うわぁぁ!!! エルフだ!!??!   作:葛城

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息抜きがてら


うわぁぁ!!! エルフだ!!??!

 

 

 眠りの底へと降りようとする、あの一瞬の心地良さ。

 

 自分が無くなり、世界が無くなり、自分の中にある感覚が溶けて、心地良さだけで満たされる、あの一瞬。

 

 

 その時、俺はたぶんナニカを考えている。

 

 

 それが何なのかは、俺自身分からない。ただ、漠然とナニカを考えて、そのまま寝入る。

 

 そして朝に目が覚めて、自分がナニカを考えていた、その事全てをさっぱり忘れて、夜になって……寝入る直前にまた思い出す。

 

 もはや、何度繰り返したか分からない。

 

 寝入る直前に『あ、これ昨日も考えていたな』とナニカを考えていた事を思い出すけど、それだけ。

 

 いつも、眠気に負けてそのまま眠ってしまう。

 

 そして、すっかりキッチリ全部忘れて朝を迎え……それをずっと繰り返していることだけは、眠る直前に思い出していた。

 

 そして、今日もいつも通りに俺は眠りの底へと降りようとしていたのだけど……この時は、いつもとは違っていた。

 

 

 ──何に成りたい、と聞かれた。

 

 

 世界は真っ暗で、俺はとても眠かった。

 

 そんな中で、その声はとても静かで、それなのにはっきり聞こえて、まるで頭の中へ直接届けられているかのように理解出来た。

 

 でも、眠いから俺は答えられなかった。

 

 いや、答えようという意識すらなかった。

 

 なにか話しかけられている……という部分だけが分かるだけで、それ以上の事は何も……けれども、だ。

 

 

 ──何に成りたい? 

 

 眠いけど。

 

 ──何に成りたい? 

 

 眠いけど

 

 ──何に成りたい? 

 

 眠いけど、問いかけるその声は止まらない。

 

 ──何に成りたい? 

 

 再度、尋ねられた俺は……今にも寝入ってしまいそうな頭でも、ようやく返事が可能な程度には意識を向けることが出来たから。

 

 

『……唯一になりたい』

 

 

 声ではなく頭の中だけで返事をした。

 

 どうして、そう思ったのか……特に、理由は無かった。

 

 ただ、テレビで見るように、ネットで見るように、誰からも注目が集まる……そんな唯一無二になりたいと思った。

 

 そこに、意味なんて無い。

 

 ただ、これまでパッとしない人生を送ってきたわけだから、一度ぐらいは人から良い意味で注目を集めたいと……そう、思っただけである。

 

 

 ──了解した。どのような唯一に成りたい? 

 

 

 だから、誰かは分からない声の主がそんな返事をしてきたので、俺は……思わず、フフッと笑ってしまった。

 

 どのような……そんなの、俺が聞きたいぐらいだ。

 

 なんだか先ほどよりも頭がすっきりしてきたような……なので、ちょっとばかり考えるが……これはというのが思い浮かばない。

 

 スポーツ選手……アレもちやほやされるけど、そんなの一握りだけだし、引退する頃には昔の人扱いだし。

 

 アイドル……これはもっと競争激しいし、ちやほらされる分、ネットとかでデタラメ書かれるし。

 

 その他、色々と考えはするけど……どうも、負の部分ばかりが浮かんできて、これは違うんじゃないかって。

 

 

(……どうしたものか)

 

 

 考えれば考えるほど、ドツボにハマるというか……と、俺が悩んでいると、なにやら声が手助けをしてくれた。

 

 

 ──容姿は? 

 

(そうだな、見た目は可愛い方が良い。とにかく美形だ、身体も汚く醜いより、キレイな方が良い)

 

 ──老いるか? 

 

(そりゃあ、老いない方が良いだろう。死ぬまで若いなんて、アイドルの夢だぞ)

 

 ──他とは違う方が良いのか? 

 

(そりゃあ、そいつだけ特別ってのは分かりやすいしな。良い意味で特別なのは嬉しい)

 

 ──今とは違う方が良いのか? 

 

(どうだろう、同じことの繰り返しよりは、違う方が良いかな。もう、今は飽きたよ)

 

 そんな感じで、ポンポンといくつかの質問を投げかけられ、俺がそれに答えた後で……唐突に、頭の中に光が満ちて。

 

 ──では、さようなら。

 

 その言葉を最後に、俺は──。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そうして、次に目を覚ました俺の眼前に広がっていたのは、痛みすら覚えるほどに清々しい青空であった。

 

 

 サーッと、雑草が風で揺れ動く音が聞こえる。合わせて、身体を撫でていく風の感触も……そこで、俺は身体を起こした。

 

 眼前には、広大な草原が広がっていた。

 

 横を見やれば、広大な草原が広がっていた。

 

 振り返れば、広大な草原が広がっていた。

 

 どこを見ても広大な草原……大自然が広がっていて。

 

 

 ああ、これは夢か。

 

 

 そう納得した俺は立ち上がろうと──した際、すさまじい激痛と共に、俺の頭に様々な事が溢れかえった。

 

 存在していた記憶、存在しない記憶、新たに作られた記憶……それらが混ざり合って、これでもかと頭の中へと注ぎこまれていく感覚。

 

