誓って食い逃げはしません   作:タカリ

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5月1日 クラスポイント:0

 入学してから一か月が経過した。

 

 その間に池たち三バカや綾小路、それに俺の前の席に座っている沖谷と仲良くなった。

 一方、女子だけど、堀北さんの冷たい瞳も全く変わらないし、佐倉さんは一か月経っても声をかけただけで怯えられるか逃げられる。斜め前の席のみーちゃんと佐藤さんは少しだけ仲良くなれたけど、他の子たちとはほとんど交流がない状態だった。

 

 どうしてこうなった……。

 

 いや、理由は察しているんだ。

 池たちがよく絡んでくるせいで、クラスの女子から俺も三バカの同類だと見られている。それが最大の理由に違いない。

 それと三バカほどではないが、授業中にずっと居眠りしている沖谷や、陰の者である綾小路ともよく話すのでその影響もあると思う。

 え、自己紹介の時の発言のせい? なんの話かな?

 

 そういうわけで、不幸にも今の俺は『クラスカースト』の下位グループに分類されているんだろう。

 平田や櫛田さんは誰にでも分け隔てなく接してくれるのだが、軽井沢さんグループからは下に見られている。

 佐藤さんは軽井沢さんのグループと仲がいいのでやはり影響を受けているし、みーちゃんは櫛田さんと仲がいいからか、俺よりも平田の方が距離が近い気がする。

 

 しかもこの前、坂柳さんに一年のイケメンランキングとかいうのを見せられたんだけど、平田が2位で俺が5位だった。あと綾小路も入っていたが6位だった。

 あと須藤たちから聞いた話だと平田と軽井沢さんが交際を始めたらしい。おのれ平田。お前はいい奴だったがイケメンすぎたのがいけないのだよ。

 

 ちなみにイケメンランキングの話を聞かされた時、神室さんは元気だしなよとコンビニのからあげを奢ってくれたので本当に感謝している。その横で落ち込む俺を見てにやにやしていた坂柳さんは許さない。いつかわからせてやる。

 

 ――こんな感じで、最初の一か月は穏やかに過ぎていった。

 嵐の前の静けさとはまさにこのことだったのだろう。

 

 □

 

「本当に愚かだな、お前たちは」

 5月1日。ついに嵐が吹き荒れた。

 

 □

 

 茶柱先生から伝えられたこの学校の真実を聞いてクラスのみんながうな垂れていた。

 

 Sシステムによるクラス評価と支給されるプライベートポイントの説明。

 卒業時にAクラスでなければ恩恵は受けられないという説明。

 そしてDクラスの評価(クラスポイント)はゼロ。支給されるプライベートポイントもゼロだという説明。

 あまりに酷すぎる騙し討ちだ。

 

 授業中の私語や居眠り、携帯操作などを注意しなかったのもこのSシステムがあるから。全部カウントして減点していたなんて思いもしなかった。

 

 ……というか、クラス単位で評価するんじゃなくて、個人で評価してほしいのだが。

 俺はきちんと真面目に授業を受けていたのに。罰するなら三バカややらかした当人たちだけ罰してくれないだろうか。

 不真面目な生徒を注意するのはクラスメイトの役目じゃなくて教師の役目だろう、普通は。

 

「た、頼む、晴柀! このゲームを2万でいいから買ってくれないか!」

「コロスゾ」

「ひいっ!?」

 

 山内のバカが声をかけてきたので怒りをぶつける。お前らの授業態度が悪すぎたせいでこっちまで被害を被ったのに、大金払ってゲームを買ってくれとか空気が読めてないにもほどがある。

 

 はぁ……。総理大臣になるためにはクラスポイントを大量に稼いでAクラスに上がるしかないが、この調子で本当にAに上がれるのだろうか。気が重い。

 

 □

 

 落ち込んでいると茶柱先生に指導室に呼び出された。どうやら堀北さんも一緒に呼ばれたらしい。

 

「……晴柀くん、意外と勉強ができるのね」

「え? ああ、さっきの小テストの点数のこと? 堀北さんも点数良かったよね」

「当然よ」

 

 堀北さんは先ほど黒板に張り出した小テストの結果を覚えていた。

 まあ、俺は幸村や高円寺らと同じクラス1位だったから印象に残ったかもしれないな。

 

「体育の授業を見たら運動神経も良いみたいだし、どうしてあなたがDクラスなのかしら」

「まさかクラス分けにそんな意味があるなんて思わなかったよ。不良品か、面と向かって言われると辛いね」

 

 俺は中学時代のやらかしがあるからDクラス(不良品)なのも納得だが、Aクラスから順番に優秀な生徒が集まっているなんて思いもしなかった。

 

 だって俺の知っているAクラスの生徒って万引き少女(神室)さんと脅迫少女(坂柳)さんしかいないし。

 

 ……本当にAクラスって優秀な生徒の集まりなのか?

