俺の頭の中に敗北した暗黒の王が住み着いているが、俺はただギターを弾きたいだけだ   作:arctichare

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第62章 午後のキャンパス突襲、そして私が一団の邪術師を素早く打ち負かしたこと

第62章 午後のキャンパス突襲、そして私が一団の邪術師を素早く打ち負かしたこと

 

京都から帰って三日目、私はようやく普通の大学生活に戻れると思っていた。

 

午前中は音楽文化概論。

 

午後は心理学入門。

 

夜は余響楽隊の練習もなく、

 

運転教習もなかった。

 

計画はとてもよかった。

 

授業が終わったら図書館に行き、京都任務後の疲労をゆっくり消化する。

 

それから小さなアパートに戻って麺を茹でる。

 

できれば茹ですぎないように。

 

これが私の目標だった。

 

とても普通で、

 

とても現実的で、

 

京都の旧音声保存庫から帰ってきたばかりで、まだ完全に回復していない人間にぴったりだった。

 

しかし午後二時二十七分、心理学入門の授業が終わって私が教学棟を出たとき、キャンパスの放送が突然鳴り響いた。

 

普通の放送ではなかった。

 

防災訓練でもなかった。

 

放送の最初に、刺耳な雑音が流れた。

 

それから、低い男の声が響いた。

 

「下北沢黒弦。」

 

私の足が止まった。

 

周りの学生たちはまだ反応していない。

 

誰かが不思議そうに顔を上げ、

 

誰かが言った。

 

「放送の故障?」

 

「今なんて言った?」

 

「下北沢?」

 

私の指が瞬時に冷たくなった。

 

ソレンセンが意識の奥で小さく笑った。

 

「来た。」

 

私は答えなかった。

 

放送の声が続いた。

 

「出てこい。」

 

「でなければ、この学校の中からお前を探し出す。」

 

周囲がようやく騒ぎ始めた。

 

数人の学生が携帯を取り出した。

 

誰かが録音しようとし、

 

誰かが教学棟の外へ歩き出そうとした。

 

相原真紀がちょうど隣の教室から出てきて、私が動かずに立っているのを見た。

 

「白川さん?」

 

私はすぐに我に返った。

 

「外に出ないで。」

 

「何?」

 

「先に教室に戻って。」

 

私の声は小さかった。

 

しかし普段より速かった。

 

相原が一瞬固まった。

 

「何かあったの?」

 

私は言えなかった。

 

ただこう言った。

 

「危険な人物かもしれない。先に戻って。」

 

彼女の顔色が変わった。

 

不遠く、作業服を着た男たちがキャンパスの西側入口から入ってきた。

 

表向きはとても普通に見えた。

 

しかし私は、彼らの袖口から黒い紙符がはみ出しているのを見た。

 

紙符には粗い線が描かれていた。

 

黒弦を模倣した線だった。

 

人数は多い。

 

十人以上。

 

西門、図書館側門、学生会館の裏、駐車場から同時に侵入してくる。

 

彼らは臨時の侵入者ではなかった。

 

計画的に突襲してきた。

 

目標は私。

 

場所は私の大学。

 

ついに彼らは手を伸ばしてきた。

 

私は相原を教室の入口に押し込んだ。

 

「鍵をかけて。みんな出さないで。」

 

相原の顔が少し青ざめた。

 

「白川さん、あなたは?」

 

「先生を呼びに行く。」

 

これは嘘だった。

 

しかし彼女が受け入れられる理由だった。

 

彼女は少し迷った後、頷いた。

 

「気をつけて。」

 

私は振り返らなかった。

 

廊下はますます混乱していた。

 

先生たちが学生を教室に戻し始め、

 

警備員が放送室の方へ走っていった。

 

携帯が同時に震えた。

 

特調室。

 

眼鏡の女性からのメッセージがポップアップした。

 

キャンパス内に複数箇所の異常侵入を確認。外部封鎖を開始した。まずは避難を。

 

私は「まずは避難を」という四文字を見て、ほとんど笑いそうになった。

 

避難。

 

もちろん彼らは私が避難することを望んでいる。

 

なぜならここは大学だから。

 

なぜなら私は学生だから。

 

なぜなら彼らはようやく私を学生として扱うことを学んだから。

 

しかし今回は、相手は私を狙ってきている。

 

もし私が隠れたら、邪術師たちは探し続ける。

 

彼らは教室に入り、学生を捕まえ、大学を戦場に変えるだろう。

 

私は返信した。

 

間に合わない。私は彼らを空き地に引きずり出す。学生の避難を協力して。

 

眼鏡の女性はすぐに返信してきた。

 

単独で接触しないで。

 

私は返信しなかった。

 

なぜならすでに接触していたからだ。

 

教学棟の外で、作業服を着た男が私を見た。

 

彼の顔に笑みが浮かんだ。

 

白川一音を知っている笑みではない。

 

目標の記号を見た笑みだった。

 

「見つけた。」

 

彼は手を上げた。

 

袖口から三枚の黒符が飛んだ。

 

黒符は空中で広がり、三本の線のような黒い影になった。

 

とても粗く、

 

とても醜く、

 

泥と煤で無理やり捏ねたような偽物の黒弦だった。

 

ソレンセンが冷たく言った。

 

「虫の模倣がますます気持ち悪い。」

 

私はカバンの中の普通のピックを握りしめた。

 

「出てくるな。」

 

「吾を命令するのか?」

 

