の模擬試験申込用紙を持っていた。

 

オープンキャンパスの資料を持っていた。

 

大学準備計画を持っていた。

 

AfterToneの練習表を持っていた。

 

日和たちが「調整できる」と言ってくれた。

 

これらはすべてとても普通のものだった。

 

とても脆かった。

 

しかし私は、それらを自分の未来の中に入れたいと思った。

 

誰かに錨として掴まれるためではなく、

 

私が自分で選んだ方向として。

 

ソレンセンが意識の奥で口を開いた。

 

「白川一音」

 

「はい?」

 

「もし本当に大学に行ったら、吾も一緒に行くことになる」

 

私の指が一瞬、固まった。

 

この現実はあまりにも恐ろしかった。

 

ソレンセンが大学に行く。

 

いや、私が大学に行くのに、体の中にソレンセンがいる。

 

私は自分が大学の授業に座っている姿を想像した。

 

ソレンセンが意識の中で、教授の講義を「虫のようだ」と評価している。

 

私は目の前が真っ暗になった。

 

「少し静かにしていてもらえませんか?」

 

「状況による」

 

「大学の授業では、勝手に話してはいけません」

 

「吾は授業のルールの外にいる」

 

「あなたは私の頭の中にいるので、ルールの内です」

 

ソレンセンが冷ややかに笑った。

 

「なら、君が受かるまで待つとしよう」

 

私は顔を伏せて、申込用紙を見つめていた。

 

「私は頑張ります」

 

この言葉はとても小さかった。

 

しかし本当だった。

 

退魔界のためでも、

 

特調室のためでも、

 

天城グループに見せつけるためでも、

 

ソレンセンから逃げるためでもなかった。

 

私自身のために。

 

白川一音が、初めて本気で大学進学を準備する。

 

このこと自体が、すでに十分に大事だった。

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