俺の頭の中に敗北した暗黒の王が住み着いているが、俺はただギターを弾きたいだけだ   作:arctichare

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第94章 勧降書、そして東京は猫の部屋になることを拒んだ

第94章 勧降書、そして東京は猫の部屋になることを拒んだ

 

ニャーサからの手紙は、とても普通の午前に届いた。

 

その日、私はA大学の図書館で、卒業研究の方向性に関する資料を整理していた。

 

大学三年後期になると、未来の問題はますます具体的になる。

 

卒業後、何をするのか。

 

大学院へ進むのか。

 

文化機関に入るのか。

 

青少年音楽活動に関わり続けるのか。

 

東京を離れるのか。

 

そうした問いが、すべて私のノートの中に圧し掛かっていた。

 

私はもともと、こう書いていた。

 

地方文化空間の自主性は、代替可能な資源の上に成り立つ必要がある。

 

そこまで書いたところで、スマホが震えた。

 

眼鏡の女性からだった。

 

至急、特調室へ来てください。猫目勢力が東京防線に正式文書を送ってきました。

 

私は「正式文書」という四文字を見つめ、指を止めた。

 

正式文書。

 

襲撃ではない。

 

戦闘ではない。

 

倉庫異常でもない。

 

猫目術師の行動でもない。

 

一通の手紙だ。

 

黒海の中で、ソレンセンが冷笑した。

 

「猫がついに扉を叩いたな」

 

私はパソコンを閉じ、荷物を片づけた。

 

「何だと思う?」

 

「勧降だ」

 

それはすぐに答えた。

 

心が沈んだ。

 

のちに、それは正しかったとわかった。

 

あれは勧降書だった。

 

あるいは、猫目自身の言い方では、

 

東京都市安全および文化安定化共同フレームワーク提案書。

 

名前はとても穏やかだった。

 

穏やかすぎて、吐き気がするほどだった。

 

特調室の会議室の空気は、想像以上に重かった。

 

久我山統括官がいる。

 

眼鏡の女性がいる。

 

東京官僚代表がいる。

 

世俗財団残余の代表がいる。

 

天城、御影、無門術師、互助会代表も全員来ていた。

 

京都方面は遠隔接続だった。

 

七条は画面の向こうに座っており、表情は凍った水のように冷たかった。

 

遠坂綾乃と北見遥香もいた。

 

彼女たちは核心決策者ではない。

 

だが、地方陥落の証人だった。

 

今回の会議では、特調室がわざわざ互助会代表を列席させていた。

 

猫目の勧降は、東京上層部だけに向けられたものではないからだ。

 

東京へ逃げてきたすべての敗者に向けられたものでもある。

 

彼らは聞かなければならない。

 

そして、決めなければならない。

 

眼鏡の女性が、文書をスクリーンへ投影した。

 

タイトルの下には猫目ロゴがあった。

 

淡い色の猫の目。

 

その図案を見た瞬間、胃のあたりがわずかに強張った。

 

文書の内容は長かった。

 

けれど核心は明確だった。

 

猫目は、東京核心がなお特殊な地位を有していることを認める。

 

猫目は、東京の現有防線をただちに解除することを求めない。

 

猫目は、特調室、中央官僚、世俗財団残余、大勢力残余と共同で「東京都市安全および文化安定化共同フレームワーク」を構築する用意がある。

 

猫目は、地方倉庫、保険、特殊医療、文化施設維持、青年活動支援、災害応急物資を提供する用意がある。

 

東京側は、東京外の地方区域における猫目の実質管理地位を承認する必要がある。

 

東京側は、地方反猫目残余行動への支援を停止する必要がある。

 

東京側は、猫目が一部の東京辺縁文化施設、安全巡回、物流システムへ入ることを許可する必要がある。

 

東京側は、「黒弦非対抗使用原則」を構築する必要がある。

 

最後の一条を見たとき、指先が一気に冷えた。

 

黒弦非対抗使用原則。

 

意味は明白だった。

 

それは私に投降を求めているわけではない。

 

力を差し出せと言っているわけでもない。

 

ただ、東京に約束させようとしているのだ。

 

私を猫目核心への対抗に用いてはならない。

 

黒弦を能動的に猫目地方支配システムへ切り込ませてはならない。

 

猫目がすでに構築した地方ネットワークを、私によって破壊してはならない。

 

これは、直接私を捕まえることではない。

 

私を盤上から隔離することだ。

 

ニャーサは、今の私がそれに勝てないことをよく知っている。

 

それでもなお、私を一枚の協議の中へ閉じ込めようとしている。

 

私がそれに勝てるほど強いからではない。

 