「そうだ。」

 

「ほう?」

 

その声に少し愉悦が混じっていた。

 

私はその三本の黒影を見た。

 

「最小限の必要力だけを使え。学生を傷つけるな。学校を破壊するな。」

 

ソレンセンが低く笑った。

 

「この虫たちはお前を狙ってきているぞ。」

 

「だからこそ、大学に触れさせてはならない。」

 

男が放った黒影が私の足元に絡みついてきた。

 

私は後退しなかった。

 

ピックを掲げ、心の中で言った。

 

「条件。」

 

黒海が静かになった。

 

「第一、吾の体を制御するな。」

 

「できる。」

 

「第二、普通の学生、先生、警備員、無関係の者を傷つけるな。」

 

「できる。」

 

「第三、侵入者を殺すな。」

 

ソレンセンが冷ややかに笑った。

 

「つまらない。」

 

「できるか?」

 

「できる。」

 

「第四、彼らの術式、行動能力、通信、逃走経路だけを切断せよ。」

 

「できる。」

 

「第五、大学を再び大学に戻し、クラスメイトたちに私のもう片側を知らせず、ここを退魔の現場にさせないために、必要最小限の範囲で鎮圧せよ。」

 

金色の鎖が軽く鳴った。

 

契約成立。

 

私は手を上げた。

 

一本の黒弦が影から滑り出た。

 

三本の偽黒影が私に触れる前に、優しく一撥で断たれた。

 

爆発でもなく、

 

激しい衝突でもなく、

 

ただ腐った糸が剪断されたように。

 

男の顔の笑みが固まった。

 

「何……」

 

私は彼を見なかった。

 

黒弦は地面に沿って滑り、彼の足元に隠された符陣を切断した。

 

彼の膝が一瞬崩れ、まるで支えを失った人形のように芝生の端に倒れた。

 

傷ついたわけではない。

 

立つ、突進する、術を施すためのすべての補助術式が切断されただけだった。

 

私は低く言った。

 

「学校の中で私の名前を勝手に叫ぶな。」

 

彼は顔を上げ、視線がようやく変わった。

 

興奮ではなく、

 

恐怖だった。

 

キャンパスの西側では、さらに多くの邪術師が侵入してきていた。

 

彼らはおそらく同じ模倣団体に属している。

 

あるいはいくつかの小団体が一時的に結成した連合だろう。

 

共通点は、

 

彼らが「黒弦」を奪取、複製、召喚、または汚染できる力だと信じていることだった。

 

彼らは本当の名前を知らない。

 

黒海を知らない。

 

封印を知らない。

 

なぜ私がそれを外に出せないのかを知らない。

 

彼らはただ噂だけを見ていた。

 

下北沢黒弦。

 

天城を切断。

 

無明講を鎮圧。

 

京都旧音声保存庫を解決。

 

彼らは噂を自分のものにしようとした。

 

そして私の大学に来た。

 

これは許せない。

 

私は校門の方へ走らなかった。

 

キャンパス中央の旧活動広場へ方向を変えた。

 

今日は大きなイベントはなかった。

 

周囲は空いていた。

 

教学棟と食堂の間には開けた区域があった。

 

特調室が避難を協力してくれれば、そこを最小被害区域にできる。

 

私は走りながら眼鏡の女性に音声メッセージを送った。

 

「人を東側教学棟へ避難させて。中央広場へ行かせないで。」

 

彼女は私を叱らなかった。

 

ただ言った。

 

「わかった。三分以内に外部封鎖を完了させる。」

 

三分。

 

私は三分間持ちこたえなければならない。

 

ソレンセンが低く笑った。

 

「三分? この虫たちは三十秒も持たない。」

 

「目立たせてはならない。」

 

「彼らはすでに放送した。」

 

「普通の学生はまだ何が起こったのかわかっていない。」

 

「なら、わからせたままにしろ。」

 

私は旧活動広場の端に止まった。

 

周囲に侵入者が次々と現れた。

 

一人。

 

三人。

 

七人。

 

十二人。

 

二十人以上。

 

最後には三十人近くになった。

 

作業服を着た者もいれば、学生のジャケットを着た者もいた。

 

帽子をかぶった者もいれば、呪具を持った者もいた。

 

彼らは異なる方向から囲んできた。

 

その中に一人の女が拡声器のような器具を持ち、笑いながら言った。

 

「下北沢黒弦、ようやく会えた。」

 

私は顔を伏せた。

 

「ここは学校だ。」

 

「だから?」

 

彼女はさらに嬉しそうに笑った。

 

「あなたは気にする。我々は知っている。」

 

私は彼女を見上げた。

 

「あなたたちは間違っている。」

 

彼女がまだ理解していないうちに、隣の男が言った。

 

「無駄話はいい、まず彼女の足元を封じろ。噂では彼女は影から線を出してくるらしい。」

 

別の者が言った。

 

「覚えておけ、殺すな。連れて行く。」

 

連れて行く。

 

彼らは本当に私を連れて行けると信じていた。

 

ソレンセンが意識の奥で笑った。

 

今回はとても低く、

 

とても冷たく。

 

「白川一音。」

 

「ん。」

 

「吾に彼らに、何が連れて行くことかを教えてやろうか?」

 

「許さない。」

 

「本当に面白くないな。」

 

「ただ鎮圧しろ。」

 

「わかった。」

 

彼は少し間を置いてから言った。

 

