俺の頭の中に敗北した暗黒の王が住み着いているが、俺はただギターを弾きたいだけだ 作:arctichare
第82章 純雷電の頂級技能、そして私は文化祭を普通の舞台練習として扱った
文化祭の一週間前、A大学はとても騒がしくなった。
危険な騒がしさではない。
準備活動の騒がしさだった。
学生会館の入口には段ボール箱が積まれていた。
サークル棟の廊下では、展示パネルを運んでいる人がいた。
食堂の横では、出店メニューについて話し合っている人たちがいた。
小広場では、仮設ステージの金属フレームがもう半分ほど組み上がっていた。
どこもかしこも、テープ、ポスター、申請書、練習時間、設備貸出通知でいっぱいだった。
以前の私は、こういう環境をとても怖いと思ったはずだ。
今も、少し怖い。
けれど、その中を歩けるようにはなっていた。
私は研究会の展示説明紙を抱えて、相原真紀と一緒に印刷室から出てきた。
相原が言った。
「白川さん、今回の展示は静かになりそうだね」
私はうなずいた。
「うん。ヘッドホンで音を聴くから、あまりうるさくはならないと思う」
「でも、文化祭そのものは騒がしいよね」
「うん」
私たちは同時に、少し黙った。
それから相原が笑った。
「じゃあ、私たちのブースは静かな場所ってことだね」
私はその言い方がとてもいいと思った。
静かな場所。
騒がしい文化祭の中に、座ってヘッドホンをつけ、キャンパスの音を聴ける場所がある。
それは、私が作りたい文化空間に少し似ていた。
必ずしも全員を舞台に上げる必要はない。
すぐには舞台に上がりたくない人のための場所も、残しておく必要がある。
私は展示説明紙をファイルに入れた。
ソレンセンが意識の奥で言った。
「お前たちは虫群祭のために、静かな巣を用意したのだな」
「展示ブース」
「だいたい同じだ」
「もう反論するのも面倒になってきた」
私は相手にしなかった。
これからAfterToneの練習へ行かなければならない。
文化祭ステージまで、最後の練習はあと二回。
日和は、欲張らないと言った。
二曲で十分。
派手な技より安定が大事。
今の私は、その言葉にとても同意している。
安定は派手な技より大事。
舞台に立って、最後まで弾いて、安全に降りる。
それで十分だ。
少なくとも私にとっては、それで十分だった。
そして私が文化祭の準備をしているころ、海上プラットフォームの訓練場は完全に封鎖されていた。
今回は普通の訓練ではない。
ニャーサはすべての代理人、技術者、猫目術師を外層へ追い出した。
最核心の監測システムだけを残して稼働させた。
訓練場の四方にある電磁遮蔽層は、すべて最高出力まで引き上げられた。
なぜなら今回、それが準備するのは雷電と暗影の混合技ではなかったからだ。
純雷電属性の、頂級威力技能。
純雷電。
暗影は入らない。
ただ、電だけ。
極致の電。
ニャーサがこうすることは、あまり多くない。
暗影はそれの生存方式だ。
暗影は、隠れ、浸透し、欺き、転移し、操るためのもの。
けれど、封印が破れたかもしれないソレンセンと向き合うなら、暗影だけでは足りないかもしれない。
混沌系は暗影を呑む。
暗影を歪める。
影に境界を失わせる。
もし本物の混沌の深部で暗影を使えば、逆に混沌に絡め取られる可能性すらある。
だから、それは暗影に依存しない技を用意しなければならなかった。
純雷電。
頂級威力。
それは、今の私が使える黒弦に対処するためのものではない。
そんな必要はまったくない。
安全出力下の黒弦は、ニャーサの目にはソレンセンから漏れ出した、ごく小さな一筋の力にすぎなかった。
鋭い。
だが有限。
危険。
だが制御されている。
この技能を準備するだけの価値が本当にある相手は、もし封印が破れ、門の向こうの混沌系存在が本当に手を伸ばしてきたときのそれだった。
雷電は混沌を抑制できる。
それが、ニャーサの信じる戦闘論理だった。
もしその日が来れば、純雷電の力だけが、相手を本当に傷つけられるかもしれない唯一の方法になる。
影の中に隠された麻痺攻撃ではない。
