学園でエセ勇者と揶揄されるオレ、うすほそ貧弱ボディ過ぎて喋らなかったら周りが勘違いを重ねて過保護になっていくんだけど   作:IXAハーメルン

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尊大であり傲慢、そして最も脆弱な存在

 はるかに巨大な体格を持つ魔導ゴーレムの巨大な拳が、オレの結界へと突き刺さった。

 

「ひぇ」

 

 オレの目前十センチばかりのところで止まる拳。

 

 お、お、おおお!?

 いきなり何しやがんだテメェ! こちとら一般人が膝小僧擦りむいた程度でも破傷風で死にかねねえんだぞこの木偶人形がッ!

 今の喰らってたら間違いなく背骨が最後のほうに残ったポテチくらい粉々になってたじゃねえか殺すぞボケ!

 

 あっ、ちょっとびっくりしすぎて心臓いたなってきた……うぇ……痛くてくるちぃ……オレホラーゲームの類だけはムリなんだよね……

 

「うぅ……」

 

 オレ、ノックアウト。

 しおしおに萎れて膝をついたオレは胸元を両手で抑える。

 う、心臓どころか頭も痛くなってきた……お腹もいたい……うぇぇん苦しいよぉお医者さん呼んでぇ。

 

 このボケゴーレムめ、普段オレがどれだけ体を動かさないように気を付けてると思ってやがる!

 このミジンコの心臓にジャンプスケアは厳禁なんだよ!

 

 オレの上で魔導ゴーレムがまたがり連続攻撃を仕掛けてきた。

 まあこんなゴミムシの攻撃、百、いや一億回やられようとオレの結界が砕けるはずもない。無駄なラッシュがバッコンバッコンとやかましいが、今はそれどころじゃない。

 びっくりしすぎて死にかけた心臓をよしよしするのにオレは忙しいの!

 

「セラフィ! どうか結界を解かないで!」

「……っ」

 

 遠くから駆け寄りながらカメリアが何か叫んでやがる。

 だが返事を返す気力も湧きやしない、ただ心臓の痛みにこらえるオレの脳裏は彼女への罵詈荘厳で満ち満ちていた。

 

 くそっ、あの女さては魔導ゴーレムの調整をミスりやがったな!?

 

 訓練用に置かれている魔導ゴーレム、当然それ相手に訓練するのは実力もまちまちな生徒諸君。

 よって起動する際、幅広く細かな調整ができるようになっている。

 しかしこのカメリア、おそらくだが自分の実力以上にゴーレムを調整したのだろう。それによってやはり耐え切れず、さらにゴーレムが暴走まで至ったに違いない。

 

 実力も鍛えず無理をするからだ! これだから健康ボディの連中は!

 オレを見てみろ! 無理をすればすぐにでも死ぬぞ! ハハンどうだ羨ましいかぁ~!

 

 結界をバコバコぶん殴ってくるゴーレムの前へ、カメリアがひらりと舞い降りた。

 彼女は手にした剣でゴーレムに切りかかりそのヘイトを自分へと向ける。

 そして地面へ這いつくばるオレへ汗まみれの顔で叫んだ。

 

「ゴーレムが暴走していますの!」

 

 ……見りゃわかるわタコ!

 夜空を見てお星さまが光ってるくらい当たり前のことをしたり顔で語ってんじゃねえ! お前さては一々下らないことまで訂正するタイプの人間かぁ~!?

 

 しかしこのカメリア、いっちょ前にこのオレを庇わんとゴーレムへ切りかかっているものの、あいにくその高品質ボディには傷一つついていない。

 それどころか彼女が手にしている片手剣、耐久力の限界のようでひしゃげ折れ曲がっている始末。

 

 ちっ、しょうがねえな。

 体調は最悪だが魔術で消し飛ばすか、お高いゴーレムの費用はお貴族のお嬢様に支払わせんべ。

 

「カメリア……逃げて……」

 

 お前さっきから目の前でひらひら動き回って邪魔なんだよ!

 

「っ、そんなこと出来ませんわ!」

「いい、から……」

 

 本当にそういうのいいから!

 邪魔なの! 黙ってさっさとケツまくって逃げろよアホ雑魚剣士!

 今体調最悪すぎて魔術照準ちゃんと合わせられるか分かんねえんだよ!

 

 ……あぁ?

 ワタクシが必ずあなたを守りますわァ? この剣に誓ってェ?

 ご自慢の剣はしわくちゃの金属塊じゃねえか! それで守れるのは水に沈むアリの巣くらいだろうが!

 

 くそっ、らちが明かねえ。

 そんなにテメェでそのゴーレムをぶっ殺したいってんならやるといいさ、ただしその屑鉄はさっさと捨ててもらおうじゃねえか。

 

 地面へべったり座り込んだオレ――かわいいだろ? 女の子座りだぜ?――は、杖を片手に地面へと素早く(オレ基準)陣を描く。

 普通に攻撃の魔術でも振るったほうが魔力の消費が圧倒的に少ねえが、頑固なお嬢がオレの前で盛大に頑張り散らかしていらっしゃるから仕方ねえ。

 

「――『ザ・クリエイション』」

 

 全身から魔力が抜けていく感覚。

 同時に喉奥からごぼりと鉄錆の強い匂いが沸き上がり、口の端からは深紅の液体が一筋垂れた。

 

 ザ・クリエイション。

 一見汎用性の高すぎるこの魔術には唯一の欠点がある。無から物質を作り出す都合上、魔力の消費が激しいという点だ。

 いや、正確に言うと魔力量自体には問題がない。この程度なら二十本は余裕で作れる程度にはある。

 だがその大量の魔力を操る際、オレの身体がそれに耐え切れずダメージを喰らう点が問題だった。

 端的に言うとクリエイションを使うたびにオレは血を吐く。

 

 はァ~きっちぃ~。

 マジ媒介なしクリエイションの魔力負荷ホンマきっちぃわ、一徹のテンションが抜けた昼頃くらいきっちぃ~。

 

「セラフィ!?」

 

 攻撃を避け、オレへと振り返ったカメリアが大きく目を見開く。

 オレの目前には一振りの刃があった。

 鋼よりもさらに白く、冷たい輝きを灯す飾り気のない片手剣。

 

 聖銀。

 銀に膨大な魔力を込め鍛え上げることで、消して錆びず、高い魔力伝導率を誇り、さらに羽のように軽い魔法金属の一種。

 オレが生み出したのは聖銀製のレイピアだ。

 

 オレはその柄を掴み上げ――

 

「あ、貴女無理をして……!?」

「――握って、カメリア」

 

 うぉ……おっも……。

 

 おててがプルプルする。

 なんか脇の下とかめちゃ痛い。

 やばい息切れしそう、肺も苦しくなってきた。

 

 あかんこれ持てへんわ。

 あれー? おっかしいなぁ~? 一応羽のように軽いなんて言われる聖銀で作ったってのに!

 

「これ、は……なんて、綺麗な剣」

 

 なんか目ウルウルしてるけどそんな余裕ないねん! はよ持ち上げろや!

 めっちゃ重いってコレェ!

 こんなんずっと持ってたら腕の筋肉が全部断裂しちまう! いまですら最低でも明日から一週間は筋肉痛で寝込むことになっちゃうのォ!

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