学園でエセ勇者と揶揄されるオレ、うすほそ貧弱ボディ過ぎて喋らなかったら周りが勘違いを重ねて過保護になっていくんだけど 作:IXAハーメルン
「おい」
多くの音ゲーってのは楽曲に合わせてノーツが流れてくる、曲に乗りながらノーツを押してフルコンボを目指すってのが基本だ。
だが今日オレがやっているのはちょいと違う。
ノリノリの曲に合わせてコマンドを発動、すると追って画面内のキャラクターたちが攻撃や回避など行うアクションと音ゲーが融合したゲームだ。
中々見ない新進気鋭のゲームかと思えば意外や意外、なんと二十年以上前の作品らしい。
「おい貴様」
うむうむ。
このシャンシャンとしたリズムに合わせて鳴らす太鼓、やかましくも画面を動き回るちびキャラたち、昔のゲームだが中々面白いではないか。
安かったから買ったが大当たりだ。
「おい貴様いつまで寝ているのだ! 食事すらせずにずーっとゴロゴロしおってからに! もう昼であるぞ!?」
無視していたイクルが寝っ転がってるオレの身体をぐりぐりと押してきた!
ぐあああっ!! 集中力が途切れる!
リズムが崩れるでしょうが!!
ああ~~!! 旗が咆哮の直撃喰らって即死ィ~~~!!
ミッション失敗画面が流れオレはそっと目を閉じる。
落ち着けオレ、たった一回負けただけじゃないか。復活はノーデメリット、今戦ってた奴は出現率が異常に低くレアな武器をドロップする奴だったが……なに、何度も再起動を繰り返して再び出現させれば良いだけのこと。
アンガーマネジメントというやつだ。
五秒じっくりと脳内で数えて待ち――殺すぞ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「はぁ……」
「ようやく起きる気になったか、退屈で朽ち果てるかと思ったぞ」
「……暇なら図書館でも行けば?」
別にそれくらい止めねえし。
何故かオレに押し付けられたイクルの保護……というか監視というか……だけれども、あんだけ呪いでガチガチに固められた上、大した力のないこいつなど何が出来るわけでもねえだろって感じ。
別に暇なら好きに行動してていいんだけど。
「貴様……わざと言っているのか!?」
がちゃがちゃと首輪を鳴らしながらイクルが牙を剥く。
学院の図書館って遠いか?
いや、行動制限の範囲が百メートルってのが問題なのか。うーん、長く感じるけど案外距離としては短いのかな。
……面倒くせェ~!!
「……寝れば?」
「もう寝た、貴様自分がどれだけ眠っていたか知らぬのか?」
どうやら寝るのもあきたらしい。
こいつの管理をいったいいつまで任せられるのか分からないが、今の気配だとよっぽど何かが起こらない限り長期間になりそうな気配がしている。
つまり、オレはこの先毎週休日になるとこいつにヒマヒマ言われることになってしまうわけだ。
おいガチでめんどくせえな、ダルいし休日とか一ミリも外出したくねえんだけど。
どうにかこの部屋から出ず黙らせる手段はねえかと考え――ハタと思い付いた。
ベッドから降りたオレはベッドの下に収納されているケースを引っ張り……ひっぱり……
「これ引っ張り出して」
「……何故我が」
重かった。
色々適当にぶち込みまくってるからしゃーない。
渋々、といった様子でイクルがケースを引っ張ると、その中にはカセットや機体がいくつも入っている。
そう、これはオレのゲームボックスである。
携帯式の物から据え置き式まで、生活費を削って買い集めたものが無数に眠っていた。
オレがこれを直接起動することはない。
何故かって? 基本的にシステムを解析して魔術で再現、インビジブルアイ上に投影するので本体を持ち歩く必要がないのだ。
よってまあ、一度解析さえしてしまえばオレにとって不用品ではある。
……規約的にはちと怪しいが、どうせインビジブルアイのはオレしかプレイできないしな。
セーフセーフ!
「好きなゲーム、やっていいよ」
「……げーむとはなんだ?」
「え」
ゲーム知らないの?
.
.
.