私の身体の中に封じられている存在を、それが気にしているからだ。

 

それはソレンセンの名を知らない。

 

けれど、扉の向こうに何かがいると知っている。

 

未知の混沌系存在。

 

それは、この点を推測している。

 

それどころか、多くの人よりも真相に近づいている。

 

私は、ソレンセンの本来の世界における属性関係を知らない。

 

暗影属性の戦闘特性も知らない。

 

ニャーサが雷電属性と暗影属性の力を操っていることも知らない。

 

それが準備した純雷電の頂級威力技能が、万が一ソレンセンが破封した場合のためのものだということも知らない。

 

私は、「混沌系」がそれの本来の世界でどの層級の規則を意味するのかすら知らない。

 

私が知っているのは、いくつかのごく単純なことだけだ。

 

ニャーサは強い。

 

体術だけで私を打ち負かすほど強い。

 

猫目勢力は巨大だ。

 

東京と京都以外の大部分の地方をすでに支配しているほど巨大だ。

 

ニャーサには外来技術があり、地球を離れて挽塵星へ行ける。

 

猫目には倉庫、保険、資金、術師、地方政府との協力、青年文化支援、世俗資本構造がある。

 

もしそれが本当に後果を一切顧みず東京を攻めるなら、東京は必ず巨大な代価を払う。

 

けれど、それはそうしていない。

 

東京を直接攻め落としていない。

 

京都内層を強引に引き裂いてもいない。

 

それほどの勢力と戦力を持ちながら、それはなお勧降、浸透、共同安定化、辺縁進入、協議による制限を選んでいる。

 

なぜか。

 

その文書を見ながら、答えはますますはっきりしていった。

 

それは私の身体の中にある封印を気にしている。

 

より正確に言えば、封印の中のソレンセンを気にしている。

 

それはその名を知らない。

 

ソレンセンが誰なのかも知らない。

 

けれどそれは、私の身にあるあの黒弦が普通の能力ではないと知っている。

 

その力の背後に扉があると知っている。

 

扉の向こうには未知の混沌が封印されていると知っている。

 

それは、東京を追い詰め、私が扉を開けざるを得なくなるところまで持っていきたくない。

 

私を追い込み、ソレンセンが本当に手を伸ばしてくるところまで行きたくない。

 

だから遅い。

 

だから話し合う。

 

だから勧降する。

 

仁慈ではない。

 

リスク管理だ。

 

私は会議室に座っていて、突然、とても寒く感じた。

 

東京がまだ陥落していないのは、私たちが十分強いからではない。

 

私が十分強いからでもない。

 

ニャーサが、扉の向こうに何があるのかを賭けたくないからだ。

 

敵に慎重に保存されているという感覚は、ひどく気持ち悪かった。

 

会議室では、東京官僚代表が最初に口を開いた。

 

「猫目が提示している条件は、表面上は協力フレームワークです」

 

彼の声は乾いていた。

 

「実質的には、我々に地方支配の既成事実を認めさせ、東京辺縁への進入を許可させようとするものです」

 

天城美咲が冷たく言った。

 

「こちらに主動的反撃を放棄させるものでもある」

 

御影冬子は最後の一条を見た。

 

「さらに、白川さんを猫目への威慑として用いないよう求めています」

 

御影秋人が軽く言った。

 

「威慑に用いない、だけではありません」

 

「それは黒弦を東京内部の安全装置にはしても、反猫目の道具にはしたくないのです」

 

その言葉は正確だった。

 

猫目は私が存在し続けることを許す。

 

むしろ、東京を守ることさえ許すだろう。

 

私が東京の外の人を守らない限り。

 

私が猫目の線を切らない限り。

 

私がそれの支配ネットワークに触れない限り。

 

これこそが、最も恐ろしい誘惑だった。

 

東京は一時的に安全になれる。

 

京都も一時的に安全になれる。

 

地方はすでに猫目のものになっている。

 

互助会は地方残余への支援を停止する。

 

黒弦はもう猫目に対抗しない。

 

皆が署名する。

 

戦争は止まる。

 

日常は戻る。

 

少なくとも、表面上は戻る。

 

遠坂綾乃が、ふいに少し笑った。

 

その笑いには温度がなかった。

 

「これは、あれが遠坂を食べる前に見せてきた契約と同じです」

 

全員が彼女を見た。

 

彼女は言った。

 

「同じ文書ではありません」

 

「でも、匂いは同じです」

 

「まず現実を認める」

 

「次に安定を交換する」

 

「さらに、それを辺縁へ入れる」

 

「最後に気づくんです。辺縁こそが、新しい核心になっていたと」

 

