俺の頭の中に敗北した暗黒の王が住み着いているが、俺はただギターを弾きたいだけだ 作:arctichare
第99章 普通任務の頻度、そして私は「できること」をもう一度学んだ
小さなアパートへの夜襲のあと、特調室はすぐに私を長く休ませたわけではなかった。
こう言うと、とても冷たく聞こえる。
けれど実際には、そうではなかった。
彼らは私にニャーサと対抗させようとしたわけではない。
猫目核心に触れさせようとしたわけでもない。
私を再び危険状態へ入らせようとしたわけでもない。
もう一度、「東京最後の希望」のような位置へ押し出したわけでもなかった。
ただ、とても慎重な頻度で、私に退魔任務を委託し続けるようになった。
だいたい一か月に二、三回。
一回だけのときもある。
二週連続で入ることもある。
もし授業が詰まっていたり、AfterToneの練習があったり、研究レポートの締切が近かったり、身体の状態が悪かったりすれば、任務は延期されるか、他の人へ回された。
眼鏡の女性は言った。
「あなたは、長期間現場から離れてはいけません」
最初、私はその意味がわからなかった。
彼女は説明した。
「完全に任務へ出さないことは、一見保護のように見えますが、実際にはあなたをますます怖がらせる可能性もあります」
「それに、あなた自身も、自分がまだ現実層の危険を処理できるのだと知る必要があります」
現実層の危険。
この言い方は、とても重要だった。
ニャーサは、現実層の普通の危険ではない。
それは、この世界の尺度を超えた壁のようなものだ。
けれど、邪術師、低級異常、猫目の普通術師、汚染された術具、暴走した結界、地下取引場所は、今も存在している。
そうしたものは、今も人を傷つける。
今も、誰かが処理する必要がある。
そして私は、処理できる。
このことは、私がニャーサに二度負けたからといって、忘れられてはいけなかった。
だから私は、もう一度任務へ出るようになった。
生活を押し潰すほど頻繁ではない。
ガラスケースに飾られるほど少なくもない。
一か月に二、三回。
それは、難しい均衡のようだった。
復帰後、最初の任務は小さな案件だった。
少なくとも、特調室はそう言った。
東京北部にある古いマンションで、誰かが勝手に欠損した符陣を使い、「カビ取り除湿儀式」を行った。
聞くだけなら、とても馬鹿げている。
けれど東京とは、そういう場所だ。
家賃は高い。
建物は古い。
湿気は重い。
ネットで出所不明の符紙を買い、節約になると思い込む人もいる。
結果として、その符陣はもともと猫目支配区の小組織から淘汰された廃棄品で、転売されて東京へ流れ込んだものだった。
符陣はカビを取らなかった。
壁の中の湿気と怨念を混ぜ合わせ、夜になると住民に水滴音を何度も聞かせる低級異常に変えてしまった。
死者はいない。
けれど、建物全体の人が眠れなくなっていた。
子どもは夜中に泣く。
老人は血圧が上がる。
ある会社員は三日連続で浴室から誰かの声を聞き、精神的に崩れかけていた。
本来なら、特調室は普通の処理隊を向かわせることもできた。
それでも私に任せたのは、現場感覚を取り戻させるためだった。
任務地点は、私の大学からも住居からも近くなかった。
一般住民は「水道管修理」という名目で、一時的に近くのホテルへ移されていた。
私が現場に到着すると、眼鏡の女性が建物の下に立っていた。
彼女は私に任務簡報を渡した。
「目標は低級です」
「はい」
「あなたは、符陣と建物内の湿気の接続を切断するだけで構いません」
「わかりました」
「出力は拡大しないでください」
「しません」
「気分が悪くなったら、撤退してください」
「はい」
彼女は私を一目見た。
「これは、あなたが戦えるかどうかを試すものではありません」
私は低く尋ねた。
「では、何ですか?」
「すべてのことがニャーサではないと、あなたに知ってもらうためです」
私は少し固まった。
それから、うなずいた。
「わかりました」
建物の中の水滴音は、とても細かった。
誰かが壁の内側でガラスを叩いているようだった。
私は廊下に立ち、ピックを取り出した。
黒弦が足元から伸びる。
細く。
安定して。
それは壁の隅に沿って滑り、符紙によって誤って接続された湿った線を見つけた。
こういうものは汚い。
