学園でエセ勇者と揶揄されるオレ、うすほそ貧弱ボディ過ぎて喋らなかったら周りが勘違いを重ねて過保護になっていくんだけど 作:IXAハーメルン
「なぁ~もう帰らんかぁ~? 早く帰ってげーむをせんか?」
テメエとはもう二度としねえよ! ばーかばーか! 死ねっ!!!!
横で日傘を差した煽りカスのゴミガキがうだうだと不満を口にする。
オレはそれをガン無視してのろのろと歩いた。というか喋る余裕などなかった、ガンガンに照っている日の下学院からずっとあるきっぱなのだ。
体力などとうに限界を迎えている。
「ふぅ……ふぅ……! ラミュ……ま、まだ……?」
オレの前をぴょんぴょんと軽快な歩みで進む少女、まあ言うまでもなく最強の妹様、ラミュエルに声をかける。
そもそも休日は外に出ない主義者のオレが何故こんな苦しむ目になったかといえば、そう、ラミュエルに誘われたからだ。
ゴミガキによってオレの気高きプライドが破壊されてしまったのが二時間ほど前、そして――
『お兄さま! デートしよっ!』
という訳で外に誘われ、ここにいるというわけ。
ちなみに道の途中で力尽きたオレはラミュに背負われて王都まで運ばれた。
それから何か所か店を巡った。
オレはあまり興味がなかったが流行の菓子屋だの、服屋だの……特に服屋は少し疲れた。
なにせきゃーきゃーと甲高い声でラミュがオレに服をあてがい、あれもこれもと買い込むものだから時間がかかって仕方がなかった。
今は薄い白のワンピースを着てブラウンのサンダルを履いている。
学院じゃ制服か薄い肌着、実家だと肌着か訓練用の服ばかり着ていたのでこの手の類はあまり着慣れていないが……まあ、風通しが良くて涼しいのは悪くないな。
学院の制服は仕立ては良いんだろうけど布地かっちりしすぎて暑ぃっす。
「……こっちにも日傘差して」
「何故我が?」
それでもやはり午後の日差しはきついものがあったので、横でこれ見よがしに日傘をくるくるしてやがるイクルに申請を飛ばすも、心の底から不思議そうな顔で彼女はこちらを見た。
こい……つ……っ!!!
てめえその傘誰が渡したか覚えてねえのかぁ!?
その傘今すぐ魔術で消し飛ばしてやろうか!! アァン!?
怒りのあまり破壊衝動に目覚めかけたが運のいい奴だ、今日のオレは体調が悪いから見逃してやる。
オレは渋々ゴミ杖を取り出し振るう。
少しの身体への痺れ、喉奥へ上がるかすかな血の匂いに顔をしかめながら、生み出した白い日傘をそっと開き――前からの視線に気づく。
「……ラミュも欲しいの?」
「いいの!?」
きらきらとした目でこちらを見てくるので、オレは大変気分よく頷いて杖を振るった。
まあ生物強度が高すぎるラミュには絶対いらない気がするが、それはそれである。
オレはオレのことが好きな人間が好きだ。
ラミュはオレのことが大好きらしいからオレも大好きだ! それにこの前のカトンボ討伐戦で予想通りに暴れまわってくれたからな、この程度のご褒美ならいくらでもくれてやろう!!
イクルは死ねッ!!!!!!!
「わぁ……! 大事にするねっ!」
赤色が良いというので渡してやると、なんと純粋なことだろう、開いた日傘を片手にくるくると踊るラミュエル。
うむうむ、よきかな。
「……ふん」
しかしいったい何が不満だというのか、オレのかわいい妹を睨むイクル。
おいやめろ、ラミュを刺激するんじゃねえ!
お前一時間前まで天井にめり込んで気絶してたのもう忘れたのか!!
どうにもラミュは少しだけ、ほんのちょっと過保護な気質があるらしい。
それに気が付いたのはこいつの本音を聞き、今までの行動を思い返した時だった。
思えば確かに水をぶっかけられた時に出てきたのもそうだし、そもそもこいつが学院に来た理由を考えりゃそうなるのも当然っちゃ当然。
だがしかし……ククッ、オレに従順であるという点がすべての欠点を容易く上回る!