北見遥香が低く言った。

 

「北海道も同じでした」

 

「冬季安全計画は、最初は辺縁にすぎませんでした」

 

「その後、道路、学校、倉庫、巡回、保険が、すべてつながっていきました」

 

画面の中で、七条が口を開いた。

 

「京都外輪も同じだ」

 

「署名してはならない」

 

三つの地方陥落の証人が、ほぼ同時に同じ結論を出した。

 

署名してはならない。

 

官僚代表は眉間を揉んだ。

 

「政治的現実から見ると、拒否には後果があります」

 

久我山が言った。

 

「署名しても後果はある」

 

「拒否すれば、猫目は東京辺縁への浸透を加速させる可能性がある」

 

「署名すれば、それは合法的に東京辺縁へ入る」

 

「拒否すれば、地方残余への支援継続はさらに高リスクになる」

 

「署名すれば、地方残余を我々が見捨てたのと同じになる」

 

会議室は再び静かになった。

 

これこそが、猫目が最も得意とする局面だった。

 

どの選択にも代価がある。

 

きれいな選択肢はない。

 

爽快な答えもない。

 

そのとき、全員が私を見た。

 

私は、なぜ彼らが私を見るのか知っている。

 

文書に直接、黒弦が言及されているからだ。

 

そして、東京がまだ降っていないことに、私が関わっているからだ。

 

あるいは、私の身体の中にある扉が関わっているからだ。

 

私は机の表面を見下ろしたまま、すぐには話さなかった。

 

ソレンセンが黒海の中で冷笑した。

 

「また、お前の答えを聞きたがっている」

 

「うん」

 

「何を言うつもりだ?」

 

「わからない」

 

「なら、わからないと言え」

 

私は顔を上げた。

 

会議室の中では、なお全員が私を見ていた。

 

私はゆっくりと言った。

 

「私は、どうやって猫目を倒せばいいのかわかりません」

 

その一言が出ると、多くの人の表情が変わった。

 

私は続けた。

 

「東京を必ず安全にする方法も、わかりません」

 

「でも、この文書には署名してはいけないとわかります」

 

「なぜですか?」

 

官僚代表が尋ねた。

 

私はスクリーン上の猫目ロゴを見た。

 

「それは、地方を放棄することを安定と書いているからです」

 

「抵抗停止を協力と書いているからです」

 

「猫目が東京辺縁へ入ることをサービスと書いているからです」

 

「黒弦を制限することを非対抗原則と書いているからです」

 

「署名すれば、東京は一時的に楽になるかもしれません」

 

「でも、地方と同じように、まず辺縁から猫目の部屋になり始めます」

 

私は一度、言葉を止めた。

 

「猫目は、一度の攻城で勝つのではありません」

 

「それは、一度また一度の合理的進入で勝つのです」

 

「この文書こそが、合理的進入の扉です」

 

天城怜司がうなずいた。

 

「白川さんの言う通りです」

 

御影冬子が言った。

 

「御影は署名に同意しません」

 

画面の中で、七条が冷たく言った。

 

「京都も拒否する」

 

遠坂綾乃は官僚代表を見た。

 

「もし東京が署名すれば、あなた方は地方から逃げてきた全員に、彼らの故郷は正式に見捨てられたのだと告げることになります」

 

北見遥香が低く言った。

 

「そうなったら、私たちが東京へ来た意味がなくなります」

 

この言葉は、どんな政治分析よりも重かった。

 

会議室の多くの人が、うつむいた。

 

互助会の人々は、なぜ東京へ逃げてきたのか。

 

生きるためだけではない。

 

猫目が支配する地方が、世界で唯一の答えではないと証明するためでもある。

 

もし東京が署名し、猫目の地方支配を承認し、残余支援を停止するなら、彼らは本当に歴史に捨てられた人々になってしまう。

 

久我山統括官が、最終的に言った。

 

「特調室の意見は、拒否だ」

 

官僚代表は、すぐには表態しなかった。

 

彼は他の官僚の遠隔席を見た。

 

誰かが小声でやり取りしている。

 

世俗財団残余も意見を交わしていた。

 

彼らは怖がっていた。

 

本当に怖がっていた。

 

猫目を拒否すれば、さらに大きな圧力を招くかもしれない。

 

猫目は反制するだろう。

 

東京外縁の供給を切る。

 

世論を作る。

 

辺縁機構に自分から協力を求めさせる。

 

「安定サービスを提供できる方案」を拒否した責任を、官僚体系に背負わせる。

 

けれど署名すれば、猫目を招き入れることになる。

 

やがて、官僚代表が顔を上げた。

 

「中央防線臨時調整組の意見です」

 