堂々と、極限まで集中し、完全に雷電属性だけで混沌を貫く頂級威力技。
ニャーサは、それに名前をつけた。
天極純雷。
名前は単純だった。
少し直接的すぎるほどだった。
けれど、ニャーサは気に入っていた。
この技能は、そもそも複雑な名前を必要としていないからだ。
目的は一つしかない。
混沌の海に、一筋の傷を裂くこと。
訓練場の中央で、ニャーサは巨大な導電陣列の輪の中に立っていた。
これらの陣列は、すべて猫目が巨額の資金を投入して作ったものだ。
世俗界の材料。
退魔界の封存合金。
特殊絶縁層。
高出力パルス設備。
さらに、複数の地方倉庫から運び込まれた希少な導能鉱物。
これらの品は、猫目がすでに掌握したサプライチェーンから来ていた。
もし猫目の地方支配がなければ、これほど早く材料を揃えることはできなかっただろう。
これこそが、経済支配のもう一つの面だった。
金と倉庫は、ただ他人を支配するためにあるのではない。
自分の力を育てる餌にもなるのだ。
ニャーサは爪を上げた。
最初の一筋の電光が灯る。
訓練場の壁面にある監測機器が、瞬時に振り切れた。
だが、これはまだ予熱にすぎない。
二筋目の電光が地面から立ち上り、青白い細線のようにそれの身体へ絡みつく。
三筋目の電光は上方から落ちてきた。
四筋目の電光は、もう青白色ではなかった。
ほとんど純白に近い。
眩しいほど白い。
影さえほとんど残らないほど白い。
この瞬間、暗影はニャーサ自身によって能動的に引き戻された。
この技能に、一切の暗影を混ぜることを許さなかった。
純度が重要だからだ。
もし電に暗影が混じれば、混沌への抑制力が弱まる。
それが求めているのは純粋さだった。
ほとんど残酷なほど純粋な電。
ニャーサは目を閉じた。
訓練場には、巨大な黒い模擬核心が現れた。
今回の混沌モデルは、以前よりもさらに複雑だった。
攻撃を歪める。
エネルギーを吸収する。
方向を反転させる。
偽の弱点を作る。
さらには、混沌力量の一部の呑噬特性まで模擬する。
もちろん、それでも本物のソレンセンよりは笑えるほど弱い。
ニャーサはそれを知っていた。
けれど、この世界で可能な手段では、それしか模擬できない。
本当にあの扉を開けて練習するわけにはいかない。
それは訓練ではない。
自殺だ。
黒い核心が拡張し始めた。
無音の黒海のように。
ニャーサは目を開けた。
笑わなかった。
何も言わなかった。
ただ、一筋の電光を爪先へ圧縮した。
訓練場のすべての機器が、同時に耳を刺す警報を鳴らした。
次の瞬間。
純白の雷光が黒核を貫いた。
爆発はない。
轟音もない。
余計な拡散さえない。
ただ、極細で、極めて明るく、極めて速い一本の線だけがあった。
ニャーサの爪先から放たれ、黒核の中心を貫き、訓練場の奥にある絶縁壁へ打ち込まれる。
黒核が止まった。
一秒。
二秒。
三秒目、黒核は内部から裂けた。
裂け目には、すべて白い電光が満ちていた。
その後、混沌モデル全体が崩壊した。
ニャーサは爪を引いた。
訓練場は静かになった。
監測システムの半分は焼損していた。
残り半分が、かろうじてデータを保存していた。
外層の技術者たちは画面を見つめ、顔面蒼白になっていた。
代理人は喉を乾かせた。
「成功、したのでしょうか?」
誰も答えようとしなかった。
ニャーサは場の中央に立ち、散っていく黒核の残影を見ていた。
かなり時間が経ってから、それは軽く言った。
「始まりと見なせるだけだね」
それは満足していなかった。
なぜなら、これはただのモデルだからだ。
ソレンセンではない。
もし本当に封印が破れたあとのソレンセンを相手にするなら、今回の訓練結果から推算しても、ニャーサが全力で完全解放したこの技能が、必ず相手を傷つけられるとは限らない。
刺すだけかもしれない。
中断させるだけかもしれない。
相手に自分の存在を気づかせるだけかもしれない。
そしてソレンセンに本気で注意されること自体が、危険だった。
それでも、少なくとも一つのことは証明できた。
純電は、混沌模擬核心へ刺し込める。
それだけで、練習を続ける価値はあった。
