俺の頭の中に敗北した暗黒の王が住み着いているが、俺はただギターを弾きたいだけだ 作:arctichare
第80章 京都夜襲のあと、猫目は地方を食べた
学校へ戻ってから、生活は表面上、また元に戻った。
音声メディア研究。
文化政策入門。
心理学発展。
地域文化実践。
自動車学校。
AfterToneの練習。
そうした言葉が、もう一度私のカレンダーを埋めていった。
手首の痛みは少しずつ軽くなった。
肩も上げられるようになった。
膝の青あざは、黄色くなり始めていた。
私は新曲を、ようやく一曲まるごと続けて弾けるようになった。
ただ、ときどき指が弦に触れた瞬間、埠頭にいたあの猫の影を思い出す。
本当の力を使わず、体術だけで私に撤退ボタンを押させたことを思い出す。
私はまだ怖い。
けれど、授業を止めなかった。
練習も止めなかった。
課題を書くことも止めなかった。
たぶん、それが今の私にできる回復だった。
文化政策入門の先生は最近、地方文化経済について話していた。
先生は言った。
「文化活動を本当に支えているのは、大型芸術機関だけではありません。地方の小商店、物流、保険、清掃、警備、印刷、機材レンタル、ボランティアネットワークも含まれます」
私は真剣に書き留めた。
地方の小商店。
物流。
保険。
清掃。
警備。
印刷。
機材レンタル。
それらの言葉は、とても普通に見える。
けれど私はもう知っている。
それらもまた、線になり得るのだと。
ただ私はまだ知らなかった。
外側の線が、もうほとんど猫目に回収されかけていることを。
意識の奥で、ソレンセンが言った。
「今のお前は、音の授業より金の授業のほうを真剣に聞いているな」
「お金も場所を支配するから」
「ようやく学んだか」
「あなたは前から知ってたの?」
「吾が知っているのは、弱い世界はいつも、より強いものに支配されるということだけだ」
「それは同じ意味じゃない」
「だいたい同じだ」
私は言い争わなかった。
先生がちょうど事例分析をしていたからだ。
私は低くうつむいて、ノートを書き続けた。
その日、私は京都がまもなく襲撃されることを知らなかった。
猫目が京都を選んだのは、京都が最も弱いからではない。
むしろ、その逆だった。
京都旧結界管理委員会は、日本退魔界で最も象徴的な旧勢力の一つだ。
歴史がある。
結界がある。
家系がある。
古い音庫がある。
神社ネットワークがある。
伝統儀式がある。
自尊心がある。
猫目が地方の小勢力だけを食べているなら、多くの人はそれを経済的侵食だと思うだろう。
猫目がいくつかの中型組織を食べたなら、人々はそれを暗面資本の拡張だと思うだろう。
しかし、もし猫目が京都の大勢力をあえて突撃し、勝利を得たなら、退魔界全体が理解する。
猫目はもはや、ただの「浸透者」ではない。
新たな支配者候補なのだと。
ニャーサはそれをよく理解していた。
だから、京都を選んだ。
しかも、京都の最も古い中心結界を直接攻撃したわけではない。
それは手間がかかりすぎる。
全勢力の共同反撃を引き起こしやすい。
なにより、白川一音の過激反応を引き起こす可能性がある。
それが選んだのは、京都旧結界管理委員会の外輪支柱だった。
三か所。
第一。
北部旧資料封存所。
そこには、大量の家系周縁档案、儀式記録、結界維持帳簿が保存されている。
第二。
東側古典芸能保存センター。
そこは、京都文化デジタル化論争の核心ノードの一つだった。
第三。
南部結界材料倉庫。
そこには、京都旧結界の定期維持に必要な符材、紙、木、石粉、古墨、封存器具、一部の予備法器が保管されている。
この三か所は、主宅ほど目立たない。
けれど、京都旧体系が動き続けるための骨だった。
ニャーサが叩こうとしたのは、京都の顔ではない。
京都の骨だった。
夜襲は午前一時十七分に始まった。
京都には小雨が降っていた。
雨は細かった。
猫の爪が、軒先へそっと落ちるように。
最初に異常が起きたのは、南部結界材料倉庫だった。
当直術師は、外部監視画面がすべて静止画になっていることに気づいた。
次の瞬間、倉庫外縁の三重旧結界が同時に失効した。
強引に破られたのではない。
維持権限が一時的に書き換えられたのだ。
守衛たちは、完全な警報を出す間もなかった。
猫目術師は、すでに外層へ入っていた。
人数は多かった。
京都の予想より、はるかに多い。