彼の声はゆっくりだった。

 

「猫目が提出した共同安定化フレームワークには同意しません」

 

「猫目による地方の永久管理地位を承認しません」

 

「黒弦非対抗使用原則は受け入れません」

 

「東京辺縁サービスシステムについては、引き続き非猫目審査を維持します」

 

「同時に、代替体系の建設を加速させる必要があります」

 

彼は私を見た。

 

「我々は拒否します」

 

私は、そっと息を吐いた。

 

問題が解決したからではない。

 

ただ、今回、東京が自分自身を差し出さなかったからだ。

 

拒否書は、とても抑制されて書かれた。

 

挑発はない。

 

侮辱もない。

 

宣戦でもない。

 

だが意味は明確だった。

 

東京は、猫目による地方の永久支配を承認しない。

 

東京は、猫目が核心および辺縁の基礎システムへ入ることを受け入れない。

 

東京は、地方残余への人道および情報支援を停止しない。

 

東京は、特調室特別協力者の行動原則を制限するいかなる外部条項も受け入れない。

 

最後の一文は、久我山が自ら修正したものだった。

 

彼は「黒弦」とは書かなかった。

 

私の名前も書かなかった。

 

彼が書いたのは、

 

東京防線内部の人員調度原則について、猫目側による制限を受け入れない。

 

とても官僚的だった。

 

でも、とても固かった。

 

文書が送られたあと、会議室では誰も歓声を上げなかった。

 

皆、拒否は始まりにすぎないと知っていたからだ。

 

猫目は応えるだろう。

 

ニャーサは応えるだろう。

 

東京と京都は、これからさらに苦しくなる。

 

それでも少なくとも、私たちは最初の勧降書の前で頭を下げなかった。

 

猫目本部で、代理人は東京の拒否書をニャーサへ差し出した。

 

ニャーサは読み終えても、怒らなかった。

 

それどころか、笑った。

 

「なかなかいい拒否だね」

 

代理人は頭を下げた。

 

「次段階の圧力を起動しますか?」

 

「急がない」

 

「彼らが拒否したのは、一部を理解したからだ」

 

「それは良いことだよ」

 

代理人は理解できなかった。

 

「我々にとっても、ですか?」

 

ニャーサは文書を机の上へ置いた。

 

「理解している者がいるからこそ、より面白い抵抗をするんだ」

 

それは、軽く尻尾を揺らした。

 

「それに、彼らはやはり本当の理由を口にしていない」

 

「本当の理由、ですか?」

 

ニャーサは遠くを見た。

 

「東京がまだ陥落していないのは、私があの扉を無理に開けたくないからだと、彼らは認められない」

 

代理人は、追って尋ねる勇気がなかった。

 

ニャーサも説明しなかった。

 

それはソレンセンの名を知らない。

 

けれど、白川一音の体内に未知の混沌が封じられていることは知っている。

 

その存在の完全な層級を知らない。

 

一度破封したらどうなるのかも知らない。

 

だが、黒弦残留、白川一音の冷化状態、混沌力量利用率の変化、封印境界反応から、それは十分に確認していた。

 

あれは、この世界が受け止められるものではない。

 

ニャーサは今の白川一音を恐れていない。

 

安全出力下の黒弦も恐れていない。

 

冷化状態で利用率がさらに高まった白川一音すら恐れていない。

 

それが気にしているのは未知だった。

 

未知の混沌。

 

未知の破封。

 

未知のソレンセン。

 

ただし、それはその名を知らない。

 

ニャーサは軽く言った。

 

「彼女は彼らに言えない」

 

「名前は座標になるからだ」

 

「彼女は、それをよくわかっている」

 

「だから、彼女はそれを戦略的境界だと誤認させることしかできない」

 

それは笑った。

 

「かわいそうに」

 

代理人は頭を下げたまま、何も言わなかった。

 

ニャーサは続けた。

 

「東京辺縁への浸透を続けろ」

 

「ただし、急かしすぎるな」

 

「拒否がコストになるようにしろ」

 

「そのコストを、ゆっくり積み上げろ」

 

「彼ら自身に議論させ続けろ」

 

「扉がしばらく開かないからといって、猫が扉の前で待つことをやめる必要はない」

 

東京が猫目を拒否したという知らせは、すぐに互助会へ広がった。

 

北見遥香は泣いた。

 

大声で泣いたわけではない。

 

ただ、長いあいだ目の縁を赤くしていた。

 

彼女は言った。

 

「少なくとも、東京は北海道がもう完全にあれのものになったとは認めなかった」

 

遠坂綾乃は横に立ち、低く言った。

 

