俺の頭の中に敗北した暗黒の王が住み着いているが、俺はただギターを弾きたいだけだ 作:arctichare
第85章 官僚たちの沈黙、そして代理人は恐怖も仕事の習慣になると気づいた
代理人は最近、夢を見ることがますます少なくなっていた。
よく眠れているわけではない。
むしろ、その逆だ。
眠りは浅い。
よく午前三時に目を覚まし、それから長いあいだ天井を見つめている。
けれど、夢はあまり見ない。
それは、もしかすると良いことなのかもしれないと彼は思っていた。
もし夢の中にニャーサが現れたら、目覚めたあと、いつものように会議室へ入り、頭を下げて報告できるかどうかわからないからだ。
「地方高校外部活動支援案は整理済みです」
「倉庫拡張は次の段階に入りました」
「世俗財団の抵抗資金流は迂回しました」
「京都内層は依然として閉鎖されています」
「東京核心は一時保留です」
「白川一音周辺への直接接触はありません」
それらの言葉を、彼はますます滑らかに言えるようになっていた。
滑らかすぎて、まるで天気予報を読み上げているようだった。
けれど、その一言一言の背後にあるのは、普通の商業業務ではない。
倉庫拡張とは、地方物資が猫目の調度へ入るということだ。
高校外部活動支援とは、若者たちの未来の経路が猫目によって先に敷かれるということだ。
世俗財団の抵抗失敗とは、日本旧資本圏が、猫目は圧制できない存在だと認め始めているということだ。
京都内層閉鎖とは、伝統的な退魔核心が長期防衛に入ったということだ。
東京核心一時保留とは、ニャーサがまだそこを食べるつもりではないということだ。
白川一音周辺に接触しないとは、猫がまだ待っているということだ。
代理人は、だんだん理解していた。
自分は会社を経営しているのではない。
彼は、非人の存在のために、日本の経済、暗面、文化、そして若者たちの未来を、実行可能な表へ翻訳しているのだ。
そのことは彼を怖がらせた。
けれど、もっと恐ろしいのは、彼がすでにそれに慣れてしまったことだった。
慣れとは、とても危険なものだ。
初めて猫目術師が侵入者を制圧するのを見たとき、彼の手は震えた。
初めてニャーサが家族の高手を何気なく撃破するのを見たとき、彼は一晩中眠れなかった。
初めて「天極純雷」の純白の雷光が混沌モデルを貫くのを見たとき、彼は自分が世界の裂け目のそばに立っているように感じた。
けれど今、彼はコーヒーを飲みながら戦後損害報告を読める。
基金ルートを確認しながら、部下がある地方鎮守勢力の調度権喪失を報告するのを聞ける。
文化支援プロジェクトの書類に署名しながら、そのプロジェクトが将来、どこかの高校の軽音部を猫目のシステムへ入れるのだと知っていられる。
彼は、ニャーサから受けている待遇に不満はなかった。
猫目勢力の中で、彼は現在、ニャーサが最も頻繁に使う代理人だった。
ニャーサは、彼がどれほど物質的なものを享受しているかを気にしたことがないようだった。
円、外貨、貴金属、不動産。
彼はそれらを、自分のものだと思い込んで大量に保有していた。
今の実質的な保有資産は、ニャーサの下で働く前に夢の中で想像できた最大の金額を、はるかに超えていた。
恐怖はまだある。
けれど、それはもう仕事を中断しない。
仕事の一部になった。
朝、ネクタイがうまく結べていなければ結び直すように。
猫目のある資金線に露出リスクが見えれば、もう一層迂回させるように。
ニャーサに「私が怖い?」と聞かれれば、頭を下げて「畏敬しております」と答えるように。
それらはすべて手順になった。
代理人はときどき、ふと気づく。
これこそが、最も危険なところなのだと。
彼は、怖くなくなったわけではない。
恐怖を抱えたまま仕え続けることを覚えたのだ。
そして、恐怖が習慣になってしまえば、人はもう逃げづらくなる。
日本の官僚体系が初めて猫目に本当の意味で注意を向けたのは、退魔界の報告が原因ではなかった。
地方予算の異常が原因だった。
いくつかの県の文化安全補助プロジェクトに、突然、同じ関連企業の名前が現れた。
いくつかの地方高校外部活動支援計画では、背後の基金ルートが似通っていた。
複数地域の小型文化施設の保険案は、猫目関連会社が提供し始めていた。