文化祭の五日前、AfterToneは最後から二回目の練習をした。
私は前回より少し安定していた。
手首は痛くない。
ただ、二曲目の中盤に入ったところで、右肩が少しだるくなった。
日和はすぐに止めた。
「休憩」
陽菜は少し緊張した。
「小音、痛い?」
「少しだるいだけ。痛くはない」
澪が水を差し出してくれた。
「水」
私は受け取った。
「ありがとう」
日和は私を見た。
「文化祭当日、少しでもつらかったらすぐ止めて」
私はうなずいた。
「うん」
陽菜が言った。
「大丈夫! 少し弾く量が減っても大丈夫だから!」
澪もうなずいた。
「安全飯」
彼女たちにそう言われて、少し笑いそうになった。
「気をつける」
日和はしばらく私を見て、私が無理をしていないと確認してから言った。
「今日はもう通し練習はしない。前半だけ練って終わり」
「でも……」
彼女が私を見た。
私はすぐに黙った。
「うん」
欲張らない。
この言葉には、もうずいぶん慣れた。
ソレンセンが意識の奥で言った。
「お前は今や、バンド練習でも撤退するのだな」
「これは休憩」
「だいたい同じだ」
「撤退は悪いことじゃない」
それは少し黙った。
「覚えたようだな」
私はうつむいて水を飲んだ。
そうだ。
覚えた。
埠頭の日、私は撤退ボタンを押した。
今、練習でも止まれる。
この二つは、もちろん同じではない。
けれど少しだけ、似ている。
どちらも失敗ではない。
戻ってこられるようにするためのものだ。
海上プラットフォームでの二回目の純電訓練が始まったとき、ニャーサは方法を変えた。
最初の「天極純雷」は集中しすぎていた。
模型を撃ち抜くことはできる。
しかし、膨大なエネルギー消耗を伴う。
もし本物のソレンセンと向き合ったとき、このような攻撃が核心を外せば、逆に自身を晒すことになる。
だから、それには第二の形式が必要だった。
単発貫通ではない。
蓄勢後の、連続圧縮打撃。
純電の頂級威力技は、放ち方が一つだけでは意味がない。
ニャーサは「天極純雷」を二段に分けた。
第一段、ロック。
極細の電流で、混沌の波動の中にある最も不安定な裂点を捕捉する。
第二段、裁断。
最高密度の純電雷光によって、瞬時に貫通する。
これは単純に発射するより難しい。
なぜなら、混沌には固定された裂点がないからだ。
混沌は、自ら形態を変えて万物を呑み込む。
だから、ロック時間は極限まで短くなければならない。
相手が反応できないほど短く。
そして、ニャーサ自身に後悔する暇もないほど短く。
それは反復練習を始めた。
一回。
十回。
三十回。
訓練場では、黒い混沌モデルが生成され続け、そのたびに純白の雷光で撃ち抜かれた。
ニャーサはそのたびに、暗影をさらに深く抑え込んだ。
暗影が電の純度を乱さないように。
それは苦しかった。
暗影はもともと、それ自身の一部だからだ。
暗影を押し込めることは、猫に自ら夜色を手放させるようなものだった。
けれど、混沌に対抗するためには、そうしなければならない。
雷電は混沌を抑制できる。
この法則こそが、それが掴める唯一の確実性だった。
もしこの法則さえ利用できないなら、ソレンセンが封印を破ったとき、逃げるしかない。
もちろん、逃げることも選択肢だ。
ニャーサは逃亡を恥じない。
けれど、それは逃げることしかできない状態にはなりたくなかった。
必要なときには、あの混沌系存在にも、少しは代価を払わせたい。
たとえ、一筋の傷だけでも。
三回目の訓練後、ニャーサはようやくペットボトルの水を一本、まるごと飲み干した。
耐えがたいほど疲れたからではない。
その身体的消耗はゼロに等しい。
ただ、純電訓練が想像以上に精神を消耗させたからだ。
頂級威力技は、ただ力を積み上げることではない。
属性純化、圧縮、ロック、解放でもある。
この世界のどの術師を相手にしても、ニャーサにそこまでする必要はない。
安全出力下の私を相手にする場合も必要ない。
それどころか、電すら使わなくていい。
体術、予測、速度だけで、私に撤退を選ばせられる。