「拒否したあとは、苦しくなります」

 

北見遥香はうなずいた。

 

「知っています」

 

「でも拒否しなければ、帰るのはもっと難しくなる」

 

その言葉に、多くの人が沈黙した。

 

帰る。

 

彼らはみな、短期的には帰れないとわかっている。

 

けれど、もし東京が猫目の地方支配を承認してしまったら、「帰る」ということは、困難から、許されない幻想へ変わってしまう。

 

だから拒否は重要だった。

 

たとえ紙面上の拒否であっても。

 

重要だった。

 

互助会は後に、特調室へ連名の手紙を送った。

 

内容は短かった。

 

東京防線が猫目による地方の永久支配を承認しなかったことに感謝します。

 

これから先がさらに困難になることは、私たちもわかっています。

 

私たちは代替システムの建設に参加する意思があります。

 

私たちを、ただ保護される者として扱わないでください。

 

私は、その手紙を長いあいだ見ていた。

 

敗者とは、ただ守られる必要のある人ではない。

 

彼らこそ、猫目支配メカニズムを最もよく知っている人たちでもある。

 

東京が本当に守りたいなら、彼らは参加しなければならない。

 

数日後、私はA大学へ戻って授業を受けた。

 

文化政策の授業で扱ったのは、「地方自治と外部資本」だった。

 

先生は外で何が起きたのか知らない。

 

けれど、題目があまりにも的確で、少し笑いたくなった。

 

そして、笑えなかった。

 

授業中、ある学生が言った。

 

外部資本は必ずしも悪ではない。

 

地方サービスを改善できるなら、受け入れるべきだ。

 

別の学生が、重要なのは監管だと言った。

 

地方が排外的になってはいけないと言う人もいた。

 

資金がなければ、地方文化空間はそもそも維持できないと言う人もいた。

 

私は彼らの議論を聞きながら、ふいに、その一言一言に道理があると感じた。

 

一言一言に道理があるからこそ、猫目は恐ろしい。

 

授業の終わりに、先生が尋ねた。

 

「では、ある外部支援が支配へ変わるかどうかは、どう判断すればよいのでしょうか?」

 

教室は静かになった。

 

私はノートを見下ろした。

 

そして書いた。

 

助けを受ける側が、拒否、退出、代替の能力を失ったとき、助けは支配へ変わり始める。

 

以前にも、似たようなことを書いたことがあった。

 

けれど今では、その言葉はより重かった。

 

東京がたった今、一つの「助け」を拒否したからだ。

 

退出能力を失わせるかもしれない、助けを。

 

私はノートを閉じた。

 

ソレンセンが黒海の中で言った。

 

「お前たちは猫の餌皿を拒否した」

 

「うん」

 

「猫はまた差し出してくる」

 

「知ってる」

 

「もっと香りのいいものを差し出すかもしれない」

 

「それも知ってる」

 

「なら、どうするつもりだ?」

 

私は窓の外のA大学キャンパスを見た。

 

学生たちが道を歩いている。

 

本を抱えている人がいる。

 

楽器を持っている人がいる。

 

昼食の話をしている人がいる。

 

「まず、自分たちがなぜ拒否したのかを忘れないようにする」

 

私は言った。

 

「その次は?」

 

「別の道を用意する」

 

ソレンセンは低く笑った。

 

「扉の外の道か?」

 

「うん」

 

「その道は遅い」

 

「でも少なくとも、猫がくれたものじゃない」

 

それは反論しなかった。

 

その日の夜、AfterToneの練習が終わったあと、日和が尋ねた。

 

「今日は、少しだけ楽そう?」

 

私は考えた。

 

「東京が、とても厄介な手紙を一通拒否したの」

 

彼女は細かく聞かなかった。

 

ただ言った。

 

「それは良いこと?」

 

「うん」

 

「でも、まだ終わってない?」

 

「うん」

 

陽菜はよくわからない顔をしていた。

 

「つまり、小音は今日、ちょっとだけマシってこと?」

 

私はうなずいた。

 

「そんな感じ」

 

澪がおにぎりを差し出した。

 

「拒否飯」

 

私は思わず笑った。

 

「ありがとう」

 

その日、小さなアパートへ帰る途中、遠くの店の入口に猫目ロゴが貼られているのを見た。

 

私は、やはり緊張した。

 

やはり怖かった。

 

でも、あまり長くは立ち止まらなかった。

 

少なくとも今日、東京はあの猫が差し出してきた餌皿を受け取らなかったのだと、知っていたからだ。

 

これは勝利ではない。

 

ただの拒否だ。

 

でも、ときには、拒否こそがすべての始まりになる。

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