「……っ!!」
リーゼは勢いよく目を覚ました。
身体を起こそうとした瞬間、全身に激痛が走る。
「っ、ぁ……!」
思わず顔をしかめる。
それでも自分の手を見つめた。
指を動かす。
握る。
開く。
「……生きてる」
小さく呟いた。
そのすぐ横では、アルドがベッドに突っ伏したまま眠っている。
黒髪は少し乱れ、目の下には薄く隈ができていた。
はあ、とリーゼは息を吐く。
どのくらい寝ていたんだろう。
喉も渇いている。
「ねえ、ねえ。アルド」
肩をゆさゆさと揺らす。
「ん……」
ピクリと反応したものの、起きる気配はない。
「ちょっと、起きてよ」
「ん……悪い……」
ぼんやりと顔を上げたアルド。
だがベッドに寄りかかるような体勢だったため、顔が思った以上に近かった。
気付けば鼻先が触れそうな距離。
「っ、近い! 近い!?」
リーゼの顔が一瞬で真っ赤になる。
逃げようにも身体が思うように動かない。
「え?」
寝起きで状況を理解していないアルドが首を傾げる。
その仕草でさらに距離が縮まった。
「だから近いってば!」
慌てた拍子に身体を動かしてしまう。
「っ……!」
激痛が走った。
リーゼの表情が歪む。
「リーゼ!?」
ようやく目が覚めたアルドが飛び退く。
「ご、ごめんっ!?」
慌てて距離を取るアルドの耳も、しっかり赤く染まっていた。
「み、水。...頂戴...」
やっとの思いで言葉を紡ぐリーゼ
「ああ、直ぐに痛み止めも準備するから一緒に飲んで」
そう言って水を渡すアルド
「...ありがとう」
水を受け取るだけで身体中が悲鳴を上げる
顔を顰めてしまう
「...っ、なんか痛みが増してる気がする」
「それは多分、呪印を引き剥がしたからかも知れない」
「え?......え?!」
リーゼは瞳を見開いた
そして、自身の胸を抑える
「そんな、ことが?」
金色の瞳が揺れる
「名医に頼んだんだ」
頭を掻きながらアルドは視線を泳がせた
どこまで話をするべきか
「名医?」
「悪魔の"ゴッドハンド"」
その言葉を聞いてリーゼの表情が変わった
まるで知っているかのような
「それって------------」
「僕のことだよ」
いつの間にか部屋の中に彼はいた
「?!」
リーゼは、肩を震わせその反動で痛みに身体を丸めた
全く気づかなかったことに驚く
「いつからそこにいたんだ?」
アルドも気づいてなかったため驚いていた
「お嬢さんが目を覚ました時からだよ?」
金色の瞳と赤色の瞳がぶつかる
それって、つまり。
さっきの見られてたってこと?
睨むリーゼに敵対せずヴィクトルはにこやかに手を振った
「約束通りってわけだ」
アルドはその様子をじっとみた
「そ。さて、お嬢さんと話をしていいかな?」
頷くアルドは唾を飲んだ
「何?」
「まずは治療の報酬の話だ」
「報酬?」
アルドは聞きなれない言葉に片眉を吊り上げた
「君の中にあった呪印なんだけど...エルフの力が高密度で入っていてね?その一部を抽出して吸収させてもらった」
「...」
「だから、今回の治療費はチャラにしてあげる」
「なんだって?そんな貴重なものなのか?」
相手はエルフだぞ?
人間から貰う報酬に換算したら1000万倍だって請求してくるだろうと思っていたのに!!!
リーゼはアルドに顔を向けられ視線を彷徨わせ、呟く
「そう。それは良かったわ」
つまり、1000万倍以上の価値だぞ?!
「良かったのか?!」
「私の力そのものが無くなったわけじゃないでしょ?」
アルドの言葉に片眉を上げるリーゼ
「いや、そうかもしれないけど...」
「それじゃあ、問題ないね?」
パンっと掌を叩くヴィクトルは話は終わりと立ち去ろうとした
「いいけど、悪用しないでね?私の責任になっちゃうから」
ヴィクトルに向けリーゼは話しかける
「.......僕はかなり有名な名医だよ?何も悪いことなんかしないさ」
「そうよね、有名だもんね」
「...」
アルドは半目で薄ら笑いを浮かべる