地方物流倉庫、夜間安全巡回、青年文化活動、商店街復興補助。
本来は別々の部署に属する事項が、ぼんやりと同じ資本ネットワークへ向かっていた。
一人の若い総務省官僚が、最初にこれらの線を同じ表に並べた。
彼は退魔界の人間ではない。
術師も知らない。
ただ、何かがおかしいと感じただけだった。
一つの資本グループが、なぜ同時に地方文化、物流、保険、校外活動、公共安全、商店街振興、倉庫ネットワークへ現れるのか。
これは普通の拡張ではない。
地方社会の基礎機能を接管しているように見える。
彼は資料を上司へ渡した。
上司はそれを読み終えると、長いあいだ沈黙した。
そして言った。
「この会社、最近は多くの地方自治体が褒めている」
若い官僚は言った。
「はい。実際、多くの問題を解決しています」
「なら、君はどこに問題があると思う?」
若い官僚は少し止まった。
「問題を解決すると同時に、地方から他の選択肢を奪っています」
上司はすぐには答えなかった。
その言葉は、あまりにも敏感だった。
地方に他の選択肢がない。
それは通常、違法の問題ではない。
治理の問題だ。
違法なら調査できる。
だが、治理依存は処理が難しい。
なぜなら、お金も人も資源も不足している地方政府に対して、街灯を修理し、保険を作り、活動を開き、コストを下げる企業を拒否しろと、直接命じることはできないからだ。
まして、その企業の表向きの手続きが整っていて、プロジェクトが有効で、世論も良好であるならなおさらだ。
官僚たちは、馴染みがあるようでいて見慣れない不快感を覚え始めた。
馴染みがあるのは、大資本が地方に影響を及ぼすこと自体は珍しくないからだ。
見慣れないのは、猫目があまりにも速く、正確で、静かすぎることだった。
それは伝統的な財団のように、政治献金と公開された関係網を通じてゆっくり布石を打つのではない。
外資のように、はっきりした産業目的を持っているわけでもない。
それは地方が最も欠いているところから入ってくる。
安全。
保険。
活動。
物資。
青年支援。
倉庫。
小企業債務。
これらの点は目立たない。
けれど、一つ一つが地方を縛ることができる。
内閣府のある省庁横断の非公開会議で、猫目は初めて「地方社会基礎機能依存リスク」として挙げられた。
その名称は、いかにも官僚的だった。
長い。
まったく怖そうではない。
けれど会議室の人間は皆、問題が大きいことを知っていた。
経済産業省の人間が言った。
「猫目資本のキャッシュフローの出所は不透明ですが、現時点で明確な違法証拠はありません」
金融庁の人間が言った。
「基金構造は複雑ですが、大部分は現行規定に適合しています。動くには、かなり具体的な違反点が必要です」
文部科学省の人間が最も心配していたのは、高校と大学の外部活動だった。
「猫目関連基金は、同窓会、地方活動センター、青年文化プロジェクトを通じて学生へ接触しています。学校へ直接入っているわけではありませんが、すでに学校周辺の生態へ入り込んでいます」
総務省の人間は地方自治体を心配していた。
「多くの地方自治体は猫目を協力相手だと見ています。中央が突然切断を求めれば、地方から反発が起こります」
警察系統の人間の顔色が最も悪かった。
彼らは、いくつかの「民間警備員衝突」に関する曖昧な報告を受け取っていた。
調査に向かった人間が見つけたのは、猫目警備隊の手続きが完備しており、現場証拠も清潔だという事実だった。
むしろ猫目倉庫を襲撃した地下勢力、民間警備会社、不明者たちのほうに、明確な違法行為があった。
法律の角度から見ると、猫目はしばしば被害者側だった。
そのため、彼らは非常に手を出しづらかった。
最後に、ある老官僚が言った。
「我々が向き合っているのは、違法会社ではない」
「合法すぎるからこそ、より処理しづらい会社だ」
その言葉に、会議室は静まり返った。
日本の官僚たちが猫目に抱く感覚は、退魔界のそれとは違っていた。
退魔界は、猫目に武力があることを知っている。
猫目の背後に未知の核心があることを知っている。
黒弦が敗れたことを知っている。
京都外輪が失われたことを知っている。
地方大勢力が覆滅したことを知っている。
