誓って食い逃げはしません   作:タカリ

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2日目の動き

□Dクラスに燻る火種

 

 池、綾小路、須藤、平田に周辺警戒要員の6人を加えた男子10人のグループ。

 この10人は8時間ごとにスポット更新をする必要もあって、同じテントで寝泊まりしていた。食料調達でも自然とこの10人で行動していた。

 

「おーい! 魚獲ってきたぞー! 大量だー!」

 

 だから、池と綾小路が大量の魚を獲ってきた時もこの10人でグループを組んでいた。

 活躍したのはアウトドアの得意な池と無人島中だけは自重を辞めた綾小路だ。他の男子は目立った成果は上げていなかった。

 だが。

 

「さすが平田くん! こんなにたくさんの魚を獲ってくるなんて凄いね!」

 

 女子たちからすると『池と綾小路が活躍した』のではなく、『平田のグループが活躍した』と自然と解釈してしまう。三馬鹿の池が活躍したなんて夢にも思わない。

 

「ちょっと待てよ! この魚のほとんどは俺と綾小路が獲ったんだぜ! 平田は全然活躍してねえよ!」

「はあ? あんたが活躍したなって信じられるわけないじゃない! 平田くんが優しいからって手柄を横取りするなんて最低ね!」

「なんだと!!!」

 

 池が自分と綾小路の成果だと言っただけなのに、篠原はその言葉を否定して手柄を横取りしただと決めつける。

 

「二人とも落ち着いて! 池くんの言ったことは本当だよ。僕は全然魚を獲れなかったけど、池くんと綾小路くんが二人でがんばってくれたんだ」

「……まあ、平田くんがそう言うなら」

「お前、俺のこと疑っておいて謝罪の一言くらいねえのかよ!」

「はあ? あんたの普段の行いが悪いからでしょうが! 少しは日頃の行いを見直したらどうなの!」

「こ、こいつ……!」

 

 池と篠原の間に険悪なムードが漂う。そんなDクラスに向かってBクラスの生徒と金田が呆れた視線を向けていることにも気がつかないのだった。

 

 □軽井沢グループ

 

「ふん! 池がそんな活躍したなんて嘘に決まってるわ。平田くんが手伝ってあげたとかそんなところでしょ、どうせ」

 

 2つある女子テントの片方、軽井沢、篠原、松下、佐藤など10人が使っているテントで先ほどの諍いの怒りが冷めやらぬ篠原が池の悪口を言っていた。

 

「平田くんはこの試験中も女子に気遣ってくれるし、本当に紳士だよね」

「軽井沢さん、本当にいい彼氏を捕まえたよねー」

「まあ、ね」

 

 クラスの男子でカーストトップに位置する平田。その平田の恋人である軽井沢の地位は盤石である。軽井沢は最初はそう考えていた。

 だが、晴柀が中間試験の過去問を見つけてクラスに配布した時に平田一強の体制に大きな波紋が広がった。

 自己紹介の時に日本を一夫多妻にするなんて世迷言を言って三馬鹿の同類だと思われていた晴柀が、徐々にクラス内で存在感を増して影響力を大きくしていった。

 

 プールの授業の補習を取り付けてきたのも上手い一手だった。プールの授業をずっと見学していたら成績に影響が出るということくらい、みんな理解しているのだ。それでも我慢できないくらいにDクラスの男子の視線が気持ち悪かった。だから見学するしかなかった。

 だから、男子が参加しない女子だけの補習なら気兼ねなく参加できる。本当はプールに入りたかった女子たちは晴柀の行動に感謝した。

 

 そんな女子たちの中で軽井沢だけはプールに入れない。左わき腹の傷を誰にも見せたくないから補習にも参加できない。「水着に着替えるのがだるいから」と言い訳をしているが、クラスポイントに影響が出ることを懸念した女子たちから軽井沢グループは顰蹙を買っていた。

 

(大丈夫、平田くんが功績を上げれば私の影響力は上がる。まだカーストトップの地位は維持できる)

 

 スポット巡りに食料の大量確保。平田が功績を上げることで彼女である軽井沢の力が増す。

 平田と同行している池や綾小路が活躍しすぎるのはマズいが、『平田グループ』の成果として全部平田の功績にしてしまえばいい。

 

「平田くんがこんなにがんばっているのに晴柀くんたちは何しているんだろうね」

「他のクラスの偵察に行くって言って、仕事サボっているんじゃないのー?」

 

