プロローグ
「アキヒサ、時間大丈夫か?」
「あ、まずい、遅刻だよ!」
弁当を用意していた僕は同居人に声をかけられて時計を見た。時刻はすでに8時真ん中過ぎ、全速力で走らないと遅刻することに気が付いた。
「今日のお昼は冷蔵庫の中だからね!」
「そんなこと言ってないで早く行け」
「行って来まーす!!」
僕は上着とカバンをひっつかんで走り出す。やばいやばいやばい!!
マンションのエレベーターを待つのも億劫で、階段を駆け下りる。玄関を抜けようとしたとき、視界の端に黒い影が見えた。
「はよっ、お前も遅刻か?」
短い黒髪をした女の子が僕に声をかけてくる。彼女は幼馴染と言うよりは、悪友とでも呼ぶべき存在で名前は井上遠子、赤いフルフレームのメガネが特徴だ。
「うん、まさかこの日に遅刻しかけるとは」
そう、今日は二年の始業式、クラス分けだ。こんな日に遅刻はまずいよ。二年生の初めから全体の心象が悪くなる!
「おれも同じくさ。とりあえず走ろう!」
「当然!!」
僕たちは学校へ向かう通学路を全速力で駆け抜けて行った。
☆
チャイムが鳴るギリギリで学校の門をすり抜けた僕たち、間に合った! 思わず二人で足を止めてハイタッチをする。そういえば、今さっき何か通り過ぎたような?
「喜んで居るところ、悪いがこっちにこい」
んぎゃ く、首根っこつかまれ。く、苦し……。
「で、私を通り過ぎた言い訳はあるか?」
「「ど、どうもです。西村先生……」」
自分を引きずった人物を見れば、なんだ鉄人じゃないか。鉄人というは愛称で、本名西村宗一、筋骨隆々の皆から恐れられる生徒指導教員、まあ僕ら……というより彼らには全くもって関係ないけど。僕以外はあんまり先生に目をつけられていないからなぁ。
「吉井も井上も全く、ほらお前さんらのクラス分けだ」
あきれた様子で封筒を渡してくれた……さて、どうなることか。慎重に封筒を開いてみる。中から出てきたのはEクラス四席という文字だった。
「よっしゃ、Eクラス代表だ」
「あ、Eクラス四席」
井上は代表、僕より上、ということは井上の表情を見れば勝ち誇ったようににやりと笑っていた。
「勝った!」
「まけたぁ……」
これで今年も僕は井上にこき使われるのか。クラス分けのための振り分け試験の点数を競うとか、自分にあからさまに不利な勝負を僕はなんで受けたんだ。てか、丁度チャイム鳴ったし。
「遅刻するぞ」
「わかりましたー」
「へーい」
肩を落としつつ玄関に向かう僕とやたらと上機嫌な井上の背後で『『遅刻だぁぁぁぁ』』なんて知っている声が聞こえた気がするけど、気のせいだね。気のせい
そんなこんなで僕らのEクラスでの学園生活が決まった。
「おい、円堂に半田 遅刻だ」
「うげ、まじかー」
「明久たちに追いつければ、ぎりぎりどうにかなると思ったんだがな」
後方ではそんな会話が繰り広げられていた。