「くっ、近い 坂本雄二、受けます!
坂本君の召喚獣が姿を見せた。白い改造学ランに……装備なし?
美術
―――Fクラス 坂本雄二 104点
「……坂本君、素手?」
「メリケンサックつけてるだろ」
「……雑魚だ。雑魚がいる」
メリケンサック装着って普通居ないよね? というかどこの不良だ。
「誰が雑魚だ! つか、なんで美術でそんな点数取ってんだよ。おかしいだろ」
「美術なめんな! いいじゃん、美術部員だし」
「それあんま関係ないだろ」
「なにおう」
美術バカにしないでよ。僕たちが本格的な口喧嘩に入ろうとしたその時、
「もうそろそろ戦おうね?」
「「あ、はい」」
吉良先生の一言で僕たちは正気に戻った。坂本君が僕の召喚獣の方を見る。
「というかお前の召喚獣は?」
「ああ、ごめんごめん リアイライズ!」
ずっと靄のようだった僕の召喚獣がようやく姿を現した。
普通の人間より長い腕、口には忍者がするような口元を隠すやつ、頭には紫の布がまかれて金色の髪が少しだけはみ出ている。肌の色はどちらかというと紫っぽい。通常の召喚獣が本人をデフォルメしたものだから、これって本当にイレギュラーなんだよね。
『明久、なんか用か?』
「ヒイロ 珍しく、戦闘なのでよろしく」
『了解』
「召喚獣が喋った?!」
坂本君が驚いている。あ、コントロールしないとすぐに倒されるのに、まあいっか。
ヒイロの素早い一撃で坂本君の召喚獣は消えた。よし!
「代表坂本雄二の召喚獣戦死を確認!よって、Eクラスの勝利!!」
あっさりとEクラスの勝利が決定した。
……まあ、窓ガラスが犠牲になったけど。
☆
「じゃ、戦後対談はじめるか。坂本代表?」
「っち」
終戦後、僕たちはFクラスに集合した。二クラス分が集まってるからちょっと狭い。その真ん中で、にまにま笑う井上が坂本君と対峙する……正直言っていいのかな?井上の方が悪役っぽいよ。まあ、坂本君の表情も追いつめられた子悪党みたいな感じがするからどっこいどっこいだけど。
「とりあえず、この戦争は設備のランクダウンではなくこちらの出した条件を飲んでもらう」
「条件はなんだ」
坂本君、警戒してるなぁ。思えば井上ってそれだけ坂本君に警戒されることしてるってことだよね、これ。
「おれたちEクラスへの宣戦布告の禁止」
「まあ、妥当か」
「あとぶち破ったのも含めて、ガラスの総入れ替えな。金はこっちが出す」
「は?」
坂本君が意外そうな顔をする。まあ、井上のことだし「窓全部はずせよ、どうせ窓機能してないんだろ(笑)」くらい言いそうとか思っていたんだろうなぁ。嫌いな奴相手ならそれぐらい行くもんね。ガラス総入れ替えっていうのは、僕もびっくりだ。作戦会議ではランクダウンではなく条件でくらいしか言ってなかったよね。
「ただし、お前らではめろよ」
「お、おう」
ただ気になるのは、業者を入れないでどうやってガラスを嵌めるんだろう。まあ、なんとかなるか。てかこの条件ってFクラスに有利じゃ、気になって井上の方を向くけど、なにかを考えているようで表情が見えない。
井上は急に顔を上げたかと思うと視線を島田さんに移した。皆もつられて島田さんの方を向く。
「な、何よ……」
全員の視線が島田さんの方に向くもんだから、島田さんが戸惑ってる。そんな島田さんを井上が真顔で指さした。
「えっと、島田。お前、Eクラスに来るの禁止」
「何でよ?!」
「明久の腕を折ろうとした奴が何を言うか」
うん、さっきやられかかって本気で危なかった。それこそ吉良先生が止めてくれなかったらどうなったことか。まあ、島田さんに絡まれる率が下がるならこれはありかな。
「それと、今日明日つかって掃除な」
「なんか俺たちにいい特典ばかりじゃないか?」
井上がふっと笑う。
「ばーか、姫路のためだ。あいつ、体弱いんだ」
姫路、その単語が気になって見回せば、見たことあるピンクブロンドの髪が生徒に紛れてあった。そっか瑞樹ちゃん、Fクラスだったんだ。井上が僕らの方に歩いてくる。多分これで戦後対談終了かな? そう思ってたら、井上が急に立ち止った。そして坂本君の方を向く。
「あ、掃除 徹底的に頼むわ、さっき教室に入った時 カビっぽい匂いがしたから」
「……わかった」
僕の傍まで来た井上が肩に手をかけて『後で一緒にこい』と言った。あー、今度は学園長相手にケンカ売る気かー……後でいろいろ大変なのに。井上はなんだかんだでお人好しだからしょうがないか。
こうして、EクラスとFクラスの試召戦争が終結した。
戦後対談終了後
「うーし、学園長室行くぞ」
井上が僕の手を引っ張る。アポ取った方が良いんだろうけど、井上は行くって言ったら行くもんね。しょうがない行こう。
「あ、遠子。俺も行く」
「じゃあ、この三人だな」
サッカー部組はあっさりどこかに行ったし。