だから退魔界が猫目に抱く感覚は、恐怖、屈辱、警戒、そして無力感だった。
官僚たちも退魔界の存在自体は知っていたが、その秘匿された事情についてはほとんど知らなかった。
彼らの猫目への感覚は、もっと複雑だった。
第一層は、嫌悪。
彼らは、猫目が従来の経路を迂回し、地方自治体、文化機関、小企業、学校外部活動を直接自分のネットワークへ縛り込んでいることを嫌悪していた。
第二層は、嫉妬。
なぜなら猫目は、行政体系が長いあいだできなかった多くのことを成し遂げていたからだ。
迅速な資金供給。
迅速な配送。
迅速な資源統合。
迅速に地方プロジェクトへ保険、警備、物資、宣伝を組み合わせること。
地方政府が猫目を好むのは、猫目が包装に長けているからだけではない。
猫目は本当に速いのだ。
官僚体系は、自分たちが遅いことを知っている。
予算が遅い。
審査が遅い。
省庁横断の調整が遅い。
地方からのフィードバックが遅い。
猫目は三日で案を出し、一週間で落とし込み、一か月でネットワークを形成する。
それは彼らを不快にさせた。
第三層は、恐怖。
退魔界のように、怪物と向き合う恐怖ではない。
治理が制御を失う恐怖だった。
もし地方文化活動、安全巡回、物資倉庫、青年支援、小企業債務、保険補助が少しずつ猫目に依存していくなら、政府には何が残るのか。
政策はある。
法律もある。
補助名目もある。
けれど、実行層は猫目に食われてしまう。
国家が地方システムを通じて何かをしようとしたとき、実際に物資、人員、情報を動かせるのは、政府ではなく猫目だと気づくことになる。
これこそが、官僚が最も恐れることだった。
権力が転覆されたわけではない。
だが、実行力が外部委託されている。
強硬を主張する官僚もいた。
「税務調査をする」
「基金を調べる」
「外資を調べる」
「独占禁止を調べる」
「個人情報保護を調べる」
「地方政府の調達手続きを調べる」
それらはすべて調べられる。
実際、調査も始まった。
けれど猫目は、あまりにもよく準備していた。
税務は清潔。
基金構造は複雑だが合法。
外資ルートは敏感点を迂回している。
独占禁止は定義が難しい。猫目が入り込んでいるのは、大量の細かい市場だからだ。
個人情報保護の面では、猫目の契約は美しく書かれており、ユーザー授权流程も整っている。
地方政府の調達も、小額プロジェクト、公益協力、試験計画、民間基金連携が多い。
調べることはできる。
だが核心は動かせない。
まるで、小さなナイフで全国を覆う濡れた網を切ろうとするようだった。
一か所を切っても、別の場所がまた貼りついてくる。
協力を主張する官僚もいた。
「猫目を外で拡張させるより、監管フレームに入れたほうがいい」
「国家プロジェクトに参加させる」
「可制御の協力相手にする」
この派の意見は、現実的に聞こえた。
同時に、とても危険だった。
なぜなら猫目が国家プロジェクトに入れば、それはもう地方支配者であるだけではなくなる。
制度に承認された基礎インフラ提供者になる。
反対派は言った。
「それは鍵を渡すのと同じだ」
協力派は問い返した。
「渡さなければ、今あれは鍵を持っていないのですか?」
会議室は再び沈黙した。
その言葉もまた、本当だったからだ。
猫目はすでに、多くの鍵を持っている。
ただ、まだ正式に承認されていないだけだ。
代理人が初めて官僚体系との非公式接触に参加したとき、彼はとても微妙な懐かしさを覚えた。
相手は普通のスーツを着ていた。
表情は抑制されている。
言葉遣いは慎重だ。
「制御」とは言わない。
「依存度」と言う。
「支配」とは言わない。
「基礎機能の集中」と言う。
「脅威」とは言わない。
「システム性リスク」と言う。
「猫目に触れてはならない」とは言わない。
「透明化フレームが必要」と言う。
代理人は、こういう言葉が得意だった。
彼はもともと、この世界の人間だ。
ニャーサの意図を、官僚が受け入れられる言葉へ翻訳する方法を知っていた。
「地方基礎機能の集中化に関する各部門の懸念は理解しております」
「猫目はコンプライアンス枠組みの中で、より透明なデータインターフェースを提供する用意があります」
「青年文化支援プロジェクトは、第三者評価を受け入れることが可能です」
