学園でエセ勇者と揶揄されるオレ、うすほそ貧弱ボディ過ぎて喋らなかったら周りが勘違いを重ねて過保護になっていくんだけど   作:IXAハーメルン

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聖国にのりこめ~^^

 王城から帰る際に一つのやたらデカいバッグを持たされた。

 中身が入っているような感覚はないがしかし、オレの体格からするとあまりにデカすぎる。

 

「……つかれた」

「おいなに休んでいる、早く帰るぞ!」

 

 大通りに設置されたベンチにどっかりと座り込み横へとバッグを置く、革製でデカいので普通に重くて疲れた。

 日傘を差したイクルが苛立たし気に足をぺちぺち鳴らすも、オレはガン無視してその貰ったばかりなバッグを眺める。

 

「ふむむ……」

 

 一見ただのデカいレザーバッグだけど……マジックバッグかこれ? 容量は大分デカそうだな。

 うれしいっちゃうれしいけど……実はこの前カメリアから貰った奴の改造に成功したから、実のところそこまで必要でもないんだよな。

 おっ、横のカデナに王家の家紋入ってる。

 

 まあ少し見た目は無骨だが悪くはない。

 せっかくもらったもんだしドチャクソ幸運あげみ旅行で使うか。いくら容量を増やしても出し入れできるのはバッグの開口部のサイズに依存するからな、デカいのも持っておけば色々便利だろうし。

 

 外見を観察し終えたオレはバッグを開け、中はどないなもんかとなんと無しに手を突っ込み――

 

「ほゎっ……!?」

 

 冷たい金属の感触にびくりと震えた。

 バッグの中に大量の何か平たくて丸いものが詰め込まれているようだ。どうにも触った感じ尖ってるだとか危険な物でもないようなので、それを握って数枚取り出し――

 

「ほゎっ!?」

 

 金貨だ!

 金貨だァ!?

 き……金貨だァ!!! ほわっ!?(気絶)

 

 え、え、え、え。

 こっ、これ……何枚あるんだ!? 

 

『セラフィ、手土産として五百もあれば一旦は十分かしら?』

 

 まさか……あの五百って……いや、これざっと見た感じでも多分それよりはるかに多いけど!?

 どわぁ!? 冥龍の杖も追加で四本出てきたァ!? そういや後で追加分作るとか言ってたの忘れてたわ! 今!? 今なの!?

 

「……っ! っ!?」

 

 左右正面全方位確認。

 

 だっ、誰にも見られてないよね!? どっきりとかじゃないよね!?

 なんかのミスで入れられたとかでもないよね!? これ全部オレのってこと!? もらっちゃうよ!? 貰ったらもう絶対ぜーったい返さないよ!?

 

 口元をキュッと結んで周囲へ何度も視線を右往左往させていたオレを、不審そうな目つきでイクルが眺めている。

 わしのじゃ……これはぜーんぶわしのじゃ! 貴様とて渡さんぞ!!

 

 しかし引っかかるのは何故こんなにも大量の金貨を、という点だった。

 いうなれば今のオレは皿を遥かに超える大量のエサを山盛り盛られた猫の気分、うれしいというかあまりに量が多すぎてちょっと怖い。

 金貨ですら人生で触ったことあんまないのに……実家から月に送られてくるの銀貨数枚とかだし。

 

 やはりヒントとなるのは――先日のテスカとの一戦。

 

「これはまさか……」

 

 魔人族とのバトル頑張ってくれたしパーッと派手に遊んで来いってコト!?

 まあなんかめっちゃ褒められてたしなぁ!

 それだ! それしかありません! わーい! やっぱアル様は太っ腹だなぁ~!!

 

「おい、どうした」

「……今すぐ準備しないと」

 

 アル様の御心のままに!

 

 オレはキリリと眉を吊り上げ覚悟を決めた。

 

 のんびりしてる暇はねえ! 馬車の待合所に行って今すぐ聖国行きの馬車の予約だ!

 へ、へへっ! オレのだ……このお金はぜーんぶオレのもんだもんね!

 聖国でドチャクソ幸運あげみ旅行からのバカンスだ! もーめちゃくちゃ高いところに泊っちゃったりするもんね! それに高いもの買って……えっとほかには……えっと……いろいろしちゃうもんね!

 

「……っ」

 

 バッグを両手でぎゅっと抱きしめ周囲を小さく見まわす。

 

 えっほ! えっほ!!

 この大金でさっそく豪勢な旅行するってみんなに伝えなき……伝えたら取られるかもしれないから伝えない!

 

◇

 

 旅行ってなに持っていけばいいんだ?