「なら、生きて理解させてやれ。」

 

この言葉はとても危険に聞こえた。

 

しかし条件の範囲内だった。

 

私はピックを掲げた。

 

黒弦が足元から広がった。

 

多くはなかった。

 

数十本だけ。

 

しかし一本一本が極めて細く、極めて安定していて、地面の亀裂から生えた無音の琴弦のようだった。

 

邪術師たちが同時に動いた。

 

黒符が飛んできた。

 

鎖の呪具が落ちてきた。

 

誰かが防音結界を展開しようとした。

 

誰かがキャンパスの放送を乗っ取ろうとした。

 

誰かが学生の写真を脅迫符にしようとした。

 

誰かはAfterToneの舞台の輪郭が描かれた古い写真さえ取り出してきた。

 

私の呼吸が一瞬止まった。

 

彼らはAfterToneの外観を調べていた。

 

たとえ公開写真であっても、

 

十分に私の目が冷たくなるには十分だった。

 

女がその写真を掲げた。

 

黒弦はすでに到達していた。

 

彼女の喉に向かったわけではない。

 

彼女の手に向かったわけでもない。

 

その写真と彼女の術式の間の接続に向かった。

 

一撥。

 

写真の脅迫術式が断たれた。

 

二撥。

 

彼女の手の呪具が無効化した。

 

三撥。

 

彼女の足元の足場符陣が剪断された。

 

女が後ろに倒れ、地面に重く座り込んだ。

 

彼女は恐怖に満ちた目で私を見た。

 

私は一歩近づいた。

 

声はとても静かだった。

 

「そこに触れるな。」

 

この一言の後、広場の空気が変わった。

 

邪術師たちはようやく、自分たちが弱点を突いたわけではないことに気づいた。

 

彼らは境界を踏み越えた。

 

次の瞬間、黒弦が広がった。

 

王冠ではなかった。

 

ソレンセンを解き放つものではなかった。

 

ただ黒弦だった。

 

しかし彼らにとっては、すでに十分だった。

 

第一グループ、封鎖術式。

 

切断。

 

第二グループ、通信符。

 

切断。

 

第三グループ、逃走用の転送紙。

 

切断。

 

第四グループ、キャンパス放送に隠された呼名呪。

 

切断。

 

第五グループ、学生証に偽装された位置特定媒介。

 

切断。

 

第六グループ、普通の学生を脅迫するための写真符。

 

すべて切断。

 

彼らは一人ひとり、多くの線を準備していた。

 

あまりにも多くの線。

 

そして私が最も得意とするのは、間違った線を存在させないことだった。

 

誰かが突っ込んできた。

 

黒弦が優しく彼の足元の術式に絡み、加速符を切断した。

 

彼は直接倒れた。

 

誰かが呪具で私を叩こうとした。

 

黒弦が彼と呪具の間の制御関係を切断した。

 

呪具が地面に落ち、ただの廃鉄になった。

 

誰かが呪文を唱え始めた。

 

黒弦が声と呪式の間の接続を切断した。

 

彼は口を開いたまま、何も発動できなかった。

 

誰かが恐怖に後退した。

 

黒弦が彼の逃走符を切断し、彼の脚は切断しなかった。

 

彼はまだ歩ける。

 

しかし普通に歩くだけでは、特調室の封鎖を逃れられない。

 

半分も経たないうちに、三十人以上の邪術師が倒れた。

 

血まみれの倒れ方ではなかった。

 

打ち砕かれたわけでもなかった。

 

彼らが依存していたすべての術式、媒介、呪具、偽装、通信、脅迫、逃走経路が、同時に体から剥がされただけだった。

 

彼らは突然殻を失った虫のようだった。

 

立てない。

 

唱えられない。

 

逃げられない。

 

騙せない。

 

ただ広場で震えていた。

 

ソレンセンが低く言った。

 

「軽すぎる。」

 

「十分だ。」

 

「彼らに思い出させるには足りない。」

 

「覚えるだろう。」

 

私はAfterToneの写真を持っていた女を見た。

 

「なぜなら彼らは生きて覚えるからだ。」

 

広場の反対側、最後のグループの邪術師たちはまだ手を下していなかった。

 

彼らはおそらく予備グループだった。

 

前の者たちが全員倒れるのを見て、彼らは躊躇し始めた。

 

その中の若い男が震える声で言った。

 

「彼女は術式しか切断できないんじゃないのか?」

 

隣の者が罵った。

 

「役立たず! 一緒に押しつぶせ!」

 

彼らは大きな符を掲げた。

 

符紙には粗い黒弦の模様が描かれていた。

 

模様の中央にはこう書かれていた。

 

里人格。

 

私の心臓が激しく冷たくなった。

 

やはり彼らは「黒弦」をある種の里人格だと信じていた。

 

彼らは真実を知らない。

 

しかし間違った方向を推測していた。

 

間違っているが、危険だった。

 

なぜならこのような噂が広がれば、いつか誰かが再び試みるからだ。

 

私は顔を上げた。

 

この瞬間、私はもう前へ進まなかった。

 

ただその場に立ち、ピックを優しく一撥した。

 

黒弦が広場の地面から立ち上がった。

 

今回は一本一本ではなかった。

 

半円形の弦の幕だった。

 

まるで無音の壁のように、予備グループと教学棟を隔てた。

 

学生側からは具体的なものは見えない。

 

ただ広場が突然ある影に覆われたように見えるだけだろう。

 

