オカルト証明部   作:めめ師

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原作のない完全オリジナルは初めて書きます。拙いとこがあってもご容赦ください。
地名団体名等は基本存在しないもので書いていきます。なんか色々ツッコまれるのもめんどいしね。


第1話 こっくりさん

東京都内、縁識大学のキャンパスの一角。

一角、という表現がまさにピッタリなほどキャンパスの端に位置するその部屋は、一般の生徒が「開いてるところを見た事がない」と評するほど寂れた部屋だった。

よくある学校における有名な怪談のひとつ、開かずの教室としてその部屋を話題に出す者もいるほどだ。

 

そんな教室に足を運ぶもの好きのうちの一人の姿があった。

彼の名前は青山 翔太。この大学に入ってくるまで、特にこれといった趣味を持つこともなく日々ダラダラと青春を棒に降って生きてきたごく普通の大学生である。

そんな彼がこの教室を訪れた理由はただひとつ。

自身が所属するサークルの活動に参加するためだ。

心の中で大学こそは...と決意を胸にする彼が所属しているサークルこそが、オカルト証明部である。

 

 

 

...待って欲しい。彼がこのサークルに所属した最初の理由は、初恋の相手がこのサークルにいるから、というなんとも甘酸っぱい青春な理由なのだ。

だから、その可哀想なものを見る目を彼に向けるのをやめてあげて欲しい。

 

「お待たせしました。」

「おっ、しょーくんやっと来たねー、待ったよ!」

 

部屋に入ってきた青山に真っ先に反応したのは、綺麗に巻きたくさんの装飾の付いた金髪を、そしてその派手さに負けない程のナチュラルメイクを整った顔に施し、SNSやファッション雑誌で話題の衣服を完璧に着こなす、誰がどう見てもそう答えるであろう程に誰もが想像する通りのギャル、坂上 奈々である。

 

ちなみに青山の初恋の相手は彼女ではない。

部屋の中にはもう1人、無言でパソコンを叩く女性の姿があった。

首元までにまとめられたストレートの茶髪に眼鏡、そしていつも羽織っている白衣。普段座っていることが多いため分かりづらいが女性にしては、と言うより男性にしても高いと言える179cmの身長を縮めながら鋭い目つきでパソコンとにらめっこをしている彼女の名は、神田 綾香。

知的な印象を受ける見た目から、いわゆるリケジョに該当する彼女こそが青山の初恋の相手にして、このサークルのリーダーであった。

 

「揃ったな。それじゃあ今日も活動をやっていくとしようか。

今日のテーマは、こっくりさんだ!」

 

大仰な動きで神田がそう告げた。

 

「こっくりさん、小学生ん時流行ってたやつじゃんか!なつかしー!」

「その様子を見るに、坂上くんは知っている様子だね。青山くんの方は?」

「聞いたことはありますけど、大雑把な概要くらいしか知りませんね。」

「それでは説明しようか。認識の齟齬は致命的な失敗の素だからな。下手をすれば大事になりかねん。」

「失敗したら呪われるんしょ?こっくりさんが帰る前にコインから手を離したらダメとかだっけ?」

「そうだな。一つ一つ説明するとしよう。」

 

そう言って神田はパソコンを立ち上げ、部屋の中のプロジェクターを付けた。

壁に広がった画面の中には、こっくりさんについてをまとめた資料が表示される。

 

「こっくりさん、正しくは"狐狗狸さん"。

米国を起源とする降霊術、占いが日本に伝わり、それが日本テイストにアレンジされたものだと言われている。

この降霊術に使われるのがこの紙、そして硬貨。

重要なのは意思疎通に必要な五十音と数字、そして肯定と否定。加えてこっくりさんの出入口となる鳥居だな。硬貨は何でもいいと言われているが、主に使われるのは十円玉だ。これについてはこっくりさんが流行ったのが小中学生間だから、用意しやすい十円玉が使われたものだと考えている。

そして手順についてだが、この紙をテーブルの上に起き、それを参加者全員で囲む。

十円玉を鳥居に置き、そこに指を乗せるんだ。それから全員でこう唱える。"こっくりさん、こっくりさん。どうぞおいでください。おいでになられたら、はいへお進み下さい。"と。

これで無事こっくりさんが降りてきた場合は十円玉が勝手に動き、はいへと進んでいく...と言ったものだ。

こっくりさんが降りてきた時は、そこに質問を投げかけると十円玉が動き、質問に答えてくれる。質問がひとつ終わる度に"鳥居の位置までお戻りください"と呼びかけ、十円玉が鳥居の位置まで戻ったら次の質問をする...