しかも各組が、京都旧結界に特化した干渉器を持っていた。
それらの干渉器は、猫目が何もないところから発明したものではない。
過去数か月間、猫目が京都のデジタル化、文化保存、材料供給、保険審査、外縁プロジェクトへ浸透して得たものだった。
京都は、核心を防いだと思っていた。
しかし猫目は、すでに外縁で十分な維持習慣、符材型番、結界の節律、人員交代時間を集めていた。
だから今夜、猫目は盲目的に攻めているのではなかった。
半分の地図を持って、門から入ってきたようなものだった。
猫目術師たちは、京都守衛と正面から硬くぶつかろうとはしなかった。
補給線を切る。
倉庫扉をロックする。
伝音符を遮断する。
大量の低級だが密集した干渉符で、京都術師が大術を展開するのを遅らせる。
京都守衛は強い。
けれど、彼らが慣れているのは儀式的な防御だった。
準備があり、位置があり、結界核心の支えがある戦闘に慣れている。
猫目が持ち込んだのは、現代化された包囲だった。
速い。
細かい。
多点的。
伝統的な術式のリズムを守らない。
十分後、南部材料倉庫は陥落した。
京都守衛が全員倒れたわけではない。
けれど、倉庫はすでに猫目に接収されていた。
核心材料は封存された。
予備法器は移送された。
維持帳簿は複製された。
猫目は倉庫を燃やさなかった。
資料も破壊しなかった。
ただ、支配権を取っただけだった。
それは破壊よりも恐ろしかった。
同時に、北部旧資料封存所が第二波の突撃を受けた。
ここは防護がより強い。
七条が以前、封存権限を自ら強化していた。
だから猫目は、すぐには突破できなかった。
そこへ送り込まれたのは、膨大な数の術師だった。
一層ずつ引き延ばす。
一層ずつ削る。
京都守衛に、予備防衛線を何度も起動させる。
一度起動するたびに、猫目は一度記録する。
予備経路が一つ露出するたびに、猫目はその一部を切断する。
京都の結界は古い城壁のようだった。
厚く。
重く。
堅固。
けれど猫目は、大槌で城壁を叩いているのではなかった。
無数の人間を送り込み、城壁の足元を掘らせていた。
一人一人は、ほんの少ししか掘らない。
その一つ一つは致命的ではない。
しかし合わせれば、城壁は傾き始める。
封存所の内部では、老委員が自ら座して指揮していた。
彼は次々と上がる警報を見つめ、顔色をますます沈ませていった。
「奴らは資料を破壊したいのではない」
七条は横に立ち、氷のような声で言った。
「資料の出入りを支配したいのです」
老委員はうなずいた。
「猫目は京都档案の門になろうとしている」
その言葉に、全員の胸が冷えた。
もし猫目が門になれば、京都は資料を持ち続ける。
けれど、それを開くたび、先に猫を通らなければならない。
七条は即座に命じた。
「外部伝送を切断」
「紙媒体封存を起動」
「核心巻宗を内層へ移せ」
命令は速かった。
けれど、猫目はさらに速かった。
それは、京都がデジタル伝送を切断することを早くから予測していた。
だから術師部隊を送り込み、実体通路から強行圧入させた。
最核心巻宗を奪うためではない。
京都に内層封印を開かせるためだった。
京都が内層を開きさえすれば、猫目はその開閉節律を記録できる。
七条はそれに気づき、顔色が完全に変わった。
「内層を開けるな」
誰かが焦って言った。
「ですが、外層資料が失われます」
七条は歯を食いしばった。
「外層を捨てます」
それは非常に苦しい一言だった。
京都人は資料を最も重んじる。
けれど七条は、選ばなければならなかった。
外層資料は、失われても補える。
内層封印の節律を猫目に触れられれば、京都の最も深い門が見られてしまう。
こうして京都は、一部の外層資料を放棄した。
猫目は大量の周縁档案を得ることに成功した。
だが、内層を開かせることはできなかった。
七条は最核心を守った。
けれど、外輪を失った。
それは敗北だった。
同時に止血でもあった。
最も凄惨だったのは、東側古典芸能保存センターだった。
そこは世俗文化機関と退魔界の暗線のあいだにあった。
普通の職員がいる。
档案研究者がいる。
旧家系の人員がいる。
現代デジタル化設備がある。
猫目は、そこに早くから目をつけていた。
今回の突撃で、それは大規模な暴力を使わなかった。
まず、世俗界の消防システムへ「電気火災リスク警報」を受信させた。