特調室がすでに遮蔽を起動しているはずだ。

 

よかった。

 

女が叫んだ。

 

「起動!」

 

大きな符が光った。

 

彼らは自分たちが想像する「里人格」を私から引きずり出そうとした。

 

これは愚かで、

 

とても危険だった。

 

ソレンセンが黒海の奥で笑った。

 

「彼らはドアを叩いている。」

 

「開けない。」

 

「吾に一声返事させようか?」

 

「許さない。」

 

「一声だけだ。」

 

「許さない。」

 

ソレンセンが一瞬沈黙した。

 

それから低く言った。

 

「あなたはますます門の主人のようだ。」

 

私は彼を無視した。

 

大きな符を見た。

 

「条件追加。」

 

ソレンセンが静かになった。

 

「『抽出』という概念に関連するすべての呪式の伝播を切断せよ。」

 

「できる。」

 

「彼らの黒弦起源に対する誤った呼名を切断し、外へ拡散させない。」

 

「できる。」

 

「彼らが尋問を受け入れる記憶を残せ。汚染せず、削除するな。」

 

「できる。」

 

金色の鎖が軽く鳴った。

 

私は手を上げた。

 

黒弦が弦の幕を通過した。

 

人に触れなかった。

 

直接大きな符の中央に落ちた。

 

一撥。

 

大きな符は燃えなかった。

 

爆発しなかった。

 

ただ「術具」から普通の紙になった。

 

その上の粗い黒線の模様は、意味を失った落書きのようだった。

 

若い男が呆然とした。

 

「不可能だ……」

 

第二本の黒弦が落ちた。

 

彼らの間の集団施術接続を切断した。

 

第三本。

 

彼らの携帯、符紙、録音機器内のバックアップを切断した。

 

第四本。

 

彼らがすでにダークネットのノードにアップロードしたトリガーリンクを切断した。

 

第五本。

 

彼らの「抽出」という誤った概念に対する一時的な共鳴を切断した。

 

記憶を削除したわけではない。

 

ただ彼らが施した術がこの概念を通じてさらに伝播できないようにしただけだった。

 

彼らは自分が何をしたかを覚えている。

 

また、覚えていなければならない。

 

しかし彼らはもうこの方法で人を傷つけることはできない。

 

予備グループは全員跪いた。

 

何人かは直接地面に座り込んだ。

 

顔色は真っ青だった。

 

彼らはようやく、「抽出」というものが彼らの触れられるものではないことを理解した。

 

私は弦の幕の後ろに立ち、声はとても静かだった。

 

「もう二度と、理解できない名前でドアを叩くな。」

 

彼らは全部の意味を理解できなかった。

 

しかし恐怖は理解した。

 

それで十分だった。

 

特調室が一分三十秒後に広場に入った。

 

彼らが言った三分より早かった。

 

眼鏡の女性が自ら来ていた。

 

彼女は地面いっぱいの無効化した術具と鎮圧された邪術師を見て、足を一瞬止めた。

 

それから私を見た。

 

「怪我はないか?」

 

私は首を振った。

 

「ない。」

 

「学生は?」

 

「大丈夫のはず。」

 

彼女はすぐに確認させた。

 

特調室の人員が迅速に現場を制圧した。

 

邪術師を一人ずつ拘束し、

 

術具を封印し、

 

放送内の残留術法を撤去し、

 

教学棟と学生会館を検査した。

 

キャンパスの警備員と学校関係者は安全区域へ誘導された。

 

普通の学生には統一してこう説明された。

 

外部の危険人物が侵入した。学校と警察が協力して処理した。

 

退魔のことは一切触れず、

 

黒弦のことも、

 

私のことも一切触れなかった。

 

放送記録は特調室が封印した。

 

学生が撮影した一部の動画は「調査のため」削除またはぼかされた。

 

記憶操作ではない。

 

ただの普通の情報統制だった。

 

なぜなら多くの人が撮影したのは混乱、放送の故障、遠くの広場の影だけだったからだ。

 

彼らは何が起こったのか知らない。

 

これはよかった。

 

相原真紀が後でメッセージを送ってきた。

 

白川さん、大丈夫? さっき学校で大きなことがあったみたい。

 

私はメッセージを見つめ、広場の端に立ち、手がまだ震えていた。

 

返信した。

 

私は大丈夫。あなたたちは?

 

彼女が返信してきた。

 

私たちは教室にいる。先生が外に出ないよう言った。ちょっと怖かった。

 

私は目を閉じた。

 

彼女は無事だった。

 

みんな無事だった。

 

返信した。

 

無事でよかった。

 

彼女がまた聞いた。

 

あなたはどこにいるの?

