誓って食い逃げはしません   作:タカリ

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夏、無人島試験

 一学期の最後のイベント、期末試験でもクラスから脱落者は出ず、無事に夏休みに突入した。夏休み序盤は生徒会活動で会長の手伝いをするのと、無人島バカンスの準備で終わった。

 

「おはようございます、晴柀くん」

「おはよう坂柳さん、神室さん。……坂柳さんも今回のバカンスに参加するの?」

 

 集合時間が近づき、生徒たちが続々と集まっている中、坂柳さんたちに出会った。神室さんたちの更に後方には大きなカバンが三つ持った男子生徒がいる。確かAクラスの橋本だったっけ。神室さんがお茶会で愚痴を言っていた記憶がある。

 

「ええ。先生方からは体調の心配されて病欠を勧められましたが、()()()()()()()()()()()()()()()()ですからね。それくらいなら問題ありません」

 

 豪華客船には医務室もあるし医師も同乗している。だから病欠する必要などない、と。

 ――これから始まる()()()()の存在を彼女は知っているだろうに、実に楽し気な様子だ。

 

「坂柳さんなら大丈夫だと思うけど、無理だけはしないでね?」

「ええ。私の体のことは私が一番よく知っています」

 

「……ですが、今回は皆さんと少しだけ遊びたくなってしまったので。きっと楽しいバカンスになるでしょうね」

 

 晴柀くんもバカンスを楽しんでくださいね、と。心なしか普段よりも足取りも軽く、坂柳さんは去っていった。

 その小さな背中を見ながら、なぜか俺は大きなうねりのようなものを感じるのだった。

 

 □

 

 東京都高度育成高等学校の一年生160人を乗せた豪華客船は予定通り海上で一泊を過ごし、翌朝に無人島に到着した。

 上陸前に島の周りを一周して島の全貌を見る時間があったが、いったい何人の生徒が気がついただろう。《この島のどこにもペンションなど見当たらない》ということに。

 

 島に到着すると私物を全て船の中に置いていき、ジャージと着替えのみを持ってビーチに出るように指示される。なんだか怪しいぞ、と不安そうな顔をする生徒たちが並ぶ中で、ついに始まってしまった。

 

「それではこれより今年度初の特別試験を開催する!」

 

 二週間のバカンスなんてなかった。

 これから始まるのは地獄の特別試験――無人島でのサバイバルだ。

 

 □

 

 茶柱先生の説明が終わり、ついにサバイバル生活がスタートする。

 クラスごとに与えられた300ポイントをできる限り残しながら、一週間生き抜き、各地のスポットを巡って確保し、他クラスのリーダーを当てなければならない。

 この過酷な試験に対し、俺はさっそく一つの策を考えた。

 

「おーい」

「あれ、晴柀くん? どうしたの?」

 

 試験開始直後、クラスメイトたちを説得した俺はBクラスの生徒たちが集まる場所に足を運んでいた。

 

「Dクラスの代表として話をしに来たんだ。今回の試験、うちと組んでポイントの節約を狙わない?」

 

 目的は一つ。特別試験で与えられた300ポイントを少しでも節約すること。

 

 なにしろ俺たちDクラスはたったの97ポイントしかない。少しでもポイントを稼いで来月から支給されるプライベートポイントの額を増やしたいというのがクラス全員の総意だ。

 池や幸村はギリギリ限界まで我慢してポイントを残すべきだと言っていたが、今回の試験は一週間の長丁場。しかも体調不良でリタイア者が出る度に30ポイントのペナルティが課せられる。

 だからまずリタイア者が出ないような環境を整備するのが重要だと説得した。桔梗が。

 

 一方、Bクラスのクラスポイントは663ポイント。Aクラスの1004ポイントと大きく差を開けられている。こちらも少しでもポイントを節約してAとの差を縮めたいはずだ。

 それになにより、Bクラスのリーダーが帆波であるという理由が大きい。この学校で一番信頼できる相手だ。彼女なら裏切りを心配しないですむから楽しく一週間を過ごせるだろう。

 

「同盟のお誘い? ちょっと待ってね。みんな! Dクラスから同盟しないかって提案みたい。私は受けた方がいいと思うんだけど、みんなはどう思う?」

「もちろん反対です! 一之瀬さんには指一本触れさせません!」

「にゃはは……。そういう話じゃないから、千尋ちゃんは落ち着いてね?」

 