だが、門の向こうのソレンセンが本当に出てきたなら、体術に意味はない。
普通の暗影にも意味はない。
経済ネットワークにも意味はない。
猫目倉庫にも意味はない。
それは、別の階層の災害になる。
だから、ニャーサは真剣に練習した。
真剣すぎて、代理人は初めてその訓練を見たあと、一晩中眠れなかった。
彼はようやく理解した。
猫目資本のすべての経済版図、倉庫、術師部隊、地方支配は、社長の目にはただの盤面でしかないのだと。
そして社長が本当に警戒しているものは、日本退魔界などではまったくない。
天城ではない。
御影ではない。
京都ではない。
特調室ではない。
白川一音本人でさえない。
それは、白川一音の背後にあるあの扉だ。
扉の向こうの混沌系存在。
私は、そのすべてを何も知らなかった。
文化祭の四日前、地域音楽研究会は展示ブースの試運転を終えた。
机の上には説明紙が置かれている。
四つのヘッドホン。
二台のオーディオプレイヤー。
予備電池。
除菌ウェットティッシュ。
来場者感想カード。
相原真紀は、最初の音声を私に聴かせてくれた。
中央広場が復旧したあとの、午後の音だった。
風の音。
足音。
遠くの学生たちの笑い声。
自動販売機の案内音。
私はヘッドホンをつけ、長いあいだ聴いていた。
あの広場は、かつて邪術師に襲撃された場所だった。
私はそこで、黒弦を使って多くの人を制圧した。
そのあと、私は相原とそこで昼ご飯を食べた。
今、それは研究会展示の音声になっている。
不思議な変化だった。
かつて私を怖がらせた場所が、今では他の人が静かに聴ける日常になった。
私はヘッドホンを外した。
「いいと思う」
相原は笑った。
「本当に?」
「うん」
濑川会長は私たちを見た。
「文化祭当日は、あまり説明しすぎなくていいと思う。来た人に、自分で聴いてもらえばいい」
私はうなずいた。
音は、すべて説明し尽くさなければならないものではない。
多くの場合、ただ安全な位置を与えればいい。
その言葉は口にしなかった。
でも、書き留めた。
ソレンセンが低く言った。
「お前は今、広場までヘッドホンの中へ入れられるのだな」
「これは記録」
「かつて戦った場所が、展示品になった」
「展示品じゃない。音声資料」
「だいたい同じだ」
私は反論しなかった。
それの言い方はよくないけれど、少しだけ当たっていたからだ。
私はその場所を、戦闘の記憶から少し取り戻した。
それが嬉しかった。
特調室も文化祭を注視していた。
眼鏡の女性は研究会の試運転が正常だったという報告を受け、少し息を吐いた。
若い分析官が言った。
「猫目は接近していません」
「現時点では、ね」
「文化祭当日もリスクはあります」
「はい」
久我山統括官は予定表を見ていた。
「過剰保護に気づかせるな」
眼鏡の女性はうなずいた。
「外縁人員はすべて、普通の大学側協力者と来場者に偽装しています」
「猫目関連ロゴとプロジェクトは排除済みです」
「音響設備サプライヤーは安全確認済み」
「学生保険も確認済み」
「食品、印刷、机椅子のサプライチェーンにも猫目関連はありません」
若い分析官は苦笑した。
「テープのサプライヤーまで調べましたね」
眼鏡の女性は言った。
「テープを調べるほうが、事故が起きたあとで後悔するよりましです」
誰も反論しなかった。
今では皆、猫目がどんな小さな場所からでも線を伸ばせることを知っている。
テープ。
テーブルクロス。
ヘッドホン。
保険。
倉庫。
警備。
その一つ一つが、猫目になり得る。
だから調べる。
一つ一つ、調べる。
不器用で。
煩雑で。
けれど必要なことだった。
同じころ、ニャーサは「天極純雷」の最終形を準備し始めていた。
それはもう、ただ模型を撃つだけではない。
この技能を、自分の戦闘体系へ組み込まなければならなかった。
頂級威力技能が、立ち止まって溜めなければ使えないなら意味がない。
ソレンセンのような存在を相手に、立ち止まって蓄力することは、死にに行くのと同じだ。
だから、ニャーサには移動中の解放が必要だった。
ただし最後の解放瞬間だけは、純電でなければならない。
