「よろしくな、リュウセンさん」
「ああ、よろしく頼むよ」
俺はベルが専属契約したと言う鍛冶師、ヴェルフ・クロッゾ君と握手をしている。なんでも、鍛治スキルが欲しいからランクアップする為に俺たちのパーティーに入りたいとの事だった。一応団長は俺って事になってるから、ベルはヴェルフ君がパーティーに入ってもいいかを俺に聞いてきた。ベルが選んだ奴なら断る理由もないし俺は承諾した
「にしても、ベルから聞いたぜ。あんたもものすごい速度で成長して、レベル2間近なんだってな」
「そうだね。あと一つきっかけがあればランクアップ出来ると思う」
「リュウセン様は冒険者歴が半年でしたよね?それでレベル2間近だと言うのならかなりの才能をお持ちです。あのアイズ・ヴァレンシュタインですらランクアップに一年を要したのですから」
「まあ、ベルには及ばないけどね」
「そんな事ないですよ!今でもリーダーに勝てるかどうかわかりません。ステイタスは僕が上でも戦闘技術なんかはリーダーの方が上ですから」
ベル、お前最高だよ、出来た後輩すぎる。やはりリーダーの座を譲った方がいいのではないだろうか。て言うかリーダーと言う判断力やら指揮能力がいる役職俺には向いてないよ
『リーダーの座をベルに譲るかどうかメンバーに聞く』
『問答無用でリーダーの座を譲り、バイトに戻る』
相談か、それはアリだ。だが強制的にリーダーを押し付ける、これはナシだ。ていうかなぜバイトに戻る?追い返されるだろ、ミアさんが一週間休暇をくれるって言ったんだからそれに従え
「なぁみんな、正直俺はリーダーには向いていないと思う」
「え?急にどうしたんですか、リーダー?」
「ベルは最近急成長を遂げ、レベルも2になった。それなのに俺は無償バイトで時間を浪費してろくにダンジョンにも行かず、ファミリアに貢献していない。これでリーダーを名乗るのは烏滸がましくはないだろうか」
「確かにリリもそう思ったことは何度かあります。この人は団長としての意識がまるでないなと。ですがベル様があなたをリーダーとしてお認めになっている以上、私からは何も異論はありません」
「俺はアンタのことよく知らねえけど、ベルが信頼しているって事実だけで十分だろ。それにパーティーに入れてもらってる立場で偉そうに意見を言うのも違うしな」
「みんなの言う通りですよリーダー。向いてないなんて言わないでください。リーダーがいてくれるから僕は安心してダンジョンに行けるんです。それに、これまで何度も助けられてきました。僕は、リーダーの事を尊敬しています」
「みんな……」
俺が感動的になっている時、地面からモンスターが生えてきた。インプとオーク、11階層でよく出現するモンスターだ。だが今の俺とベルなら相手にならないだろう。サクッとやってしまおう
『感動的な場面を遮られた。殺す』
『リーダーは後ろでドンと構えるべき。全てみんなに任せよう』
お前根に持ちすぎだろ。もう怖いよ。それにお前リーダーの事なんだと思ってんの?ただ後ろでふんぞりかえってるリーダーとか誰もついてこねーよ。リーダーやるからにはちゃんと頼れる背中を見せてやらねえとな
「よくも感動的な場面を邪魔しやがったな。空気読めよ!まじ殺す!」
「モンスターに空気を読む事を求める人なんて初めて見ました‥…」
「なんだ、結構面白い人なんじゃねえか?」
「リーダーは良くも悪くもマイペースですからね!」
俺たちは現れたモンスターをどんどん蹴散らしていく。しかし、ベルのやつ強くなったなぁ。震えながら俺の後ろをついてきてた頃が懐かしいぜ。今は俺の方があいつの背中を追いかけてるよ。今なんてあいつの動きにギリギリついていってるからな
「すげーな。ベルが強いって言うからどんなもんかと思ったが、レベル2の動きに難なく合わせてる」
「そうですね。自身も積極的に戦いつつ、ベル様のサポートも行なっています。彼もまだ半年しか冒険者をやっていないのに、かなり戦闘慣れしていますね」
リリちゃんとヴェルフ君の話す声が聞こえているけど、2人は俺が普通にベルに合わせてると思ってるらしい。こう見えても結構頑張ってるんだぞ?特に速度はベルの方が断然上だしな。とまあ、とりあえずモンスターは全滅させた。魔石もかなり集められたし今日はこのぐらいでいいだろ
