「明久、先行ってるな」
「いってきまーす」
「行ってらっしゃい」
次の日の朝、学校の廊下にて。
「ねーねー聞いた?教頭先生辞めさせられちゃったんだって」
「聞いたよ。裏金作ってたんだって」
「しかも学校乗っ取り計画とか考えていたらしいよ」
「えーうそー。あたし竹原先生のファンだったのに」
……蒼、仕事が早すぎるよ。
テイマーになって一年後に出会った空色の女の子がケラケラ笑うのを幻視した。ついでにいうのなら彼女のパートナーの進化体がギザギザの葉を見せて笑う姿も。
とにかく、教室への廊下を歩きながらそんな噂話を耳にした。
まあ、教頭先生の悪だくみを潰した僕らは平穏無事な日々を……
☆
「うっそぉ」
過ごせなかった。二年生の教室への廊下には言った途端に、目の前には霧のようなものが発生した。これは七年前と同じ?!
あわてて廊下を走る。井上たちと合流しないと、普通の人間はこの空間にいないは……
「まじか」
いるし。霧なんて見えてないかのように普通に過ごしてるし、あ まさか僕たちにしか見えない霧とか?! 一体全体何がどうなってるの。こういうのは星か井上の担当だよね!
うがーとかなってる僕の肩を誰かが叩く。
「先輩!」
茶色の髪を赤いスカーフのようなもので小さなツインテールにした、オレンジの目をした女の子が声をかけてきた。制服から見て一年生だ。
「……あれ、ことりちゃん?」
「はい!お久しぶりです」
やっぱりことりちゃんか。宮野ことり、僕の一年後輩で七年前の事件の時からの知り合いで、つばさ君とは同い年のはず。相棒はギルモンのレッド。
でも何でここに?
「ことりちゃん、今の状況……」
「あ、わかってます。それと先輩、あたし文月に入ったんです。よろしくお願いしますね」
ぺこりと頭を下げられる。ことりちゃんも文月に入ってくるとは、これはやんちゃ出来なくなるなぁ。
「あ。そうなんだおめでと……って違うね。原因分かる?」
「それはさすがに……すみません」
「あ、いや。謝らなくてもいいから」
お互いに謝り合戦になりかけたその時、向こうから誰かが走ってきた。
「キサ先輩、ことり」
つばさ君だ。その傍には四足歩行の注連縄を付けた九尾のキツネが居る。
「つばさ! レナも一緒なんだね」
「ああ、アキヒサも無事で何よりだ」
「うん、キュウビモンひさしぶり」
キュウビモンはつばさ君の相棒、レナが進化した姿だ。デジモンと言う生き物は進化と退化を繰り返して成長していくもので、パートナーが居るデジモンは進化の速度が著しく早くなるらしい。危険を察することに長けたレナが進化してるってことは、相手は結構強いかも?
「キサ先輩、ヒイロは?」
「先輩、ヒイロくんは居ますか?」
「家、どうしよう……」
後輩二人にほぼ同時に聞かれた。やっぱりこの二人息がぴったりだよね。って、そんなこと考えてる場合じゃない。ヒイロが家に居る時点で僕は危険な状態だよ。
「じゃあ、先輩はあたしたちが守ります!」
「俺たちがいるから、大丈夫」
「ほんと?助かるよ」
「レッド、よろしくね」
ことりちゃんの呼びかけで赤いアークから赤い恐竜のような生き物が出てきた。この子がギルモンのレッド。腕に赤いスカーフを巻いているのが特徴だ。
「わかったよ~」
僕たち五人はとりあえず仲間を探しに校舎の中を歩き出した。霧ばかりの空間が続いている。時々人とすれ違うけど、その人たちは僕たちの存在なんて目に入っていないようにそのまま通り過ぎていく。
「つばさ君は昨日会ったから知ってたけど、ことりちゃんも文月にするとはね。なんで?」
稲妻町から文月まではそこそこ距離があるから、あんまり昔の知り合いに会うことはないと思ってたんだけどなー。最大の誤算は円と帝の二人だけど。
「へっ?!」
「アキヒサやみんながここにいるからだよねー、ことり」
「あ、うん そ、そうなんですよ!」
なんか隣でつばさ君が呆れてるけど、なんかあったのかな?
「そっか、ちょっとうれしいな♪」
「そうですか?」
「うん」
それくらい後輩に好かれているっていうのは、うれしいもんだし。ことりちゃんの場合、星が居るっていうのがメインだろうけど。
「(あ、キサ先輩勘違いしてる)」
「(ことりもかわいそうに)」