──やはり、デカいモノはどの角度から見てもデカいわけである。
おっぱいというのは、角度によってけっこう印象が変わるという話がある。たぶん、おそらく。
より正確に言うなれば、写真で見るのと実物とでは、かなり違った印象になる、といった感じだ。
これは、単純に情報量の差だろう。
写真で見るとどうしても平面上にある立体の有無を認識出来るだけだが、実物だと直に立体を視認出来るので、より正確に大きさを感じ取ることが出来る。
その前提を踏まえたうえで語るならば、おっぱいは実物で見ると、だいたい写真の印象よりデカい、である。
で、今回の場合は写真は一切関係ないので、頭を空っぽにしてリーンネイヤ王女の事を語ろうと思う。
まず、肺炎の疑いがあったのだけど、それはすぐに完治した。
彼女の前世にある特効薬でも回復まで何日も……それどころか、回復が間に合わず、そのまま死んでもおかしくない状況だったのに……それも、魔法の薬のおかげだ。
さすがは彼女自身でもあんまり把握出来ていない『魔法』で作ったスーパーウルトラミラクル薬だ。
見た目はハイボールのウイスキー瓶だし、色合いも似たようなモノだから酒にしか見えないのだけど……まあ、それはいい。
魔法の薬のおかげで、とにかく、リーンネイヤ王女は見事なまでに消耗した身体まで回復した。
具体的に、何が起こったのかというと……まず、顔色が良くなった。
いくら病気が治ったとはいえ、失った体力や消耗した肉体までは回復しないのだが……やはり、魔法はすべてを解決する。
うっすらこけていた頬はふっくらと、青白くなっていた肌には赤みが増し、誰が見ても健康的と評価を下すくらいに良くなっていた。
そうなれば、目の下のクマも薄まり、髪の色つやも良くなり、全体的に潤いも増して……王女自身が持っている本来の美しさが表に出て来ていた。
ちなみに、おっぱいの張りというか、なんかサイズもちょっと大きくなったらしい。
ただこれは豊胸効果があったというよりは、肺炎から来る急激な消耗が回復しただけでなく、プラスαみたいな感じで回復したからだろう……と、彼女は思っている。
おそらくだけど、肺炎の症状は昨日今日みたいな感じではなく、その前段階……数日、十数日前、下手したらもっと前から出ていたのかもしれない。
ただ、リーンネイヤ王女は、第3王女だ。
肺炎とは断定出来なくとも、少しでも体調に異常が出ていると分かれば専属の医師が治療に当たっていた。
その結果、治療法が間違っていたとしても、肺炎に対しては一定の効果が出ていたようで。
それが結果的に完治とまではいかないうえに、症状を遅らせるだけに留まってしまい。
今回様々なストレスや条件が重なった結果、もはや通常の治療では手の施しようがない状態になっていた……と、いった感じだろう。
なので、それを踏まえると……今のリーンネイヤ王女は、肺炎を発症する前の健康な身体だった時、というわけだ。
だからなのか、リーンネイヤ王女のおっぱいはπでπでぱぱぱぱπであった。
それはもう、この世界においても巨乳に該当する彼女のπですら、小さく見えてしまうぐらいのビッグサイズである。
しかも、垂れていない(ここ、重要!)。
そう、常人ならば垂れ下がるぐらいのサイズなのに、まるで思春期ティーンエイジャーのように張りを保っているのである。
思わず内心にて(これが、ロイヤル……!!)と彼女が畏怖するのも、致し方ないだろう。
そのうえ腰は細く、お尻もビッグながら形が良いという、これが青い血筋かと思ったのも致し方……ん?
……なんで、それが分かるのかって?
それは、リーンネイヤ王女の触診というか、診察をしてほしいと頼まれたからである。
本当は一刻も早く済み慣れた屋敷あるいは城へ戻りたいのだろうけど……あ、ちなみに、普段の寝泊まりは屋敷なんだそうな。
これは初めて知った事なのだけど、城も住居の役割なのだけど、城は対外的な役割、あるいは有事の際に寝泊まりする要塞でもあるらしく……そうでない平時は、屋敷の方に居るのだとか。
言われてみたら、城って出入口いっぱいだから隙間風すごそうだよなってイメージだったので、なんか納得である。
で、話を戻すけど。
とにかく屋敷に戻ったら気も休まって精神的には良いだろう。
と、いった感じの意見が出て、王女自身もそのつもりだったようだ。
これは私が寝泊まりしている『家』が嫌いというわけではなく、畏れ多くて気が休まらない、といった感覚らしい。
王家(それも、第3王女)からビビられるエルフ……いったい、この世界のエルフってどういう存在なのだろうか?
