学園でエセ勇者と揶揄されるオレ、うすほそ貧弱ボディ過ぎて喋らなかったら周りが勘違いを重ねて過保護になっていくんだけど   作:IXAハーメルン

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貴方の作戦、まるっと全部お見通しだから!!!!

「……レベルの差を見せてあげる」

「――!! 汝の血をもってこの創を拭わんッ!!!」

 

 気が付けば周囲の人間はオレ達だけ。

 あれだけ多くいた生徒や教師たちは気が付けばみな消えている、どうやらいつの間にか避難は終わっていたらしい。

 

「その命をもって償うがよいッ!」

 

 カトンボのごとく空を飛び回り絶え間なく投げ槍を飛ばすカズィクル。

 その一本一本が着地の度爆裂し、周りへ成人程度の大穴をえぐり抜いてくるものだからうっとおしい。

 足元ががたがたして歩き辛ぇ。

 

 それに何より、常に動き続けられるせいでなんとも狙いがつけづらい。

 

「……寄ってこないの?」

「近づく必要すらあるまい! この圧倒的な物量の前ではッ!」

「怖いんだ」

 

 まあこいつオレの結界一回も抜けてないしな。

 所詮は空をふらふら飛んでるカトンボだよね(笑)

 

「舐めるな小娘ッ!」

 

 煽り耐性低すぎ~(笑) ずいぶん長ーくいきてこの程度とか恥ずかしくないんでちゅか~~~❤

 

「貴様こそその光線ばかり、技に幅がないなッ! 所詮は十数年生きた猿の魔法使いごっこか!!」

「……すーっ、ふぅ……」

 

 くははっ、言ってくれるね。

 ――ぶち殺すぶち殺すぶち殺すぶち殺すぶち殺すぶち殺すぶち殺すぶち殺すぶち殺す!!!!!

 

「『ブリザードブレス』! 『ブリザードブレス』!!」

 

 うおおおおおおおおおおおおおお破壊粉砕壊滅玉砕全滅崩壊!!

 

「そのような精密性に欠ける魔術など当たりはせぬ!」

 

 くおおおお!ちょこまかと逃げやがって!!

 一秒でいいから止まれ! 殺してあげるから!! 一瞬だから!! 痛くないからァッ!!!!

 

 くそっ、あいつなんかさっきより動き良くなってやがんな。

 スピードも精密な動きも格段に上、真の力発揮してます感凄いのも納得だぜ。

 

 オレは再び燃え始めた杖を投げ捨て新たな杖を生み出し――突如現れた眩暈と次第に強くなる倦怠感に膝をついた。

 

「けほっ!けほけほっ! ……っく」

「お兄さま……っ!」

「大丈夫」

 

 背後、結界の内側からラミュが叫び、同時に足元へ小さな血だまりが広がる。

 口からこぼれる血の量は増えるばかり、無理をするたびに加速的に体へのダメージが増えていくのを感じた。

 

 チッ、これ以上は厳しいか。

 ……避難は終わってるっぽいしな、もういいだろう。

 

 身体強化を一つずつ解除、さらに天を覆っていた結界も解除。

 魔術の強化で誤魔化していた疲労感、痛み、苦痛が一気に全身を襲い意識がくらりと飛びそうになる。

 それでもさっきの状態を続けるよりははるかにましだ、突然意識がぶっ飛ぶよりかは何倍もな。

 

 同時に空からの嘲笑が響き渡った。

 

「随分と満身創痍ではないか、先ほどの結界や殲滅のために『代償』でも払ったか? ククッ、あまり血を溢すなよ、オレが啜る分が無くなってしまうではないか」

「……きも」

 

 さっきから思ってたけどカズィクルくんさぁ……キミなんか血とか操ってかっこいい雰囲気出してるからいいけどさぁ、それほかの人が言ってたと冷静に俯瞰して見てみ? な?

 正直めっちゃきもいでキミ? まじ反省しろよな?

 

「先ほどまでの勢いはどうした! セラフィリア・スタンレイッ!!」

 

 一々フルネームで呼ぶな! 長ぇ!!

 

 オレの結界へ無数の血槍が襲い掛かる。

 直撃し、爆ぜ、飛び散った血からさらに新たな槍が生まれる無限の攻撃。

 もはや結界に張り付いた血で視界がすっかり塞がれている、遠見の魔術で無理矢理周囲を把握するしかない。

 

 遠距離からちまちまちまちま攻撃しやがって……そういうのはボス戦に挑むプレイヤーがする攻撃だろうが!