これは極めて高い要求だった。
暗影移動と純電解放のあいだで、瞬間切り替えを完成させなければならないからだ。
暗影は接近、転移、錯位を担う。
純電は、混沌を本当に傷つける役割を担う。
切り替えが遅ければ、混沌に掴まれる。
電が十分に純粋でなければ、刺し込めない。
訓練場で、ニャーサは何度も消え、何度も現れた。
現れるたびに、一筋の純白雷線が黒核を貫く。
成功するときもある。
失敗するときもある。
失敗したとき、黒核は電光の一部を呑み込んだ。
訓練場には激しい反噬が起きた。
一度の反噬で外層絶縁壁が貫かれ、技術者たちは危うく撤退しかけた。
しかしニャーサは煙塵の中に立ち、目つきをどんどん冷たくしていった。
「まだ遅い」
代理人は何も言えなかった。
ニャーサは再び爪を上げた。
今度は、黒核を訓練場の中央に固定しなかった。
代わりに、百万個の黒核破片を同時に高速移動させた。
それぞれの破片が、混沌拡散の異なる方向を模擬している。
それは、その中から真の裂点を見つけなければならなかった。
これは不可能に近い任務だった。
少なくとも、この世界のどの術師にとっても不可能だ。
けれど、ニャーサはこの世界の術師ではない。
別の尺度から来た猫だ。
電光は、それの目の中で無数の計算可能な経路へ変わった。
暗影が収束する。
純電が立ち上がる。
次の瞬間、訓練場の中央に、極限まで細い白線が現れた。
白線は横薙ぎにしない。
爆発しない。
ただ、最初の黒核破片を貫き、第二へ折れ、さらに第三へ折れた。
複数の偽裂点を連続して貫通したあと、最後に真の核心へ刺さる。
すべての黒核が同時に止まった。
そして崩壊した。
ニャーサは、ようやく少し満足した表情を見せた。
「これで、ようやくそれらしくなった」
それは低く言った。
「天極純雷、第二段階完了」
文化祭の二日前、私は健康評価後のフォローアップメッセージを受け取った。
眼鏡の女性は聞いてきた。
最近の身体状態はどうですか?
私は返した。
手首はほぼ回復しました。肩はたまにだるいです。睡眠は大丈夫です。
彼女は尋ねた。
猫目関連情報による明確な不安はありますか?
私は少し止まった。
どう答えればいいのだろう。
最後に、こう書いた。
猫目ロゴを見ると緊張します。でも制御できます。文化祭の準備をしていると、少しよくなります。
彼女はかなり時間を置いてから返信した。
文化祭は任務ではありません。あなた自身のペースで参加してください。
私はその一文を見つめた。
彼女も、どうしてこの言葉を知っているのだろう。
日和が似たことを言ったから?
いや、彼女が日和の言葉を知るはずがない。
たぶん、彼女も同じように考えてくれているのだ。
私は返した。
わかりました。
それから少し考えて、さらに書いた。
もし当日リスクがある場合は、普通の学生と観客の保護を優先してください。
彼女の返信はとても早かった。
当日は、あなたをリスクへ押し出すような行動は一切安排しません。あなたの任務は、文化祭に参加することだけです。
任務は文化祭に参加することだけ。
その言い方は少し奇妙だった。
けれど、私は好きだった。
もしどうしても任務と言うなら、私の任務は文化祭に参加すること。
猫目を倒すことではない。
黒弦を証明することではない。
敗北を埋め合わせることでもない。
ただ舞台に立つこと。
音の展示を聴くこと。
少し文化祭の食べ物を食べること。
そして家へ帰ること。
ソレンセンが言った。
「人間は今や、遊ぶことまで任務と呼ぶのだな」
「私もちょっと変だと思う」
「だが、この任務は嫌いではない」
「うん」
嫌いではない。
ニャーサは、A大学文化祭が近いことを知っていた。
それは手を出さなかった。
今、それの注意は私に向いていない。
あるいは、今手を出す必要がなかった。
それはすでに、私を一度負かしている。
退魔界にも、黒弦が答えではないと知らせている。
今それがより気にしているのは、「天極純雷」の完成度だった。
なぜならそれは、万が一、扉が開いたときの切り札だからだ。
猫目は地方を食べ続けている。