「地方倉庫ネットワークは災害協力体系へ組み込めます」
「保険事業については、監管要求に従い必要書類を提出いたします」
一つ一つの言葉は美しかった。
美しすぎて、代理人自身でさえ吐き気がした。
彼は知っているからだ。
いわゆるデータインターフェースは、猫目が選別したものになる。
第三者評価機関は、猫目資金の影響を受け得る。
災害協力体系は、猫目倉庫をさらに合法化する。
保険監管書類は、何も見えないほど清潔になる。
彼は支配を協力と言い換えた。
拡張を補完と言い換えた。
依存を効率と言い換えた。
猫目の目をデータ透明と言い換えた。
それが彼の仕事だった。
彼は非常にうまくやった。
官僚たちも、彼が包装していることを知っていた。
双方とも知っていた。
それでも、会議は進んだ。
現実とはそういうものだからだ。
猫目が嫌いでも、猫目と話さなければならない。
猫目を憎んでいても、災害時に物資を提供できるか猫目へ尋ねなければならない。
猫目が怖くても、猫目がすでに地方の多くの倉庫を支配していることを認めなければならない。
代理人が会議室を出たとき、心の中がふいに冷たくなった。
交渉が失敗したからではない。
むしろ、その逆だった。
交渉は成功した。
成功しすぎたことで、猫目がすでに官僚体系も話さざるを得ない階層へ入ったのだと証明していた。
数名の日本官僚が私的にニャーサの話をするとき、実際には「ニャーサ」という名を知らなかった。
彼らが知っているのは、猫目の背後に一人の「核心意思決定者」がいるということだけだ。
公に姿を見せたことはない。
けれど、猫目のすべての分支に高度な一致を保たせることができる者。
海外資本グループではないかと推測する者もいた。
退魔界の旧勢力ではないかと推測する者もいた。
人工知能補助意思決定システムではないかと推測する者もいた。
冗談のように言った者もいた。
「もしかすると、人間ですらないのかもしれませんね」
その言葉が出たあと、部屋では誰も笑わなかった。
なぜなら皆、その冗談が、口にしてはならない何かの真実に近すぎると、うっすら感じたからだ。
官僚たちにとって、この核心意思決定者への不安は、猫目資本そのものへの不安よりも大きかった。
猫目資本は調べられる。
猫目基金は審査できる。
猫目倉庫は監管できる。
猫目保険には報告を求められる。
けれど、その核心意思決定者には形がない。
公開職位がない。
取締役身分がない。
質疑できる会議録がない。
インタビューがない。
国会答弁がない。
会社説明会がない。
それは、見えない手のようにすべての合法構造を通り抜け、極めて速く、正確で、長期的な判断を下す。
官僚が最も嫌うのは、こういうものだった。
官僚体系が問題を処理するには、対象が必要だ。
名称が必要だ。
印章が必要だ。
責任者が必要だ。
法律上の身分が必要だ。
けれどニャーサは、それを与えていない。
猫目には責任者がいる。
代理人がいる。
取締役がいる。
弁護士がいる。
基金管理人がいる。
プロジェクト責任者がいる。
だが、それらはすべて外殻のようなものだった。
本当の意志はそこにない。
それは官僚たちに、制度的な恐怖を覚えさせた。
殺されることが怖いのではない。
問責できる対象が見つからないことが怖いのだ。
ある内閣官僚は私的なノートにこう書いた。
猫目資本の最も危険な点は、それが違法であることではない。合法の範囲内で、地方の依存構造を変えられることだ。
それは国家権力を奪う必要がない。
国家権力が借りざるを得ない実行システムになればいい。
そのとき、我々はなお政策を発するだろう。
だが、政策の手足は猫目の身体に生えることになる。
この官僚は、その文章を正式報告には書かなかった。
重すぎる。
そして証明しづらすぎる。
正式報告に書けるのは、せいぜいこうだった。
特定資本グループによる地方文化安全、青年活動支援、特殊物流および小企業金融サービスへの総合的影響に警戒が必要。
これが官僚言語だった。
恐怖を平らにする。
危機を提言に書き換える。
支配を影響と書く。
猫を特定資本グループと書く。
代理人がのちにその正式報告の概要を読んだとき、少し笑った。
嬉しかったわけではない。
疲れていたのだ。