普通職員は緊急避難させられた。
その後、猫目関連の「文化安全応急隊」が合法的名目で到着した。
彼らは反射ベストを着て、安全検査設備を持っていた。
世俗界から見れば、火災リスクを点検しに来た人たちだ。
退魔界から見れば、侵入者だった。
京都術師は止めようとした。
しかし、普通職員と市政関係者がまだその場にいる。
京都は公然と術式を展開できなかった。
猫目は合法身分を利用して、一歩ずつ施設核心へ入っていった。
これこそが猫目の戦法だった。
術師だけに頼るのではない。
世俗ルールで相手を制限し、その後、術師で支配を完成させる。
普通人が全員撤離したあと、本当の戦闘が始まった。
京都術師は、文化施設を破壊しないという条件下で戦うことを強いられた。
一方、猫目は低損害制圧装備を用意していた。
煙幕。
短距離麻痺符。
低可視度障壁。
術式節律干渉器。
さらに、大量の訓練された低級術師の交代。
戦闘は四十二分続いた。
京都守衛は敗退した。
保存センターの核心サーバーは猫目に複製された。
旧芸能の音声資料を保管していたいくつかの部屋も、猫目に制御された。
彼らはやはり資料を破壊しなかった。
普通人も殺さなかった。
ただ、京都から支配権を奪っただけだった。
七条が東側センターへ駆けつけたとき、猫目はすでに核心通路を押さえていた。
彼女は自ら出手した。
一瞬で、京都旧式結界が展開し、通路全体が見えない格子で数十区画に切り分けられた。
普通の猫目術師は、即座に制圧された。
七条は一般的な高手ではない。
判断は速く、切点は正確で、手は冷たい。
猫目の低級術師では、彼女を止められなかった。
彼女は一路突破し、ほとんど半分の通路を貫いた。
そして、止まった。
通路の先に、ニャーサが現れたからだ。
それは大軍を連れていなかった。
威圧も展開していない。
ただ、倒れた資料箱の上に座っていた。
まるで、最初からそこで待っていたように。
七条の顔色は、一瞬で極めて冷たくなった。
「猫目核心」
ニャーサは彼女を見た。
「君は、倉庫へ突っ込んできた連中より賢いね」
七条は答えず、即座に結界を展開した。
彼女はよくわかっていた。
相手に多く話させてはいけない。
相手にリズムを渡してはいけない。
京都旧結界が、無数の透明な紙扉のように一層また一層と広がる。
封鎖。
隔離。
反射。
滞留。
七条はニャーサを通路の先に閉じ込めようとした。
ニャーサはその結界を眺め、軽く前足を上げた。
未知の電流爆発はない。
影のエネルギーもない。
ただ、爪先で一点をつついただけだった。
七条の第一層結界が停滞した。
第二層がずれた。
第三層は閉合点を失った。
第四層は反転を強いられた。
蛮力で砕かれたのではない。
開閉の論理を見抜かれたのだ。
七条の瞳孔がわずかに縮んだ。
彼女は即座に術式を切り替えた。
旧式封門。
新式権限ロック。
音声隔断。
三種の防線が同時に展開する。
ニャーサは、ようやく立ち上がった。
それは一歩、前へ出た。
七条の身体が、びくりと硬直した。
肉体を攻撃されたからではない。
彼女の足元にある結界ノードが、突然、極細の未知の力によって点穿されたからだ。
攻撃は見えなかった。
ただ、術式核心が針で刺されたような感覚だけがあった。
次の瞬間、通路全体の結界がすべて均衡を失った。
七条は半歩退き、口の端からわずかに血を滲ませた。
ニャーサは追撃しなかった。
「君は、戦うより核心を守るほうに価値がある」
それは静かに言った。
「帰りなさい」
七条は歯を食いしばり、さらに術式を展開しようとした。
だが、老委員の伝訊符が光った。
退け。内層を守れ。
七条は手を握りしめた。
彼女は簡単に退く人間ではない。
けれど、続けても意味がないことはわかっていた。
ニャーサは本気ではない。
上限を引き出すこともできない。
彼女が留まり続ければ、京都はさらに多くを失うだけだ。
七条は向きを変え、撤退した。
それは京都の夜における、最も苦しい命令だった。
退け。
内層を守れ。
外輪を放棄せよ。
午前三時、京都旧結界管理委員会は緊急閉鎖を宣言した。
内層結界はすべて閉じられた。
核心人員は旧陣へ撤入した。
外部資料封存点、保存センター、材料倉庫は、すべて「失控または半失控状態」へ移行した。
猫目は内層を追撃しなかった。
ニャーサは、いつ止まるべきかを知っている。
