学園でエセ勇者と揶揄されるオレ、うすほそ貧弱ボディ過ぎて喋らなかったら周りが勘違いを重ねて過保護になっていくんだけど 作:IXAハーメルン
超幸福ハッピー★ハッピードチャクソ幸運あげみ旅行計画発足から二週間。
オレは可能な限りの時間を、計画のとあるバチクソに重要な要素のために注ぎ込み、休日にはそれを成すため何度も王都のど真ん中へと足を運んだ。
そして――
「何故今日呼び出されたか、貴女ならもう分っているわね?」
「はい……」
全然わかりませぇん!!!!!!!!!
――そして朝っぱらから王城に拉致られていた。
ㅤそりゃもう一瞬だった。ノックされたと思ったら王宮魔術師連中が何人も乗り込んできて、オレとイクルを確保し転移、気が付けば
実にごてごてと大層な椅子に座るアル様の前に立つオレ。
ㅤアル様のモノクルの下、細められた黄金の瞳がオレをガン見している。
ついでに横に並んだ騎士たちの視線も感じる。
「ごめんなさい」
「……何故?」
な、何故!?
分かんないっす……でもとりあえず謝っておこうかなって……!!
もしかして
流れるような動きだった。
完璧と言わざるを得ない、実にスムーズな土下座の体勢に移行したオレは、ふかふかのカーペットへと躊躇い無く頭をぐりぐり擦り付けた。
「じっ、自分は……っ」
へ、へへ……お金がちょっとだけ欲しかっただけなんですぅ!!!
ちょっと聖国までの路銀が欲しくてェ……!! こっ、こんな大騒ぎになるだなんて……!! たっ、ただの出来心って奴だったんです!!
結局
「下らんな人の姫、貴様は権威をひけらかすために我らを呼び寄せたのか?」
不遜な顔つきで腕を組んだイクルが言い放った、もちろんこのバカは突っ立ってやがる。
それどころか王城のど真ん中で日傘まで差してやがる始末だ。
――!?!?!?!?
おままままっ、おまっ!? なにしてくれとんねんこのボケカス羽虫野郎がっ!!!!?
誰だこいつ連れてきたの!? 常識ってもんがねえのか常識ってもんが!! 恥を知れよカトンボ!!
「おいなにをする。服を引っ張るな、伸びるであろうが」
ど! げ! ざ! だろ!
土下座をするんだよ! 相手はトップクラスの権力者! 今すぐ首がすっ飛んでもおかしくねえんだぞ!?
オレが必死に服を引っ張るもどこ吹く風、それどころか嫌そうに眉をひそめさくっとオレの手を払う始末。
こ、このバカ吸血鬼が……!!
もう知らないぞ! 勝手に死ねよバーカバーカ!
いや待て? 管理者は今オレ扱いだから責任もオレに来るのか!? 勝手に死ぬな馬鹿!
「うふふ、貴女の言う通りね
「ふん、下らぬ嫌味だ」
「あら? 魔人族の礼儀に合わせたつもりなのだけれど……ごめんなさい、貴女たちの文化には疎くて」
なにバトってんだお前ェ! アル様も何楽しそうに笑ってんスかァ!?
まずい、このままイクルを放置するととんでもないことになる。
オレは一刻も早くこのバカの口をふさがねばならぬと立ち上がった。とかく話を進めるのだ!
オレが渋々立ち上がったことに満足げに頷くアル様。
「さ、本題に入りましょう。貴女も判っている通り王都――」
くっ……! やっぱりか……!!
流石にやっぱり駄目だったか……王都で聖剣売――
「――地下、下水路においての一件についてよ」
……ん!?
想像と異なる話に一瞬硬直、あきらめに漬かっていた脳みそがフルスロットルで起動を始めた。
これは……セーフ! セーフです! 怒られません!
ふぅ……ほんのちょっぴりばかり焦ったぜ。
だがまだ警戒を解いちゃあならない、情報を確定させてから喜ぶのがプロってもんよ。
「……テスカ」
「ええ。『鏖狂』のテスカ……情報は乏しいものの、かつての大戦時に一件だけ残された物があったわ」
オレが小出しにした情報に頷くアル様。
うおおお確定だぁ~!! どんどんぱふぱふ~!!