 それは……俺が今に至るまでの出来事と、俺に備わった『力』の扱い方と、己の現状に関することだった。

 

 

 ……そうだ、俺は死んだのだ。

 

 

 死因こそ心臓発作だが、その原因は病死や突然死ではなく、俺が生きていた世界の神様の、小さな不注意。

 

 その不注意が巡り巡って、俺の寿命を消し飛ばしてしまい……その補償として、俺は新たな身体と命を与えられて、別の世界に転生された。

 

 俺が生きていた世界では無いのは、単純に俺が違う世界を望んだから……だけではない。

 

 言うなれば、超巨大な装置を停止させてから逆流させて取り出し、修理してからもとに戻すみたいなやり方しかなく、それをすると問題なかった他の場所に不具合が生じてしまう。

 

 なので、いっそのことそのまま破損品として処分し、別の装置へと処分したソレをリサイクルさせた方が諸々への負担が小さい……というわけだ。

 

 そこに、俺の意思は無い。

 

 人が虫や微生物、植物の意思を欠片も気にせず、傍に居てほしくないという理由だけで殺すのと同じく、俺の意思は関係ない。

 

 ただ、その方が色々と都合が良かっただけ。

 

 むしろ、その程度の存在でしかない俺に大して色々と要望を聞こうとしただけ、博愛に満ちているというものだ。

 

 まあ、その要望なのだけど……まさかアレがアンケートの類だったとは思わず、俺は寝ぼけた頭で答え続けた結果。

 

 

「……ああ、だから、この身体なわけか」

 

 

 頭痛も取れて、記憶も定着し、視界が晴れた中で……自分の身体を見下ろした私は、深々とため息を吐いた。

 

 見たままを語るならば、そこには生まれたままなボディ……自分の身体とは思えない、美しい女体があった。

 

 男だった時にはなかった胸の膨らみ(かなり、大きいように思える)が視界を塞ぎ、下半身が確認出来ない。

 

 それでも女と断定出来たのは、記憶だけでなく……感覚的に、股間のブツの存在が無い事が分かるから。

 

 これは実際になってみないと分からないけど。

 

 有るのが当たり前で、物心付いた時から知覚していたブツが無いというのは、なんとも奇妙な感覚で。

 

 だからこそ、余計に今の自分は女になっているのを自覚させられた。

 

 

「……鏡よ」

 

 

 とはいえ、いちおうは魔法で……あ、なんか普通に魔法を使っている自分に軽く驚いた。

 

 当たり前のように自分が『魔法』というモノを理解し、行使できる……なんとも表現し難い違和感だが、慣れるしかない。

 

 ちなみに、『鏡』は魔法で作り出しているのではなく、亜空間にある私用の倉庫から取り出している。

 

 この倉庫はどうやら神様の餞別というやつで、軽く念じるだけでとてつもない量の物資がリストにまとめられて、私の頭の中で……止めよう。

 

 とにかく『アイテムボックス』、そういうものが私の中にはあると思ってくれたら良い。

 

 そうして、私は改めて鏡に映った自分を見つめ……ははあ、と納得した。

 

 既に頭の中へ流し込まれた記憶で分かっていたことだけど、改めて目視で確認すると、実感も湧いてくる。

 

 有り体に言えば、今の己は女で……いわゆる、『エルフ』と呼ばれる種族の特徴を有し、この世界でも『エルフ』と呼ばれているようだ。

 

 どうやら、認識としては私の前世のソレとそこまで違いはない。

 

 存在すると言われているが、実在するエルフを見た者は数少ない。絵本の中の存在、それがエルフで……話が逸れたので、戻そう。

 

 

 まず、私の顔だが、とにかく良い。

 

 

 この世界の基準がどのようなモノなのかまでは知らないが、私自身の感覚から見て、かなり良い方では……と、素直に納得できるぐらい、整っている。

 

 可愛い系か、キレイ系か、判断に迷うところだが……見れば、耳がぴょんと尖って伸びている。

 

 

 次に、首から下のスタイルも良い。

 

 

 俺から私になった影響か、あるいはずっと前から私だったという記憶があるからか劣情の類は無いけど、なんとも見事なボディなのは分かる。

 

 張りがある乳房は片手では収まらないぐらいに大きく、腰はきゅっとクビレていて、お尻は女性らしくデデンと大きい。

 

 いわゆる、グラビア体形というやつなのか……とりあえず、前世だったらさぞ注目を浴びると思われる容姿をしていた。

 

 

「……服よ」

 

 

 唱えれば、服が私の前に現れる。

 

 それは、この世界の一般的な女性が遠出をする際の恰好らしくて……なんだろう、ファンタジーとかではお約束な、旅人の服って感じかな? 

 

 ついでに、下着も出して……ちょっと前まで男だったのに、あまり違和感を抱かずに着替えを終えた私は。

 

 

「……近くの町に行ってみるか」

 

 

 幸いなことに、注ぎ込まれた記憶の中には、ある程度この世界の地理情報もある。

 

 いつまでもこんな何も無い場所でジッとしていても始まらないし……てなわけで、私は一番近い街へと歩き出したのであった。

 

 

 

 






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