 

私は一瞬止まった。

 

広場とは言えない。

 

特調室のそばとは言えない。

 

こう書いた。

 

安全区域にいる。

 

これは本当だった。

 

少なくとも今は安全区域だった。

 

彼女が返信してきた。

 

それならよかった。

 

私は携帯を握りしめ、ゆっくり息を吐いた。

 

二つの世界がまたぶつかりそうになった。

 

しかし今回は、衝突は広場で止められた。

 

眼鏡の女性が私のそばに歩み寄った。

 

声はとても低かった。

 

「あなたは一人で対処すべきではなかった。」

 

私は顔を伏せた。

 

「彼らはすでに学校に入っていた。」

 

「わかっている。」

 

彼女はため息をついた。

 

「今回は私たちの反応が遅かった。」

 

「違う。」

 

「そうだ。」

 

彼女の口調はとても冷静だった。

 

「私たちは模倣事件が増えていることを知っていたが、彼らが直接キャンパスに侵入してくる可能性を過小評価していた。」

 

私はどう答えればいいのかわからなかった。

 

彼女が続けた。

 

「今後、大学周辺の保護を強化する。ただしあなたには見せない。」

 

「学校を保護施設にさせないで。」

 

「させない。」

 

彼女は私を見た。

 

「私たちはできる限り、それを大学として保つ。」

 

この一言で、私の心が少し緩んだ。

 

私は連行されていく邪術師たちを見た。

 

「彼らはどれくらい知っている?」

 

「今のところ、噂だけだ。あなたの具体的な生活圏の核心情報は掌握していない。」

 

私はすぐに聞いた。

 

「AfterToneの写真は?」

 

「公開ウェブの旧画像からで、实地監視ではない。」

 

私は小さく息を吐いた。

 

しかし完全に安心はできなかった。

 

「それでも処理して。」

 

「すでに伝播経路を調べている。」

 

眼鏡の女性が少し間を置いてから言った。

 

「彼らは『抽出』に触れていた。」

 

私の体が固まった。

 

彼女は私を見て、追及しなかった。

 

「私たちは危険な誤った概念として処理する。出所は追及しない。」

 

私は低く言った。

 

「ありがとう。」

 

彼女は頷いた。

 

これが境界だった。

 

彼女はそこが危険であることを知っていた。

 

しかし門の後ろが何であるかは聞かなかった。

 

これはよかった。

 

必ずこうあるべきだった。

 

学校の午後の授業はすべて中止になった。

 

学生はできるだけ早く帰宅するか、指定された教室で通知を待つよう求められた。

 

本来私も帰るべきだった。

 

しかし学校側は私が「安全」であることを確認する必要があった。

 

三浦校長はすでにA大学の必要責任者と最低限のコミュニケーションを確立していた。

 

A大学側は完全な真相を知らない。

 

ただ私が特別保護対象であり、今回の外部侵入が私に関連していることを知っているだけだった。

 

学校側の責任者は副校長だった。

 

彼が私を見たとき、表情はとても複雑だった。

 

非難でもなく、

 

恐怖でもなく、

 

主に心配だった。

 

「白川さん、歩けるか?」

 

私は頷いた。

 

「はい。」

 

「今日は先に帰って休め。後続の授業出席については、学校が処理する。」

 

私は顔を伏せた。

 

「学校に迷惑をかけてしまった。」

 

彼が言った。

 

「迷惑をかけたのはあなたではない。」

 

私は固まった。

 

副校長が広場の方を見た。

 

「キャンパスに侵入した者たちが学校に迷惑をかけたのだ。」

 

この一言で、私の鼻が少し酸っぱくなった。

 

私のせいではない。

 

理論上はわかっていた。

 

しかし他の人がこう言ってくれることは、やはり重要だった。

 

彼がまた言った。

 

「大学には学生を守る責任がある。」

 

学生。

 

彼は私を学生と呼んだ。

 

協力者でもなく、

 

黒弦でもなく、

 

迷惑の源でもなく、

 

学生だった。

 

私は顔を伏せた。

 

「ありがとうございます。」

 

大勢力たちはすぐに情報を得た。

 

東京特調室内部の雰囲気はとても冷たかった。

 

久我山統括官が報告を読み終えた後の第一声はこうだった。

 

「キャンパスへの直接侵入。これは底線事件だ。」

 

眼鏡の女性が言った。

 

「目標本人がすべての侵入者を鎮圧。学生の負傷なし。」

 

若い分析官が低く言った。

 

「鎮圧時間は二分未満で、三十秒以内に相手の主力を制圧した。」

 

会議室で誰もこの数字を喜ばなかった。

 

なぜならこれは彼女が強いことを示すと同時に、敵が本当に戦場を大学に持ち込んだことを意味したからだ。

 

久我山が言った。

 

「今後、学生音楽空間、大学キャンパス、黒弦模倣に関わるすべての事件を一段階引き上げる。」

 

「また、今回の事件を彼女を呼び出す理由にしてはならない。」

 

若い分析官が固まった。

 

「どういう意味ですか?」

 

「誰かが言うかもしれない。彼女がキャンパスで二人を二分で制圧できるなら、もっと多くの任務を担うべきだと。」

 

久我山が冷たく言った。

 

「そのような発言は禁止する。」

 

眼鏡の女性が頷いた。

 

「彼女が学校を守ったからといって、学校がこれから彼女の戦場になるわけではない。」

 

会議室が静かになった。

 

この一文は最高優先の保護原則に書き込まれた。

 

京都旧結界管理委員会の反応も強かった。

 

七条が「大学キャンパス突襲」という文字を見たとき、顔色が完全に冷たくなった。

 

「彼らは学校に手を伸ばした。」

 

老委員が低く言った。

 

「越界が過ぎる。」

 

京都はすぐに通告を発した。

 

いかなる家系、団体、個人も、下北沢黒弦とA大学事件に関する詳細を伝播してはならない。

 

彼女の普通の身分、キャンパス関係、楽隊関係を推測してはならない。

 

「抽出」などの危険概念を用いて下北沢黒弦の里人格の力を得ようとしてはならない。

 

七条は内部で補足した。

 