「……おい、セラフィリア・スタンレイ」
その時、突然イクルがオレの腕をグイっと引っ張った。
なにすんねん!
というかお前力結構強いな!
「我の日傘に入れ、顔を俯けろ」
は!? テメエがさっき入れねえって言ったんだろボケ!
今更何言っても……うぉ力つよ……!!
抵抗する間もなくオレはイクルの日傘の下へ押し込められる。
なにすんねんとガンを飛ばしてやるも、奴は口を真一文字に結んで通り過ぎる人を眺めていたので意味がない。
首をロックされているのでとてもいたい、あばらが当たってゴリゴリする。
「奴の……いや、ただの……『端末』か……?」
「ねえ」
「我を助けに来た……訳ではなさそうか」
「いたい」
変な姿勢で歩かされるのでだんだん腰も痛くなってきた、脚も痛くなってきた、あと首がどんどん痛くなってきた、というかなんだか呼吸も……くぁ……!
「フン、もういい! だが我の傍にいろ、腕を組むぞ」
は?
いきなり束縛してきたと思ったら離されて、今度は手を組みてぇだとォ!? テメエさっきから何様のつもりだッ!!!
いいよ!
手を差し出すと蛇が絡むかのようにイクルが握ってきた。
いったい何がしてえのか分からねえ上に、何やらブツブツとずっと呟いてどこか上の空な態度。
……ストレス溜まってんのかな?
まあラミュにぶっ飛ばされて昼間に歩かされたらそりゃそうか。
かわいそう……まあひとえにテメエが弱くて肉体壊増部に捕まったせいだが……。
「あっ!! ちょっと! お兄さまっ!?」
その時が、オレの自由になった片腕に強烈な衝撃が走り抜けた!!
「お兄さまになにしてるの!? それはあたしがやーるーのーっ!!!」
そこに抱き着いていたのはラミュエルだった。
オレの腕をからめとり、ぷんすことほほを膨らませながらぐいぐい自分の方向へ引っ張っている。
かわいらしい雰囲気とは裏腹にオレの身体はミチミチと悲鳴を上げ始めた。
まずい! このままではオレの身体が破壊されてしまうッ!!
死んじゃう……ってコト!?
オレェェェェッ!!! 「生きたい」と言え~~~~!!!!!
――い゛き゛た゛い゛ッ!!!!!
痛いのは嫌なので結界に極振りしたオレは即座に全身へ結界を纏った。
「……なんだラミュエル・スタンレイ?」
「そっちこそ! 朝からお兄さまを虐めたりして!」
「そんなことはしていない! 我はただこ奴がげーむを我に進めてきたから一緒に遊んでやっただけだ!」
「ゲームを!? お兄さまと!? あたしだってやったことないのに……!!」
そりゃオレがゲームしだしたのは家出てからだからな。
というかこの前までお前とまともに喋ってなかったしやる余裕とかねえだろ。
次第に両端からのパワーが高まっていく。
とはいえ結界を張っている。普段攻撃などを防ぐそれと比べれば、体表面という複雑な形を保つために強度は下がるものの大丈夫――そう、たかを括っていた。
「――!?」
しかしそれは本来想定される、衝撃などを吸収する際の性能だった。
結界は防御魔術と比べ柔軟性が高い、様々な効果を付与できる――だからこそ、オレは『張力』という点での強化を行うべきだったのだ。
「なに!? 文句あるの!?」
「貴様こそ! 一々我に突っかかってきおって!!」
「ぉにょ……」
結界が引き裂かれた。
瞬間オレの両手がすさまじい勢いで左右に引っ張られ、体がピンッ! と二人の間で宙ぶらりんとなる。
ほにゃっ!?
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「ようこそ~メイドカフェあにま~らんどへ! 三名様……で……す……?」
ケモミミカチューシャをつけ、やたらと短いメイド服を着た女が困惑したように口元を抑える。
彼女の目の前にいたのは三人の少女だ。
仲良くやってきたのかと思えば、しかし、左右の少女は互いに目も合わせず真ん中の子の両腕を抱きかかえている。
そして真ん中、目を惹く白い髪の、儚げな雰囲気を保った美しい少女は――白目を剥いて気絶していた。