「はぁ……まだ頭が痛え」
昨日ミアさんにぶん殴られて気絶した俺は店の一室で寝かされていた。基本ここで働く時は泊まり込みだ。まあたまにホームに戻ることはあるが。今回は1ヶ月だからなぁ……
「でも俺用に制服を用意してくれてんのはありがたいよな。誰も俺の女装なんて見たくないだろうし」
どうやら俺の容姿は人から嫌われやすいらしい。この前なんて先輩冒険者にこの街から出てけって殴られたからな。他にも石を投げられたこともあったし。ギルドに行った時なんか受付嬢達に怯えられたからな。俺は何もしてないはずなんだけどな。まあ最近はマシになってきてるから大丈夫だけど
「さて、さっさと着替えて店開く準備しないとまたミアさんにぶっ飛ばされる」
俺は以前働いた際にミアさんから渡された男用の制服に着替えてから準備に向かう。一階に降りると俺以外のメンバーが準備にをしていた。ちょっと遅れたけどまあまだ許容範囲でしょ
『みんなー!おっはー!』
『全員の顔を見渡してから舌打ちをする』
あいも変わらずお前は出て来んのな。もうちょっと俺に対して手心をくわえてくれてもいいと思うんだよね。スパルタがすぎる。俺はお前のおもちゃじゃないんだよ。で、舌打ちなんてしたら全員からフルボッコにされる。よってここは元気に挨拶といこう
「みんなー!おっはー!」
「朝っぱらからうるさい奴にゃ」
「なんでそんなテンション高いのにゃ?」
「それは……」
俺が無難な答えを考えていると、世界が止まり、目の前に忌々しい選択肢が現れた
『今日から可愛い女の子達と働けるんだ。そりゃテンションも上がる』
『こんな掃き溜めみたいな場所で働くんだ。テンション上げなきゃやってらんねえ』
もうやだコイツ。出てくる度にツッコむのつかれるんだからそこそこにしといてくれよ。いや割とマジで。こんなの上一択に決まってんだろ。辛辣なこと言うと殺されるんだから勘弁してくれ。もうこの際キモがられるだけならいいんだよ。死ぬよりマシだ
「今日から可愛い女の子達と働けるんだ。そりゃテンションも上がる」
「相変わらずクッサイ台詞言うやつだにゃ」
「昨日頭殴られて気絶してた奴とは思えないにゃ」
「リュウセンさん。そのような発言は軽々しくするものではありません。それと私にはあまり近づかないでください。私は加減ができない」
「うっす……」
俺達が話していると、突然扉が開いた。開けたやつを見てみると、それはベルだった。何しにきたんだコイツ。まさか俺に会いにきたとか?へへっ、いい後輩じゃないか
「あ、リーダー!起きたんですね!」
「おう、ベルは何しにきたんだ?」
「いや、それは……」
「白黒頭、こいつは昨日食い逃げして行ったのにゃ」
「はぁ?なんでそんなことに。て言うか度胸あるなお前。豊穣の女主人で食い逃げとか」
じゃあなんだ。その分の金を払いに来たってことか?それは感心だな。まあ最悪俺が食い逃げの分だけは払えばよかったが、いらん出費は避けたいからな。あ、ミアさんが来た
「なるほど。金を返しにきたってわけかい。感心だね。アンタ達は引っ込んでな。まだ仕事が残ってるだろ?」
「うぃーっす」
俺はそう言って箒を手に取り掃除を開始した。ちなみに俺はホームでは料理と掃除を担当してる。金ないから頻繁に外食なんか出来ないし、掃除に関してもホームが汚いのは嫌だからな。見た目はオンボロだけど中は意外と綺麗にしてるぞ。
「そういやシルちゃん、なんでベルに弁当渡したんだ?昼飯どうすんの」
「それは……あ!なら賄いとしてリュウセンさんに作って欲しいです!」
「え?あ、うん。それはまあミアさんに聞かなきゃ分かんないけど許可が出たら俺が作るよ」