京都内層を撃ち抜くのは代価が高すぎる。
しかも、全日本の大勢力を本当に結束させ、白川一音が体内に封印されたあのものを解き放つ可能性がある。
今日の目標は、すでに達成された。
京都は負けた。
滅亡したわけではない。
けれど外輪支配を失った。
猫目は京都周辺の文化資料、材料ルート、デジタル化入口、一部旧芸能保存の制御権を得た。
そして何より重要な心理的結果を得た。
京都も退く。
京都も、すべての門を守れるわけではない。
京都も、猫を簡単には拒めない。
それで十分だった。
夜明け前、猫目はいくつかの合法的公告を発表した。
猫目文化安全は、京都の一部文化施設の緊急安全接管に参加する。
関連施設は、電気安全、資料保護、災害リスクのため、一時托管に入る。
すべての普通職員の給与は通常通り支払われる。
すべての文化資料は外部流出せず、破壊せず、公開しない。
今後、地方政府、文化機関、関連各方と協議し、再開を進める。
世俗界が見たのは、
猫目が一つの安全事故において、迅速に文化施設を接管し、保護した姿だった。
退魔界が見たのは、
猫目が京都外輪を撃ち抜いたという事実だった。
二つの物語が同時に存在する。
そして猫目は、その両方の物語を握っている。
これこそが、ニャーサの勝利だった。
京都夜襲のあと、猫目の拡張は最終加速に入った。
大都市の核心ではない。
東京中心部には、まだ特調室と大資本が死守している。
大阪核心にも、いくつかの財団と地方の強者が抵抗している。
名古屋中心部は、まだ様子見をしている。
京都も内層閉鎖後、最古の核心だけは守った。
福岡、札幌など、少数の大都市核心区域も、まだ完全には猫目に呑み込まれていない。
しかし、そうした少数の大都市核心を除けば、日本の大量の地方区域では、経済と武力支配が急速に猫目へ傾き始めた。
地方小都市。
漁港。
山間文化施設。
遍路道周辺商圏。
小型LiveHouseネットワーク。
活動機材レンタル。
地方物流倉庫。
特殊保険。
夜間安全巡回。
中小退魔組織。
周縁術師団体。
地方旧祭礼維持会社。
町村文化活動基金。
それらすべてが、猫目の網の中でつながっていく。
猫目は、すべての場所に自分の名前を掲げる必要はない。
ある場所では猫目保険。
ある場所では猫目倉庫。
ある場所では猫目巡回隊。
ある場所では猫目基金。
ある場所では猫目関連物流。
ある場所では、ただ債権が猫目の手にあるだけ。
けれど実質的な支配は、すでに完成していた。
金は猫目を通って流れる。
物資は猫目倉庫を通る。
術師任務は猫目プラットフォームを通じて割り当てられる。
地方文化活動は猫目保険に依存する。
小組織の装備は猫目供給に依存する。
負傷補償は猫目基金に依存する。
問題が起きれば、最初に現場へ来るのは猫目安全隊だ。
これこそが支配だった。
旗を掲げることではない。
相手が自分なしではいられなくなることだ。
ニャーサは東京本部で全国地図を眺めていた。
少数の大都市核心は、まだ異なる色で光っている。
東京核心は深青。
大阪核心は赤灰。
名古屋は灰色。
京都内層は閉じられた白。
福岡、札幌には、それぞれ完全浸透していない円が残っている。
そしてそれ以外の地方では、大量のノードがすでに淡い金色へ変わっていた。
淡い金色は、猫目支配を意味していた。
代理人は、抑えきれない興奮を含んだ声で言った。
「地方経済と武力ノードの統合率は、すでに予測を超えています」
「少数の大都市核心区を除き、猫目は大部分の地域で実質的な調度能力を備えています」
「退魔界地方小組織の依存度は六割を超えました」
「世俗界の文化安全、活動物資、特殊物流、小企業債権の制御も引き続き上昇しています」
ニャーサは地図を見つめ、長いあいだ何も言わなかった。
それから笑った。
「ようやく、網らしくなってきた」
代理人は頭を下げた。
「京都以後、各方面はさらに正面対抗を恐れるはずです」
「彼らは、残った大都市を守ることにさらに集中するでしょう」
「守らせておけばいい」
ニャーサは尾を軽く揺らした。
「都市核心が緊張すればするほど、地方は私に食べられやすくなる」
「彼らは、自分たちが急所を守ったと思うだろう」
「だが忘れている。身体は心臓だけでできているわけじゃない」
「毛細血管が断たれれば、心臓もいずれ血を失う」
それは、京都の閉鎖された白い区域を見た。