倉庫は拡張し続けている。
京都外輪の接管は安定しつつある。
大勢力は防御を続けている。
世俗資本は警戒しながらも無力でいる。
それらはすべて計画通りに進んでいる。
ただ、扉の向こうの混沌だけが、制御不能な変数だった。
ニャーサは制御不能を嫌う。
だから、練習する。
何度も、何度も。
純白の雷光が海上プラットフォームの深部で灯る。
それが何なのか、誰も知らない。
世俗界が観測したのは、短時間の電磁異常だけだった。
猫目はそれを「海洋エネルギー再利用実験」と説明して処理した。
退魔界は探知できない。
訓練場が幾重にも隔離されているからだ。
ソレンセンも感知できない。
混沌に直接触れていないからだ。
もちろん私も知らない。
私は文化祭前の最後の練習のため、ギターピックを確認していた。
普通のピック。
黒弦ではない。
少なくともその日、私はそれをただのピックであってほしいと思った。
文化祭前夜、私はすべての物を鞄に入れた。
ギターピック。
予備弦。
研究会ブースの説明紙。
学生証。
水。
湿布。
スマホ。
緊急信号器。
信号器を見て、少し迷った。
最後には、やはり鞄に入れた。
何かが起きると思っているからではない。
それがあると、少し安心できるからだ。
それからメモを開き、書いた。
明日の目標。
一、研究会ブースに参加する。
二、中央広場の音を最後まで聴く。
三、AfterToneの二曲を最後まで弾く。
四、無理をしない。
五、文化祭は任務ではない。
六、猫目ロゴを見ても近づかない。
七、ご飯を食べる。
書き終えると、第七条がとても重要に見えた。
だから、もう一度書いた。
ご飯を食べる。
ソレンセンが低く笑った。
「お前は自分に飯の命令を下すのが、どんどん上手くなっているな」
「ご飯は大事」
「これはあのベース虫の影響だ」
「彼女は虫じゃない」
「好きにしろ」
私は電気を消した。
ベッドに横になる。
心の中には、まだ少し緊張があった。
でも、完全な恐怖ではなかった。
明日は文化祭。
私は大学の舞台に立つ。
二曲弾く。
研究会ブースでキャンパスの音を聴く。
たくさんの普通の学生と普通の観客を見る。
猫目はまだ外にいる。
ニャーサはまだ強い。
私はまだ、それには勝てない。
けれど明日、私はそれと戦いに行くわけではない。
ただ、舞台に立つだけだ。
そのこと自体が、もう十分に重要だった。
海上プラットフォームの深部で、ニャーサはその夜最後の「天極純雷」を完成させた。
一筋の純白雷光が混沌モデルの核心へ刺さり、ごく短い一瞬だけ留まり、それから内部から細かな裂け目を爆ぜさせた。
模型は以前よりも、ずっと綺麗に崩壊した。
ニャーサは結果を見て、ようやく低く言った。
「初歩的な切り札としては使える」
代理人が慎重に尋ねた。
「黒弦に対するものですか?」
ニャーサは彼を一目見た。
「違う」
代理人は即座に頭を下げた。
ニャーサは説明しなかった。
黒弦にこの技を使う価値はない。
少なくとも今の黒弦に、その価値はない。
「天極純雷」は、混沌の封印が破れたときのためのものだ。
まだ本当に現れてはいないが、すでにそれに真剣な準備をさせている存在のためのもの。
もしソレンセンが永遠に出てこないなら、この技は永遠に使う必要がないかもしれない。
それが最善だ。
ニャーサは、無意味な正面衝突を好まない。
だが、もし扉が本当に開いたなら、少なくとも一筋の純電雷光を、混沌へ突き刺す手段を持っていたい。
それは爪を収めた。
訓練場の灯りが消える。
闇の中で、猫の目が一瞬だけ光った。
「明日は、彼女に遊ばせておこう」
ニャーサは軽く言った。
「普通の舞台は、彼女にとって大事だ」
「大事なものが増えれば増えるほど、扉は開きにくくなる」
「同時に、それは彼女を追い詰める道具にもなりやすい」
それは少し笑った。
「人間は本当に矛盾している」
そうして、訓練場をあとにした。
その背後では、焼け焦げた混沌モデルの破片が、まだ煙を上げていた。
純電の白光はもう消えていた。
けれどその技能は、すでに猫に刻まれていた。