 謎の使命感に燃えている白波さんは置いておいて、サブリーダーの神崎らを含めた話し合いで無事に結論が出たようだ。

 

「晴柀くん! 同盟の誘いありがとう、こちらこそよろしくね!」

「受けてくれてありがとう。これから一週間頑張ろう」

「うん!」

 

 それでは次だが、まずは移動だ。いつまでも直射日光を浴びたままビーチで話し合いをしていては干からびてしまう。

 

「すみません、星之宮先生」

「ん、私? なにかな?」

「俺たちB・Dクラスが合同でベースキャンプにするのに最適なスポットの場所を売ってほしいです。いくらですか?」

「えっ! スポットの場所を買うの!?」

「……ふーん。君がDクラスのリーダーかぁ。なかなか面白い子ね。気に入っちゃった」

 

 気に入ったという言葉とは裏腹に、にこやかな笑顔の奥に深い闇を感じさせる先生だった。

 茶柱先生もかなり問題のある先生だし、正直担任ガチャは外れだと思う。

 

「そうねぇ。基本的に一クラス40人の想定でスポットは設定されているんだけど……80人ならあの場所がおすすめかしら」

「いくらです?」

「20万ポイント。スポットの場所を教えるのに10万、おすすめの理由を教えるのに10万ってところね」

 

 なるほど。スポットの場所が10万なら、例えば100万払えば10か所のスポットを教えてもらえるのだろう。悪くない買い物だが今はまだ無理をする必要はないだろう。

 

「分かりました。今携帯がないので試験後の支払いでいいですか?」

「OKよ。忘れずに私に会いに来てね」

「あ、あの! ちょっといいですか!」

「ん? どうかした?」

「あら? なにかしら一之瀬さん」

「私も半分出します! 10万ポイントでいいですよね?」

「はーい、了解。一之瀬さんも試験後にね」

「はい!」

 

 20万の情報、帆波たちBクラスが半分出してくれることになった。

 

「ありがとう」

「どういたしまして! 同盟を結んでいるんだし、私たちにも有益な情報なんだからこのくらい当然だよ!」

 

 にこっと微笑む。これを本心から言ってるんだから凄い。世の中にこんな善人がいるんだと感心してしまうレベルだ。帆波には是非ともこの純真さを失わないでほしい。

 

「それじゃあスポットの場所だけどここよ。ここは森に入れば果物が、海に出れば魚が取れるんだけど、一番のおすすめ理由は『井戸』があるの」

「井戸、ですか?」

「そう。この島は学校所有で管理している島なんだけどね。この井戸の水はとても綺麗だからろ過も煮沸も要らない。そのまま飲んでも問題ないわよ」

「それは凄い情報ですね」

 

 サバイバルで水の確保は重要だ。

 人間が水を飲まずに耐えられるのは三日と言われているが、この島のように暑い場所だと一日、二日で命の危機に陥る。

 逆に二、三週間は何も食べなくても生きていられると言われているので、最悪一週間断食をして水だけで過ごすこともできなくはない。

 とまあ、そのくらい水は重要なのだ。

 

「80人分の飲み水や調理用の水を確保するのは大変だから、俺もベースキャンプはこの場所がいいと思うよ」

「私もそう思う! 星之宮先生、ありがとうございます!」

「うふふ、二人ともがんばってね~」

 

 星之宮先生の情報でベースキャンプの場所を決めた俺たちB・Dクラス合同チームは、早速移動を開始して目的のスポットを確保した。

 話し合いの結果、ベースキャンプのスポットを占有するのはBクラスが担当代わりに、キャンプ周辺を含むその他のスポットはDクラスが占有していいという条件になった。

 お互いのリーダーを指名しないという条件も結んでいるので、上手くやればスポット占有のポイントでかなり稼げるだろう。

 

 また、ポイントによる物資の購入だが、こちらも帆波と桔梗が協力して反対派を説得してくれたので、合計160ポイント、各クラス80ポイント分の物資の購入で話がついた。

 井戸水を嫌がる女子もいたが、星之宮先生が太鼓判を押してくれたお陰で納得してくれたりと、初日は幸先のいいスタートを切れたと思う。




クラスポイント
Aクラス 1004
Bクラス 663
Cクラス 192
Dクラス 97

試験ポイント
Aクラス ?
Bクラス 220(80ポイント消費)
Cクラス ?
Dクラス 220(80ポイント消費)
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