まぁ以前働いた時も接客やら料理やら色々やってたしな。そのおかげでめちゃくちゃ上達した。今じゃ掃除に関してはエースと言えるくらい早くなってる。料理は流石にミアさんには勝てない
「んじゃ、さっさと仕事しようか、ミアさんに怒られる」
「白黒頭は掃除担当にゃ」
「サボったら承知しにゃいにゃ!」
「それ君たちにも言えるでしょ」
まあいいか。んじゃあさっさと始めようか。10分で終わらせてやるぜ!開店する頃には埃一つないピッカピカな場所になってるだろうぜ
『ふん、まずは目障りなゴミどもを片付けるとするか』
『更地にしてしまえば掃除などいらん』
黙れ。出来るわけねえだろそんなこと。普通に実力不足だし人の所業じゃねえよ。それと、わざわざ変ない言い方させんな。何だよ目障りなゴミどもって、カッコつけんな
「ふん、まずは目障りなゴミどもを片付けるとするか」
「ふふ、リュウセンさんの瞳と同じぐらい、綺麗にしてくださいね?」
「任せなさい!」
……ん?今俺の瞳ぐらいって言った?気のせい?いやまあ確かにヘスティア様も「君の瞳は水晶のように透き通っているね」って言ってたな。ベルからも「まるで宝石のよう」って言われた。あいつの目も宝石みたいだけどな。綺麗な赤色で。まあいっか、褒められて悪い気はしないし。よし、早速始めるぞー!
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あれから数時間が経ち、夜になった。やはり酒場というだけあって客は多い。とてつもなく忙しい。ある時は注文を聞いたり、ある時は厨房で料理したり、酔い潰れた客の介抱など、様々なことをした。だがやはり接客業というものは客とのトラブルがつきものである
「おい、テメェオラリオから出てけって言ったよなぁ!?なんでまだいるんだよ!」
「アンタはこの前俺を殴ってきたおっさん」
「テメェの何もかもが気に入らねえ。特に見た目だよ!よくのうのうとこの町で生きてられるな、えぇ!?」
「お客様、店の迷惑となりますのでお静かに」
「お前らもそう思うだろ!なぁ!?」
いい加減にしてくんないかなこいつ。そういやこの前なんでおまえがここに!?とか言ってたな。もしかして俺その人とくっそ似てるとかそんな感じなのかな。まあどうでもいいけど流石に鬱陶しいな。て言うか悪いこと言わないからそろそろやめたほうがいいぞ
「はぁ……アンタ、それ以上はやめとけ。死ぬぞ」
「あ?誰が死ぬって?」
「俺たち」
「おまえもかよ!?」
「当たり前だろ!?いいか?ここはただの酒場じゃない。化け物の巣窟だ!みてくれはいいけど内面はモンスターより怖い。俺なんかより遥かに強いゴリラばっかだ。だからやめとけ?な?って、どこ見てんだよ」
「う、後ろ……」
「は?後ろかなんだ、って……ひっ」
俺が後ろを向くと、そこには恐らくブチギレてるであろう、我らがミア母さんとその他店員達がいた。あ、俺死んだわ
「ほう?アンタそんなふうに思ってたのかい。これは少し話をする必要がありそうだねぇ?」
「もうだめだ、おしまいだぁ……」
「さて、アンタ達、リュウ坊にお灸を据えてやりな!」
「「「はい!」」」
「いやだぁ!死にたくない!死にたくない!死にたくなぁぁぁい!!」
俺は裏へと引きづられ、口にするのも憚れるような酷い目にあった。恐らく客達も裏から聞こえてくる俺の悲鳴に震え上がったことだろう。次の日からは俺にキツく当たっていた先輩冒険者もすっげー優しくなってた
どこでランクアップさせるのかは悩みどころ。あんま簡単に出来るもんでもないしどうしようかな