けれど強くはない。
それは人の睡眠、恐怖、疲労に粘着しているだけだ。
黒弦が軽く一つ切る。
水滴音が止まった。
二つ目を切る。
浴室の人声が消えた。
三つ目を切る。
壁のカビ染みは活性を失ったように、ただの汚れへ戻った。
全過程は五分もかからなかった。
戦闘はない。
敵もいない。
ニャーサもいない。
ただ、ようやく静かに眠れるようになった古いマンションが一棟あるだけだった。
建物から出ると、心が少し軽かった。
眼鏡の女性が尋ねた。
「どうでしたか?」
私は考えてから言った。
「こういう任務も……大事ですね」
彼女はうなずいた。
「はい」
その夜、帰ってから、私は備忘録に書いた。
人を眠らせることも、退魔だ。
ソレンセンはそれを見て、長いあいだ嘲笑した。
でも私は消さなかった。
二回目の任務は、邪術師だった。
本物の邪術師。
猫目の人間ではない。
大勢力残余でもない。
東京が緊張している時期に乗じて、濁った水の中で魚を取ろうとする小さな団体だった。
彼らは廃棄された地下商店街で「運勢書き換え会」を開き、不安を抱えた人を専門に騙していた。
失業者。
受験に失敗した学生。
家族が病気の人。
債務に追われている人。
彼らは金を取り、いわゆる「転運符」を貼った。
実際には、その符は人の判断力をゆっくり吸い取り、被害者に金を払い続けさせるものだった。
高等なものではない。
けれど、とても気持ち悪い。
特調室がこの任務を私に回したのは、相手が猫目から流出した低級術具を隠し持っている可能性があると判断したからだった。
猫目が直接支援しているとは限らない。
むしろ、地方の闇市から流れてきたものだろう。
今、猫目はあまりにも多くの地方を支配している。
猫目の淘汰品、複製品、模倣品、中古術具も、埃のように東京へ漂い込み始めている。
これが、猫目が地方を支配したあとの副作用だった。
たとえ猫目が直接手を出さなくても、その影は闇市と人の心を通じて入り込んでくる。
その夜、私は二名の特調室人員とともに地下商店街へ入った。
彼らは一般人の疎開を担当する。
私は術式の切断を担当する。
邪術師は全部で七人。
そのうち三人は、自分たちが使っているものの意味すら理解していない、ただの詐欺師だった。
残り四人は、多少術を理解していた。
リーダー格の男は私を見ると、一度固まった。
それから顔色を変えた。
「黒弦?」
その言葉を口にした瞬間、声まで変わっていた。
私は答えなかった。
彼はすぐに、猫の目の形をした黒い小牌を取り出した。
猫目の正式装備ではない。
模造品だった。
作りはひどい。
けれどその上には、確かに猫目体系の術式論理が一筋だけ乗っていた。
彼はそれで逃走通路を開こうとしていた。
黒弦が地面を滑った。
一切。
小牌は砕けた。
彼も膝をついた。
怪我をしたからではない。
すべての偽装術式が一瞬で断ち切られ、彼の身に吸い込まれていた運勢の残滓が反噬したからだ。
地下商店街に、混乱した低い囁きが響いた。
判断力を吸われていた人々が、目を覚まし始めた。
泣く人がいる。
罵る人がいる。
地面にへたり込む人がいる。
私はそのリーダー格の邪術師を見た。
冷化状態のときのような空白はなかった。
激怒もなかった。
ただ、気持ち悪いと思った。
「あなたたちは、こういう人たちのお金まで騙し取るんですね」
彼は強がった。
「みんな自分の意思で来たんだ」
黒弦が彼の周囲の地面を軽く押さえた。
私は言った。
「その言葉は、特調室に聞かれたときに言ってください」
七名の邪術師は全員逮捕された。
死傷者なし。
被害者二十六人。
特調室は後続で一部の金を取り戻した。
全額ではない。
けれど少なくとも、騙され続ける人はいなくなった。
この任務のあと、眼鏡の女性は言った。
「とても安定して処理できていました」
私は尋ねた。
「それは褒め言葉ですか?」
「褒め言葉です」
私はうつむいた。
「さっき、少し怒っていました」
「怒ることは、失控と同じではありません」
この言葉も、私は覚えた。
三回目の任務は、猫目と関係していた。
ニャーサではない。
高層でもない。
猫目術師だった。
東京辺縁にある独立文化空間が、猫目活動保険への接続を拒否したあと、連続して「安全リスク注意」を受け取っていた。
最初はメールだった。
その後、匿名電話になった。
