学園でエセ勇者と揶揄されるオレ、うすほそ貧弱ボディ過ぎて喋らなかったら周りが勘違いを重ねて過保護になっていくんだけど   作:IXAハーメルン

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二章 白の少女と目覚めし希望
ドキッ❤姉より高身長の妹は好きですか!?!?!?~突然始まる姉妹百合!?~


 オレは妹が嫌いだ。

 いつからかは覚えてねえ、だが気が付いたら嫌いだったんだからしょうがねえ。

 

 貧弱な体のオレとは対照的に、ラミュエルは生まれた時から元気溌剌天真爛漫な明るい奴だった。

 まあそれはいい。オレより元気じゃないやつとかそれはもう死にかけ、呼吸するだけで棺桶ダンスを踊られかねない存在だからな。

 

 ……あいつは強い。

 才能って言葉がどうにも嫌いなオレだが、あいつの存在だけはその言葉を認めざるを得ない。

 剣を握って一日でオレを越していってしまった……オレは剣を振るうことすら出来なかったからなァ!

 

 まあオレの身体がカス過ぎる点はおいておくとして、普通に剣の才能が高すぎて一か月もしたら親父をぼこぼこにタコなぐりしていたのも事実だ。

 

 いや意味わかんなくね? スタンレイ家ってオレ以外全員超戦闘民族でさ、一人で魔獣ひしめく森に突撃して大量の魔獣を狩りつくして戻ってくるやつとかもいるわけ。

 当然親父もアホほど強い、話じゃ今の騎士団長を鍛えたもの親父だって話だ。それを剣を握って一か月のガキンチョが徹底的にボコしたんだぜ?

 

 結果から言うと、オレは次代の勇者候補の座から外された。

 まあもともと体が弱すぎて全く期待されていなかったとはいえ、それがいつもオレの後ろでなよなよしていた妹に全部奪われ、それから一切与えられずとなればそりゃ嫌いにもなる。

 

「アタシの名はラミュエル・スタンレイだッ!」

 

 なんでそんな奴が今! オレのクラスにいるんだよォ!!!!!

 

 巨大な鎧に制服を纏ったイカレポンチが叫び、ガントレットで黒板をバコン! とぶん殴った。

 教師が真っ二つにたたき割られた黒板を眺め唖然とし、はたと意識を取り戻して生徒たちへと振り返る。

 

「あ~……察しの通り、ラミュエル君はセラフィリア君の妹だ。事情により飛び級で本日からこのクラスの所属となる。たった一歳差とはいえ幼く不安なこともあるはずだ、ぜひ君たちには年長として、そして同時に良き同学年の学友として彼女と付き合ってもらいたい」

「こいつらが学友かァ~、雁首揃えてどいつも情けねえツラばっかり、見てるこっちが恥ずかしくなってくるぜ! ほんじゃあゴミムシ共これからよろしくなァっ!!」

 

 教団のど真ん中でびしっと中指を立てるデカブツ。

 

 めん玉腐ってんのかあのクソ教師!? ぜってぇ不安とか一ミリも抱いてねえだろあのデカブツ!

 

 今さっき初めてこの教室に足を踏み入れたとは信じられない、あまりにも傲慢不遜な態度にさすがの生徒たちもざわめきを隠せない。

 まあいじめだなんだはあるが一応ここにいるのは貴族や金持ちのボンボン、あそこまであけっぴろげにやるやつはそう多くはねえからな。

 

 ……マジでなんであいつここにいんだよ!

 というかあそこまでアレだったっけ!? オレが関わらねえうちに性格変わり過ぎだろ!?

 昔はもう少し……大人しかった……よな? いやオレの記憶違いか!? くそっ、話さな過ぎて訓練でバテバテだったオレの周りでちょろちょろしてたくらいしか覚えてねえ……!

 

「……セラフィとは真逆ですのね」

 

 少し離れた席のカメリアがぼそりと吐く。

 

 ……アッ、ソッスネ。

 しかし全身鎧を見てまさかとは思ったが、マジでラミュエルなのか。

 

 ラミュエルが鎧を纏い始めたのは勇者候補として扱われてからだった。

 オレはもうその時点で避け始めていたので理由は知らねえ、大方親父に命じられてとかじゃねえのかな。知らんけど。

 でも今までは簡素なプレートアーマーだった、少なくともオレが知る限りは。

 

 ……なんかめっちゃ豪華だなあいつの鎧。

 装飾もすごいし金メッキか? あそこらへんとか緻密すぎてやべえだろ。

 いったいいくらすんだよ、オレの生活費五十年分くらい余裕で吹き飛びそう。そんな金あるならオレにもっとくれよ! カツカツです! 貴方たちの可愛い可愛い長女ちゃん、いじめで置かれた壺売り払わなあかんくらいにカッツカツですよォ!

