学園でエセ勇者と揶揄されるオレ、うすほそ貧弱ボディ過ぎて喋らなかったら周りが勘違いを重ねて過保護になっていくんだけど   作:IXAハーメルン

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フルアダマンタイト製の大剣(時価総額10万金貨~)

「あら? どうしたのかしら?」

「ぇ……ゃ……」

 

 にゃ……

 

 にゃにぃぃぃぃぃぃいぃぃ!? 姫様だと!? ダメだろプリンセスがこんなところいたら!! 戦場ど真ん中ですよ!?!?!?!?

 

「姫様……?」

「あら。ふふ、気付いてなかったのね。第一王女のアルゴニアス・グロリアよ、よろしくね?」

「ぅえ……あ……はい……」

 

 ガッデム!! しかも第一王女かよおおおおおおおお!!

 その割にノリがフランクすぎるだろぉぉおぉぉ!!!!

 なんで!! こんなノリ軽くて!! 人間出来てて!! かわいくて!! 回復魔術まで使えちまうんだよ!!!!

 

 姫様に抱き着かれたオレの背中がしっとりしてくる。

 

 ヤッベーヤベヤベ!!

 ふっふふっ、服に皺がっ!! オレも流れで少しぎゅってしちゃったから姫様の明らかにスーパーウルトラハイパー高いであろう服にシワが出来てもうてますやん!!

 絶対一着で金貨十枚とか、もしかしたらそれ以上するかもしれねえ服にシワがっ!!!!

 

「アルゴニアス様……えっと」

「アル、でいいわ、親しい人はみなそう呼ぶもの」

 

 にっこりと微笑む彼女の笑みを見たオレは――意識が飛びかけた。

 この国、グロリア王国の第一王女、彼女に関する一つの噂を思い出したからだ。

 

 曰く、彼女は人の心を読める、と。

 公式には宣言されていない、しかし彼女と対話した人間は確かにそうであったと、皆しきりに頷くのであった。

 

「……アル、様」

 

 一方は髪と同じ薄紅、そしてもう一方はモノクルの奥に構える黄金の瞳。

 

『正直学院の生徒とか全員大して使えねえ雑魚だとしか思ってなかったわ……むしろいねえほうが足手まとい少なくていいとか思ってた……!!!』

『――ごきげんよう皆さん、ビューティー・ビューティー・セラフィリアです』

『ママ~~~!!!!!!』

『ビューティー・セラフィリアは店じまいだぜ!!!! 喰らいなァ!!』

 

 脳裏を過る、彼女と出会ってからのオレの脳内。

 

 ろくでもない思考の奴がいる、オレである。

 下らない思考を繰り返し迷惑をかける人間がいる、これもオレである。

 どんな状況でも誰と関わっても、問題発言と行動をする人間がいる。まさしくオレである。

 

 ゆっ、許してぇ……。

 

「~~っ!」

 

 うぎゅっ!?

 ひ、ひぃいいい~~~~~~!! なんで!? なんで抱き着いてきたのォ!?!?

 

「大丈夫よ……貴女の心、全く読めないもの」

 

 ビビるオレにアル様がしな垂れかかる。

 

 めっちゃ読んでるじゃん!!

 バカ読みじゃん!!!! ズバっとまるっとババっとドカンと全読みしてるじゃん!!!!

 

 しかしここでオレの灰色の脳みそが輝いた。

 オレの思考が読まれている前提でいこう、その場合常人がこうやってオレにしな垂れかかっていたら果たして次はどうする?

 そう、首を絞めるだろう。屠殺である。

 

 だが我が女神――いや、アル様はどうだ?

 にこにこと微笑んで、それどころかオレの頭をなでなでしている……つまり少なくとも怒っていないし、それどころか少し機嫌がよさげに見えるではないか。

 そして先ほどの素晴らしき精神性が垣間見える発言、ここから導き出される事実とは……多少アレなことを考えていても、いいことをすれば許される! ということだッ!!

 

 つまりまとめるといいことをする、アルちゃんポイントを稼げば許されるって訳だ!

 まじかよ……この結論に至れるとか賢すぎるだろオレ……!

 そうとなればのんびりなでなでなんてしてられねえ! オレは全力でアルちゃんポイントを稼ぐぜ!!

 

 と、いうわけで、まずはあそこで暴れまわってるカズィクルくんを消し飛ばさしていただく。

 

「アル様。その……魔術を、使いたいのですが」

「ダメね」

 

 だめだった、アルちゃんポイントを自発的に稼ぐことは許されないらしい。

 終わったわ(笑)

 

「お願いします……!」

 

 そこを! そこをどうにか!

 へへ……頼んますよ姉御……アッまずいっ!! 下劣な思考を止めろこの間抜けがッ!!

 世界を救いたいんです! オレは今日から愛に生きると決めたんです!! 全てに優しくなりたい……愛ですよォ!!

 

「……分かったわ、ただし少しだけよ。それとこの杖を使ってちょうだい」

「え」

 

 アル様が直前まで使ってきた杖をオレへと握らせた。

 ダークブラウンの木に巻き付けられた黄金、持ち手を中心として無数の宝石がはめ込まれた異様に絢爛な杖だ。

 

 ぽんっと渡されたけどヤバいぞこれ。

 第一王女が使う杖とか……一本で王都のど真ん中にクソデカイ家建てられるレベルじゃねえの……!?

 金貨換算で百……二百……いやそんなんどころか千行くんじゃねえの……!?!?!?!!?

 

 や、や、やべえええええええええええ!!