さらにその後、倉庫配送の遅延、突然増える消防検査、近くに現れる不審な巡回人員。
特調室は、猫目辺縁小組が圧力をかけていると判断した。
彼らは必ずしも、ニャーサの直接命令で動いているわけではない。
猫目システムは、あまりにも大きい。
多くの辺縁メンバーは、自分で「協力」を推進する。
こういう人間が一番厄介だった。
彼らは、自分たちは脅迫していないと言う。
ただの注意喚起だと言う。
強制ではない。
提案しているだけ。
浸透ではない。
より安全な選択肢を提供しているだけ。
けれど拒否すれば、生活を面倒にしてくる。
その文化空間は小さかった。
普段は学生バンド、独立講座、小型展示に使われている。
オーナーは四十代の女性だった。
彼女は言った。
「私は猫目が嫌いなわけではありません」
「ただ、自分で保険を買い、自分でサプライヤーを選ぶ権利を残したいだけです」
その言葉は、私が書いた報告をすぐに思い出させた。
助けを受ける側が、拒否、退出、代替の能力を失ったとき、助けは支配へ変わる。
だから私はこの任務を受けた。
その夜、猫目小組は五人で来た。
服装は普通だった。
商業コンサルタントのようだった。
手にはタブレットと契約書を持っている。
リーダーの男が言った。
「我々は、貴空間に安全リスクをもう一度ご検討いただきたいだけです」
オーナーは私の後ろに立っていて、手が震えていた。
私は彼を見た。
「あなたたちのリスク注意には、術式標記が使われています」
男は微笑んだ。
「異常をより正確に識別するためです」
「近くの倉庫で、配送妨害もしましたね」
「商業調度上の問題です」
「後ろの路地に、三名の術師も隠れています」
彼の笑みが薄くなった。
「白川さん、誤解です」
私はピックを取り出した。
「では、その誤解を切り開きます」
黒弦が地面から展開した。
彼本人を攻撃したわけではない。
ただ、彼のタブレットと裏路地の三名の術師との連絡を切断した。
文化空間の入口に埋め込まれた標記符を切断した。
近くの倉庫配送妨害術式を切断した。
契約書類の中に隠されていた、自動更新制限の一層を切断した。
男の顔色が完全に変わった。
「商業契約を破壊することはできません」
「これは契約ではありません」
私は言った。
「これは錠です」
裏路地の三名の術師は逃げようとしたが、特調室人員に塞がれた。
私は二本の黒弦だけで、彼らの行動線を封じた。
彼らは普通の邪術師より、はるかに強かった。
訓練されている。
動きもきれいだった。
けれど、それでも住処夜襲の精鋭小隊ほどではない。
五分後、八名全員が制圧された。
その文化空間のオーナーは椅子に座り、長く息を吐いた。
彼女は私に尋ねた。
「こうやって拒否したら、これからもっと危険になるのでしょうか?」
私は彼女を騙さなかった。
「可能性はあります」
彼女はうなずいた。
「それでも、私は拒否します」
私は彼女を見た。
「はい」
彼女は言った。
「ありがとうございます」
このとき、私は自分がしたことと、自分の未来の方向がつながったような気がした。
黒弦で世界を救うのではない。
一つの小さな空間に、「いいえ」と言う能力を残すこと。
それは小さい。
けれど、とても重要だった。
その後、特調室が私に回す任務は、ゆっくりといくつかの種類に分かれていった。
第一類、低級異常。
汚染符紙、暴走術具、誤作動した結界、都市に残った怨念。
こういう任務は通常、危険性は低い。
でも細かさが必要だった。
私は、黒弦で「物体」を破壊するのではなく、「関係」を切断することに、ますます慣れていった。
怨念と場所の粘着を切る。
術具と使用者の誤った接続を切る。
低級汚染と人群恐怖の循環を切る。
第二類、邪術師。
彼らは必ずしも強くない。
けれど、人の痛みを利用するのがうまい。
金を騙し取る。
運勢を吸う。
符紙を売る。
低級術具を改造する。
猫目、あるいは反猫目勢力を騙る。
私はこの類の任務が嫌いだった。
毎回、絶望している人が騙されているところを見ることになるからだ。
第三類、猫目術師。
多くは辺縁実行者だった。
正規の猫目小組もいれば、地方猫目システムから派遣された「業務推進人員」もいる。
猫目の名義を借りて功績を立てようとする半独立メンバーもいた。
彼らは邪術師より規律がある。