 

「私がどうしてDクラスなのか、納得いかないわ。絶対にこの学校の評価は間違っている」

「あはは……」

 

 堀北さんの評価に関してはノーコメントで。

 さて、茶柱先生の話だったが、なんとDクラスがAクラスに上がるために綾小路に協力を頼めという話だった。

 綾小路は入試のテストは全て50点、この前の小テストも50点。常に50点を取ってきた男らしい。

 

「なんで50点なんだよ。逆に目立つだろう」

「い、いや、たまたま偶然50点だっただけで……」

 

 綾小路が苦しい言い訳をしているが、常に50点なんて狙ってやっているとしか思えない。それに高難易度の問題を解けるのに低難易度の問題を解けないのは明らかに怪しい。

 それでも必死に隠そうとしているんだから何かしらの事情があるんだろうけど。もしかしたら厨二病(不治の病)だったりするんだろうか。

 

 とにかく堀北さんや綾小路と協力してAクラスを目指すことになった。

 俺では今のクラスをAクラスまで導ける自信がないので仲間がいるのは心強い。

 

「あの、俺は本当に偶然で……」

「諦めろ綾小路」

「諦めが悪いわよ綾小路くん」

「ええ……」

 

 左右から綾小路を挟んで退路を断つ。逃がさないよ。

 まあ綾小路は目立つのが苦手みたいだし、俺と堀北さんが矢面に立つので協力はお願いする。

 

 □

 

 須藤と三バカたちが早速やらかした。

 平田も今のクラスの状態が良くないと思っていたようで勉強会を提案したのだが、須藤が「勝手にやってろ」と拒否し、残りの池と山内も参加を断ったらしい。

 危機感が足りなすぎる。あいつら、もしかしてまだ自分が退学にならないと勘違いしているんじゃないか? このままだと間違いなく退学(死ぬ)ぞ。

 

「晴柀くん、お昼だけど一緒に食堂で食べない?」

 

 あの三人をどうにかしないといけないと考えていると堀北さんにお昼を誘われた。彼女も真剣にAクラスを目指しているわけだし、一緒に作戦会議というわけか。

 

「もちろんいいよ。俺も話し合いがしたいと思ってたところだからね」

「そう。綾小路くんも一緒にいかが?」

「俺もか? じゃあ一緒にいかせてもらおう」

 

 綾小路も誘ったので完全に作戦会議だな、と思っていたら堀北さんがお昼をご馳走してくれると言い出した。

 堀北さんもポイントに余裕がないだろうから断ったが、何度も薦めてくるのでお言葉に甘えることにした。スペシャル定食を食べるのは始めてだ。

 

 シャリッ。

 

「二人とも食べたわね」

 

 俺と綾小路が目の前の食事に手を付けた瞬間、堀北さんの目がキラリと光ったような気がした。

 

「私の奢りで食べたのだから協力してもらうわよ」

 

 別に奢ってもらわなくても最初から協力するつもりだったのに……。

 

「奢ってもらわなくても俺は堀北さんに協力するから、こんなことしないでいいよ」

「なんですって!?」

 

 残念な子を見るような目で告げたら「そんなこというなら食べなくていいわよ!」というので、堀北さんに食べかけのスペシャル定食を譲ろうとしたら怒られた。

 それなら代わりにポイントを渡そうとしたら頑として受け取らない。スペシャル定食2つはかなり痛い出費だと思うが、一度出したものは引っ込めないタイプらしい。

 

 入学してからはじめてこんなにたくさん話したけど、堀北さんは人間関係に不器用なタイプみたいだ。打ち解けるまで時間がかかりそうだけど、この学校はクラス替えがないので3年間ずっと同じクラスということになる。気長に距離を縮めよう。

 

 ちなみにスペシャル定食は残すと勿体ないので俺が全部食べた。

 堀北さんに奢ってもらった分も働きで返さないとね。




将来の目標(総理大臣か大金持ち)のために晴柀くんは真剣にAクラスを目指しているAクラスガチ勢。
なので堀北と一緒に茶柱に呼び出されて綾小路を紹介された。
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