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翌日、リリちゃんが何やら用事があるようで、今日はダンジョンには行かないという事になった。ベルもヴェルフ君が装備を新調してくれるらしく、彼について行っていた。バイトもダンジョンもない、久しぶりのフリーの日だった
「でも、最近こんな機会なかったから、逆に何していいかわからないな。1人でダンジョンに行く……のも悪くはないけどせっかくの休みなんだから休日らしいことしたいよな」
とは言ってもまじでやる事がない。適当にブラブラして飽きたらホームに帰るか。あ、じゃあ金は持ってるし新しい剣でも買いに行くか?二刀流ってのもありじゃないかな。そうと決まれば早速……
『やる事がない?ならナンパだ!』
『スリル満点!下層まで1人で行こう!』
行けなくなっちゃった。そして今こいつ俺のこと殺す気か?レベル1の冒険者が1人で下層とか自殺行為以外の何ものでもないだろ。ならもう失敗するのが確定してるナンパ選ぶよ
「まあどうせ失敗するしいいや。もう冷えた目で見られるのには慣れたし」
俺は歩き出し、とにかく目につく女性みんなにナンパした。結果から言うと成功しちゃいました。まあ成功したと言ってもその子は知り合いだし、好きな人がいるから俺の事は眼中にないと思うが。とりあえずは近くの喫茶店に入ってコーヒーを頼んでから話をする事にした。ちなみに俺が奢る事になってる。まあ自分で言ったからには払うんだが
「最近、調子はどう?ナァーザちゃん」
「そこそこ、かな」
「今日はポーション作るための材料調達ってとこかな?」
「うん、リュウセンさんは?」
「今日は何もやる事ないから適当に散歩してたけど、ナァーザちゃんを見かけたから声をかけたんだ。しばらく会ってなかったし」
「確か、酒場でバイトしてるんだよね。ベルから聞いたよ」
「まあ壁とか天井壊しちゃったから弁償のために無償バイトしてるだけなんだけどね」
ナァーザちゃんは犬人の女の子だ。そしてミアハ・ファミリアの団長でもある、俺たちはこの子の店でポーションを買ってるんだ。まあ詐欺られてたんだけどね。初めはなんとも思ってなかったんだけど、他の店でポーションを買う機会があったんだ。そこで買ったポーションを使ってみたら値段はほぼ同じなのにナァーザちゃんから買ったポーションの方が効き目が薄かったんだよね。それについて問いただしたら、正直に白状してくれた。まあ理由が理由だから仕方ない部分はあるんだけど悪いことしたのに変わりはないから、ミアハ様に伝えたらそれはもうクソ怒ってた。まあそりゃそうだわな。自分のファミリアの団員が詐欺してるとか聞いたら怒るよね
まあ、その後は2人で俺たちに謝罪をしにきた。ヘスティア様は今後インチキ商売をしない事を約束するなら今回の事は水に流すと、ナァーザちゃん達を許していた。さすが我らがヘスティア様。で、この後はミアハ・ファミリアも多額の借金を払わなければならないと言う事を聞いて、それを返済する為に、新薬を調合する為の素材調達のクエストを依頼された。まあ俺は謝ってくれたし別にいいかと思ってそのクエストを受けた。それはベルやヘスティア様も同様だった。で、そのクエストで入手した素材でナァーザちゃんは
「最近ベルがレベル2になってさ、リーダーとしては少し焦ってるんだよね。べつにベルにリーダーの座を取られるのが嫌とかじゃないんだけど、むしろ渡してもいいとさえ思ってる。でも当の本人は俺の方がリーダーに相応しいって言うんだ。それに報いる為にもはやくランクアップしたいけどそう簡単にはいかないんだよね」
「でも、リュウセンさんも最近すごい早さで成長してるんだよね?ベルがリーダーはすぐにランクアップします!って自信満々に言ってたよ」
「きっかけさえあればね」
まあそもそもランクアップ自体そう簡単にできるもんじゃないし焦らなくてもいいかもな。むしろベルの方が異常だと思う。あまりに早すぎる。そう考えると、焦ってたのがバカみたいだな。にしても、次は何を話そうか
『ミアハ様との進展について聞こう』
『もう話すことはない。会計をして帰ろう』