 

 うきうきで深夜でも出ている馬車を予約した数時間後、オレは完全にどん詰まりに陥っていた。

 冷静になればオレは旅行なんてしたことがない。しいて言えば親父に無理矢理魔物塗れの森にぶち込まれたことはあったが、あれを旅行と呼ぶのなら多分テスカとの一戦も旅行として数え上げることになるので、決して認めるわけにはいかない。

 

「ん……」

 

 外も薄暗くなりつつある中、テーブルの上に置かれた王族印のバッグを前にオレは座り込んでいた。

 

 まず杖、冥龍の杖である。

 なんか追加で四本雑にぶち込まれていた、こいつらはまあとりあえず持っていこう。

 こんな超高級杖なんてなんぼあってもいいですからね! なんぼも渡されても落とすのが怖くてまともに取り出せねえし、学院にほっぽって行くのも気が気じゃねえよ……バカがよォ!!

 

 次に大量の金貨。

 バッグから出しながら数えたら千枚くらいあった、王都にクソデケぇ建物が建つレベルの価値である。

 このままではオレの金銭感覚がぐちょぐちょにされてしまう。ちょっと前まで銀貨数枚必死に切り詰めて生きてきたというのに、一体この先オレはどうなってしまうのだろうか。

 

 正直この金貨、直視するのがもう怖い。

 数えてる最中恐怖と疲労で手が震えた。金貨ってマジで高ぇねん、こんなちっぽけなの一枚落としたらそれで一般的な月収がアボンですよ!? あたまおかしなるで。

 

「ふぅ……」

 

 わずかに浮かんだ汗を拭い、そしてカメリアから貰った方のマジックバッグをついでに押し込む。

 

 実はこっちのカメリアバッグ、現状だと二つある。弄るとぶち壊れるかもしれんし、と前もって予備で作っておいたのだが内部容量の拡張に無事成功してしまったため、ついでに予備の方も改造してしまったものだ。

 そっちもそっちでいろいろ……その、うん……ちょっと王都で商売をね? ちょっぴりばかしの小遣い稼ぎをしようとして失敗したゴミを詰め込んで……こう、『予備』のメモを貼り付けベッドの奥の方にこっそりしまっておいてある。

 

 うっ、『アレ』の処理どうしよう……まあとりあえず旅行から帰ってきたら考えりゃええか!!

 

 そういや馬車の時間は……ああ、十八時くらいか。

 今からならまあまあ、歩いてもギリ間に合うな。最悪場所は把握した、転移魔術でどうとでもなる。

 

 オレはのろのろと席から立ち上がりバッグを肩にかけ……ピキっと走る肩への痛みにじんわり涙が浮かぶ。

 コイン数えたりデケぇバッグ肩にかけたりでちょっと負担をかけ過ぎたらしい、関節君がごりゅごりゅと熱いアピールをしやがる。

 

 くっ……行きなさいセラフィリア! ほかの誰でもない! 貴女自身(開運)のためにッ!!

 動け、動け、動け、動け、動いてよ! 今動かなきゃなんにもならないんだ!!

 ウオォン! オレはまるで人間ガガンボだ!!

 

「――セラフィ?」

「っ、カメリア」

 

 さあ旅立つぞといった直前、丁度カメリアが戻ってきた。

 まずい。何がまずいってカメリアはここ最近やたらとオレに絡んでくる。何か話すことはないのか? とか悩みは? とか、毎日同室で顔つき合わせてるんだから話すこととかないじゃんね。

 

「……そのバッグはどうしましたの?」

「すこし……アル様から貰った」

「アルゴニアス様から! そう……先日の一件の褒賞の一環ですのね」

「うん」

 

 ほんじゃ!

 

 スチャラカチャカポコ颯爽とカメリアの横をすり抜けるオレ。

 しかしワシっとつかまれる腕。

 互いの視線が交わる。

 

「……どちらへ?」

「すこし、旅行に」

「どちらまで?」

「聖国」

「どなたと?」

「一人」

 

 怒涛の質問に淡々と返事、オレは少し焦っているので彼女の後ろの出入り口へ何度も視線を送る。

 

 ほら~めっちゃ聞いてくるじゃん面倒くせェ~~!

 いーじゃんオレがどこ行こうとさァ! ただのドチャクソ開運あげみ旅行ですよ! そんなにお土産がほしいの!? 聖国まんじゅうとか買ってきたら満足かよォ!!!

 

「何故一人ですの? それにわざわざ聖国だなんて……それと先ほどの貴女は……っ」

「……放して」

「っ、お待ちなさいセラフィ!」

 

 一瞬だけちょみっと身体強化、カメリアの腕を振り払い――ずきんと背中から肩、前に回って胸元にまで痛みが駆け巡りまたちょっと涙が出た。

 ウオオオオオ! 身体強化負荷ァッ! うえぇん痛いよぉ!

 

「行かないと」

 

 痛みで涙目のなか即座に杖を握り廊下へ転移、ちらりと背後を見ると部屋からカメリアがこちらへ駆け出し手を伸ばしているのが見えた。

 めんどくせえのでもう放置。多分旅行から帰ってきたら怒られそうな気がするけど……未来のことは未来のオレに任せるぜ!!

 あとはよろしくなァ!!

 

「……さよなら」

 

 じゃあな!

 おめえらが必死にカリカリお勉強してお身体を鍛えてる最中、オレは素敵で無敵な開運旅行といかせていただきますわ!

 ほなバイビー!

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