彼は報告をニャーサへ持っていった。
ニャーサは一目通した。
「少し見えてきたようだね」
代理人は言った。
「官僚体系は監管フレームを検討しています」
「検討させておけ」
「もし、より高い透明度を求められた場合は……」
「一部を与える」
「地方プロジェクトの一時停止を求めてきたら?」
「地方に反対させる」
「猫目を国家災害協力体系へ組み込もうとした場合は?」
ニャーサは笑った。
「受け入れる」
代理人は顔を上げた。
「受け入れる、のですか?」
「なぜ受け入れない?」
ニャーサの声は軽かった。
「国家に承認された倉庫は、承認されていない倉庫よりも撤去しにくい」
代理人の心が冷えた。
そうだ。
猫目は、少し監管されることを恐れていない。
監管が承認を意味する限り。
承認が、猫目を制度の一部にする限り。
ニャーサは続けた。
「官僚はフレームが好きだ」
「フレームを与えればいい」
「彼らは、フレームが猫を閉じ込められると思う」
「でも猫は、フレームを新しい扉として使うだけだ」
代理人は頭を下げて記録した。
その言葉を正式書類には書かなかった。
けれど、深く記憶した。
日本官僚がニャーサへ抱く感覚は、最終的に三種類に分かれた。
第一類は、それを極端に危険だが監管可能な資本グループと見る者たち。
この人々は、規則を十分細かくし、情報開示を十分多くすれば、猫目は制度によって飼い慣らせると信じている。
第二類は、それをこれ以上拡張させてはならない影の国家と見る者たち。
この人々は、短期的に地方が痛みを受けるとしても、地方実行体系における猫目の役割を切断すべきだと主張する。
第三類は最も少なく、そして最も沈黙していた。
彼らは、猫目の背後にあるものが、通常の行政道具で処理できる範囲をすでに超えていると感じている。
彼らは「怪物」とは言わない。
「非人」とは言わない。
「ニャーサ」とは言わない。
けれど心の中では、これは普通の資本グループではないとわかっている。
この類の人々が、最も恐れていた。
なぜなら、自分たちが持つ道具では足りないと知っているからだ。
法律は会社を縛れる。
予算は地方を支援できる。
監管は透明度を高められる。
だが、もし会社の背後に、常識に属さない存在が立っていたら?
もしその存在が資本を理解し、武力を持ち、忍耐強く、十年後の地方高校まで見ているなら?
それは、どの部門が管轄すべきなのか。
答えはない。
だから、彼らは沈黙する。
代理人は、こうした官僚たちをますます理解できるようになっていた。
彼自身にも答えがないからだ。
彼は毎日、ニャーサのそばで働いている。
どんな官僚よりも真相に近い。
それでもなお、ニャーサが最終的に何を望んでいるのかはわからない。
ただ日本を支配したいだけなのか?
そうとは限らない。
ただ退魔界を圧倒したいだけなのか?
それはもう、ほとんど達成している。
ただ白川一音を観察したいだけなのか?
小さすぎる。
ただ門の向こうの混沌に備えているだけなのか?
それは重要だが、それだけでもないように見える。
ニャーサは、多くのことを同時にしているようだった。
一つ一つは正確。
一つ一つは現実的。
一つ一つは説明できる。
けれど、すべてを合わせると、まだ描き終わっていない一枚の絵のようだった。
代理人はときどき思う。
ニャーサには、もしかすると人間が理解できるような最終目的など必要ないのかもしれない。
猫は温かい場所を占領する。
毛糸で遊ぶ。
扉の隙間を観察する。
鼠を捕まえる。
退路を残す。
縄張りを食べる。
それは猫にとって矛盾しない。
すべての行動を一つの壮大な目的へ整理したがるのは、人間だけだ。
この考えは、代理人をさらに無力にさせた。
敵に単一の目的がないのなら、交渉で満たすことがより難しくなるからだ。
猫にこう尋ねることはできない。
「あなたはいったい何が欲しいのですか?」
それはあなたのソファが欲しいのかもしれない。
あなたの魚が欲しいのかもしれない。
あるいは、あなたがそれを見つけられずに苛立つ様子を見たいだけなのかもしれない。
ある深夜、代理人は再びあのオフラインのコンピューターを開いた。
彼は私的記録へ追記した。
官僚体系が猫目に接触し始めた。
彼らは猫目を嫌悪している。