帰るにはまだ早いだろ。もうちょっと話そうぜ。にしてもミアハ様との進展か。聞きてぇ。他人の恋愛事情ほど聞いてて楽しいもんはないよ。と言う事で思い切って聞いてしまおう
「ナァーザちゃんさ、ミアハ様との進展はどうよ」
「ブフッ……ゲホッ、ゲホッ」
俺の一言でナァーザちゃんは飲んでいたコーヒーを吹き出してしまった。そしてほんのり頬を赤らめながら俺をジト目で見ていた。いやまあ普段から感情を表に出さない子だからジト目でも普段と変わらんように見えるけど。ただ、ディアンケヒト・ファミリアの悪口言う時は超感情を露わにしてるんだけどね。初めて愚痴を聞いた時この子こんな顔と喋り方するんだなと思ったよ。ちなみにディアンケヒト・ファミリアのアミッドちゃんとは仲悪いみたい。この前いがみ合ってるのをチラッと見たんだよね
「急にそんなこと聞かないで、びっくりするから」
「ああ、ごめんごめん。で、進展ある?」
「………」
「あ」
俺の問いに対してそっぽを向くナァーザちゃん。ないんだね。まあ相手は神様だしねえ。よし、これ以上聞くのはやめよう。まあ応援ぐらいはしてもいいか
「俺は応援してるよ。神様と人だから前途多難ではあるけど、悔いのない結果になる事を祈ってるよ」
「うん、ありがとう……あ、私も聞きたいんだけど、リュウセンさんはそう言う話はないの?」
「ないね、全くない」
真顔でそう言う俺に対してナァーザちゃんは申し訳なさそうな顔をする。やめて?むしろ傷ついちゃうから。俺だっておかしいと思ってるんだよ。モテなさすぎじゃね?見た目だけではどうにもならない事もあるんだね。ベルやヘスティア様、それに他知り合いの人達からも顔に対してはいい評価貰ってるんだけどな。やっぱ選択肢の問題か。お前さぁ……
「もう一生独身なんじゃないかと思い始めてる」
「そんな事は……ないと思う」
「自信なさげじゃん……」
いやまぁ?別に恋人なんかいなくたって生きていけるし。仲間達もいるもんね。悲しくなんかないさ。悲しくなんか……
『恋人が欲しいと泣き叫ぶ』
『もういっそのこと目の前の美少女を襲ってしまおう』
ッ!?アホかぁぁぁぁぁ!!俺に死ねっつってんのか!どっち選んでも社会的な評価は地の底だろ!?だったら尊厳なんて捨てて泣き叫んでやるよ!どこの誰かも分からない赤の他人からどんな目で見られたってダメージはない事はないけど、襲おうとして交友関係が1つ減る、いや知り合いみんなから絶縁されるよりは1万倍マシだ!
「うわあああああん!!俺も恋人ほしいよぉぉぉぉぉ!!」
「ちょっ!?」
ナァーザちゃんは驚愕の表情を浮かべながらあたふたしている。そんな事関係なく俺は泣き続ける。流石にこの場に留まり続けるのはまずいと思ったのか、ナァーザちゃんは俺を無理やり歩かせて会計を済ませてから店を出た
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「ほんっとうに申し訳ありませんでしたぁ!!」
「うん、もういいから顔をあげて」
「うん」
「……切り替え早いね」
選択肢による奇行により、まさかのナァーザちゃんに支払いをさせるという男としてのプライドがズタボロになるような結果になってしまった。穴があったら入りたい!
「うん、お金返すよ。そうしないと俺は俺が許せなくなる」
「いや、いいよ。これはいつも店でポーションを買ってくれてるお礼だと思って」
「いいの?」
「うん、それより、なんで急に泣いたの?」
「スキルのせい。時と場合関係なく変な事させてくる。このスキルに俺は抗う事はできない。これ以上詳細は言えない」
「そんなスキルあるんだ……」
ほんとごめんね。これ以上何かしでかさないように帰ろう。いやぁ、休日のはずなのに疲れたよ。精神的に。とりあえずナァーザちゃんにお礼だけ言って帰ろう
「ナァーザちゃん。今日はほんとありがとね。今度店に行った時は奮発するよ」
「うん、待ってるよ」
ナァーザちゃん入手お礼を言った俺は、ホームへとダッシュした。帰る道中に選択肢が出てくる事はなかった。帰った俺は色々と失ってしまったものに思いを馳せながら枕を濡らした
本来ナァーザがやってた詐欺商売について見破るのはリリなんですけど、ここは団長としての威厳を見せるためにリュウセン君に見破ってもらいました。まあ人としての尊厳は無くなっていってるんですけど