「ここが決定、こっちはキャンセル」
「ふむ……」
「攻撃は決定と同じ、ここぐりぐりすると動く」
コントローラーを拙くいじくるイクルの横に座り、ボタンの説明を次々に行っていく。
彼女は本当に全くゲームを知らないようで、困惑した顔でそれぞれのボタンを押していった。
「……げーむというのは魔道具の一種、それも娯楽に特化した物ということか。グロリア王国では変わったものを開発しているのだな」
「あー」
「なんだ?」
グロリアでもゲームは開発されているらしいが、その本拠地はまた別の国なんだよな。
いったいどこかといえば東国、小さな島国だったはず。
だがその島国、どうにもどいつもこいつも戦闘能力が高かったり、魔力に優れた人間が多いだとかで下手をすれば三大国家よりも平和だとの話もある。
そんだけ平和ならそりゃ娯楽も発展するって訳で、その国で生まれたのがこのゲーム達だ。
ゲームソフトはいくつかの国――グロリアも含む――で開発されているのだが、ゲーム機本体の大半はその国産だったはず。
「ではさっそくげーむをしようではないか!」
なんかテンション高ぇな。
どうにも魔人族はゲームの存在も知らんかったみたいだしな、未知のものに触れて興奮しているのか。
オレはぽちりと起動のボタンに触れると、ゲーム機の上に起動中の魔法陣が浮かび上がった。
同時に空中へ投影される映像、スタートボタンを押せとの熱いアピールがなされる。
今回俺が選んだのは――
「格ゲー、やろ?」
「かくげー?」
困惑する少女の横でボタンを押すように指示を飛ばす。
開かせたのはCPU戦、自動で攻撃してくる相手を倒すモードだ。
オレの指示に合わせてイクルがボタンを押すと画面上の敵の体力が削れていく、まあレベルも最低レベルなので雑魚OF雑魚なのだから当然だ。
「こうやって、キャラを動かして、戦わせる」
「……なるほど、格闘させるげーむということか。面白い、げーむ上ではあるが再び貴様と戦えるというわけだな?」
「ん。対戦モード開いて……そう、そこ押して」
魔人族は野蛮だな、バトルと理解するや否や興奮したように少し鋭い犬歯を剥いてやがる。
血の気が多くて困るね、ただのゲームだってのにさ。
オレは少しだけ嘆息し――内心にちゃぁぁぁぁぁぁぁぁっと歯茎を剥きにむきむき、剥き散らかした!!!!!
キキキッ……愚かな吸血ガキが……!!
オレがどれだけ普段からゲームしてると思ってやがる! テメエ如きが勝てるわけねえだろタコ!
授業中ですらまともに教師の話を聞かずゲームをしているオレが、今、人生で初めて、ゲームで触れる雑魚に負けるぅ~~~????
片 腹 痛 い わ !!!!!!
クスクスクスクス!
中途半端に思い上がった雑魚をこの手のひらの上でぶち転がしてやろうねェ~~!!
かわいいねぇイクルちゃぁ~~ん! これから泣きわめいても嫌がっても呪いで無理矢理オレが満足するまで格ゲーに付き合ってもらおうねェ~~~!!!!
「説明書、いる?」
「うむ、寄越せ。ふむ、ふむ……こうやって……なるほど、これがコンボか……」
オレが憐れみから渡してやった説明書を必死に読み込み、大柄なキャラクターのコンボを必死に練習する吸血ガキ。
だが強そうだと選んだそいつは鈍重のパワータイプ、扱いの難しい玄人向けのキャラ。
一方オレは素早く小回りが利き、必殺が強力な王道の強キャラ。
クハハハハッ!
オレは『インビジブルアイ』でゲームをどこでも展開可能、CPU相手に何度もコンボの練習を繰り返している。
全てのコンボを滑らかに、途切れることなく続けるなど余裕のレベル。
哀れ……哀れだ……ワハハハハッ!
「うむ、では――
「ん」
オレは久しぶりに物理のコントローラーを握り、内心にんまり笑った。
そんな嗜虐心を煽るようなどや顔をしていいのかい? 興奮しちゃうじゃないか……❤
――そろそろ狩るか♠