そして儀式を終わらせる際には"こっくりさん、こっくりさん。どうぞお戻りください"と呼びかける。十円玉が鳥居の位置まで戻った時に"こっくりさん、こっくりさん。どうもありがとうございました。どうぞお離れ下さい"と言うんだ。そうして儀式は終了となる。」

 

神田の説明に合わせて画面が切り替わっていく。資料の完成度もさながら、全員で資料を見ながら説明をする様子はまるで会社で行われる会議、あるいはプレゼンそのものだ。

オカルト証明部以外のメンバーがこの様子を見れば「ガチすぎる」と言葉を零すだろう。

実際に青山が初めてこれを経験した時に思わず呟いた言葉である。

 

「それ以外にも細かな掟が定められており、それを守らなければ呪われてしまうと言われている。

地域によって細かな差異はあるようだが、一般には7つ。

一つ、ふざけた気持ちでやってはいけない。

二つ、こっくりさん自身についての質問をしてはいけない。

三つ、最後に十円玉が鳥居まで戻らない時は、根気強くお願いしなくていけない。

四つ、十円玉が戻る前にやめてしまってはいけない。

五つ、こっくりさんが終われば、使用した紙は細かく破いて捨てること。

六つ、こっくりさんに使用した硬貨は3日以内に手放すこと。

七つ、一人でこっくりさんをやってはいけない。

となる。これらを怠れば呪われるため、絶対に怠らないように。」

 

それを聞いて青山は喉を鳴らした。1口に呪われる、と言っても大雑把すぎて、果たしてそれがどのような結果を示すのかは分からない。

しかしこっくりさんを行った際に、集団ヒステリーや過呼吸を起こす...といった事例は有名である。それを理由にこっくりさんを禁止する学校もあると聞く。

 

「概要としてはこんなところだな。あとはこれらに対する考察やらはあるが、儀式をするにあたっては必要ないな。それでは早速だがやっていくとしよう。」

「やろー!」

「成功すると良いですけど...」

ではこれより、都市伝説やオカルトの一種、こっくりさんの検証、実験を開始するとしようか!

 

こうして神田によるプレゼンを終えたオカルト証明部の面々はこっくりさんを始めようと準備始めた。

 

 

 

机を教室内に一つだけにし、それ以外を外に運び出したあと、机の上に儀式の紙を広げて3人で取り囲む。

紙の鳥居の上に十円玉を置いた3人は人差し指を十円玉に置き、タイミングを合わせて口に出す。

 

「「「こっくりさん、こっくりさん。どうぞおいでください。おいでになられたら、はいへお進み下さい。」」」

 

言い終わった後、教室内をピンと張り詰めた空気が支配する。

...十円玉は、動かない。

 

「根気強く呼びかけるとしようか。それではもう一度行くぞ。せーの...」

「「「こっくりさん、こっくりさん。どうぞおいでください。おいでになられたら、はいへお進み下さい。」」」

 

3人で合わせて言い、少し待つ。

 

...やがて、十円玉が少し動き、はいの方向へと動き出した。

 

「「...!」」

 

それを見た青山と坂上が驚き、つい十円玉から指を離してしまいそうになるのを必死に我慢する。

対して神田は驚いた様子もなく、冷静に十円玉をじっと見つめていた。

 

ゆっくりと動いていた十円玉は、やがてはいの上でその動きを止める。それを受けて神田が2人の様子を窺いながら言葉を発する。

 

「...さて、質問を開始するとしようか。

こっくりさん、こっくりさん。私の年齢を教えてください。」

 

質問については、事前に神田が考えてきたため、全部神田がするということになっていた。

青山はその質問の内容に、そんな分かりきったことを聞くのかと疑問に思ったが、それを口には出さない。

 

十円玉はゆっくりと2の方向へと進んでいき、2の上で止まった後に、やがて1の方向へ進んだ。

神田の現在の年齢は21。質問への回答としては正解だ。

 

「ふむ...鳥居の位置までお戻りください。」

 

十円玉はゆっくりと鳥居の位置に戻っていく。

十円玉が鳥居の位置に戻ったのを確認すると、神田は他2人の様子を一目見ると、やがて次の質問に入っていく。

 

「では、こっくりさん、こっくりさん。青山くんの兄弟の数を教えてください。」

「ちょっ!?」

 

突然の自分に関する質問で青山は驚いた。それでも意識して十円玉から指は離さない。

十円玉は、やがて0の方向へ進んでいき、そこで止まった。

 

「...どうだ?合っているか?」

「はい。そうですね。」

 

青山は一人っ子。そしてそれを2人に話したことはなかった。知っているのはこの中で青山1人だけであった。

 

「よし、鳥居の位置までお戻りください。」

 

鳥居の位置に十円玉が戻ったのを確認すると、神田が次の質問をする。

 

「こっくりさん、こっくりさん。坂上くんは一人暮らしですか?」

 

今度は坂上についての質問。

この質問の答えを、青山は知らない。そして普段の会話から坂上の地元が大学から近いということは知っていたし、料理も出来ることは知っているため、実家暮らしでも一人暮らしでもおかしくはなかった。

十円玉は鳥居の位置からゆっくりとはいの方向へ進んだ。

 

「坂上くん、どうだ?」

「合ってるよー。あーし一人暮らしだから。」

「よし、鳥居の位置までお戻りください。」

 

そうして十円玉は鳥居の位置に戻っていく。

 

「では最後、こっくりさん、こっくりさん。私の母親の名前を教えてください。」

 

この質問の答えを当然青山は知らない。そして坂上も知らないだろう。

十円玉は十数秒の沈黙の後にゆっくりと動き出してし、よ、う、こ、の順番に動いていった。

しょうこ。それが神田の母親の名前なのだろう。

 