「七条はよくやった」
「内層を守った」
「でも、彼女にできるのも内層を守ることだけだ」
それこそが、ニャーサの望む結果だった。
強者に防御しかできなくさせる。
地方をすべて自分の手に落とす。
特調室が京都夜襲報告を受け取ったとき、会議室にはほとんど音がなかった。
久我山統括官は地図を見つめ、ひどく険しい顔をしていた。
眼鏡の女性は横に立ち、書類を握っていた。
若い分析官が低い声で言った。
「京都外輪、失控」
「猫目の地方支配速度は予測を超過」
「地方経済、倉庫、保険、巡回隊、退魔小組織が、統一調度体系を形成しつつあります」
久我山は尋ねた。
「白川一音は?」
眼鏡の女性が答えた。
「彼女は知りません」
「引き続き知らせない」
久我山は言った。
「少なくとも、すべてを知らせるな」
若い分析官は躊躇した。
「ですが、猫目が支配している多くの区域は、彼女が将来関わる可能性のある文化活動分野に関係しています」
眼鏡の女性の声は低かった。
「だからこそ、今は知らせてはいけないのです」
「彼女は、戦敗から回復したばかりです」
「もし、自分が将来行きたい場所が猫目に食べられつつあると知ったら、彼女は崩れます」
会議室は静かだった。
それは、とても残酷な保護だった。
知らせないのは、彼女が重要ではないからではない。
彼女が責任を自分に背負い込みやすいからだ。
久我山は言った。
「安全リストを作れ」
「彼女の学習、実習、研究、バンド活動に関わるすべての場所について、猫目接触状況を確認する」
「同時に、彼女に自分が監視されていると思わせるな」
若い分析官は苦笑した。
「それは、ほとんど不可能です」
久我山は言った。
「それでもやる」
天城、御影、京都、玄海、四国は、すべて防御状態に入った。
天城美咲は認めた。
「私たちはもう、地方で猫目と速度を競うことはできない」
天城怜司は言った。
「まずはグループ核心と、まだ浸透されていないいくつかの協力区域を守る」
御影冬子は旁系資産の収縮を命じた。
もはや猫目契約を全面的に清除しようとはしない。
まず本家、封存庫、いくつかの重要文化施設を守る。
京都内層は閉鎖された。
七条は三日連続で旧陣を離れなかった。
老委員は言った。
「休むべきだ」
七条は、ただ答えた。
「京都外輪を失いました」
老委員は沈黙した。
玄海鎮守連合は、複数の漁港保険と物資ノードがすでに猫目化していることを、認めざるを得なくなった。
宗像怜央の顔色は白かった。
「私たちは潮返洞を守ったのに、漁港の帳簿を守れませんでした」
白髪の宮司は言った。
「だから、今から学ぶのだ」
四国では、久世真帆が地図を見つめ、低く言った。
「遍路道周辺の多くの商店が、すでに猫目の物資なしではいられなくなっています」
明厳老僧は言った。
「ならば、まだ離れられる場所から始めよう」
すべての勢力が、現実へ退いた。
もはや「どうやって猫目を倒すか」ではない。
まだどこを守れるのか。
まだどこから撤退できるのか。
まだ誰を食われずに済ませられるのか。
それが、京都夜襲後の影響だった。
無門術師たちも、働き方を変えざるを得なくなった。
真壁仁は、低級事件の清理だけをするのをやめた。
彼は人を連れて、小さな地方に非猫目物資の相互扶助ネットワークを作る手伝いを始めた。
とても小さい。
とても遅い。
洪水の中で木板を組むようなものだった。
菅原涼は、猫目保険に依存しない医療相互扶助リストを整理し始めた。
多くの病院は、表立って参加することを恐れた。
ただ、裏で支援することしかできない。
遠野修司は北海道で、旧式ルート図と人工維持隊を整理していた。
彼は言った。
「猫目アプリがなくても歩ける」
けれど彼も知っていた。
若い人たちは、アプリに慣れている。
紙のルートは遅くて面倒だ。
それでも、遅くてもやらなければならない。
すべての道が猫目システムの中に入れば、歩くこと自体が猫に報告することになってしまうからだ。
彼らは皆、自分たちのしていることが猫目の拡張よりはるかに遅いと知っていた。
けれど、やらなければ、さらに遅れる。
そして私は、図書館で音声メディア研究の二本目の小レポートを書いていた。
題目は、
地方の音と共同体記憶。
半分ほど書いたところで、スマホが震えた。
日和からのメッセージだった。
今日の練習時間は変わらないよ。身体は大丈夫?
