学園でエセ勇者と揶揄されるオレ、うすほそ貧弱ボディ過ぎて喋らなかったら周りが勘違いを重ねて過保護になっていくんだけど   作:IXAハーメルン

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セラフィリア・スタンレイ(クールミステリアス枠)

「……大会、出るの?」

「ええ。先輩方の胸を借りれる貴重な機会、逃すわけにはいきませんもの。……自分の実力がどこまで通じるのかも、ね」

 

 オレが渡したゴミソードをクソ高そうな布で拭きつつ、カメリアはきりりとした顔でこちらに振りむいた。

 時刻は十六時目前。季節柄まだまだ暗くはならない日の下で、事前に受付していた生徒たちがコロシアムの控室へと吸い込まれていく。

 

 オレ? 参加するわけないじゃん(笑)

 ただでさえ疲労でバテバテだってのに、あんな熱気あふれてる連中の中に入ったらそのまま蒸し焼きになってぶち殺されるわ!

 

「――この剣に誓って、勝ちますわ」

 

 やー、そんなその場しのぎのゴミソードに誓われてもなぁ。

.

.

.

 

「ひっぐ……ぐず……負け゛まし゛たわ……!」

 

 五分後、ボロボロになったカメリアがオレの横で泣いていた。

 即落ち一コマである。

 

「セラフ゛ィ~……」

「……よしよし」

 

 うわ抱き着くなよきったねえなぁ。

 

 涙とかいろいろ制服につくのを死んだ目で見ながらオレはその金髪頭をなでる。

 

 いやー、運悪いねぇ。まさか一回戦でラミュエルと当たるとは。

 思えばカメリア、どうにもオレを狙ったであろうゴーレムの暴走にも巻き込まれるし、実は結構運が悪いんじゃねえか?

 

 にしても戦闘については……ま、むしろよく健闘したもんだと思うよ?

 確か五回くらいは打ち合えたんじゃないか? もしかしたら初戦でラミュも様子見だったのかもしれねえけど、ぶっ飛びながらもちゃんとパンチを受け止めたのはようやっとる。

 

 だって今もコロシアムの中心を見ればほら……

 

「僕は『花騎士』、ローゼン・シュタイン・シュルシャコール・シャーメス・シュルシュテンリッヒさ」

 

 キャーッ! ローゼンさまーっ! とどっかから聞こえる黄色い声。

 無駄に長いロン毛をしゃらりしゃらりと手で払いのけ、『花騎士』サマとやらが周囲の歓声にこたえて片手をあげる。

 

 ん~~~~きももももももっ!!!!

 今すぐにでもぶん殴りてぇツラしてやがる、薔薇咥えんなよキメェなぁ!

 

 どうやらたまには姉妹で心が通じるようで、ラミュエルは苛立ったかのように片足を絶え間なく足踏みしている。

 分かる、分かるぞ普段は一ミリも理解できねえお前の気持ちが! 殴りたいよな? あのイラつく顔面叩き伏せてえよなァ!!

 いけーっ勇者の血筋!! 殺せラミュエル!! ぶち殺すんだ!! いじめっ子を殴り倒したように!!

 

「随分と強情な子みたいだけれど……大丈夫さレディ、ボクの薔薇魔術で君の心をきっと解いてみせ」

「っせェ!!! 喧しいだよボケロン毛ェ!!!」

「ると約束んぎゃああああああッ!?」

 

 優男の横っ面に突き刺さるガントレット。

 会場の天井に吊り下げられたモニターからは、一カメ、二カメ、三カメと殴られるシーンが次々に映し出されていく。

 

 しゃあっ! ワンパン!!

 パワーという言葉はラミュエルのためにある!!

 

『おおーっと! 騎士団の勧誘を受けたと噂の『花騎士』をもワンパンだーッ! 名乗りの最中に攻撃は正義の所業なのかーッ!?』

『ボクはあのロン毛嫌いなので問題ないと思いますね、規定上も武器を構えた時点で試合は始まってますから』

 

「見事……だ、ね……美しい薔薇には……トゲが……あった、か……!」

 

 トゲというかパイルバンカーだろ。

 

 と、まああんな調子で初戦以外の全ての敵……や、生徒をワンパンし続けているのが我らが最強の妹様だ。

 

 魔術、剣術、格闘術。

 得手不得手は多くあり、おそらくワンパンされてきた彼彼女らなりには色々やってきたのだろうが……暴れ狂うドラゴン相手に羽虫が立ち向かえば、たとえどれだけの技量を持ち合わせていたとしても些細な差に違いない。

 ラミュエルのスピード、パワーを見切ることができる。それが打ち合う際に求められるまず第一の条件なのだ。

 

「ふぁぁ……」

 

 横でいまだに泣くカメリアを撫でながらあくびをかみ殺す。

 疲労感もさることながら、飽きてきた。

 