 

「――『ウィンドブラスト』」

 

 生まれた突風が瓦礫と共に周囲の血を吹き飛ばす。

 

 カズィクルの厄介な点は回復能力だ。

 いったいどこから出してるのかわからんが無限に血をばらまき、傷を負えばそれを吸って回復するのだから手に負えない。

 奴の出す血と回復能力、これに限界があるかが分からないのが厳しい。

 

 ……この疲弊した体で奴を真正面からとっつかまえてボコす、誠に至って大変アルティメット腹立たしいがそれは難しそうだ。

 

「視えているぞ! その程度の攻撃が当たるとでも思っているのかッ!」

 

 牽制代わりの絶え間ない線撃(レイ)、それをひらり、ひらりと避けながら奴が放ったカウンターの攻撃が降り注ぐ。

 

「けふっ……」

 

 両膝をつき、力が抜けた指先から杖が落ちる。

 

「限界も近いようだなセラフィリア・スタンレイッ! ならばこそッ!!!」

 

 その瞬間、長らく遠距離からの攻撃に徹していたカズィクルが突如として急降下を始めた。

 辛酸を舐めさせられた相手をその自身の手で狩る、怒りと喜びに満ちた表情を顔に浮かべ、無数の血槍をまるで一つの生物のように操り一目散へとこちらへ向かっている。

 

 はん、随分よく利く鼻を持っていらっしゃるようだ。

 事実、今オレの身体は魔術の反動によって限界を迎えつつある。

 少し血を流し過ぎた。

 

「『多重線撃(オーバーレイ)』」

「もはや見切った、その直線的な攻撃軌道はッ! さあその臓腑と血を我に捧げよ! 『ヌメロス・ブラッド――』」

 

 大規模に展開された魔法陣。

 歪だが渦を描くように展開された致命的な光線も、しかし、奴の高い機動力によって容易く避けられていく。

 それどころか先ほどより密度の遥かに落ちたそれに、こちらの限界を強く感じているのだろう、鋭い三日月の笑みをすら浮かべて男は武器を振りかぶる。

 

 だからテメェはカトンボだって言ってんだよ。

 

「――『貪り喰らう柔鎖(グレイプニル)』」

「なっ!? これ、は……!?」

 

 地面を突き抜け突如現れた光鎖がカズィクルへと喰らい付く。

 男に避ける手段などない。知らぬ間に行動範囲を誘導され、目前の獲物に油断した哀れな血吸い蝙蝠には。

 

 一度絡みつけばそれは終わり。

 その存在の魔力を喰らい尽くしながら瞬く間に成長し、腕を、両足を、そしてご自慢の翼をも絡めとり、抵抗など無意味だとばかりに光の鎖が全身を喰らい尽くす。

 

「ぐ……が……ァ……!? なん……だ……!?」

「再生回数に、限界はある?」

 

 杖を振るうと同時、オレの背後から光線がカズィクルへと突き刺さった。

 

「この……程度……」

 

 周囲の血がひとりでに動き、素早くその傷を癒す。

 

「『線撃(レイ)』」

「うがっ」

 

 血を使うのならばもう一度。

 血を使わぬのならばさらに広範囲を。

 

「『線撃(レイ)』」

「まっ……」

 

 魔術の反動によって生まれた風がオレの髪を、服をなびかせる。

 

 どうやら回復に使われる血の量はおよそ、欠損した部位の体積と同程度。

 こいつは大暴れに大暴れをしたからな、この巨大なコロシアムのあちこちにバカみたいに大量の血が散らばり、池かと思うほどのデカい血だまりがいくつも存在している。

 

「『線撃(レイ)』『線撃(レイ)』」

「あ……ガ……」

 

 光線の密度が増していく。

 穿ち抜いた部位から盛り上がる肉、それすらも上から消し飛ばす。

 周囲の瓦礫ごと、地面ごと、全てを穿ち貫き消していく。

 

 ゲームじゃコンテニューは多くて九十九回だが――さて、お前はあと何回コンテニューするつもりだ?