そして、より危険だ。
けれどニャーサでない限り、私は処理できる。
第四類、保護任務。
猫目を拒否した小型文化空間を守る。
互助会メンバーを守る。
東京の非猫目サプライチェーンノードを守る。
独立を続ける学校外部活動を守る。
この類の任務が一番疲れる。
敵が必ずしも殴り込んでくるわけではないからだ。
時には、長い威嚇、契約罠、世論圧力、サプライヤーの突然の契約破棄が続くだけだった。
黒弦がいつも役に立つとは限らない。
それでも私は現場へ行く。
ただそこに立つだけのこともある。
猫目に、ここは誰も見ていない場所ではないと知らせるために。
任務頻度は、厳格に管理された。
一か月に二、三回。
二回続けて任務に出たあと、状態が悪ければ、三回目は取り消し。
任務にニャーサ核心関連の兆候が出た場合、ただちに最高等級処理へ移行し、私は撤退。
任務中、私に冷化傾向が出た場合、即時中止。
猫目が普通人、AfterTone、A大学、互助会を使って私の出力拡大を誘導しようとした場合、即時保護程序起動。
これらの原則は、私の任務協議に書かれていた。
私は一定期間ごとに再署名する。
面倒だと思った。
でも同時に、安心もした。
それらは縄のようなものだった。
私を縛るためではない。
誰かに突き落とされないようにするためのものだった。
眼鏡の女性は、毎回任務前に尋ねた。
「睡眠は?」
「まあまあです」
「食事は?」
「普通です」
「授業の負担は?」
「今週、レポートがあります」
「では任務後に一日休みを入れます」
「練習は?」
「練習は構いません。ただし、同時に二件目の任務は受けないでください」
彼女はもう、私の生活予定をすっかり覚えていた。
ときどき私は、彼女のほうが私自身より、私がいつ限界に近づくのかを知っている気がする。
AfterToneも、次第にこの頻度に慣れていった。
もちろん、彼女たちは任務の詳細を知らない。
私が時々「外部の用事」で呼ばれると知っているだけだ。
最初、陽菜は毎回とても緊張していた。
その後、彼女はこう聞くことを覚えた。
「今回は帰ってきたら何食べたい?」
澪は直接「回復飯」を用意するようになった。
日和は練習強度を調整してくれる。
任務翌日に私が練習へ行く場合、彼女は軽い曲だけを安排する。
私が手首が少し痛いと言えば、すぐに止める。
あるとき、私は猫目辺縁術師小組を処理した翌日に練習へ行った。
前奏に入るのが半拍遅れた。
陽菜が私を見た。
「小音、今日は無理しないで」
私は低く言った。
「無理してない」
日和がドラムの縁を軽く叩いた。
「その言葉自体がかなり怪しい」
澪が水を渡してきた。
「容疑飯」
私は笑った。
笑ったあと、本当に座って十分休んだ。
これが、今の私の生活だった。
午前は授業。
午後はレポート。
夜は練習のときもある。
任務を受けるときもある。
互助会で敗者たちが地方事例を整理するのを聞くときもある。
特調室で健康評価を受けるときもある。
安全住居へ戻り、引き出しの中にあるヨーロッパ撤離書類を見るときもある。
それらすべてが、同時に存在していた。
互助会の人たちの、私が任務を続けることへの反応も、ゆっくり変わっていった。
最初は、私がまた戦場へ押し出されているのではないかと心配する人がいた。
喜ぶ人もいた。
「黒弦がまだ動いている」と感じたからだ。
北見遥香は言った。
「あなたが任務から帰ってくるたび、少し安心します」
私は尋ねた。
「私が戦えると思うからですか?」
彼女は少し考えた。
「違います」
「では何ですか?」
「東京があなたを閉じ込めていないこと、あなたを消していないことがわかるからです」
その言葉に、私は固まった。
遠坂綾乃は、もっと冷静だった。
「普通任務を処理するのは、良いことです」
「どうして?」
「あなたは『ニャーサへの最終戦力』としてだけ存在してはいけないからです」
彼女は私を見た。
「そうなれば、あなたは神像へ押し上げられる」
「そして神像は、最後には祀られるか、砕かれるかです」
私は低く言った。
「神像にはなりたくありません」
「なら、できる小さなことを続けることです」
彼女は言った。
「邪術師、猫目辺縁小組、小型文化空間。こういうものが、あなたを人間の側へ留めます」
その言葉は、ソレンセンが嘲笑しそうな言い方だった。
