オカルト証明部   作:めめ師

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第2話 学校の七不思議(1)

「青山くん、明日、明後日は空いているかな?」

 

講義を終えて部室にやって来てすぐ、青山は神田からそう尋ねられた。

その時の距離がやけに近く、青山は思わず後ずさって答える。

 

「え、えぇ。空いてますけど...」

「そうか。それでは明日の夜中、ここに向かうとしよう。」

 

そう言って見せられたスマホの画面には、隣の県の田舎町の地図が表示されていた。その中の一部分にピンが刺さっている。

 

「小学校...ですか...?」

「あぁ、廃校舎だがな。」

 

廃校舎、と聞いて青山は苦い顔をした。廃校舎と言えばホラーゲームの舞台として定番の場所の1つ。

こんなサークルに所属していながら青山はホラーが苦手なのである。

ビビりとも言う。

 

「おっつー!...入口でなにしてんの?」

「坂上くんもちょうど良かった。坂上くんは明日、明後日は空いているか?」

「空いてるけど、何すんの?」

「明日の夜中、廃校舎に向かう。」

 

そう言って今度は坂上にスマホの画面を見せた。

 

「おぉ!面白そー!...だけど夜中かぁ...夜更かしは美容の敵...!」

「別に強制はしないぞ。」

「いやいや!そんな楽しそうなの、さすがに行くっしょ!」

「そうか、一応説明しておくと夜に向かって1時~2時くらいを目処に切り上げる予定だ。場合によっては長引くが、最悪私一人で残るつもりだ。」

 

神田の言葉を聞きながら坂上は荷物を下ろした。苦い顔をした青山とは打って変わって坂上は楽しそうに鼻歌を歌っている。

夜中の廃校舎という舞台に臆した様子はない。

楽観的とも言う。

 

そんなふたりを横目に神田がプロジェクターを起動し、部屋の電気を消した。

青山と坂上の2人も椅子に座ってプロジェクターの画面に注目した。

 

「さて、今回検証していくのは学校の七不思議だ。」

「聞いたことあるー!花子さんとかっしょ!?」

「そうだ。さてここで...2人は七不思議を七つ言えるかい?」

「えっと...トイレの花子さんと、理科室の人体模型が動く...あとは音楽室の肖像画がこっち向くとか...」

「あとはピアノが勝手に鳴るとか?あ、理科室の水の勢い!」

「それは七不思議ではないな。アスピレーターやリービッヒ冷却器を使用するという目的がある。他にも薬品が身体に付いた時にすぐに洗い流せるように...とかだな」

「へーそんな理由が...

あとは、階段が増えるやつもありますね...でもこれで5個...あと2つは...」

「いや、そこまでで結構だ。」

 

2人が悩んでいるところに神田が割り込む。

 

「2人とも、やはり七不思議の存在は知っていてもその中身までは詳しく知らないようだな。まあそれも仕方の無いことだろう。

学校の七不思議とは、その地域、学校によって異なるものだからな。」

「そうだったんだ...」

「少し調べるだけでも大量に出てくる。先程挙げた有名なものはあくまでほんの一部に過ぎない。」

 

そう言って画面上の資料が次の画面に移り変わると、こう書かれていた。

 

学校の七不思議30選

 

「「七不思議じゃないじゃん!!」」

 

ツッコミが揃った。そんなふたりを見て神田が笑い声をあげる。

 

「そう思うのも無理はない。だがそういうものさ。明日向かうのは既に廃校になった校舎、七不思議としてどういうものがあったのか、あるいはそもそも七不思議などなかったのか。

そういうことはわからなかったのでな。色々と例を挙げさせてもらった。

最初にトイレの花子さん。これは七不思議の枠組みに収まらないほど有名だな。校舎3階のトイレで3番目の扉を3回ノックすると返事が帰ってくる。そして扉を開けると花子さんに引きずり込まれる...と言ったものだな。

次は動く人体模型。夜中の理科室で人体模型や骨格標本が動き出し、目撃した者を仲間に変えてしまう...昨今の理科室に人体模型や骨格標本があるのかは疑問だがな。」

「あーしが小学生の時には無かったよ。」

「俺の時も無かったです。」

「私もだ。やはり最近は人体模型自体置いてることも少ないようだな。

それで言うと、これもそうだ。動く二宮金次郎の像。動くも何も、そもそも居ないのでは確認のしようがないがな。最近では二宮金次郎の像は歩きスマホを連想するとして、座って本を読む形に変わっているらしい。」