まあ、そこらへんはひとまず置いといて、話を戻すが……とにかく、リーンネイヤ王女をどうするか、だ。
精神的な負担を考えたら、そりゃあ住み慣れた場所が良いだろう。でも、移動するには早すぎるのではという話にもなったわけだ。
冷静に考えたら、そりゃあそうだ。
いくら肺炎が完治したとはいえ、死にかけていたわけだし。
『エルフの妙薬』という名の見た目ウイスキー瓶にしか見えないそれで治ったとしても、不安を覚えて当然だ。
そこで、彼女はお願いされたのだ。
『エルフ様、どうかリーンネイヤ王女を診てくれませんか?』、と。
当然、医学の知識も技術もない彼女は普通に断った。普通に、私にどうしろっちゅうねん、みたいな感じでしかなかった。
でも、軽く診てもらえるだけでも、それでリーンネイヤ王女様も納得できる。見様見真似でかまわないから、診てほしい……と。
そこまで言われてしまえば、診ないわけにはいかないのが、エルフとしての辛いところだ。
たぶん、リーンネイヤ王女も分かってはいるのだろう。はっきりと私の口から『ダメだよ』って言ってほしいのかもしれない。
……まあ、見様見真似で良いのならば。
男性騎士たちが家の外へ出たのを確認してから……場面が冒頭に戻るわけだ。
改めて、『でっけぇぇ!!』とか『腰ほっせぇぇ!!』とか『なんかロイヤルな匂いするぅぅ!!』って思った彼女は、その内心をひた隠しながら……とりあえず、適当に『魔法』でサーチする。
困った時は『魔法』を使うに限る。
彼女自身、何がどうアレがこうなって『魔法』で解決できるのかは知らないけど、とりあえず、なんとかな~れ、と祈りながら……おん?
(……あれぇ? これって?)
なんだろう、胸のあたり……肺ではなく、下腹部のあたりに変な違和感を覚えた彼女は、そちらに手を向けて……『魔法』を使う。
そうして、やはり違和感は変わらず……むしろ、はっきりと違和感の位置が分かるようになってくる。
位置は、鼠径部より少し上、両端の二か所。
ここに何か臓器でもあったかと、しばし頭を悩ませた彼女は……ああ、と気付いた。
「王女様、子どもが出来にくい体質なのね」
と、同時に、気付いたら違和感の正体を口走っていた。
彼女としては、あんまり深い意味は無かった。
それは、無知だからであると同時に、そういった悩みに接した事がなかったからだ。
だって、前世は男だったし。加えて未婚で、経験した相手も自分も、子どもとか不妊とか考える歳ではなかったから。
別に、まったく子どもが産めないわけではない。
ただ、体質的に常人より妊娠しにくいだけで、相手の男が頑張ればなんとか出来るんじゃね……といった程度の認識であった。
「え?」
けれども、だ。
それは、あくまでも最低限の知識しかない彼女の感覚であって、この世界の常識で考えれば……青天の霹靂でしかなかった。
なにせ、王女だけでなく、メイドたちも驚愕に目を見開き、メイドの一人が動揺して椅子にけつまずいて「す、すみません!」と頭を下げたぐらいに……そんな中で、だ。
(……え? そんなに驚く? 王女さんもメイドさんたちも、まだ若いんだからまだ気にするような……)
ただ一人、たわけゲージフルスロットルな彼女は、状況をよく分かっていなかった。
(……あ、でも、昔の王族って血筋を守るために血縁が近しい間柄で結婚するとかで、子どもが出来にくくなるって、なんかの本で見たような……)
でもまあ、それでも、彼女は大人である。
「──大丈夫、若いからそのうち出来る、心配しなくていい。頑張れば50歳とかでも妊娠できるって聞くじゃない? 私が聞いた話だと、60歳でも妊娠したって聞いた覚えあるし」
なお、その60歳というのはギネスブックとかそういう世界レベルの……とにかく、だ。
己の不注意な発言で、無駄に不安をあおってしまったから……罪滅ぼし的な意味も込めて、彼女はニコッと笑みを向けた。
「……エルフ様」
だが、しかし……彼女は、少々考えが足りなかった。
「つかぬ事をお伺いいたしますが、エルフ様は……その、人間の初産がだいたい何歳頃だとお考えですか?」
「え、あ、う~ん、そうだな……」
なんか声色が低くなっている王女様の雰囲気に圧されるがまま、彼女は慌てて、かつ、真剣に考える。
残念ながら、そこらへんは彼女が習得した『最低限の知識』には含まれていない。
ただ、前世の世界に比べたら、早いんだろうなあ……みたいな印象はある。
(えっと、前世だと30歳ぐらいで初産ってのも珍しくなかったから、それより若く……20歳以下はアウトとして……間を取って25歳ぐらい?)
とりあえず、素直に彼女は語った。
「は?」
瞬間、場の空気が凍った……のを、彼女は感じ取った。すぐさま、彼女は言い直す。
「あ、やっぱり若すぎるよね。28歳ぐらい?」
さらに、場の空気が凍った──これには彼女も動揺し、当たってくれよと願いながら言い直した。
「ということは、30歳ぐらい?」
「15歳で、成人です」
「──え、まだ子どもじゃん」
思わず、彼女は真顔になった。
それを見て、王女たちも真顔に──けれども、彼女は冗談ではなく本気で15歳を子供だと思っている事に気付き、よろめいた。
「……え、エルフ様」
「はい」
「エルフ様にとって、人間は何歳で成人だと思っていたのですか?」
「う~ん、20歳!」
「……20歳は、だいたいの場合子どもが居て不思議じゃない年齢です」
「え、そうなんだ……(この世界の)人間って、そんなに若くして子供を産むんだね」
素直に驚いてそう答えれば、まるで雷鳴に撃たれたかのように王女たちは絶句し……互いの顔を見合わせる。
それを見て、(あれ、もしかして私、またやっちゃったかな?)今さらながら己の失敗を予感した彼女は。
「……に、妊娠に効果がある魔法薬、いる?」
なんとか、その言葉を絞り出したのであった。
……。
……。
…………なお、その際、病み上がりとは思えない勢いで王女たちが突っ込んできて、初めて身の危険を感じたのは……まあ、その場に居た女たちだけの秘密であった。