けれど、正しいと思った。
東京抵抗力量も、私の位置を改めて理解し始めた。
特調室内部報告では、もうただこう書くだけではなくなった。
B-Black Stringは高リスク核心威慑要素である。
そこに、もう一文が加わった。
B-Black Stringは同時に、現実層の高効率干預力量であり、低強度から高強度の異常、邪術師、および猫目辺縁術師の圧制任務に適用可能である。
長い。
とても官僚的だ。
でも意味はこうだ。
私は、未来にニャーサへ対抗するかもしれない希望であるだけではない。
今、具体的な問題を解決できる人でもある。
これは、私にとって大切だった。
「未来の希望」は重すぎる。
けれど「今夜、古いマンションの水滴異常を処理する」ということは、小さくても本当だった。
私はできる。
そして、できたあと、誰かが眠れる。
誰かが文化空間を保てる。
誰かが騙され続けずに済む。
誰かが猫目を拒否し続けられる。
それらは伝説ではない。
生活だった。
もちろん、猫目もそれに気づいていた。
ニャーサは自ら妨害しなかった。
ただ猫目システムに、私の出手を毎回記録させた。
某月某日、白川一音、低級汚染符陣を切断。
某月某日、地下邪術師団体を圧制。
某月某日、猫目辺縁小組による文化空間接管を阻止。
某月某日、互助会メンバーの転移を保護。
某月某日、模造猫目術具を切断。
代理人は、それらをまとめて報告書にした。
彼は尋ねた。
「彼女への辺縁任務妨害を強化しますか?」
ニャーサは報告を見ていた。
「必要ない」
代理人は困惑した。
「彼女は我々の東京辺縁推進を削いでいます」
「局所的にね」
「ですが、東京を鼓舞します」
「もちろん」
「では、なぜ阻止しないのですか?」
ニャーサは笑った。
「彼女は、こういうことをしているときが一番人間らしいからだよ」
代理人は何も言えなかった。
ニャーサは続けた。
「彼女の人間性を保たせることは、扉を開けるよう追い込むより重要だ」
「それに、彼女がこうした小さな場所を守ることに忙しくしていれば、本当の扉を乱暴に触りに行くこともない」
代理人は頭を下げた。
「承知しました」
ニャーサは報告を軽く叩いた。
「ただし、楽にさせすぎてもいけない」
「適度な圧力」
「砕くな」
「緩めるな」
これがニャーサだった。
私が普通任務を続けることさえ、それは一種の調整として見ている。
それは、私に小さな戦闘での勝利を許す。
そうした勝利は、猫目の地方支配を脅かさないからだ。
けれど同時に、私を人間の生活の中へ留め、扉のそばへ追い詰めすぎない効果もある。
後にそれを知ったとき、私はとても不快になった。
けれど否定もできなかった。
私は確かに、そういう小さな勝利を必要としていた。
たとえ猫が、それを知っていたとしても。
ある任務が終わったあと、私は安全住居へ戻った。
その日処理したのは、猫目術師が残した追跡符だった。
難しくはない。
けれど、とても厄介だった。
それは互助会のあるメンバーの古い家族からの手紙に付いていたからだ。
私はそれを切断するとき、とても慎重だった。
手紙を傷つけてはいけない。
最後には成功した。
手紙は残った。
追跡符は切れた。
互助会のその人は、手紙を抱きしめて長いあいだ泣いていた。
住居に戻ると、手が少し震えていた。
疲れではない。
感情の余波だった。
私は備忘録を開き、書いた。
今日は一通の手紙を守った。
少し考えて、さらに書いた。
これも任務成功だ。
黒海の中で、ソレンセンが言った。
「お前の勝利は、どんどん小さくなっているな」
「でも、どんどん私自身のものに近づいている」
「ほう?」
「ニャーサを倒すみたいな勝利は、他人が期待しているものみたいだから」
「一通の手紙を守るのは、私がやりたかったこと」
ソレンセンはしばらく沈黙した。
「それも悪くない」
それがそんなふうに言うのは珍しかった。
私はその一行を見下ろし、心が少しだけ安定したように感じた。
数か月が過ぎ、私の任務記録はどんどん厚くなっていった。
輝かしい戦績ではない。
具体的なものが積み重なっただけだった。
低級異常十七件を切断。
邪術師団体四つを圧制。
猫目術師二十三名を捕獲。
小型文化空間三か所が非猫目活動を完了するのを保護。
