学園でエセ勇者と揶揄されるオレ、うすほそ貧弱ボディ過ぎて喋らなかったら周りが勘違いを重ねて過保護になっていくんだけど 作:IXAハーメルン
魔人族達に追われる一人の女性。
なるほど、この言葉を聞いて手を貸さない奴は中々に人としての心が欠落しているだろう。
「『聖法術』に気を付けろッ!」
「魔人族共が……くっ、弑す!!!!!!」
殺意高すぎだろ。
問題はその女が全身から身体強化の輝きを放ち、凄まじい身体能力と剣術で魔人族相手に暴れまわっていなければだが。
雨あられのように降り注ぐ魔術を切り裂きすり抜け、次々に一撃をかましていく姿はいっそ無双ゲーのような爽快さすらある。
どうやらあの銀髪女、相当の手練れであることは間違いないらしい。
しかし魔人族達とてさるもの。
一人一人はどうやら精鋭程度とはいえ、巧みな連携によって着実に女へ傷を与えている。
このままでは彼女が捕まるのは時間の問題だろう。
「……うーん」
『聖法術』、まあ大した名前は付いているが要するに聖国周辺で使われてる魔術に過ぎない。
理由は知らんが聖国は回復魔術の素質持ちが多い、ゆえに聖法術の中には回復や防御などに関わる魔術が多いとかなんとか。
オレが使う
まあ魔術の豆知識は良いとして……要するにその単語が出てくるってことはあの女、いやはては魔族もおそらく聖国で普段から生活してるって訳だ。
他国の人間が逃げてきたとかなら『魔術』って称するだろうし。
つまり聖国でも魔人族共は何かしていらっしゃるわけだ。
「んしょ……ふぅ」
どさりとバックを地面におきため息。
とても冷静に現状を把握したオレはさらりと後ろ髪を払い――――天を仰いでそっと目元を手で覆った。
か、関わり合いたくねェ~~!!!
なんで!? なんでこのタイミングでこんなことになってんの!? 定期で出てる聖国王国間の馬車でよりによってなんでオレが乗ったタイミングなの!?
しかもなんか馬車消えちゃったんだけど! どこここ!? 周り見渡しても渓谷がある以外何も分かんないんだけど! 聖国の地理とか一ミリも把握してねえよボケカスおいコラ銀髪女ァ! どうしてくれるんだよコレェ!!!!!
あの女マジで許さん。
とりあえず泣きわめくまでぼこぼこに……する前にあの身体能力相手だとオレがボコボコにされそうなので、とりあえず聖都まで案内させるぞ、勿論背負ってもらうからな!! こっから聖都までどんだけの距離あるか知らねえけど自力でたどり着けるわけねえだろ!!
ぷんぷんと怒り心頭のオレは杖を向け――
「――
銀髪女の背後から振りかざされた槍先を消し飛ばした。
驚愕の視線が途端にオレへと集まる中、オレはずかずかと争いの中へ歩んでいく。
おうおうテメエら! さっきはよくもオレのぷにぷにほっぺをぷにぷにしながら切ってくれやがったなァ!
もし破傷風にでもなったらどう責任取ってくれんだオォン!? さっきからじんじんしてバチクソ痛ぇぞコラ!
「……これ以上、争わないで」
「待て! 君は――!」
テメエは黙ってろ銀髪女ァッ!!
おい魔人族共オレの話を聞け! 聞かない奴はブッ殺す!
なんだテメエら睨みやがって殺すぞ!!!!
これだから蛮族は血の気が多くて困る、一匹見せ物に潰してやらねえと理解できねえみてえだなァ!!
魔人族の反応は二つに分かれた。
困惑するように目線をうろつかせる者達と、勇ましくも武器を手に斬りかかる者達。
しかし遅い、大地を砕き現れた光鎖がその四肢を縛り付け瞬く間に全身を覆い尽くした。
「あの魔術はまさか……
銀髪女が叫ぶ。
む、唱えてないのに一目で見分けるとはやるな。
見た目あんまほかの拘束魔術と変わらんから地味なんだよね、大体の拘束魔術なんか光る縄っぽい感じだし。
まあこれも聖法術だからな、にしてもこいつなかなか魔術に詳しいと見た。
オレはてくてく歩きつつ背後に魔法陣を展開、威圧ついでに連中の周囲を取り囲むよう光線を解き放ち地面を消し飛ばしていった。
「……行って」
オレの言葉を聞き――僅かに後ずさる魔人族達。
まず第一の話としてこいつら、恐らくだがまともな組織に属してはいない。
魔人族がまともな組織もクソもねえだろうというのはまあ言葉の綾って奴、要するに何か戦うための武装組織だとかではねえって話。
まず武器の質も種類もバラバラだしな。連携だけは中々巧みなのは連中の中に覚えがあるやつがいたか、それともこういった行為を繰り返しての経験からか。
次にここが重要で……あまり戦闘に気乗りしていない、というのが一点。
だってそうだろう、人間ぶち殺すのが目的ならわざわざ護衛をふんじばったりなんて無駄の一言だ。
オレのことも別に攻撃してこなかったしな、もしやばかったら杖無しでも全力で結界貼ってたけど。
それに……テスカさんを見てみろ! あいつは突然現れてすべてを破壊していった、まさしく人間……というか生命ぶち殺しマシーンとしてあるべき姿をしていらっしゃる!