私は返信した。
大丈夫。手首はほとんど治った。
陽菜がグループに送ってきた。
新曲、今日は絶対に全部通す!
澪。
完全飯。
グループチャットを見て、私は少し笑った。
とても軽い笑いだった。
私はまだ知らなかった。
京都外輪がすでに失われたことを。
猫目が、少数の大都市核心を除く大量の地域で、経済と武力支配を食べてしまったことを。
地方の小型文化空間、青少年活動、物流、保険、物資が、ますます猫目システムへ流れ込んでいることを。
私はただ、新曲が今日全部通せたら、それは良いことだと思っていた。
それはとても小さい。
けれど、私にとっては本物だった。
意識の奥で、ソレンセンが言った。
「今日は機嫌がいいな」
「うん。手首があまり痛くないから」
「それだけか?」
「あと、新曲が通るかもしれない」
「弱い喜びだ」
「でも、喜びではある」
それは反論しなかった。
最近、それはこういう小さなことをあまり嘲笑しなくなった。
あの敗北のあと、それも小さなことが重要だと知ったのかもしれない。
あるいは、ただ言うのが面倒だっただけかもしれない。
その夜、AfterToneの新曲は初めて最後まで通った。
完璧ではなかった。
陽菜は一か所、息がつながりかけた。
澪は途中の一音が少し軽かった。
私の前奏入りも、まだ少し硬かった。
日和の最後のドラムは、予定より少し遅かった。
それでも、私たちは最後まで通した。
陽菜は嬉しすぎて、ほとんど跳ね上がりそうだった。
「小音! 通ったよ!」
私はうつむき、まだ弦に手を置いたままだった。
「うん」
澪が言った。
「完全飯」
日和は笑って私を見た。
「手首は大丈夫?」
「大丈夫」
「じゃあ、今日はここまで。欲張らない」
私はうなずいた。
「うん」
欲張らない。
その言葉は今、とても重要だった。
練習で欲張らない。
戦闘で欲張らない。
力で欲張らない。
勝利でも欲張らない。
その日、私はAfterToneの中で温かいお茶を飲みながら、陽菜が次はサビをもう少し明るくしたいと言うのを聞き、澪が次は新しい味のおにぎりを持ってくると言うのを聞き、日和がリズムをもう少し安定させようと言うのを聞いていた。
私は、外の地方世界が猫目の網へ変わりつつあることを知らなかった。
大勢力がすでに攻勢から防御へ退いたことも知らなかった。
特調室が、私の未来の活動範囲を一寸ずつ確認していることも知らなかった。
ニャーサが全国地図を見つめ、すでに大量の地方を食べたことを確認していることも知らなかった。
私が知っていたのは、私たちの新曲がようやく最後まで通ったことだけだった。
それは暗闇の外に、まだ灯っている小さな明かりだった。
深夜、ニャーサは本部最上階で地図を見ていた。
京都外輪の淡い金色は安定しつつある。
地方ノードは、ほとんど面でつながっている。
少数の大都市核心は、まだ抵抗している。
けれど、急いではいない。
それはすでに証明した。
京都は退く。
大勢力は退く。
世俗資本は退く。
黒弦は敗れる。
地方は依存する。
倉庫は拡張する。
猫目はインフラになる。
それは静かに言った。
「次は、叩くことじゃない」
「慣れさせることだ」
代理人は頭を下げて尋ねた。
「何に慣れさせるのでしょうか?」
ニャーサは笑った。
「猫目がもうここにいることに」
「猫目がなければ、物事がもっと面倒になることに」
「抵抗するコストが、服従するコストより高いことに」
「慣れれば、支配はもはや宣言される必要すらない」
それは、地図の上でまだ淡い金色に染まっていない、いくつかの大都市核心を見た。
「都市は、ゆっくりでいい」
「地方はもう、私のものだ」
窓の外では、東京の夜色が明るかった。
その灯りの中から猫を見つけられる者は、誰もいなかった。