 

怖い話だったはずが、何故か突然湧いてきた豆知識に、2人はへー、と言葉をこぼす。ちなみに2人とも二宮金次郎の像なんて見た事はない。

 

「音楽室の肖像画、これはどうだ?私の場合は音楽室には特に何も無かったが、美術室に有名画家の肖像画が飾られていた。」

「俺のとこにはありましたね。」

「あーしのとこにもあったよ。ベートーヴェンに立派な髭生えてたけど。」

「落書きされているじゃないか。

まあ、ここは学校によって差異があるのだろう。

では音楽室に関連して勝手に鳴るピアノ。ピアノ自体はどこの学校にもあると思う。撤去されている可能性は高いがな。

他にも有名なものとしてさっき挙げていた増える階段、これは普段は12段のはずの階段が夜中の間に13段に増えているというものだ。

あとは開かずの部屋。まあ大抵どこの学校にも空いてるところを見たことない教室なんてものがあっても不思議はない。あとは階段下の物置なんかもこれにカウントされているだろう。

...とまあこれで7つ揃った訳だが、見てもらえばわかる通り、まだまだ沢山ある。

午後0時や4時44分などに鏡の前に立つと異世界に引きずり込まれる。

深夜の誰もいない体育館からドリブルする音が響いてくる。

夜中のプールで泳ぐと無数の子供の手によって水中に引きずり込まれる。

学校の桜の木のしたには死体が埋まっている。

夜の学校で誰もいない個室トイレから赤い紙と青い紙のどちらが欲しいか聞かれ、赤い紙を選ぶと切り裂かれ一面が血に染まり、青い紙を選ぶと全身の血を抜き取られ身体が青く染まるというもの。

夜の校庭に墓石が浮かび上がり、人知れず墓場になってしまう。

校庭の無人のブランコが何者かによって漕がれている。

放課後、夕焼けの学校内をテケテケ...上半身だけの人のような存在が徘徊している。

戦前からあった古い学校であれば、夜に戦争被災者の悲鳴が響き渡る。

三階までしかないはずの校舎に、夜中の間だけ4階への階段が出現し、登ると異世界に飛ばされて二度と戻れなくなってしまう。

夜中の間、美術室のデッサン用の人形が踊っている。

夜中、無人のはずの放送室から何故か校内放送が鳴る。

特定の教室で窓を覗いていると上から人のような影が落下するところを目撃する。

夜中に2、3階の教室内にいると外から何者かが窓を叩く。

運動会のあった日の夜中には亡くなった子供たちの霊が運動会を開催している。

夜中の廊下で誰かいますか、と声を出すと返事が帰ってくる。

夜中に廊下を歩いていると後ろから足音が聞こえてきて、振り返ると天井に足跡がびっしりと付いている。

夜中の廊下を走っているといつの間にか周りを一緒に走る声と子供の笑い声が響いている。

夕暮れに学校の屋上から校庭を見下ろすと半透明の子供たちが遊んでいる。

明け方の誰のいない校舎で子供の叫び声が響く。

校門で子供たちが登校してくる数を一人一人数えていくと、明らかに全校生徒よりも多い。

朝礼で不登校の生徒の名前を呼ぶとその子の声で返事が帰ってくる。

そして最後に、七不思議自体に7番目など存在せず、幻の7番目を知ると呪われてしまう。

以上で30個だな。どうだ?最後の方は流したが、何かわからないものは?」

「い、いや、大丈夫です。」

「...あーしも。」

 

実際に怪談話を聞いたからか、青山はすっかり怯え、普段楽観的な坂上すらも口数が減っていた。

 

「2人ともどうした?怖いというのなら私一人で行くから断ってもらって構わないが。」

「いやいや、行きますよ!」

「あーちゃん一人で行くなんて危ないっしょ!あーしも行く!」

「そうか。では次は明日の予定を決めよう。移動時間も含めると...」

 

 

 

 

翌日、夜の9時に集合した3人はファミリーレストランで夕飯を食べていた。

 

「そういえば、神田さんって白衣なんですね。」

 

青山の疑問にしたように、青山、坂上のふたりが私服に身を包んでいるのに対して神田は白衣を身に纏っていた。

 