「...よし、こっくりさん、こっくりさん。どうぞお戻りください。」

 

十円玉は鳥居の位置に戻っていく。

 

「こっくりさん、こっくりさん。どうもありがとうございました。どうぞお離れ下さい。

...よし、もう離していいぞ。」

 

その声を皮切りに、青山と坂上が十円玉から指を離して椅子に身体を預けた。

対して神田が椅子から立ち上がって仕掛けていたカメラを片付ける。

 

「いや〜こっくりさん来たね〜。」

「そうですね。本当に来るとは。」

「いや、こっくりさんは来ていない。」

「「え?」」

 

緊張を解いた2人の会話に入り込んだ神田は、あっけらかんと言った。

 

「その為の質問だ。全員が知っている質問。そして青山くん、坂上くん、お互いに答えを知らない質問。最後にふたりが知らない質問をした。

全員が知っている質問をした時に十円玉は答えを示した。お互いが知らない質問にも答えを示した。この時点で青山くん、坂上くんのどちらかが意図的に動かしていたということは有り得ない。

そして最後の私しか知らない質問には...沈黙を返した。」

「ま、待ってください。しょうこって答えていたのは?」

「あれは私が動かした。そして私の母親の名前はしょうこではない。」

 

なんでもないように答える神田に、ふたりは驚愕した。

 

「それなら、あーしらに関する質問は?あーちゃんにもあーしが一人暮らしかなんて言ったことないっしょ!?」

 

青山もこれに心の中で同意した。神田に自分の兄弟の数なんて話したことは無いし、偽装はできないだろう。

 

「そうだな。私は答えを知らないし、私は動かしていない。」

「じゃあなんで...」

 

青山が神田の真意を訪ねようとすると、神田が口元に人差し指を立ててそれを静止した。

 

「そもそもだ。こっくりさんの原理については、明治時代の時点で既に解明されている。

それは"不覚筋動"、そして"期待"と"予知"によるものだ。」

「不覚筋動...」

「期待と予知...」

「まず不覚筋動とは、無意識の筋肉の動きだ。腕や指の疲労による動きだと言われている。それが硬貨を動かし、ひとりでに動いたように錯覚する...と言ったものだ。」

 

神田は立ち上げたままだったプロジェクターの資料をスライドさせて説明をしていく。

事前に用意していたあたり、この結果は最初から予測していたものだったのだろうか。

 

「そして期待と予知。

これは質問に対して"こう動くだろう、こう動いて欲しい"という無意識の願望が、不覚筋動による微細な動きをひとつの方向に動かした、というものだ。

だから2人に関する質問は、答えが分からないながらも、予想できるものだっただろう?

対して私の母親の名前は一切予想出来ない。しかし、し、よ、と続いて次がうの方向に進めばある程度の予想はつく。

事実、うに向かっていく途中から私が十円玉を押す力は変えていないのにも関わらず、移動速度が増した。

...上手く撮れていると良いが。」

 

神田は部屋に仕掛けてあったカメラからSDカードを取り出してパソコンに繋げながら言う。

 

「...確かに、予想しましたね。じゃあこっくりさんは来てなかった、ということになるんですか?」

「そうなる。今回の実験の結論はこれでいいだろう?」

 

やけに説得力のある説明からか、それとも確信めいた神田の言い方からか、2人とも頷くことしか出来なかった。

 

 

 

オカルト証明部。

この名前を聞いた時、誰もが思ったであろう。オカルト研究会、とかではないのかと。それに対する回答がこれである。研究会ではなく証明部。

このサークルを設立した神田の意図はこうだった。

 

「幽霊や妖怪など、俗に非科学的と言われる存在は未だ、その存在を科学的に否定されていない。

で、あればだ。それらが本物である可能性も、十分にあるとは思わないかい?」

 

この変人の部長は非科学的な現象・噂を科学で観測しようとしているのだ。

 

 

 

こっくりさんについては、降霊術や占いではなくただの遊びの類いでしかなく、集団ヒステリーや過呼吸などの事例は、厳格に定められた掟により、それを意図せず破ってしまった際に呪われるかもという先入観からパニックを引き起こし、それが周囲に伝播したことによるもの。という形で結論がつけられた。

 

現在、神田がこっくりさんの結論についてのレポートを書き、他2人は教室の片付けを行っている。

 

「...あれ?」

 

そんな中、青山がふと机に置かれたままのこっくりさんの紙に目をやると、十円玉がいいえの文字の上に置かれていた。

 

(さっきまで鳥居のとこにあったと思ったんだけど...気のせいかな...)

 

一瞬不思議には思ったものの、気のせいだと結論付けて青山はそのまま片付けを再開するのであった。




こんな話を書いておきながら作者はオカルト、ホラーに疎いです。
なので皆さんからオカルト話を提供いただけたらなーとか考えております。
実際にあるものでも、創作でも構いません。
提供いただけたら名前も含めて作中で紹介出来たらなと思っています。
どうかご協力よろしくお願いいたしますm(_ _)m
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