学園でエセ勇者と揶揄されるオレ、うすほそ貧弱ボディ過ぎて喋らなかったら周りが勘違いを重ねて過保護になっていくんだけど   作:IXAハーメルン

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殺す……殺してやるぞ……!!

 お固く止まってりゃ見えねえもんもある。

 オレだって実家で剣を振るい続けてりゃゲームをするなんてことはなかっただろう。

 だが……

 

『アタシが最強だッ!』

『強い強すぎるゥ! 他の追随を一切許さぬ圧倒的速度で神速の一位を奪取! 極星祭最後の競技、五キロランニングの第七順を制覇し、これで彼女が一位を取った競技は七つ目だァッ!! 彼女を! ラミュエル・スタンレイをいったい誰が止められるというのだーッ!!』

『イヤーすごいですねぇ、こんだけ暴れまわって疲労どころかますます苛烈になってますよ』

 

 はしゃぎすぎ!!!!!!!!

 あいつどんだけ競技出てんだよ! 初めての体育祭でやる気に満ち満ちてるじゃねえか!!

 

 オレは絶望していた。

 午前の部を終え午後の部、個人で参加できる競技の大半に参加したラミュエルは、そのすべてにおいて一位をかっさらっていったのだ。

 

 や、それはいい。

 目立ちに目立っていることも、まああいつだけなら好きにすりゃいいと思っている。

 

『……あっ、すべてはお兄様のためにッ!』

 

 ビシッとオレのいる席へと指先を指すラミュエル。

 あいつは一位を取るたびにやっているので、周囲はただのポーズくらいに思っているんだろうが……!

 

 これだよ!

 目立つあいつをよっぽど気に入ったのだろう、ラミュエルが一位を取るたびに実況が寄ってきてはインタビューを取る。そのたびにこんな感じの内容を繰り返し繰り返し言いやがるんだ!

 というか思い出したかのようにオレを引っ張り出すなボケ! どういうつもりであんなんやってんだよ!? 嫌がらせ!? 嫌がらせなのか!? カメリアに怒られたからってオレに対して嫌がらせを!?

 

『相変わらずお兄様へのラブコールが止まらないぞーッ! 愛されちゃってもー! この! このぉ!』

『どうやら入ってきた情報によると彼女は実の兄はいないようですが……?』

『……え? どういうことだい助手クン?』

『知りません、本人に聞いてください』

 

 横のラミュエルへとマイクが向かう。

 

『えーっとぉ、お兄様いないんですかラミュエル・スタンレイさん?』

『お兄様はお兄様だろうがボケ!』

『……そうだーっ! お兄様はお兄様だろうがこのボケ助手クンがーッ!』

『え? この流れでこっちが悪くなることある?』

 

 手のひらクルクルのクソカス実況、やはりあいつが諸悪の根源だ。

 

 ……ヤるか?

 あの口をふさげばすべて解決するか?

 

 全員参加の競技で全身の疲労感はすさまじいが、奴をヤるだけならどうとでもなる。

 目立たず、周囲に気付かれず奴をヤる……くっ、無理だ!

 今あいつらは学院中の視線の中心にいる、あの特等席で見下ろしてやがる王族共だって見ている……そんな中であのクソ女を消し飛ばすなんて……ッ!!!

 

 うぎぎぎぎぎぎぎっ!!!

 覚えたぞ報道部フレイヤと報道部ヘイヴン……穏当な人生は遅れないと覚悟しろよ……!!

 

「まあセラフィ、そんなに前のめりになって! ……ふふ、ラミュエルさんのことがそんなに気になりますのね!」

「……ん」

 

 気になり過ぎて血管ブチブチにはじけ飛びそうだぜェ!!

 

 オレはへなへなと椅子に座り込み頭を抱えた。

 

 午後の部が終わった、それはこの極星祭の終わりを意味するわけじゃねえ。

 むしろこれから構えている武闘大会こそがこの祭りのハイライト、そして間違いなくあいつは武闘大会に出るだろう。

 先日の決闘を見りゃ分かるが、あいつにかなう奴なんておそらくこの学院にはいない。なにせ教師すらビビって手を出せなかったくらいだからな。

 

 ……分かるか?

 決闘は安全策として防御魔術の付与された魔道具が配られる、つまり多少手加減をせずとも安心して暴れられるというわけで……あいつは弾けるだろう。

 

『え? どうしても言いたいことがあるからマイクを? 本当に大事なこと? ……ふーむ、この極星祭を荒らしまくっている貴女に興味を持っている人は多いですからね……よし! やっちまってくだせえ姉御ォ!』

 

 くそっ!!

 報道部フレイヤァッ! まだラミュを暴れさせるつもりかよ!?

 

『この学院には剣聖、魔女、ほかにもいろいろ称号持ちの奴らがいるらしいなァ。もちろん、全員この後の武闘大会に出るんだろ?』

 

 こき、こきと彼女は鎧の中で首を鳴らす。

 そして入学してきた時と同じく――堂々と中指を立てた。

 

 うおおおおおおおおおお!? オイバカボケコラッ!!!!!

 タダの観戦とはいえ一応王族の前だぞ!!!! 礼儀の教えはどうなってんだ教えは!?!?!?

 

『潰してやるよ、全員なァ! 首洗って待ってろやパイセン共ォ!!』

 

 生徒たちが一斉に歓声を上げた!

 いいぞーっ! なんて叫びながら頭上に攻撃魔術を飛ばして爆発させる奴まで現れる、ラミュエルの言葉に周囲のテンションは最高潮だった。

 

 ……え!? 歓声!? 歓声なのこのセリフで!?

 大胆不敵なんてもんじゃなくてテメエら全員がハチャメチャに喧嘩売られてるんですよ!?

 お前ら決闘知ってんだろ!? 全員タコ殴りのぼこぼこにしてましたよ!? お前らもああなる予定なんですよ!?!?

 

『決まったーッ! なんと強烈なマイクパフォーマンスだーッ!! あの魔女や剣聖を相手になんと恐れしらずなのかッ、これが勇者の血筋ゆえの圧倒的な勇気なのかーッ!?』

『果たして彼女が抱えるのは勇気か蛮勇か、これは見ものですね。我々としてはやはり二年連続制覇を成し遂げている剣聖を応援したいところですが……彼を打ち倒すのも同じく期待してしまいます! 今年の極星祭は心が躍りますね!』

 

 満足げに頷いたラミュエルが再びマイクを握る。

 

『すべてはお兄様のためにッ!』

『そーだそーだ! お兄さまのためだーッ!!!』

『なんで部長も一緒にやってるんですか?』

 

 やめろ馬鹿こっちを指差すな! 横のバカ女も真似すんじゃねェッ!!!!! 本当に殺されてえのかテメエ!?

 というか横の実況してるあのバカ女も誰か止めろよ! こんなんなってんの五割くらいあいつらがラミュエルを囃し立てまくるせいだろ!!

 

「……っ!」

 

 殺す……殺してやるぞ……報道部フレイヤと報道部ヘイヴンーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!

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