 

「えーっと、それじゃあやっぱりお姉さんの近くがいいだろうし席用意しといたから、あそこね」

 

 鬱々として話を聞き流していたが、どうにも聞き捨てならねえ言葉が突然教師の口から飛び出してきやがった。

 慌てて振り返ると確かに、オレの後ろには空席が一つ。

 

 オイオイオイオイ! 嘘だろいつの間にこんな席あったんだよ!?

 あークソ、そうか! 壺にばっかり意識が行ってたせいで周りに目が向かなかったわ!

 

「そこだなァ!」

 

 教室内に響く異様な鎧の擦れ音。

 荒々しい金属音を立て巨影がずんずん寄ってくる中、オレはそっと目を窓へとそらした。

 

 わ、わぁ~見てみてぇ~♪

 ヤミスイレンにちょうちょが寄ってきてる~かわうぃ~❤

 

「……っ」

 

 デカブツがオレの横で立ち止まった。

 

 くそっ、マジかよ。

 もうオレのことはないものとしてくれよォ……お前はもうオレの持っていないすべてを持っているじゃねえか妹様よォ~~!

 クク……オレはただ窓際にひっそり咲くヤミスイレン……蝶と戯れただ柔らかな朝の風にそよぐ可憐なお花さん……

 

「久しぶりだなァお兄様(・・・)ァ!」

 

 ミ゜ッ。

 

 バコォン!!! とオレの机に彼女の足が叩きつけられた。

 爆ぜる木片、爆ぜるオレの心臓。

 

 あぅ……心臓痛い……もうヤダ何なの……。

 

「おっと悪ぃ悪ぃ、貧弱すぎてぶっ壊れちまったぜ。くくっ、にしてもお兄様、随分細くなって顔色も悪いぜ?」

 

 勢いで驚かせて来るものはどうあがいても心臓が跳ねてしまうもの。

 存在がジャンプスケアな妹様が、少し顔をうつむけ胸元に手を当てたオレを横から覗き込み、好戦的な笑い声をあげた。

 

 か、顔色が悪ぃのはおめえのせいだよ……ぐぅ。

 

 ここまで近づけば鎧の隙間からわずかだが顔が見える。

 オレとは対照的であり、スタンレイ家では普通な蒼い瞳はその内に抱える侮蔑的な感情ゆえだろうか、大きく弧を描いていた。

 

「聞いてるぜェ? 家からの金もまともに貰えてねえし、メシも食えてねえんじゃねえのかァ?」

 

 食えてるよ!

 いや食えてはねえけど、食堂追い出されるし……でも一応ある程度は食ってるよ!

 

 むっつり黙り込んだオレへデカブツはさらに顔を近づけてきた。

 クラスメイト達は疑問を顔に浮かべつつ、しかし興味深げにオレ達の様子を眺めていやがる。まるで見世物だ。

 

「なんとか言えよオイ!!」

「……貴女には、関係ない」

「チッ、アぁ!? かわいい妹様が可哀そうなお兄様を心配してやってんだろうがよォなァ!?」

 

 へえ、スタンレイ家ではあおり散らかすことを心配っていうんだぁ!

 おいらその家の生まれだけど全然知らなかったナァ~!

 

 さらにだんまりの姿勢。

 しかしその時だった、ラミュエルが突如として拳を空へと掲げる。

 

 は!? え!?

 

「……っ」

「そうおびえるなよ、可愛いお顔が台無しだぜェ? ククっ、なにちょっと恵んでやってるのさ。貧乏人は黙ってありがたく受け取れよ!」

 

 甲高い金属音が教室に広がる。

 砕かれたテーブルに広がったのは数枚の小金貨だ、価値としてオレの生活費数か月分になるだろう。

 あんだけ華美な鎧を着ているラミュエルからすればこの程度文字通りのはした金、言葉通りの恵んでやったというところか。

 

「じゃあ積もる話はまた後でたっぷり話そうぜ、可愛い可愛いお兄様(・・・)?」

 

 教室の空気も気にせず、肩で空を切ってどっかりとオレの後ろへ座り込む妹様。

 鎧の重量に椅子がきしむ音を耳にしながら、オレはテーブル周りをそっと片づけた。

 

 ふーんだ! 誰がてめえと仲良しこよしのお話なんてするかよバーカバーカ!

 あっでも金貨は頂きますね! へへ、いや実におありがてえこって!ワハハ!

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