互助会メンバー二名が猫目による誘導帰郷罠を避けるのを補助。
特調室と協力し、模造猫目術具六点を解体。
東京へ流入した猫目淘汰符器を一批処理。
非猫目防災訓練を一度支援。
そして、公開記録に書かれなかった小さなこともたくさんある。
たとえば、任務帰りに北見遥香へ、彼女が抵抗を感じない北海道展の商品を買っていくこと。
たとえば、文化空間のオーナーが怖がっているとき、活動が終わるまで一緒に待つこと。
たとえば、邪術師に金を騙し取られた学生のために学校へ事情を説明し、退学にならずに済ませること。
どれも小さい。
けれど、それらが積み重なることで、私は自分が最終崩壊をただ待つだけの人間ではないと、もう一度感じられるようになった。
今できることがある。
今できることにも意味がある。
大学三年後期が終わりに近づいたころ、眼鏡の女性は私に段階評価を行った。
彼女は言った。
「任務頻度の管理は良好です」
「異常状態の再発はありません」
「高出力は確認されていません」
「撤退信号の使用は一回」
「任務成功率は高いです」
私は尋ねた。
「続けてもいいですか?」
彼女は私を見た。
「あなたは続けたいですか?」
私はすぐには答えなかった。
続けたいのか。
ときどき、続けたくない。
任務は疲れる。
怖いこともある。
気持ち悪い人を見ることもある。
普通の大学生のように、卒業や仕事のことだけ考える生活ではいられなくなる。
でも完全に止めたら、私も不安になる。
東京には、今も誰かが処理しなければならないことがある。
そして私は、その一部を処理できる。
「続けたいです」
私は言った。
「ただし、今の頻度を維持してください」
彼女はうなずいた。
「同意します」
「私が何度か勝ったからといって、増やしすぎないでください」
彼女は少し笑った。
「あなたは今、私たちがあなたを使いすぎる前に、自分から防ぐようになりましたね」
「前科がありますから」
彼女は反論しなかった。
ただ言った。
「はい」
この「はい」は重要だった。
彼女は認めたのだ。
特調室は過去、たしかに圧力の中で私を押しすぎたことがある。
今、彼らは私の「嫌です」を聞くことを学んだ。
私も、先に「嫌です」と言うことを学んだ。
これもまた、一つの成長だった。
その夜、私はA大学の近くへ戻り、中央広場を通った。
春は終わりに近づいていた。
木の葉は青かった。
何人かの学生がベンチに座って話していた。
ノートパソコンを抱えている人がいる。
サークルのダンスを練習している人もいる。
遠くで、一匹の野良猫が草むらのそばを歩いていた。
私はそれを見て、思わず眉をひそめた。
ソレンセンが笑った。
「お前は今、猫を見るだけで不機嫌になるな」
「仕方ないでしょ」
「あれは普通の猫だ」
「わかってる」
普通の猫は立ち止まり、私を一目見た。
それから尻尾を振って歩いていった。
それは何も知らない。
猫目も知らない。
ニャーサも知らない。
東京防線も知らない。
私がついさっき猫目術師を処理してきたことも知らない。
ただの猫だ。
私はふいに、少し羨ましくなった。
そして、自分でもその羨ましさは変だと思った。
私は食堂へ入り、夕食を一つ買った。
座る。
ご飯を食べる。
スマホでは、AfterToneのグループが週末の練習時間を聞いている。
特調室からは次の低級異常候補任務が送られてきた。
ただし備考にはこう書かれている。
拒否可。
互助会からは、地方事例整理の草稿が届いた。
私の時間割は、明日の午前に卒業研究討論があると知らせている。
すべてのことが、また一緒に積み上がっている。
けれど今回、私は自分が完全に押し潰されているとは感じなかった。
ただカレンダーを開き、任務を練習と授業にぶつからない位置へ置いた。
それから特調室へ返信した。
受けられます。任務後に一日休みが必要です。
相手はすぐに返した。
安排済みです。
私はスマホを置き、食事を続けた。
東京はまだある。
猫目もまだある。
ニャーサは遠くでまだ見ている。
ソレンセンは今も黒海にいる。
ヨーロッパ撤離方案は、今も引き出しの中にある。
そして私もまた、一か月に二、三回の頻度で、自分が処理できる闇を処理しに行っている。
これは最終決戦ではない。
伝説でもない。
世界を救うことでもない。
でも、これが今の私の生活だった。