この体になっても、足は速いままだった。
いや、前の世界よりも速度が上がってる。
確か、あっちでの記録が7.3秒で、今が6.5秒だから……。
(速く、なってる)
そんな当たり前のことに、ほんの少しだけ嬉しくなった。
個性社会の影響で、無個性でも鍛えればある程度の水準までいけるようになったのかな。
「ただいま」
「おかえりなさい、まふゆ」
お母さんの、いつにない真剣な表情を見て、少し鼓動が早くなった……気がする。
「まふゆ、高校のことなんだけど……直感で選んでもいいのよ? いいとこ行くなら雄英になるけど」
もともと、人の笑顔が見たかった。子どもが笑うところが好きだった。
人の助けになることがしたかった。
そうなると、この世界で人を助けられるのは──
「出願まで時間はあるか──」
「ヒーローになる」
「……まふゆ?」
「私、ヒーローになるよ」
「そう」
お母さんは、それ以上なにも言わなかった。出願の手続きをして、その後は私の努力。
「まふゆー!」
「透」
この中学で、一番仲良くなれたのは透だった。
それこそ、透と一緒に居たくて雄英を選んだくらいには。
「雄英の模試判定Cかー…、まふゆ、こんど家行っていい!?勉強したい!」
「いいよ。教える」
「助かる〜!流石はA判定……*1」
「なれるといいね、ヒーロー」
「なるよ! 勉強は、ちょっと不安だけど……」
「ううん、そうじゃない」
「?」
「プロヒーローに」
「……! うん、一緒に頑張ろ!」
「いってきます」
「頑張ってね、まふゆ」
いつも通りでいて、少しだけ違う心臓の鼓動。
透と共に訪れた雄英高校は、固唾を飲むほど広かった。
(……大学?)
あっちの世界なら大学と言われてもしっくりくる。いや、それ以上かもしれない広さ。
透は完全に固まっている。
「ん」
「まふゆ?どうしたの──わ」
「闘魂注入」
「……まふゆがハグなんて……」
「何、私のハグじゃ元気出ないの?」
「出ます出ます! 頑張るよ!! 一緒に!!」
「ん」
「……なんかまふゆ、図々しくなったよね」
「透が扱いやすいだけ」
「ひどくない!?」
ヒーロー科、実技試験の会場は別らしい。
同じ学校での協力を防ぐためだろう。
「それじゃあ、まずは筆記だね」
「うう……やってやるぞー……」