「確か白衣って薬品から身を守るためとか汚れが分かりやすいからとかそういう用途ですよね。それのどっちも関係ないと思いますけど、なんで白衣なんですか?」

 

青山の質問に神田は少し考えてから話し出す。

 

「私が白衣を羽織る理由はひとえに意地以外の何物でもないさ。

世の科学者が非現実的だと簡単に否定するものを、科学者として証明してやるというプライドの現れだ。」

 

神田の言葉に2人とも、その背景にある神田の情熱と、掛けられてきたであろう言葉が想像できた。

だが、そんな彼女を励ませるであろう言葉は思いつかなかった。

 

「何をしんみりしているんだ。全員食べ終わっただろう。行くぞ。」

 

そんな空気を引き裂いて神田が伝票を持って歩いていく。

2人は急いで荷物をまとめて後に続いていく。

 

車での移動中、3人の中に流れていた微妙な空気を破ったのは青山だった。

 

「か、神田さんって、車もってたんですね。」

「うん?そうだな。私は元々電車やバスがあれば車などいらないと思っていたのだが、やはり一度持ってみると便利なものでな。今では車がないなど考えられない。

君たちも将来考えておくといいさ。」

「あーしは電車派だけど、そんなに便利なもの?」

「そうだな。私としては特に今回のような廃校や廃墟に出向くとなるとどうしても電車やバスでは交通の便が悪いんだ。」

「ほえー。」

 

サラッと流されたが、青山にとっては神田が今回のような廃校以前に廃墟にも行っていたという衝撃の告白であった。

坂上がサラッと流している辺り、青山がサークルに所属する前にふたりで出向いたことがあったりするのだろうか。

 

「そういえば、今回行くのってどんな学校なんですか?」

「あぁ、言ってなかったか。

今回向かうのは元市立朝石小学校、廃校になったのは6年前、未だ校舎のみが壊されることなく形を保っているところだ。周辺地域に他の小学校はあるものの、立地条件からして優秀だということで災害時の地域の避難所としての役割を持つらしい。そういった理由で現在でも定期的に清掃などが行われているようだな。

あとはオカルトに通ずる噂として、七不思議由来では無かろうが、校区内で夜間に"出た"という目撃証言がいくつか確認されている。

それもあってここを選んだというわけだ。」

 

そんなことを話しているうちに、気がつけば件の校区に入っていた。

それから数分車を走らせて、廃校舎の校門付近の駐車場に車を停めた一行は歩いて学校へと向かっていた。

 

「こういう時、夜間の駐車料金は割安になるから便利だな。」

「こういう時って...肝試しのために駐車するのは想定されて無いのでは?」

「肝試しではないぞ。我々の目的はあくまで心霊現象、オカルトの観測と証明だ。」

 

校門にたどり着いた一行は神田の促すままに鍵のかかった校門の隣にある柵を越えた。

 

「...今更ですけど、こういうのって良いんですか?その、法律とか...」

「なんだ君は...肝試しに際してそんな事を気にする者なんざ初めて見たぞ。」

「あーちゃんさっき肝試しじゃないって言ってなかった?」

「安心するといい。しっかりと建造物侵入罪に該当する。」

「「全然ダメじゃないですか(じゃん)。」」

 

ツッコミが揃った。その様子に神田が笑い声をあげる。

 

「というか、これで幽霊を観測できたとして、それをレポートに使えないんじゃ証明とは言えないのでは?」

「その時は、懲役か罰金で償ってから証明するさ。」

 

当たり前かのように即答した神田に、青山は(覚悟キマってるなぁ...悪い方向に。)とドン引いていた。

対して坂上は笑い声を上げている。ほとんど他人事であった。現在、自分も不法侵入をしていることについては忘れている。

 

「さて、それではこれから元市立朝石小学校、廃校舎において学校におけるオカルトの一種、学校の七不思議の検証、実験を始めるとしようか!




七不思議って7個じゃないんか...
いや二宮金次郎像とか確かに見た事ないけど...

七不思議って言えばトイレの花子さん、動く人体模型、こちらを見るベートーヴェン辺りはみんな固定だと思うんすよ。私の友人はそうだった。
オカルトに一切興味がない人でもそうなのはなんでなんでしょうね?

それと七不思議以外にも学校の怪談とかいう別の括りの怪談があるそうで。人面犬、のっぺらぼう、口裂け女辺りの通学路で出会う系はこっちの括りらしい。
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