 ムリムリムリムリ!! 触れへんって!!! あきまへんってこんなん!!! おとととっ、おとっ、落としたらオレの首も落ちるわ!!!!

 

 月銀貨数枚で暮らしているオレ、内心で絶叫である。

 

「貴女最低品質に近い杖を使っているでしょう? 良い杖は品質次第で体内の魔力の整波、放出時の負担軽減、それに魔力のロスも大幅に減らしてくれるわ……ふふ、最後は貴女にはいらないかもね?」

 

 アル様がオレの手を覆うようにして杖をがっつり握らせてきた。

 おてての中は緊張と焦りでびちょびちょである。

 しかしオレのきったねえ汗をこの超高級杖に染み込ませる方がまずいのである、これどうしたらいいのであるか!?

 

「お兄さま……もう無理しないで……っ!」

「んぎゅっ」

 

 ここで固唾をのんで見守っていたラミュエルがオレへ抱き着いた。

 死である。

 おてては緊張でびちゃびちゃ、下半身は抱き着かれてミチミチ、脳みそは焦りでアチアチなのだ!

 

 ……どうする?

 さっきの攻撃で血が飛び散ってる、先ほど同様何度も魔術を撃ち込まなければ復活してしまう。

 数少ない魔術であいつを止める方法は……オレがなんかちゃんと関与してる感出せる方法は……!?

 

 いや、あるな。

 

「……ラミュ」

 

 攻略のカギはオレの腰に抱き着いてすさまじい勢いで締め上げている妹だ。

 まずこいつ、こんなツラしているがもーホンマアルティメット強いのは確定的に明らか。

 しかしなぜかここまで全く本気を出していない。

 

 その理由の一つ、それはさっきの独白……つまり、オレに引け目をかんじていたから。

 どうやらメンタル的に結構へこんでいたようで、戦う気がそもそも全く湧いていなかったらしい。

 しかしそれならなぜカメリアと一緒にバトっていた時、カズィクルくんをぼこぼこにできなかったのか……オレの考える理由はこれだ。

 

 まず武器がカスである。それは今彼女が握る、握力によって持ち手が歪み、刀身もひしゃげた剣を見れば分かること。

 そもそものパワーがあり過ぎて鋼製の剣など使い物にならねえのである。

 

 そこで、だ。

 

「――『ザ・クリエイション』」

 

 元々ラミュエルは大剣使いだ。

 故に生み出すは大剣。

 軽さは必要ない。ただひたすらに無骨であり、ただひたすらに鋭く、ただひたすらに堅牢である。

 

 一つ、実家の蔵に金属塊があった。

 それは異常なまでに重く、手のひらの半分程度のサイズというのにまともに持ち上がらなかったのだ……や、これくらいの鉄とかならギリ持ち上げられるからね!!

 そのうっすらと青みを帯びた金属塊は中々不思議な性質を持っていて、重いしやたらに硬くて魔法は吸収するし、丁度いい的としてオレは使っていた。

 

 やーアレ家の金属図鑑で調べたんだけど名前みっかんなかったんだよね。

 多分なんかの合金かなぁ……とは思ったんだけどね。

 とにかくあれマジめっちゃ硬かったし、重いし、ラミュの武器にちょうどええやん! って感じ。

 

「……くっ!」

 

 魔法陣からじりじりと取っ手が生まれる。

 同時に、明確に(・・・)体内から魔力が抜け落ちる感覚。

 今まで感じたことがないほどのそれに、無意識のうちに負荷に怯えた体が震え出す。

 

 だが……体内を走るはずの痛みが来ない。

 燃えるような感覚も、勝手に零れる血も。

 

「杖が負担を軽減してくれているわ……大丈夫」

「……はい、ありがとうございます」

 

 信じられない体験だった。

 今の一瞬で、ここいらに結界を張った時より魔力を使っている。にもかかわらずオレの身体には……ダメージがあまりない。

 勿論ゼロとは言わない、しかし今までの杖とは文字通り天と地の差。

 

 これが第一王女の御用達の杖パワーか……!

 これならっ!

 

「っ、『ザ・クリエイション』!」

 

 魔術の重ね掛け。

 二重となった魔力の回路によって、より一層膨大な魔力が魔法陣へと流れ込む。

 周囲には余波による激しい風が荒れ狂い、オレ達の身体を絶え間なく打ち付けていく。

 

 あまりの魔力圧に、一瞬体がくらりと揺らぎ……横にいた二人の手で抱きかかえられた。

 全身が回復魔術の輝きに包まれる。

 

「大丈夫、私が……いや」

「はい! あたし達がお兄さまを支えます!」

 

 二重の創造魔術の発動、それによって荒れ狂い焼けた体内が即座に回復していく未知の感覚。

 

 ――行ける。今までは不可能だったものも、今なら。

 

 ラミュに体を支えられ、アル様の回復魔術によって意識を支えられ――

 

「……ラミュ、お願い」

 

 ――その大剣は生まれた。

 自ずから幽玄なる輝きを放つ、蒼白の大剣が。

 

 オレは荒い息を上げ、潤んだ瞳でこちらを見る少女の背中を押した。

 

「貴女の本気で……あの魔族を、倒して」

 

 頼む、お前がカズィクルを倒してくれ。

 

 オレはアル様に肩を支えられ、いまにも飛びそうな意識を必死に保つ。

 ああ。今したことを思えばもう、すぐにでも気絶してしまえたらと思うさ。

 

 お前しかいないんだ。

 オレの希望は……ラミュエル、お前しか……っ!!

 オレが……オレが、姫様の超高級杖を魔術の反動で燃えカスの塵にしてしまった責任で、首を落とされる前に……っ!!

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