 

「『線撃(レイ)』『線撃(レイ)』『線撃(レイ)』『線撃(レイ)』『線撃(レイ)』『線撃(レイ)』『線撃(レイ)』『線撃(レイ)』『線撃(レイ)』『線撃(レイ)』『線撃(レイ)』『線撃(レイ)』『線撃(レイ)』『線撃(レイ)』『線撃(レイ)』『線撃(レイ)』『線撃(レイ)』『線撃(レイ)』『線撃(レイ)』」

 

 それはもはや一つの光線であった。

 絶え間なく無数の攻撃はもはや切れ目というものを捉えられない、ただ集まりゆく血液ごと相手の回復能力の上からすべてを吹き飛ばしていく。

 

 一分か、もしかしたら五分以上たっていたかもしれない。

 

「か……ぁ……きさ、ま……」

 

 コロシアムの中心をかける巨大な攻撃跡。

 瓦礫すらもが無くなり、えぐり抜かれた地面の中心にそれはいた。

 最後の血の吸引を終え、しかし足りず動くことすらままならない。かすかに痙攣する人型をどうにか保った存在。

 

「……しぶと」

 

 まだ意識あんのかよこいつ、生命力ヤバすぎだろゴキブリかよ。

 

 両目が重い。

 思考に枷がかかってるかのような疲労感、吐きそうなほどの倦怠感。

 

「……れ、ぬ」

 

 あ~?

 もっとデケエ声で言ってくれねえと何も聞こえねえよ~!

 

「ま、だ……終われぬ……我ら、が……復讐を……果たすまで……」

 

 オレ以上にまともに動けないであろうカズィクルが、おもむろに片腕を動かした。

 

 まだ何かしようとしてやがる。

 ホンマしつこくてうんざりしてくるわ。

 

「『レ――』、うくっ」

 

 腕を突き抜ける特大の激痛。

 思わず杖を取り落とす。

 

 しまった。

 

 焦り、男へと視線を移す。

 それは歪んだ空間から一つの物を取り出した。

 

「――古の、盟約により……その力……顕現、せよ……」

 

 中心に嵌るのは深紅の魔石、周囲を取り囲むは小粒ながらもきらびやかな宝石たち。

 黄金の輝きをさらに、精密な細工によって飾り立てられ、その見目だけでも十二分以上の価値が付くだろう。

 

 しかしその本質は――男が握る黄金のタリスマンが持つ真の力とは……っ!

 

「それは……!!!」

 

 オレはその魔道具に記憶があった。

 学院内、少し体調が良かったオレは散策し、厳重に管理されていたそれを見つけ出したからだ。

 

 背に伝う冷たい感覚。

 いやに厳重な置き方をされていたので何かと思って拾ったが、どうにもただの魔石発生装置だと思って終わらせてしまった。

 疑惑はあった。空間魔術の類が付与されていると。しかしあまりそれらには詳しくないので、そんなわけもないかと流してしまった。

 

 だが今目の前に、瓜二つの物がある。

 

 ……まさかあそこにあったのは、周囲の魔力を吸引するため?

 魔力を蓄え、この時のために備えていたのではないのか?

 

「啓くは……破滅の調べ……一切墜滅せよ…………冥龍『トーデストリーヴ』!!!!!!」

 

 黄金のタリスマンが煌びやかに光った。

 

 ……あの、月の光を受けて……ね?

 特に魔術の光とかは……ないっすよねぇ……。

 

「……なん……だと……!?」

「あ……っとぉ……」

 

 あー……うーん……。

 なんか……ごめん……そんなつもりなくてぇ……ただちょっと綺麗だったからパチったっていうかぁ……うん。

 

 オレはマジックバッグから、瓜二つのタリスマンをおずおずと掲げた。

 もちろん魔石は外してあるよ、何かあったら危ないからね。

 

「これ」

「あ、な……っ!? 何故貴様がそれを!?!?!?!?」

 

 愕然とする男、いたたまれない表情のオレ。

 

 ……いやー、こんな大事なところで使う奴なら教えてよ~。

 めっちゃ気まずいじゃーん。

 

「まさか……まさかまさかまさかッ! 全て……全て気付いていたというのかッ! 思えば……屋上に現れた時から……ッ!! 全て貴様の手のひらの上だったというのかッ!!!」

「…………??」

 

 ……?

 

「答えろッ!!!! セラフィリア・スタンレイッ!!!!!!!!!!!!」

 

 あっ!!!!!!!

 あ、ああ~~!!!!!!! うん!!! うんうんっ!!!!!!!!!

 

「貴方のたくらみ、全部お見通しだから」

 

 ふん!!!!!!!!!!

 全部バレバレだぜ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

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