「誰かが再び学生の場所を使って彼女を誘い出そうとするなら、それは試探ではなく宣戦布告だ。」

 

老委員は反対しなかった。

 

今回は、京都の態度は非常に強硬だった。

 

なぜなら彼らはつい最近彼女の助けを受けていたからだ。

 

また、大学が彼女がようやく入った普通の世界であることを知っていたからだ。

 

一群の愚か者に壊されてはならない。

 

天城グループの反応は再び警鐘を鳴らされたようだった。

 

天城美咲がA大学への突襲を知ったとき、顔が青ざめた。

 

「学校の中?」

 

天城怜司が頷いた。

 

「そうだ。」

 

「学生の負傷はあったか?」

 

「なかった。」

 

彼女は小さく息を吐いた後、すぐに手を握りしめた。

 

「どうして彼らが入れた?」

 

「作業員と学生に偽装していた。」

 

天城美咲が少し沈黙してから言った。

 

「天城のすべての大学セキュリティ関連の公開プロジェクトを再審査する。」

 

一人の委員が小心に聞いた。

 

「私たちとは関係ないのでは。」

 

美咲が彼を見た。

 

「今日は関係ないが、未来はわからない。」

 

彼女は少し間を置いてから続けた。

 

「しかしこれを理由にA大学にセキュリティシステムを提供してはならない。」

 

委員が固まった。

 

「ではどうするのですか?」

 

天城怜司が言った。

 

「公共ルートを通じて一般的なキャンパスセキュリティ研究を支援する。A大学には接触せず、白川さんにも接触しない。」

 

美咲が補足した。

 

「彼女の学校を展示場にしてはならない。」

 

この一文は全員の同意を得た。

 

天城グループはようやく理解した。

 

たとえ保護であっても、彼女の学校を新しい侵入の口実にさせてはならない。

 

御影家は直接人を派遣して邪術師の出所を追跡した。

 

私に接触するためではない。

 

外部の危険を一掃するためだった。

 

御影冬子が言った。

 

「『抽出』概念を伝播するノードを探し出せ。」

 

御影秋人が珍しく冗談を言わなかった。

 

「彼らは踏んではならない場所を踏んだ。」

 

誰かが聞いた。

 

「白川一音に連絡して詳細を確認すべきか?」

 

御影冬子が冷たく言った。

 

「許さない。」

 

御影秋人が言った。

 

「彼女は今日は十分疲れている。」

 

彼は少し間を置いてから続けた。

 

「そして彼女は本当の核心を私たちに話さないだろう。」

 

御影冬子が彼を一瞬見た。

 

「あなたは知っているのか?」

 

「知らない。」

 

御影秋人が静かに言った。

 

「知らないからこそ、聞くべきではない。」

 

この一言で会議室が静かになった。

 

玄海鎮守聯合と四国地方聯合も同時に声明を出した。

 

宗像怜央が言った。

 

「今後、黒弦模倣事件は九州が先に自ら鎮圧し、東京へ流さない。」

 

白髪の宮司が頷いた。

 

「これが地方の責任だ。」

 

四国の久世真帆は内部会議でこう言った。

 

「これは白川さん一人の問題ではない。模倣者が大学に突入してきたということは、暗面が普通の場所を舞台にしているということだ。」

 

明厳老僧が言った。

 

「なら、彼らに普通の場所は侵してはならないことを知らせろ。」

 

この一文はすぐに地方聯合の間で広がった。

 

すべての人が白川一音を好きだったわけではない。

 

すべての勢力が彼女を完全に理解していたわけでもない。

 

しかし今回は、多くの人が一致した。

 

大学キャンパスは邪術師が黒弦を試す場所であってはならない。

 

中小勢力のフォーラムは当日にほぼ爆発した。

 

しかし管理人がすぐに封じた。

 

A大学の名前、白川一音の授業、学生関係に関わるすべての投稿が削除された。

 

残されたのは一つの公告だけだった。

 

キャンパス突襲事件の詳細討論を禁止する。動画の伝播を禁止する。「抽出」概念の使用を禁止する。違反者は永久追放および通報する。

 

下に誰かが返信した。

 

「今回は本当に越界した。」

 

「学校に突入? 狂ってるのか?」

 

「聞いたところでは、一団が二分も経たないうちに全員制圧されたらしい。」

 

「詳細を伝えるな。」

 

「ただ言えるのは、彼女を刺激するな。ましてや彼女の大学に触れるな。」

 

榊老女が一言発した。

 

「学生をいじめるようなものは、術師と呼ばれる資格がない。」

 

この一文が一日中トップに固定された。

 

そして私自身は、特調室に小さなアパートまで送り届けられた。

 

学校に戻るわけでもなく、

 

AfterToneに行くわけでもなく、

 

眼鏡の女性が言った。

 

「今日は必ず休め。」

 

私は反論しなかった。

 

なぜなら本当に疲れていたからだ。

 

小さなアパートに戻った後、私はドアの鍵を三回確認した。

 

手がまだ震えていた。

 

邪術師たちを恐れたからではない。

 

彼らは強くなかった。

 

以前の多くの敵よりはるかに弱かった。

 

しかし彼らは私の大学に入ってきた。

 

彼らは放送で噂の名前を叫んだ。

 

彼らはAfterToneの公開写真を取り出した。

 

彼らは「抽出」と書いた。

 

これは戦闘自体より私を苦しめた。

 

なぜなら彼らは私の普通の世界を切り裂ろうとしたからだ。

 

私は床に座り、長い間動かなかった。

 

携帯が震えた。

 

AfterToneグループ。

 

陽菜:

 

小音、学校で何かあったの? 大丈夫?