「現在の帝国と王国、二ヵ国によって構成された連合軍の北部最前線は魔王軍と拮抗状態を保っていたものの、彼の出現から半日で――壊滅、比率として構成員の三割は死亡したと記録されているわ」
アル様が語る内容をほへーと聞いていたオレだったが、だんだんとそれが脳に染み込むことで額へと皺を寄せていくことになる。
「魔王軍も同規模の被害を受け撤退、幸か不幸か互いに同規模の被害を受けたことで均衡が保たれたとのことよ」
えぇ……やばぁ。
それ均衡扱いとか、毎日均衡を保っていらっしゃる世界中の天秤さん達がブチギレるだろ。
素直にドン引きです。
なんというか……たとえるなら噴火した火山、クソデカハリケーン、あるいはバカデカ隕石みたいな?
通るとその一帯が消し飛ぶという点で存在そのものが災害みたいな奴だった。
まあやるかやらないかで言うと……絶対やるわ。あいつ周囲の被害とか微塵も考えてなかったし、まあ魔人族だから当たり前っちゃ当たり前だけど。
……え、オレそんな奴に目つけられてんの?(二週間ぶり二度目)
「彼を撃退に追い込んだ、それだけで貴女の功績は計り知れないわ」
「……はい」
「だから貴女が謝ったり、ましてや気に病む必要はないの」
別に気に病んでなぞこれっぽっちもない。
だって勝手に現れて暴れやがったわけだ……し……?
オレはテスカが現れた時のことを思い出し、ふと気が付いた。
あれ……思えばテスカってなんか出てきた時、『遅延故に様子を見に来てみれば……』とか言ってたんだよなぁ。
あれってもしかしてオレのせいじゃね? 触手マンボコったせいで中々来なかったから確認しに来たとかだよなアレ。
それに触手マンボコった理由……つまり、あの時サーチに引っかかった人たちどうなった? バトルがヤバすぎて完璧に忘れてたぞ。
あっ、やばい。
冷や汗めっちゃ出てきた。
全部オレのせいじゃん、しかも大ポカしてるじゃん。
「ところで……」
「ひゃい!?」
まだ何かあるんですか!?
「現地の調査で残っていたものがあるのだけれど、これは貴女の魔道具かしら?」
アル様が傍にいた人へ目をやると、彼は恭しくなんかこう……高そうな座布団みてえな奴にのっけて煤けた物体を持ってきた。
「これは……!」
「やはり貴女の物なのね」
や、全然違います。
なんスかこれ?
渡されたそれを軽く裾で拭いあげると、現れたのは白銀の鍵だった。
あの場にあったあたりどうやらテスカとの戦いに巻き込まれたようだが、しかし汚れだけで傷だとか熱だとかで融解した後もない。中々丈夫にできている。
確かに魔力を感じはするものの軽く触った感じで動きそうな気配はない。というか中央にがっぽりと大きな穴が開いており、パーツそのものが欠けて……あっ。
穴の形を見て妙な既視感にしばらく考え込んだのだが、オレに一つ思い当たるものがあった。
カズィクルの襲撃時にパチ……しれっと盗……入手したアレには魔石の生成機能がある。
オレは件のタリスマンを取り出しちょみっと魔力をぶち込み、生まれた魔石を穴へとあてがった。
「……ぉ」
ぴったりでござった。隙間もない、寸分の狂いもなく全く同じ形。
マジか。
ちらりと視線を前に向けるとアル様もこちらを見ている、なんなら謎の期待すら感じる。オレの魔道具じゃないので大変気まずい。
真紅の魔石を嵌めたとたん魔力が巡りはじめ、ほのかに輝きを始める白銀の鍵。
どうやら起動はした……らしい?
とはいえ魔道具ってのは大体何かしら本格的に動かすための動作だとか、呪文だとかってのが必要なもんで、そう簡単に未知のものを動かせるわけじゃない。
軽く揺さぶってみたり、振ってみたりするも当然動くわけもなく。
おーぷんせさみ~なんてな! がはは!
適当に空中に差し込むような動作をしてひねった瞬間――
「――ぇ?」
光の扉が突如目前に現れて開き、どさどさと縛り上げられた人たちが大量にあふれ出しうめき声をあげた。
は?