 この武闘大会を一時間ばかし見ていた正直な感想としては……まあ、退屈だな、と。

 序盤こそ面白い無双ゲーも中盤になれば惰性で続けているように、圧倒的というのはそれだけでつまらないものだ。

 どいつもこいつもワンパンで終わる、面白みのかけらもあったもんじゃねえ。

 

 やっぱゲームでもなんでもある程度やりごたえ、カタルシスが欲しいよな。

 別に無理ゲーがしたいワケじゃねえよ? ただぱっと見強そうな相手の技とかをぎりぎりで回避してから、ここで必殺技! ってのがバトルにおいてはやっぱりおもろいわけで。

 圧倒的ってのはかっこいいかもしれねえけど、少なくともそれを最初っから知っているオレにとっては退屈な繰り返しの一つだ。

 

「……セラフィ? いったいどこへ?」

「さんぽ」

「そうですの……わたくしはまだ戦いを見ていますわっ! ここから学べることもあるはずですものっ!」

 

 おーおー勤勉だねぇ辺境伯のご令嬢は、負けてもなお学ぶ意欲にオレは感涙を禁じ得ない。全く、この国も安泰だぜ。

 

 この武闘大会は最初いくつかのブロックに分かれ、序盤は同時並行的にバトルが行われている。

 ほかのコロシアムに見に行ってもいいが……今いるここ、オレ達の校舎に一番近いこのコロシアムからほかの床に行くまでだいぶ歩く。

 歩いていくにはめんどいし、人が周りに多くてしかも全員テンション高く応援してるもんだから疲れた。

 

 うーん、どこに行こうかな。

 さすがに勝手に寮に戻るのは怒られそうだし……?

.

.

.

 

 

「……すずしい」

 

 二十分ほどかけて階段を上がり切ったオレは、七階のさらに上、屋上をゆっくりと歩き回って夜風に当たった。

 昼間は生徒たちが好き勝手歩き回っているここも、今はその大半がコロシアムに収監されているため人っ子一人いない。

 

 木製の大きなベンチの上にぐでっと寝転がり空を眺める。

 退屈な連戦とはいえ、それでも整備や交代などに時間がかかるためなんだかんだでもうこんな時間。

 いつもなら寮の入り口が閉まってしまうような頃合いだが、遠くからはまだ生徒や観客たちの騒がしい声が聞こえてくる。

 

 は~……疲れた!

 

 やはり素がクールでミステリアス、きりりとかっこいい系のオレにお祭りの雰囲気は合わない。

 

 にしても今日は本当に大変だった。

 事前の訓練期間も運動量が増えて何度か吐いたり足が攣ったりしたけど、今日はホンマにヤバかったわ。

 特に大岩玉転がし、あんなの常人にやらせていい競技じゃねえよ! 直径五メートルくらいある大岩を生徒たちに投げるとか正気かよ!!

 

 まあ大岩玉転がしは適当に手を伸ばして端っこで頑張ってる感出してたんですけどね(笑)

 あんなん真ん中の方いたら周囲にも潰されて岩にも潰されてシミすら残らねえよ! 周り全員身体強化使ってんだし!!

 

 ザコにはザコなりの生存戦略があるってもんだ。

 それもただのザコじゃねえぞ……何度でも体の弱さで崩れ落ち立ち止まる! ド級のザコ!!!!

 

「……ドコだ」

 

 ドコだ!!!!!!!!!!!

 ほれセラフィリア! 体の弱さでもう一丁!!

 

「ほう……気付いたか」

「!?!?!?!?!!!?!?!?!?!?!!!?!」

 

 え!? 誰!? この屋上に誰かいたの!?!?!

 

「まさかこのオレの隠密を察知するとは……流石はスタンレイ家の人間か」

 

 振り返ると時計塔のさらに頂上にてそれはいた。

 蝙蝠のような大翼をばさりと広げ、オレの目前へ優雅な着地をしたその男は月を背にし、長い牙を見せつけにやりとほくそ笑む。

 

 誰だテメーはっ!!!!!!!

 

「だがこのオレに一人で挑もうとは、残念ながら技術と知性は一致しないようだ」

 

 緋色の瞳と漆黒の髪を湛えたその青年は、手にした絢爛豪華な錫杖を高々と掲げ何やら魔法陣の展開を始める。

 

 すっげー悪そうな奴だ!

 すっげー悪そうな奴がすっげー傲慢で悪そうなこと言ってやがるぞオイ!! ぜってー敵だろこいつ!!!

 あと誰だテメーはっ!!!!!!!?!?!?!?!

 

「誰からも気付かれず消えてもらおう、賢く愚かな勇者の血族よ」

 

 その若い見た目に似合わぬ荘厳な口調。

 展開する巨大な魔法陣の輝きを受け嘲笑(わら)うその男は、人によく似た異形の存在。

 彼が纏うのは――濃密な魔力と、血の気配。

 

 だっ……誰なんだアンタいったいッ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!!?

 あとクールミステリアス枠を盗るな!! それはオレの枠だぞ!!!!!!!!!!!

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