 

澪:

 

怪我はない?

 

日和:

 

消息を見た。まずは安全を確認して。

 

私はこれらのメッセージを見つめ、心が一瞬締めつけられた。

 

彼女たちは学校で事件があったことを知っている。

 

しかし全部は知らない。

 

返信した。

 

私は怪我をしていない。すでに住居に戻った。今日は学校に外部の人物が侵入し、すでに処理された。

 

陽菜がすぐに返信してきた。

 

よかった……びっくりした。

 

澪:

 

飯。

 

日和:

 

今日は練習に来なくていい。食べて、早く休んで。明日にしよう。

 

私は「明日にしよう」という言葉を見て、心が少し緩んだ。

 

彼女たちは私がどこへ行ったのかを知らない。

 

何をしたのかを知らない。

 

なぜ今回私が行かなければならなかったのかを知らない。

 

彼女たちはただ、私が受け止められる心配を向けてくれていた。

 

返信した。

 

うん。気をつける。

 

この一文は依然としてとても軽かった。

 

しかし私にできるのはこれだけだった。

 

ソレンセンが意識の奥で言った。

 

「また嘘だ。」

 

「全部嘘ではない。」

 

「外地で臨時の用事、確かに。」

 

「あなたはますます半分だけを言うのが上手くなっている。」

 

私は顔を伏せた。

 

「なぜならもう半分は言えないから。」

 

彼が低く笑った。

 

「これがあなたの境界だ。」

 

夜、私は麺を茹でた。

 

茹ですぎた。

 

私は碗の中の麺を見つめ、しばらく沈黙した。

 

それでも食べた。

 

澪が言った。飯は大事だ。

 

たとえ失敗した麺でも、食べないよりはましだ。

 

食べ終わった後、私は新しいパソコンを開いた。

 

本来は報告を書くつもりだった。

 

書けなかった。

 

そこでメモを開いた。

 

書いた。

 

今日、邪術師が学校を突襲した。

 

約三十人以上。

 

全員鎮圧。学生の負傷なし。

 

彼らは本当の出所を知らない。

 

彼らはただ黒弦を模倣し、里人格を推測し、「抽出」と書いた。

 

この概念を拡散させてはならない。

 

楽隊に知られてはならない。

 

学校を戦場にしてはならない。

 

ここまで書いた後、私は手を止めた。

 

また一行書いた。

 

私は大学を守った。

 

しかし私も怖かった。

 

彼らが次にもっと近い場所に触れることを怖がった。

 

普通の世界が私に引きずり込まれることを怖がった。

 

書き終えた後、目が少し酸っぱくなった。

 

ソレンセンが言った。

 

「あなたはまたすべての罪を自分に背負おうとしている。」

 

「彼らは私を狙って来た。」

 

「彼らは噂を狙って来た。」

 

「違いはあるか?」

 

「ある。」

 

その声は珍しく冷静だった。

 

「彼らは吾を知らない。」

 

「あなたが本当に何であるかも知らない。」

 

「彼らはただ、自分の頭の中の影を追いかけているだけだ。」

 

私は沈黙した。

 

「だから?」

 

「だから、それは彼らの愚かさと貪欲だ。」

 

「あなたの罪ではない。」

 

私は固まった。

 

この一文がソレンセンの口から出たとは、非常に奇妙だった。

 

しかし非常に役に立った。

 

私は低く言った。

 

「今日はどうして私を慰めているように聞こえる?」

 

「吾はただ、虫が泥で描いた偽の線を吾の頭に被せられるのが嫌なだけだ。」

 

やはり。

 

しかしそれでもよかった。

 

私はこの歪んだ慰めを受け入れた。

 

翌日、学校は半日休校になった。

 

午後から一部の授業が再開された。

 

A大学は通知を発表し、外部の危険人物が侵入した。警察および関連機関と協力して処理した。今後キャンパスセキュリティを強化するとした。

 

私のことは一切触れず、

 

黒弦のことも、

 

特調室のことも一切触れなかった。

 

学生たちはグループでたくさん議論していた。

 

怖がっている者もいれば、

 

怒っている者もいれば、

 

広場の向こうに黒い影があったと言う者もいた。

 

警察が使用した遮蔽装置かもしれないと言う者もいた。

 

相原真紀がメッセージを送ってきた。

 

今日学校に来る?

 

私は長い時間考えた。

 

最後に返信した。

 

午後に行く。

 

私は戻らなければならなかった。

 

強がるためではない。

 

もし私が戻らなければ、学校は私の心の中で襲撃された場所になってしまう。

 

私はそうしたくなかった。

 

私はそれを大学であり続けさせたかった。

 

午後、私は校門をくぐった。

 

校門には警備員が増えていた。

 

学生たちは普段より静かだった。

 

中央広場の一部が囲まれ、片付けられていた。

 

私は遠くから一瞬見た。

 

昨日あの邪術師たちが倒れていた場所は、今はただの普通の芝生と警告テープだけだった。

 

相原真紀が教学棟の入口で私を待っていた。

 

私を見ると、彼女は小さく息を吐いた。

 

「白川さん。」

 

私は近づいた。

 

「ん。」

 