生命ぶち殺しマシーンとしてあるべき姿ってなんだよ!? バッッッッカじゃねーの!!
「貴方達を傷付けるつもりは、ない……今は」
「なっ! 何様の……」
「――
うるせ~~~!!! 知らねぇ~~~~~!!!
おら魔人族共! そこのけそこのけ! オレ様が通る!!!!
ついでとばかりに空から光線を降らせ周囲へボコボコと穴を貫通させていく。
直径はオレの拳くらい、しかし底が見えないほど奥深くまで貫通した穴を覗いた魔族たちは冷や汗を垂らし……一人、また一人と逃げ出した。
一度決壊してしまえばあとは早い。元々戦意の少ない連中だ、あっという間に皆散り散りに逃げ出してしまった。
一人まだ剣を構える銀髪女へ歩み寄る。
彼女の蒼い目に混じるのは困惑、それと少しの警戒だろうか。
「……怪我は?」
「あ……ああ。貴女のおかげで傷一つない、助力に感謝を!」
「そう」
ゆっくりと剣を鞘へ納め彼女が頷く、警戒も解かれたようだ。
まあ当然な話だ、こちとらテメエを救ってやった偉大なる大聖女様だからよぉ! 土下座して靴舐めて感謝の讃美歌歌い散らかしなってもんだわ!
それに怪我がねえのも上々! テメエが怪我して動けませんとか言われたら困るからな、オレが聖都までたどり着けずここらへんでカピカピに干からびることになるからよ!
「どうか名前を教えて頂きたい、が……その前に」
これでひと段落といったその直前、女が柄へ手を添え視線を横へ向けた。
そう、
ちっ、負け犬は大人しく縛られてればいいものを!
オレと同じことを考えたのだろう、女はオレへ視線を向けこくりと頷き――
「――彼らの処理は私がしよう、貴女は休んでいて……」
ぶち殺す宣言と共にボロボロの剣を抜いた。
そして実に手慣れた様子で転がる魔人族達へ歩き出し……オレは冷や汗を垂らしながら焦って余った片手を掴んだ。
おふぁ!?
ちょまっ、殺意が高すぎます!!!!!!!!!!!!!!!
「まって」
オレのミジンコくらい小さな心臓がとくとくと跳ね始めた。
「大丈夫だ、苦しみは与えない」
「いや……」
あっ、ちょっ、待ってほしいでヤンス!
力つよ……っ!! すとっ、ストップ!!
「どうか分かってほしい、これは」
「お願い……待って……」
「しっ、しかしだな」
言ったよ? 言った、確かにぶっ殺すぞってボクは言いました!
でもね! あれはこう……言葉の綾というかさぁ……!! あの、目の前でぶち殺されて呑気に自己紹介できません!
ごっ、ごめんなさい! いつもイキってるだけですぅ!! 本当は人殺すのとか怖くてやる気にもなりません!!!! グロいのも魔人族とはいえ人を殺したことでなんかふんわりずっと罪悪感あるのもすっごく嫌ですぅ!!!
あっ、でも本気で殺しに来た奴だけは絶対に絶対に許さないですぅ!! 許して逃がして後ろから刺されたりとかするの嫌だから本気で潰しに行きますですぅ!!!!
「命を救われた恩人の言葉を無視は出来ないな、だが……いつかその優しさが君を傷付けることにならぬよう祈ろう」
「大丈夫」
もし襲ってきたら本気でぶち殺してやるでヤンス!!!!!!!!
諦めたように頷き剣を収める女。
全く聖なるなんて関しているくせに聖国の人間は血の気が多くて困るでヤンスね。
「そういえば自己紹介がまだだったか。サンクティルだ、訳あって少し魔人族に追われる身だ」
銀髪女、もといサンクティルとやらがきりりとした顔でこちらへ視線を向ける。
その訳教えてくれへん? めっちゃ気になるんだけど。
なにしたん? お弁当で盗んだ?
実はオレもよくわからんムキムキマッチョの黒くて頭のおかしいおっさん魔人族と死会おうぞみたいなこと言われてるんだけど、こっから助かる方法とか知らない?
「セラフィリア、セラフィリア・スタンレイ」
「スタンレイ……!? まさか、勇者の!」
あ……はいはい、そっす。
うぃーっす、勇者の血筋でーす。敬え。
うぜェ~、なんで無駄に知識あるんだよこいつめんどくせえなぁ。
サンクティルの言葉にこくこくと頷く。
しかしこのまま合わせていれば無駄に深堀されて嫌な気分になること間違いなし、オレはさっさと話を進めるために何か言いかけた彼女の目前に手を広げた。
まあ目前というかあっち身長オレより頭一つぶんくらいデカいから、胸よりチョイ下くらいだけど。
半分くらい身長分けてくれ。
「聖都に、連れて行って」
テメエオレのはぴはぴ開運旅行を邪魔したツケはしっかり払ってもらうからなぁ?
もし逃げたらテメエもぶち殺すでヤンス!!!