同時に、猫目を必要としている。
彼らは猫目を監管したい。
だが、監管そのものが承認になることも恐れている。
彼らはニャーサ様の名前を知らない。
彼らは「核心意思決定者」と呼んでいる。
この呼び方は滑稽であり、同時に正確でもある。
滑稽なのは、彼らがそれを何らかの取締役会の核心人物だと思っていること。
正確なのは、ニャーサ様が確かにすべての意思決定の核心であることだ。
彼は少し止まり、さらに書いた。
官僚たちが恐れているのは戦敗ではない。
彼らが恐れているのは、制度がなお動いているにもかかわらず、その制度を実行する手足がすでに猫目のものになっていると気づくことだ。
私が恐れているのも、おそらく同じことだ。
私の身体はまだ人間の仕事をしている。
だが、私の手足はもう猫目のものだ。
その一文を書き終えると、彼は長いあいだ動かなかった。
画面の光が彼の顔を照らしている。
彼は初めて、自分があの地方政府たちに似ていると感じた。
最初は、猫目の助けを受け入れた。
その後、猫目の効率に依存した。
最後には、猫目がなければ自分はもう動けないのだと気づいた。
翌日、代理人はニャーサへ官僚との意思疎通の進展を報告した。
ニャーサは聞き終えると、ただ言った。
「いいね」
「彼らには報告書を書かせ続けろ」
「報告書は、彼らに自分たちが前進していると思わせる」
代理人は頭を下げた。
「中央の強制介入を懸念する必要はありますか?」
「必要だ」
ニャーサは言った。
「ただし、今ではない」
「今、彼らはまだ、猫目がリスクなのか、資源なのか、それとも取り込むべき協力相手なのかを議論している」
「議論しているあいだ、地方は依存し続ける」
「依存が深くなればなるほど、強制介入のコストは高くなる」
代理人はうなずいた。
「承知しました」
ニャーサは窓の外を見た。
東京の空は曇っていた。
遠くの高層ビルは、灰色の縦線のように見える。
「官僚は家族とは違う」
それは軽く言った。
「家族は面子のために攻めてくる」
「官僚は手続きによって自分を閉じ込める」
「だから、手続きを与えればいい」
代理人は、書類を握る手をほんの少し強張らせた。
彼はふいに理解した。
ニャーサはもう、官僚体系さえも利用できる地形として見ているのだ。
敵ではない。
地形だ。
川、山坡、軒先、扉の隙間のように。
猫は地形に応じて歩く。
地形に怒らない。
地形を軽視もしない。
ただ利用する。
その日の夕方、代理人は猫目本部を出たとき、普通の高校の前を通りかかった。
学生たちはちょうど下校中だった。
数人の男子が部活の試合について話している。
二人の女子が校門前でスマホを見ている。
遠くにはギターケースを背負った人がいる。
代理人は足を止め、数秒見つめた。
彼はふいに、ニャーサが言った言葉を思い出した。
「地方の未来は、ここから流れ出す」
以前にその言葉を聞いたとき、彼はただ戦略判断だと思っていた。
今改めて聞くと、心に残るのは冷たさだけだった。
この学生たちは、猫目を知らない。
官僚会議を知らない。
退魔界の覆滅を知らない。
白川一音が敗れたことを知らない。
ニャーサが純雷電の頂級威力技を準備していることを知らない。
彼らの未来が、猫目の奨学金、実習、文化支援、就職システムへ入っていく可能性があることも知らない。
彼らはただ放課後を過ごしている。
話している。
笑っている。
駅へ向かっている。
代理人は彼らを見ながら、初めて、ごくかすかな衝動を覚えた。
何かを残すべきではないか。
誰かに伝えるべきではないか。
あの私的記録を渡すべきではないか。
その思いは一秒だけ現れた。
そして消えた。
自分がそんなことをしないと、彼は知っていたからだ。
恐怖はすでに日常になった。
忠誠は仕事になった。
仕事は檻になった。
彼は公文書鞄を整え、前へ歩き続けた。
スマホが震えた。
ニャーサのオフィスから届いた新しい指示だった。
中央監管協議用資料を準備すること。
テーマ:地方文化安全協力透明化フレーム。
代理人はその一行を見て、軽く息を吸った。
透明化フレーム。
なんて美しい言葉だろう。
彼は知っていた。
このフレームは新しい扉になる。
そして猫は、すでに扉の向こうで待っている。