彼女は私を見た。

 

「昨日本当に怖かった。」

 

「ん。」

 

「あなたが無事でよかった。」

 

「あなたも。」

 

彼女はなぜ私が昨日安全区域にいたのかを聞かなかった。

 

何を見たのかを聞かなかった。

 

ただ一緒に教室へ入った。

 

これが普通のクラスメイトが私に与えられる最大の助けだった。

 

追及しない。

 

一緒に教室に戻る。

 

午後の心理学の授業で、先生が臨時に内容を調整し、キャンパスでの突発事件後のストレス反応について話した。

 

彼が言った。

 

「突発事件に遭遇した後、恐怖、疲労、注意力の低下、繰り返しの想起は、すべて正常な反応です。」

 

私は顔を伏せてノートを取った。

 

正常な反応。

 

またこの一文だった。

 

先生が続けた。

 

「安全感の回復には時間が必要だ。また、慣れ親しんだ日常に徐々に戻ることも必要だ。」

 

慣れ親しんだ日常に徐々に戻る。

 

私はこの一文を見つめ、手の指がゆっくり緩んでいくのを感じた。

 

だから今日私が戻ってきたのは正しかった。

 

何事もなかったふりをするためではない。

 

大学を昨日の一日前の突襲から取り戻すためだった。

 

ソレンセンが低く言った。

 

「領地を取り戻す。」

 

「日常に戻る。」

 

「ほぼ同じだ。」

 

私は彼を訂正しなかった。

 

なぜなら今回は、彼の言い方も完全に間違ってはいなかったからだ。

 

その日の夕方、私はAfterToneに行った。

 

日和、陽菜、澪が全員いた。

 

陽菜は私を見ると、ほとんど飛びついてきそうになった。

 

しかし彼女は止まった。

 

おそらく日和が事前に「驚かせないで」と注意していたのだろう。

 

「小音……」

 

私は顔を伏せた。

 

「私は大丈夫。」

 

この一文を言った後、私は足りないと思った。

 

だから補足した。

 

「少し疲れた。でも怪我はない。」

 

日和が頷いた。

 

「なら今日は正式な曲を練習しない。」

 

「うん。」

 

澪が私のおにぎりを前に置いた。

 

「回復飯。」

 

私は受け取った。

 

「ありがとう。」

 

陽菜が小声で言った。

 

「学校であんなことがあったんだ、本当に怖かったね。」

 

私は頷いた。

 

「うん。」

 

彼女たちは本当に怖かった部分を知らない。

 

しかし「誰かが学校に侵入した」という事実自体が怖いことは知っている。

 

これで十分だった。

 

日和が言った。

 

「今日はただ座っていてもいいよ。」

 

私は首を振った。

 

「少し弾きたい。」

 

練習のためではない。

 

私がまだここに戻ってこられることを確認するためだった。

 

私はギターを手に取った。

 

最初の音はとても軽かった。

 

それから二番目。

 

三番目。

 

日和がゆっくりドラムで追従した。

 

陽菜はすぐに歌い出さず、ただ聞いていた。

 

澪のベースが低く全体を支えた。

 

音が少しずつ広がった。

 

観客はいない。

 

任務もない。

 

邪術師もいない。

 

放送の呼名もない。

 

ただAfterToneの中の馴染みの音だけだった。

 

私は目を閉じた。

 

昨日彼らは学校と楽隊を使って私を誘い出そうとした。

 

今日、私は学校に戻った。

 

また楽隊に戻った。

 

彼らは成功しなかった。

 

夜に小さなアパートに戻った後、私は時間割を開いた。

 

明日は地域文化論があった。

 

午後は研究会で初めての録音練習の記録を整理しなければならなかった。

 

週末はAfterToneの練習。

 

来週は研究会の初めての活動。

 

特調室の灰色予備は、当面空いていた。

 

私はその空白を見つめ、少し息を吐いた。

 

今日、新しい任務はなかった。

 

新しい餌もなかった。

 

新しい模倣線もなかった。

 

私はパソコンを開き、報告を書き続けた。

 

題目は、

 

音の記録における同意と境界。

 

私は最初の文を書いた。

 

他人の音を記録するとき、大事なのは完全な情報を捕捉することではなく、相手が提示したい範囲を尊重することである。

 

書き終えた後、私は手を止めた。

 

この一文は、まるで私自身を書いているようだった。

 

他人は私の全部を捕捉すべきではない。

 

私も、守りたい人に全部を渡すべきではない。

 

人はそれぞれ、提示したい範囲を持っている。

 

境界とは隔絶することではない。

 

関係が続けられるための線である。

 

ソレンセンが意識の奥で言った。

 

「あなたは今日、新しい言い方を学んだ。」

 

「うん。」

 

「境界とは隔絶することではない。」

 

「線だ。」

 

「線は切れる。」

 

「つなげることもできる。」

 

黒海が少しの間、静かになった。

 

それから彼が笑った。

 

「あなたはどんどん、吾と線の定義を争うようになっている。」

 

「かもしれない。」

 

私は報告を書き続けた。

 

窓の外は東京の夜。

 

小さなアパートはとても静かだった。

 

AfterToneの音はまだ指に残っていた。

 

秘密はまだそこにあった。

 

あの名前はまだ黒海の奥にあった。

 

しかし少なくとも今、二つの世界はぶつかっていなかった。

 

私は遅刻の理由を守った。

 

そして、言えない名前も守った。

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