 Bクラスとの同盟を言い出した晴柀の印象下げも怠らない。

 晴柀のお陰でポイントが節約できたが、それをそのまま認めてしまうと都合が悪い。

 

(晴柀は堀北と仲が良い。堀北寄りの女子が増えている。ただでさえ目障りな櫛田がいるのに、もう一人増えるなんて……)

 

 女子のツートップである軽井沢と櫛田の勢力争いに突如割り込んできたダークホース堀北。

 堀北と晴柀の仲の良さはクラスの人間なら誰でも知っている。だから、平田のお陰で軽井沢の地位があるように、晴柀が力をつけると堀北の地位が上がってしまう。

 軽井沢としてはなんとしても晴柀の伸張を防がなくてはならない。

 

「晴柀くんも意外とケチだよね。私がちょっと援助してほしいって頼んだだけなのにポイントがないから無理だって断ったのよ」

 

 晴柀アンチの筆頭は篠原だ。プールの補習代10万ポイントを晴柀が支払ったと知った彼女は、そんなにお金があるなら自分にも少し援助してほしいと晴柀に頼みに行った。そしてポイントがないからと断られたのだ。

 金持ちだと思ったのに貧乏だった。そして自分がお願いしたのに断った。このことから篠原は晴柀に敵意を抱いていたのだ。

 

「……まあ、晴柀くんはいろいろポイント使っているみたいだし。貧乏なのは本当なんじゃないかな」

 

 一方、佐藤は先月にあった晴柀の誕生日パーティに招待されたので本当に貧乏だとは思っていない。どこから資金を手に入れているのかわからないが、中間試験の過去問を先輩から購入したり、プールの補習代を支払ったことから、かなりのポイントを保有しているんだろうな、という予測はしていた。

 だが、それを篠原に打ち明けるつもりはなかったし、晴柀の誕生日パーティに参加したことも軽井沢グループには秘密にしていた。

 佐藤は晴柀と席が近いからよく話をするし、平田よりも晴柀の方に心情が寄っている。それでも軽井沢たちとの交流のために表面上は軽井沢や篠原に合わせているのだ。

 

 そんな風に軽井沢たちが取り留めもないことを話していると、テントの外が一気に騒がしくなった。楽しそうな雰囲気が伝わってくる。

 軽井沢たちがテントを出ると、キャンプ場の一角に人だかりができていた。

 

「どうしたの?」

「あ、軽井沢さん。晴柀くんと一之瀬さんたちがCクラスのベースキャンプからいろいろと物資を持ってきてくれたみたいなの。テントだけじゃなくてトイレもシャワーもあるんだって! すごいよね!」

「へ、へえ……。それは、すごいね……」

 

 テント、トイレ、シャワー。それはサバイバル生活の一番の問題だった。

 テントは詰め込めばなんとか10人寝れる。一クラス4個のテントで10人ずつ分かれて寝ている。だがかなり狭いし寝苦しい。

 

 トイレ。これは男子に一つと女子に二つあったが、常に混んでいる。男子の方は段ボール製の非常用テントまで組み立ててあったが、好んで使いたいという生徒はいなかった。

 

 シャワー。衛生的に過ごすためにお湯が出るシャワーを用意していたけど、これはほぼ女子専用だ。それでもB・Dクラス合わせて40人の女子が交代で使っているのだから行列ができる込み具合だ。男子は順番を待っていられないから川で水浴びしている。

 女子も水浴びができればいいのだが、男子が覗きに来そうだからシャワーを使うしかない。

 

 そんな状況が変わる。

 Cクラスの持っていた4つのテントがB・Dクラスの男子と女子の1つずつ配られる。10人で寝泊まりしていたのが6~7人で寝れるようになる。

 トイレも2つあったので、男子2個、女子3個で使われることになった。これには特に男子の喜びが大きかった。

 そしてシャワー。これは一つしかなかったが、単純に数が倍になったので女子の行列が短くなるし、空いている時を狙えば男子も使える。

 

 これを確保してきたのが晴柀の地位がどうなるのか、分からないわけがない。

 池たちと一緒に魚を獲ってきた平田の活躍がなくなるわけではないが、晴柀の前では霞んでしまう。

 軽井沢のカーストトップの地位に大きなヒビが入る音がした。

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